New world note in Earth   作:YUKANE

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2026年度最初の投稿ですが、新年早々アメリカがベネズエラを攻撃し、大統領を拘束した一報に驚かされました。中国は台湾近海で演習を行い、ウクライナとロシアの戦争は講和の条件で揉めている最中。2026年は世界情勢が大きく変わりそうで、今作にも影響を与えそうですね。

最後にUA32000突破ありがとうございます!


Episode.61 前線基地と視察プランの構築

バリア島制圧を終えた水陸機動団第2水陸機動連隊は、即座にバリア島の治安維持を開始した。テッラの市長と市民の安全を保証する取り決めを英語で交わし、南部の熱帯雨林へ逃げ込んだテッラ守備隊の一部に対する降伏勧告も行われていた。

 

橋頭堡確保の役目を果たしながらも、事後処理に追われる第2水陸機動連隊の連隊長 牧大輔一等陸佐は、仮設された骨組みがフレーム式の業務用天幕に設けられた一時的な司令部である人物と対面していた。

 

「あなたがバリア島の守備を任された人物か」

「如何にも。私がバリア島守備隊司令官ベトウィン・だ。」

 

牧が英語で話しかけると、背中に向けられた両腕を縄で絞めた状態で拘束されたベトウィン・ダンロ・アルテッリ准将は英語で答える。

 

「我々はあなたの命を奪う事はしない。捕虜には一時的ながら東和国内の収容所に入って貰う。そこで貴殿には部下の説得を頼みたい。」

「分かった。だが、戦争が終わったら捕虜は帰国出来るかだけでも教えて頂きたい。」

「それに関してだが、既に日東で“ティアンワの捕虜は終戦後に母国へ帰国させる旨”が約束されている。貴殿ら捕虜を異国の地で死なせないと保証しよう。」

「その文言を聞けて安心した。守備隊の中にはこの島生まれも多い。一時的な辛抱だと分かれば、皆も移送を受け入れてくれるだろう。」

 

牧から捕虜を殺さず、終戦後に捕虜を母国へ帰国させる言質を得たベトウィンは、彼の依頼を受け入れた。

 

「それと南側の熱帯雨林に逃げ込んだ守備隊に関する降伏勧告をお願いしたい。」

「その様な事であれば直ぐにやろう。だが、逃げ込んだであおうライネン中隊長はこの島生まれで、地元愛が非常に強い。部下も揃ってこの島への想いが強く、日本から島を取り戻すべく私の降伏勧告など聞かない可能性があるとだけ言わせて欲しい。」

「相分かった。降伏勧告を受け入れない場合は我々が手を下すのは許して欲しい。」

「無論だ。それは軍人であるが故の宿命だからな。」

 

日本への協力姿勢を示しつつも、それが実るか分からずに気を落とすベトウィンが水機団隊員に連れられて去ると、牧は大きな溜息を吐いて緊張を和らげる。

 

「素直に話の分かるやつで一先ず安心した。」

「降伏した事自体が話の通じる人だって証拠ですよ。」

「それもそうだな。山本、「LST-4001 おおすみ」に捕虜移送の連絡をしてくれ。」

 

副官と少しばかり会話し、通信中隊に属する山本直己(なおき)三等陸尉に沖合に停泊した「おおすみ」への連絡を命じた牧は、懐から取り出した煙草にライターで火をつける。

 

「戦闘中もそこに煙草入れてたんですか?」

「あぁ、万が一の弾除けになるかもしれないからな。ここで煙草を吸っていいかは知らんが、禁煙スペースなんて設けられてないから良いだろう。」

「駐屯地でろくに吸えない腹いせですか?」

「かもな」

「第一中隊中隊長 谷川です。失礼します。」

 

牧と副官が煙草に関して話していると、第一中隊中隊長の谷川佑朋(ゆうと)一等陸尉が天幕内へ入ってくる。朱雀戦争で朱雀列島を占領した部隊を率いるユラージを捕まえた功績から昇級し、水機団の1個中隊を率いる中隊長へ就任した彼は、水機団として初陣となったバリア島の戦いでも自ら20式小銃を撃って、複数のティアンワ兵を倒す戦果を上げていた。

 

「「LST-4002 しもきた」からラール海岸に降ろされている最中の第8施設大隊の先遣隊と合同で、基地建設予定地へ向かう際に通る予定の道路と橋を確認していたのですが、既存の道路と橋では一部の施設科機材や載せた車両が通れないのが確認されました。

