New world note in Earth   作:YUKANE

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先日の衆議院選挙での自民党大勝に満足してます。作者は“自民党だけが日本を任せられる”と考えてるので、日本が良くなっていくのを願っています。
今作では今回の衆院選だけでなく、昨年7月の参院選も行われているのでしょうか? 転移への対応が最優先されている上に、国難突破の為に与野党が協力体制を敷いているので参院選は延期、衆院選に至っては開催の話すら無いかもしれません。

今回は第2空挺連隊の戦いを東和とティアンワ側から描きます。紺色作戦は次回から本格突入です。


Episode.64 空挺部隊の降り立ち

ティアンワへの本格的な上陸作戦 紺色作戦の実行日は3月12日と決まり、バリア島へ結集した日米東の3軍は作戦に向けて入念な行動手順の確認や、ティアンワ軍の拠点と武装の共有、物資の蓄積を行っていた。

 

だが、パータへ上陸する東和陸軍第10師団の実質的な先遣隊を任された第2空挺連隊だけは、一足先に動き出そうとしていた。

作戦会議から6日が経過した3月3日の夜更け。第14航空師団第432飛行隊の六十五式輸送機 8機がテッラ基地を飛び立ち、左翼の赤灯と右翼の緑灯をチカチカと光らせながら、ジャドリンド島に向けて編隊を組んで飛んでいた。

 

「そろそろテンバレ山脈を越える! パラシュートの最終確認を怠るな!! 自らの命を預けるんだ!!」

 

第2空挺連隊連隊長の藤神京珂大佐は四隅が丸まった四角形の窓から降下の目印としたテンバレ山脈の山頂を視認し、真っ暗な機内にいる部下へ間もなくの降下を知らせつつ、それに向けてパラシュートの最終確認を命じた。

空挺部隊にとって降下時に開くパラシュートは命綱に等しく、万が一パラシュートが開かなければ死を意味する。藤神としても華々しい戦の前に部下を失うのは心許ないだけでなく、部下達の家族や親御さんを悲しませない為にも練習時からパラシュートの点検を心掛けていた。

空挺連隊としても久々の実戦。今回が初陣の隊員も多い。だからこそ、いつもより強い口調で促した。それは常日頃言われ続けた部下達も重々承知しており、実戦に逸る気持ちを抑えながらいつも通りの点検を行った。

 

「藤神連隊長! 山脈を越えました! これより高度1219m(4000ft)へ降下します!!」

「了解した!! 総員起立! 降下準備に移れ!!

 

パラシュート点検が終わったタイミングで機長が機体の降下を大声で宣告する。それは空挺降下が間近に迫っている証明であり、藤神は到達次第降下出来るように部下を立たせた。

 

国産の民間旅客機をベースにした双発輸送機は夜の帳の中で静かに高度を落として行く。インテグラルタンクの主翼が風切音を鳴らし、2基のGL-82C 空冷星型14気筒エンジンが1200馬力の咆哮を響かせる。最大乗員数の11名を載せた重い輸送機の編隊は、着々と降下高度へと近づく。

 

「4000ft到達しました!!」

「よし! 扉開け!! 降下開始!!」

 

機長の宣告を聞いた藤神によって機体側面の内開きの扉が開かれる。3月初旬と言う時期と高度が相まった冷たいながらも、熱帯で湿度の高いティアンワの空気が勢い良く機内へ流れ込む。機内で立っていた隊員は全身で強風を受ける羽目になったが、隊員らは怯むどころか降下の前触れとして熱り立っていた。

藤神が大声で合図を発したのを皮切りに、隊員達は次々と開かれた扉からティアンワの空へ飛び立っていく。10名の部下が飛び降りたのを確認した藤神は、ここまで運んでくれた機長に別れを告げて、殿として戦場へ踏み出した。

 

闇夜へ身を投げ出した途端、強烈な冷たい風圧が全身を包む。風切音が鼓膜を刺激し続ける中、藤神は長らく暗闇にいた為に夜に慣れた視界で眼下に広がるティアンワの大地と、そこへ8機の輸送機から降りて向かいつつある名の部下達を視認していた。

最初に降下した面々から段階的に背中のパラシュートが開かれ、重力任せから大気と人力を組み合わせた降下へ移行する。

藤神も肩に垂れ下がった紐を引いて、折り畳まれていた半円型の布を解き放った。第0師団では陸自から譲渡された空挺傘696MI(12傘)の実用試験が行われていると聞いており、絶賛使用中の東和製とは使い勝手が違うのか考えつつも、長年の訓練で染み付いた手解きで安全な着地点へゆっくり移動していく。

 

大気で孕んだパラシュートによって減速しながら着実に降下を続けた藤神は、滑りながら着地した。完全に止まると素早く立ち上がって、パラシュートを手際良く畳んでいく。パラシュートを畳み終えた頃には付近に着地した部下達が彼の元へ合流しつつあった。

 

「全員無事に降りれたか!」

「現時点では事故の報告は入っておりません!!」

「空自輸送機ならびに滑空機(グライダー)来ました!」

「来たか!! 一気に2機も牽引出来るとは、空自の輸送機は化け物だ!!」

 

部下から報告を受けていた藤神が顔を上げると、同じくテッラ基地を離陸した航空自衛隊航空支援集団第1輸送航空隊第401飛行隊のC-130H(ハーク) 4機が編隊を組んで上空へ現れた。正式採用は半世紀も前ながら枯れた技術が故の高い運用性で日本だけでなく数多くの西側諸国で運用される傑作機だが、藤神ら空挺連隊の隊員は主翼に繋がれた存在に視線を向けていた。

 

アルミニウム合金製の四角い胴体に同じくアルミ合金の骨組みに合板を貼り付けた主翼を高く配置し、主翼から後ろへ平行して伸びた全木製の双側胴には2枚の垂直尾翼が生えた姿は、形こそ異質ながら航空機の類だと示す。しかしながら、機体の何処にも動力源を持たない姿は、この機体が滑空機(グライダー)だと知らしめる。

空挺部隊へ車両や火砲を隠密に運ぶ機体として開発された七式輸送滑空機*1は、初陣にして求められた真価を発揮しようとした。

 

開発時に曳航機として想定された六十八式爆撃機や六十一式爆撃機は出力の問題から1機しか運べなかったが、4500馬力を発揮するT56-A-15 ターボプロップエンジンを4基積んだC-130Hならば、空荷時であれば物資を満載した滑空機2機を曳航出来る事が判明した。

岐阜基地の飛行開発実験団の手で主翼の増槽用ハードポイントに牽引フックが1つずつ設けられ、日東合同の運用試験中にティアンワ戦が勃発した事で当該機は日本本土とバリア基地間のピストン輸送へ駆り出された。加えて第2空挺連隊の投入に伴う七式滑空機の実戦投入も決まった事で、急遽牽引フックが他の機体にも装備された。

 

日東の協調っぷりを具現化した装備の使用機会は直ぐに現れ、第2空挺連隊に随伴した4機は各2機ずつ計8機の七式滑空機を曳航していた。これまでは1機ずつしか牽引出来ない為に、2倍の数を軽々引っ張れるC-130Hの存在は空挺連隊にとって非常に頼もしく感じれた。

 

藤神らの眼前で七式滑空機とC-130Hを繋ぐ紐がフックから外れ、空中へ放り出された滑空機は2名のパイロットによって自然の力を身に纏って降下していく。パイロットは風向きに合わせて主翼のフラップと並んだ垂直尾翼の方向舵を小刻みに動かし、安定しながら降り続けられる航路を選択していく。

 

ティアンワの風を味方につけた七式滑空機はティアンワの大地へ滑り降りた。機体にはスキー板の着陸脚越しに大きな衝撃がかかり、熱帯の苔むした地面はスキー板に沿って細長く抉れる。

地面を抉りながら減速した七式滑空機は密林の中で停まる。簡易的な構造の機体は着地の衝撃で外板だけでなくフレームも歪み、再び空へ飛び立つ事は出来なくなったがそもそも使い捨ての運用思想だった為に問題無いどころか、設計通りの働きをしていた。