施設科で道路の改修を行うとの事ですが、基地建設予定地の近くまでに水路が通じているので、92式浮橋のフロートを使って現状の道路を通れない施設科機材を運ぼうとしているそうで、フロートを運ぶ手段としてAAV7を使えないか打診されました。」

「道が貧弱だったのか。大型の機材を運べないのは、基地建設に支障を来たす。明後日には第43普通科連隊や東和陸軍の部隊が到着するから、早急に手を打たなければならん。戦闘上陸大隊にはこっちから話を通そう。」

 

占領したバリア島の地形確認に赴いていた谷川の報告に、牧は速やかに対処する必要に迫られた。

バリア島に設けられる基地には補給や医務拠点だけでなく、陸自のヘリコプターや東和空軍の航空隊が展開する飛行場も設けられる予定であり、基地建設の遅れはティアンワに対する本格的な上陸作戦に支障を来たすのが必然だった。加えて数日後には陸自と東和陸軍の主力部隊も到着する事から、基地建設の遅れはその後の戦局にも影響しかねないのを理解していた。

 

「ありがとうございます。それと東和軍に関してですが、徴用した貨物船で運ばれた第2工作連隊第805大隊の機材積み下ろしが完了しました。」

「確かデリック(船のクレーン)で降ろした機材を上陸艇に載せて、ラール海岸に運んでいたんだな。ノル港(東側の港)は爆撃で壊してしまったから、何だか申し訳ないな。」

「それに関してですが、港横のイタロ海岸に水上機母艦が運んできた仮設埠頭とやらが降ろされ、組み立てられているそうです。」

「流石近年まで上陸作戦をやってた国家だ。必要な物が分かっているし、兵士も手慣れている様だ。」

 

陸自部隊がバリア島の掌握と施設大隊の上陸と同じタイミングで、東和軍の上陸も行われていた。第8施設大隊を降ろす「しもきた」の右には東和海軍が徴用した貨客船「大濃丸(おおのまる)」が停泊し、工作連隊の1個大隊の人員と機材・持ち込んだ資材を特型上陸艇*1のピストン輸送で運んでいた。島の反対側ではF-35JB(ライトニングⅡ)の爆撃で破壊されたノル港の代わりとして、南のイタロ海岸には高牧級水上機母艦*2高牧(たかまき)」・「正津(しょうづ)」で分割して運ばれた仮設埠頭が大型飛行艇すら吊り上げられるクレーンで降ろされ、専用の教育を受けた工兵によって素早く組み上げられていた。短時間で埠頭が出来上がる光景は警備を担う水機団隊員や、見学に訪れた施設隊員を大いに感心させた。

 

「日本は東和から上陸作戦に対するノウハウを受けたいものですね。」

「全くだ。やむを得ないとは言え、人員と整備の両面であまりにも不慣れすぎる。」

 

宣言通り戦闘上陸大隊に素早く話を通した牧の努力によって、大型ドーザや掩体掘削機・バケットローダを載せた92式浮橋のフロートによる水上輸送にAAV7が投入された。

水路を施設科機材を載せたフロートが行き来する見慣れない光景が繰り広げられた間にも、中型ドーザと資材運搬車を載せた73式中型トラック(1 1/2tトラック)や、人員を載せた73式大型トラック(3 1/2tトラック)、第805大隊の車両は既存の道路を通じて基地建設予定地への移動を始め、既存の橋に関しては74式特大型トラックで運ばれたパネル橋MGBが横に敷設して乗り切った。また、道路の整備はグレーダー・ロードローラー・道路障害作業車・散水車によって始まり、昼夜を問わない工事で整地と排水を施した後に94式水際機雷敷設車向けに作られた道路マットが敷かれた。パネル橋も07式機動支援橋へ切り替わり、建設予定地へ至る道路は僅か数日で重量級の機材を載せた中型セミトレーラも通れる道へ変貌した。

 

道路の整備には東和軍への自衛隊装備導入の一貫として、先行輸入された小型ショベルドーザこと七十二式ショベルカー 2両が使用され、小回りや操縦性の良さと優れた汎用性は第805大隊の工兵の目を引いた。

また、第805大隊が運び込んだ機材の中には資材運搬車こと七十二式装軌運搬車や大型ドーザこと七十二式大型ドーザ・中型ドーザこと七二式中型ドーザが含まれており、使えるかどうかの確認が工兵連隊の実戦で行われる事になった。