 

断続的に降下した8機の七式滑空機は無事故で着地を終え、停機した機体へ藤神ら空挺連隊の隊員が寄っていく。アルミ合金の外板に歪みが見える胴体だったが、内部に積まれた積載物には一切の被害が無く、巧みな連携で積まれた銃火器や火砲とその弾薬一式、医療物資、携帯食糧品を降ろしていく。その中には2両纏めて運ばれた六十二式軽戦車も含まれ、空挺連隊に貴重な装甲戦力を供給した。

 

朝日が登る頃には滑空機の物資は全て降ろされ、役目を終えた機体は運んで来た六十二式四十四粍対戦車砲の44mm砲弾を用いて爆破処分された。

 

「連隊の集合完了しました。」

「物資の荷降ろしも完了しました。直ぐに出撃出来る状態にあります。」

「正に丁度いいタイミングだ。我々はこれから南東のアムネ砦の占領へ向かう。シーリアやフィルラントで実践した密林踏破を思い出せ!!」

 

連隊の集合と物資の集積をほぼ同時に終えたと確認した藤神は、目標として事前に定められたアムネ砦へ進軍を始める。日本が撮影した航空写真とバリア島で拿捕した地図を元に第2空挺連隊は熱帯雨林の密林を進んでいく。道なき道を軽戦車や対戦車砲と共に進む隊員だったが、彼らは同盟国の地で訓練した経験を思い出しながら難なく進んでいく。

 

密林を一時間に渡って行軍した第2空挺連隊は赤茶色の毛を纏うオランウータンや、黒と黄色と白の鮮やかな羽毛に包んだ極楽鳥(チェンドラワシ)を物珍しく見ながら、目的地のアムネ砦付近へ到着した。

密林の丘を切り拓いて築かれたアムネ砦はパータへ向かう街道を一望出来る視界を持ち、ティアンワ陸軍師団のパータ到着を妨害する拠点としてはうってつけだった。

 

藤神が手の形を変えながら不規則的に動かす。空挺連隊内で共有されるサインによって、連隊は砦を囲う様に布陣する。今回は襲撃を悟られないべく通信手段を遮断するのが最優先であり、砦で最も高い構造物でもある木造の電波塔が第一の目標として定められた。

一人の空挺隊員が腰のベルトに付けられた六十四式手榴弾*2を取り出し、棒線型の安全栓を抜いて電波塔の土台に向けて投げ込んだ。地面を転がった黒い鉄製の円筒は想定通り、電波塔の根元で起爆した。外面につけられた筋目によって形成された破片は砦に駐輪する兵に回避不能な傷を負わせたが、爆発によって柱の1本を砕かれた木造の電波塔は不快な軋み音を上げながら倒れていく。

 

いきなり爆発し、電波塔が倒れた事に駐屯兵は何が起きたのか分からずに混沌へ陥るが、弧を描いて飛翔した迫撃砲弾がダメ押しの如く砦へ降り注いだ。

空挺連隊向けに小型軽量で分解可能な六十八式軽迫撃砲*3 8門は、歩兵連隊で使われる六十七式迫撃砲と同じ84mm迫撃砲弾をアムネ砦の全域へ撃ち込む。徹底的な軽量化によって発射には砲弾の挿入だけでなく砲身後部のピンを叩く必要があり、木槌や銃底・はたまた足で叩く手間こそ必要だったが、8門の迫撃砲による砲撃は砦と駐屯兵に確実な打撃を与えていた。

 

駐屯兵は恐怖と混乱によって指揮系統を完全に喪失し、アムネ砦は組織的な抵抗を失った。藤神はトドメを刺すべく、全部隊へ突入の指示を出した。

A-22型 直6空冷ディーゼルエンジンを全開に回した六十二式軽戦車の突撃で砦の木柵は薙ぎ倒され、開いた空間から空挺連隊の隊員が砦内へ雪崩込んだ。隊員らは主力火器の六十六式短機関銃*4や六十六式銃剣をつけた七式小銃、六十七式軽機関銃を素早く撃ち込み、混乱の最中にいる駐屯兵に反撃の余地を与えずに次々と射抜いていく。

 

唐突に齎された混乱の最中に起きた銃撃の雨に対抗出来る筈もなく、守備隊は呆気なく瓦解していく。

守備隊を事実的に壊滅させた空挺連隊は砦内の制圧を順調に進め、建物内にいた等の理由で辛うじて生き残っていた守備隊の兵を拘束していった。拘束された兵の中には砦の司令官もおり、アムネ砦は第2空挺連隊によって正真正銘制圧された。

 

ティアンワ側に制圧を悟られないべく、自ら破壊した有線通信を最優先で復旧した上で偽装連絡を送り、平穏を装った。その間にもインドネシア語(ティアンワ語)を学んだ隊員と鹵獲された暗号表を用いて、盗聴したティアンワ側の無線解読が進められた。

 

それによってティアンワ陸軍第3師団がアムネ砦横を通過する日程が判明し、藤神ら幹部を中心にして空軍も巻き込んだ奇襲計画が立てられた。ただ、空挺連隊の動向は曖昧ながらもティアンワ側へ伝えられたのを知る由もない。

 

 

ヴィジランド陸軍装甲教育師団第7連隊連隊長のホルゼス・シャークロー中佐は、観戦武官としてパータへ進出する第3師団へ付随していた。

歩兵は徒歩で行進し、野砲と砲弾が駄馬や驢馬(ロバ)、牛といった駄獣で運ばれる進軍光景は時代遅れであったが、装甲師団への教育で戦車や装甲車を見慣れた彼は物珍しさの目線で眺めていた。食事は兵士と同じ物を取り、ロントンと言う米をバナナの葉に包んで蒸した(ちまき)や、バクソと呼ばれる牛肉のすり身で作られたミートボールが入ったスープと言った母国では味わえない食事を堪能していた。

 

非日常を味わいながらティアンワ陸軍の様子を詳細に記録し続けていたホルゼスだったが、ある日の進軍前に師団司令部へ唐突に呼び出された。ホルゼスは呼び出された理由が分からず、“何かの軍機に触れたのでは無いのか”と不安を抱きながらも連絡兵に連れられて天幕で囲まれた師団司令部へ向かった。

 

「急に呼び出してすまなかった。貴殿を呼んだのは、ヴィジランドの知識が必要な状況が起きてしまったのだ。」

「そう言う事でしたか。状況とやらの詳しい説明を頂けますか?」

 

第3師団を率いる司令官 カンテム・ジッド・ホークゥル中将はホルゼスが折り畳み椅子に着席して早々に急の呼び出しを謝罪しつつ、呼んだ理由を端的に説明した。呼ばれた意図を理解したホルゼスは状況とやらの説明を求めた。

 

「無論だ。つい2日程前にテンバレ山脈の東側で大きさな傘の様な物が落下したのを目撃したと、複数箇所の集落から連絡を受けた。加えて目撃された日に密林を歩く人影や銃撃音、貴国が持っている飛行機に似た空飛ぶ物も確認されている。

日東による侵攻とも考えるが、それだと断定出来る要素が我々には無い。そこで貴方に意見を求める事に致しました。」

「そう言う訳ですか。飛行機に、傘のようなもの───っ!? もしや空挺部隊!?」

 

カンテムから伝令の報告を聞いていたホルゼスは、そこに含まれていた2つの要素が空挺部隊へ結びつけた。

 

「く、空挺部隊とはなんだ?」

「簡単に説明しますと飛行機から敵地へ降りる陸軍部隊です。敵地の奥深くへ侵攻し、交通の要衝や拠点を制圧するのが主な役目です。」

「そんな部隊があるとは···········」

「我がヴィジランドにもありますし、フラスタリアやボルトン、ローリアにユートラジアと言った主要国は大体持っております。

日本は間違いなく運用している以上、今までの情報からして東和も持っている可能性は高いでしょう。」

 

空挺部隊の存在を伝えられたカンテムは冷や汗をかく。厳重な防衛線を空から掻い潜って奥深くへ降り立ち、後ろ側から部隊を脅かす存在に自らが太刀打ち出来る筈がないと理解させられた。