 

迅速な道路整備と水路での輸送によって、陸自の施設科隊員と東和陸軍の工兵、双方の工作機材は予定スケジュールの25日には時前線基地の建設予定地へ運び込まれた。

 

同日にはバリア島の治安維持を担う第8師団第43普通科連隊を載せた高速マリン・トランスポートの「フェリーくるしま」と「はくおう」、東和陸軍第10師団第14歩兵連隊第168大隊を載せた大秋級揚陸艦*3早紀派(さきは)」が沖合に到着した。

「早紀派」は船体中央から後部にかけて設けられたウェルドック内で特型上陸艇に人員と車両・火砲を積み込み、ポンプでの注水を経て船尾のハッチから発進した上陸艇によってラール海岸へ運んでいたが、元々カーフェリーだった日本の方が2隻は埠頭にタラップを下ろす設備しか持たなかった。そこで海上輸送群第2海上輸送隊のにほんばれ型輸送艦「LCU-4151 にほんばれ」と「LCU-4152 あまつそら」・「LCU-4153 おおぞら」の3隻が中継ぎ役として、2隻のタラップから受け取った人員や車両、物資をラール海岸へと運ぶピストン輸送を行った。

 

専守防衛故にビーチング能力を持つ船が少ない自衛隊を象徴する光景であったが、仮設埠頭を持ち込んだ東和に劣っていたのが問題視され、カーフェリーやRORO船でも上陸作戦を可能にする桟橋の開発が急務事項に浮上した。

 

日東で上陸工程に差こそあれど、島内に駐屯して前線基地の警備や原住民の保護を行う第43普通科連隊と第168大隊の到着と展開を持ってして、前線基地の建設は始められた。

 

陸自のバケットローダとパワーショベル(掩体掘削機) 6両ずつが切り出したマハル山の土は、7両の資材運搬車と8両の特大型ダンプ・4両の七十二式装軌運搬車で基地建設予定地へ運ばれ、降ろされた土は7両の75式ドーザと6両の大型ドーザ・8両の中型ドーザ・3両ずつの七十二式大型ドーザ・七十二式中型ドーザで均されて整地された。その間にも第805大隊が持ち込んだ2両の六十七式伐開機が自慢の衝角でマングローブを切り倒し、工兵によって木材へ加工された後に司令部や格納庫、倉庫へと作り替えられた。

 

日東合同による基地建設は放棄された油椰子(あぶらやし)のプランテーションに作られており、島民の立ち退きこそなかったものの、初めて目にした大型機材が動き回る様子を見ようと島民は日夜殺到していた。

殺到した人々の中には熱帯雨林へ逃げ込んだライネン中隊ことバリア島守備隊第1中隊の残兵も紛れ込んでおり、バリア島を大胆に穢す存在を追い出す意思を強める事となった。

 

 

「諸君、一大事だ。本日の零時丁度に日東のバリア島上陸作戦が始まり、夜明け前に島が占拠されたそうだ。」

 

バリア島の占領報告は対岸のパータを通じて、2月23日中にジャラカの軍部に伝えられた。最前線として海岸線に沿った塹壕と砲台が構築され、精鋭部隊の増強まで行われたにも関わらず、日が昇らない内に島が占領された結果は軍部をどよめかせ、それまでの防衛方針を大きく転向せざる終えなかった。

 

バリア島占領の驚きは国王にも報告されると同時に、外務部を経由してヴィジランドの観戦武官にも伝えられる。観戦武官の割り当てをしつつ、戦局を予想していた面々は圧倒的な技術差からバリア島の失陥を予想出来てはいたが、半日足らずで東西南北それぞれが60kmになる島を落とすとは誰も想定していなかった。

 

観戦武官一同がどよめく中、外務部から送られた資料を纏め終えたスイシャルは、資料の紙束をフレイズへ手渡す。バリア島占領を伝えたフレイズは渡された紙束に目を通し、バリア島からパータへ辛うじて逃げ延びた守備隊兵士や、パータ守備隊から報告された日東の情報を頭へ入れていく。突然の奇襲と一方的な攻撃による混乱によって支離滅裂な内容も含まれているが、そこに紛れ込んだ貴重な情報をフレイズは脳内で抜き出していく。

 

「まずはパータを砲撃した東和海軍の超弩級戦艦と駆逐艦に関してだ。戦艦の主砲は連装だと言うから、スワンカに現れた艦と同型だろう。駆逐艦に関しては連装砲を複数備えているとの報告から、かなり大型だと思われるそうだ。」

「駆逐艦で連装砲とは厄介な。純粋な砲撃戦ならば嚮導艦でもどうなるか。」

 

東和海軍艦艇の説明に海軍から送られた唯一の観戦武官である司令部直属参謀官 ガーツ・ローライズ大尉が反応する。海軍を指揮する司令部の参謀を務め、ヴィジランド海軍の最新鋭駆逐艦の全体像から武装までもいち早く知っていたが故に、東和海軍の駆逐艦がどれ程の存在かを嫌でも実感させられた。

 

「それに連装砲を積める大型艦ならば大口径の魚雷を積む可能性も大いにある。海軍を動かす以上、どれ程の相手かを知らなければならん。より詳細な情報を出来る限り集めて欲しい。」

「承知した。日本の海軍に関する情報も手に入ったら送ろう。それと貴方が望んでいたティアンワ海軍第1艦隊に随伴する話はすんなり纏まりそうだ。」

「感謝します。」

 

東和海軍に関する情報の収集と、望んでいたティアンワ海軍艦隊への同行が認められたガーツが感謝の意を述べる。フレイズは話を進めるべく資料の紙束を捲る。

 

「ここからは日本に関すると思われる情報だ。情報の量からして、この戦いは日本主体で行われたと思われる。

バリア島への攻撃は砲台と守備艦隊が停泊していた港に、真っ先に行われた事がパータ守備隊から確認されている。守備隊からは港が爆発した直後に、空に流星らしき何かが飛んでいたとも報告されている。この表現からして、ミサイルではなく()()()()()()()で攻撃したと判断して良いだろう。」

「やはりジェット機を使っていたのですか。()()()()()()かで、どれ程の技術力かを判断出来ますが、そこまでの情報はありませんよね?」

 

航空機の話に反応したのは空軍が送り込んだ唯一の観戦武官 サーラ・ベラネット准佐で、技術力の塊である航空機の姿を暴くべくフレイズに詳細な情報を求めた。

 

「ティアンワに航空戦力は無いからな。夜だった事も相まって、識別なんて以ての外だろう。」

「やはり郊外にあるヘンレル飛行場が国内唯一の飛行場な国ですから、難しいですね。可能であれば首都上空にでも飛来して欲しいです。」

「いっそのこと不時着でもしてくれれば実物の調査が出来るが、調べる前に攻撃されて壊されそうだ。一先ず首都から情報を集めるのが最善か?」

「悔しいですがそうですね。女ですから書類作業とかお茶汲みとかやりますよ。」

「典型的な男尊女卑をやる堅物はいないさ。それにティアンワにも女性軍人がいるそうだから、安心してくれ。」

 

航空機の概念こそ知っていれど、実物を持たないティアンワの国民から詳細を得るのを断念したサーラはジャラカに留まる事を余儀なくされた。性別が故に雑用を押し付けられるのを揶揄するも、フレイズはティアンワの変化も交えて返す。

 

「次は日本の陸軍に関してだ。上陸した部隊は動く鉄箱を引き連れていたそうだ。状況からして水陸両用の装甲戦闘車両の可能性が高い。」

「そうでしょう。車種を認識出来る情報が欲しいですな。」

「同感です。戦車と歩兵戦闘車なら戦い方の軸が変わりますから」

 

陸軍が送った観戦武官のホルゼス・シャークロー中佐と、ライブ・マリキス少佐は日本が運用するAAV7(水陸両用の装甲戦闘車両)の詳細を求めた。

機械化に関する知識が深い2人は一括りにされている装甲戦闘車両でも、戦車や歩兵戦闘車・自走砲と言った車種によって戦い方が分かれるのを認識しており、車種が日本の上陸戦を知る為には必要不可欠な要素だと判断していた。

 

「もし本土へ上陸してきた場合は間違いなく戦車やら自走砲が来るでしょう。ティアンワ陸軍は上陸予想地点に師団を派遣すると聞いているので、それに同伴すれば確認出来るでしょう。」

「それが無難だな。因みに上陸予想地点は何処だ?」

「バリア島対岸のパータが最有力候補だが、北方のスワンカも充分あり得るとしている。現にティアンワ陸軍はスワンカにも第1師団と第8旅団を増援として送るそうだ。」

「ティアンワ陸軍最精鋭の第1師団をスワンカへとは思い切った事を。」

「スワンカはジャラカに近い。スワンカが落とされると首都防衛にすら支障が出るとの判断だろう。パータ方面にはどの部隊が送られる?」

「第3師団と第5旅団が送られる。第2師団と第7旅団はジャラカの、第4師団はパランドンの、第6旅団はスラバァの防衛につく計画だと聞いている。」

 

2人は出撃部隊への同行を求めるついでに、ティアンワ陸軍の配置を確認する。上陸予想地点に1個師団と1個旅団をそれぞれ送り、その他の視察と旅団で重要度の高い都市を護る体制は無難と言って過言では無いが、ティアンワに出来る最大限の選択肢であった。

 

「残りの情報も話しておこう。日本軍が使う銃は素早い連射が出来ると何人も証言しており、恐らく主力火器はアサルトライフルと判断出来る。」

「ローリアやボルトンが配備を進めているアサルトライフルですか。早く我が軍にも配備して欲しいもんです。」

「開発局が()()()()()に作っている。間もなく配備されるだろう。あぁ、そうだ。日本は攻撃ヘリとティルトローター機と思われるヘリコプターを運用しているのが確認された。」

「それを早く言ってください。ヘリは陸上部隊に随伴する可能性が高いので、ホルゼス中佐とライブ少佐はそっちに関する調査もお願いします。」

「承知した。既にスワンカへ向かったロイズにも伝えよう。」

 

ライブ少佐がアサルトライフルを羨ましがり、サーラが忘れ去られたヘリの報告にツッコむ。フレイズがライブに補足を入れ、サーラを窘める中、この会議で一言も話していないカーラ・スパンナ准尉に目を向ける。

 

「カーラ准尉も安心してくれ。補給部隊にも同行の話は通してある。」

「あ、ありがとうございます。」

 

熱を帯びて話し合う面々に怖気づいたのか、一言も話せなかったカーラは、フレイズの配慮に感謝を述べた。ヴィジランドの観戦武官らは一人一人が与えられた役目を果たすべく、何処に展開する部隊に同伴するかを真剣に語り合う。

 

会議で決まった内容は翌日には各部隊へ伝達され、数日後にはフレイズやサーラら以外の全員はそれぞれの部隊への同伴へジャラカを出発した。同日には日東の上陸が予想されるスワンカとパータに向けて陸軍部隊が出発する。

 

ティアンワと日東の正面激突は間近に迫っていた。

*1
特型上陸艇

島国である東和は諸外国への進出の際には小型艇が不可欠な存在になっていたが,兵士の乗り降りにはかなりの手間と時間がかかる上にBMPで港湾設備を持たない臨海部への上陸が頻繁すると想定された為に,兵士や火砲・車両の乗り降りを迅速に行える上陸艇として横灘浜海軍工廠で開発された。

単胴の艇体には70名近い兵士や五十七式戦車を載せる事ができ,艇首は二段階に分けて前側に倒れて開く事で上陸時に使う道板として使う事が出来る。

艇首の船底は海岸に安定した着底と容易な離岸を出来る様にすべくW字型になっており,その後ろは平面になっている。船体後部には小型の錨と揚錨機が搭載されており,着岸の際に投げ入れられた錨を揚錨機で巻き上げる反動を使って容易に離岸出来る様になっている。

小柄ながら様々な車両や火砲を積む事が出来る汎用性を持っていた事から揚陸艦以外の艦艇にも内火艇として搭載された。また艇体後部に積まれた発動機を灯油で動かせる石油エンジンに変えた民間型が国内各地の造船所から販売されている。

スペック

排水量:10.3t

全長:15.3m

全幅:3.7m

機関:YN-104型直6空冷ディーゼルエンジン 1基

出力:130馬力

速度:9.4ノット

乗員:2+70名

*2
高牧級水上機母艦

爆撃機が運用可能な飛行場を造れない島々でも周辺海域の哨戒や遭難者救助・輸送を行う為に開発された六十四式飛行艇は,長い航続距離や乗員数を確保すべく大型化した事で配備地次第では現地での修理が困難になると予測されたので,同機に本格的な整備や修理と燃料・弾薬の補給を行える移動拠点として機能出来る水上機母艦として建造された。

大秋級をベースに大型化した船体の後部に六十四式を載せられるスペースが設けられており,艦尾に配置された大型クレーンで載せる事が出来る。船体に載せた状態で整備や補給を行えたが,その状態では航行出来ない為に停泊した状態で行われた。飛行艇を載せない場合は六十五式水上偵察機や大型物資を載せる事ができ,艦尾に発艦用の旋回式蒸気式カタパルト 2基を取り付ける事が出来る。

船体中央両舷には水上機の搭載や部品・物資の積み込みを行うクレーンが1基ずつ設置され,艦内には航空燃料や整備部品・機銃弾・爆弾等を搭載出来る。

高い水上機・飛行艇運用能力を有している上に燃費の良いディーゼルエンジンを主機とした高速水上機母艦でありながら,クレーンを用いて大型物資を輸送可能な高速輸送艦や機動部隊に随伴して航空機修復を行える航空機修復艦としても使える汎用性から多くの艦が建造された。

スペック

排水量:15600t

全長:200.8m

全幅:23.7m

吃水:7.9m

機関:YN-17E型ディーゼルエンジン 8基

出力:51000馬力

速度:28.4ノット

武装:13.4cm三連装速射砲 2基

   13.4cm連装速射砲 2基

   43mm3連装機銃 8基

艦載機:六十五式水上偵察機 16機

航空装備:NS-7型蒸気式カタパルト 2基

レーダー:六十一式対空レーダー

乗員:812名

*3
大秋級揚陸艦

BMPで上陸作戦を実施した際に貨物船改造の揚陸艦では部隊の揚陸に時間がかかり、その間に攻撃を受けて被害が出た事例が複数あった為に迅速な揚陸が可能な揚陸艦として建造された。

150m越えの船体には兵員居住区や食糧庫・武器庫等で構成された上部構造物が載っており、船内中央から後部にかけて車両格納庫とウェルドックを設けている。

ウェルドックは車両格納庫と繋がっている為に兵員や車両・火砲を素早く上陸艇に乗せられ、ポンプによって注水された後に船尾のハッチから発進出来る。船体両舷には故障した上陸艇や装甲艇の吊り上げや物資の積み込みを行うクレーンが装備されている。

武装は少ない上に装甲は無いが、優れた輸送・上陸能力が陸軍から好評で受け入れられた為に多数の艦が建造・配備されている。また当級の船体は拡張性に富んだスペースを持っていた事から、水上機母艦や潜水母艦・工作艦・補給艦の船体に流用された。

スペック

排水量:10600t

全長:173.2m

全幅:26.7m

吃水:4.9m

主機:神原C-97Fb型蒸気タービン 2基

ボイラー:六十一式重油ボイラー 4基

出力:9700馬力

速度:21.4ノット

武装:13.4cm三連装高角砲 2基

   13.4cm連装高角砲 2基

   43mm3連装機銃 9基

搭載艇:特型上陸艇 36隻

    S型装甲艇 3隻

レーダー:六十一式対空レーダー 1基

乗員:710名+1700名




・山本直己、谷川佑朋
両者は前作で登場した水機団隊員で、今作での再登場に合わせてフルネームを設定しました。
山本は同姓同名のホンダのレーシングドライバーから名前を取りました。

・七二式ショベルカーら東和軍へ導入された自衛隊装備
Episode50で提示された“日本製兵器の輸入計画”の第一陣として、各種トラックと施設科機材・小火器が輸出された。輸出された装備品は新型兵器や車両の試験を行う第0師団に配備され、派遣された自衛隊員による教員への講習が行われていたが、ティアンワとの戦争勃発で実戦試験を行うべく人員含めて第10師団に派遣された。

・フェリーくるしま
転移当日に航路が廃止となり、海外への移譲も出来なくなった為に暫く係留されていたが、高速マリン・トランスポート所属に売却されて、東和へのODAで派遣する人員や車両を運ぶ船として日本救援船団に加わった後に、自衛隊向けの輸送船として函館どつくで改造された。
また「はくおう」と「ナッチャンWorld」の契約終了となり、2隻の代替船として日本海フェリーの「はまなす」が使われる計画だったが、同船が日東間の航路に使われている為に2隻とも契約延長となった。

・にほんばれ型揚陸艦
現実では1番艦だけが就役し、2・3番艦が進水済みの状態だが、今作ではシ連と中国が朱雀列島・尖閣諸島・沖縄列島に侵攻・占領された場合に、迅速に部隊を輸送する手段として重要視された為に就役が早まっている。

2024年が舞台の前作では存在すら無かったですが、執筆した2020年には一切話が無かったので許してください。
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