 

「········空挺部隊への対抗手段はあるのか?」

「無難な戦術としては大部隊を送り込んで、数で押し潰すのでしょうか。飛行機を使う以上、降り立てる兵士の少なさと重量のある武器が持てないのが弱点です。

ただ、数が少なかろうとも空挺部隊は全員が精鋭です。油断してかからぬようお気をつけて。」

「なるほどな·········数的不利な以上、密林に逃げ込む筈。ならばこちらも密林行動に長けた部隊を送り込んで、引き摺り出すのが最善───オルガ少佐を呼べ!」

 

ホルゼスから数的優位性を活かすのが最適解だと判断したカンテムは、ある少佐を呼ぶ様に伝令へ指示した。司令部から出た伝令は10分程して、一人の士官を連れて来た。

第3師団第3歩兵連隊第2大隊を率いるオルガ・ガドゥン・バレディン少佐は猟師の家に産まれた為に密林での行動スキルに長けており、陸軍入隊後に勃発した内戦ではその才能を活かして数々の戦果を上げていき、部隊を率いるまでに昇格していった。部隊を持つ様になってからは部下にもそのスキルを教え込み、ティアンワ軍でも密林行動に長けた部隊へと成長させていた。

 

「承知しました。我々とて密林行動に長けた精鋭。戦果無しで負ける気は毛頭ありません。」

「我々も戦闘状態で後続する。目一杯自由にやってくれ!」

 

自らの役目を承ったオルガは、自らの長所を活かして空挺部隊との戦いに挑むと宣言する。第3師団の後援も受けて、約200名のオルガ中隊は出陣した。

 

オルガ中隊はパータへの街道ではなく密林を進軍する。主力小銃のヴァレタ-77小銃とカディファ-77軽機関銃、カディファ-77重機関銃を持ち、イルタ1式手榴弾*5を腰のベルトに引き下げていながら、太い木の根や植物が不規則に蔓延る熱帯雨林を軽々と走破していた。

オルガ中隊の兵士は密林を気をつけて歩きながらも、何処にいるか分からない敵兵に備えて周囲への警戒を強めていた。見えない敵と相対しているかもしれない恐怖の中で進み続けるオルガ中隊だったが、唐突に何かが打ち上がった。東和軍が使用する四十六式信号拳銃*6の信号弾は大きな音を立てて破裂し、周囲にある合図を宣告した。

 

「来るぞ!! しゃがめ!!」

 

オルガが身を屈める様に言った途端、何処からともなく飛んできた44mm砲弾が炸裂した。六十二式四十四粍対戦車砲が撃ち込んだ榴弾は弾の破片を撒き散らして広範囲の兵士に傷を与え、辺り処の悪い兵士には致命傷を与えた。

 

「怯むな!! 反撃しろ!!」

 

オルガは榴弾の炸裂で愛した部下を失いつつも、反撃を指示する。カディファ-77軽機関銃が長い放熱用のアルミ製冷却筒を纏った銃身から放つ7.7mm弾で弾幕を展開し、ヴァレタ-77小銃が砲撃が来た方へ撃ち込む。

カディファ-77軽機関銃の皿型弾倉は、ゼンマイばねと歯車を介するボルトによって螺旋状に入れられた銃弾が装填される度に回転する。ヴァレタ-77小銃は引き金上のボルト操作ハンドルを引いて、複列式の箱型弾倉から7.62mm弾をライフリングが刻まれた銃身へ入れ込む。カディファ-77重機関銃は30kg近い重量と密林故の設置場所の無さに難儀しつつも、引き金を引いて早々に冷却水が入れられた水タンクで覆われた銃身から毎分数百発の連射力で7.7mm弾を撃ち込んだ。

 

オルガ中隊の激しい銃撃に攫われた第2空挺連隊も若干の被害を出しながら六十二式四十四粍対戦車砲を撃ち込み、左開きの半自動式閉鎖機を用いた素早い装填の間にも六十三式重機関銃や軽迫撃砲を撃ち込んでオルガ中隊の進出を妨害した。

 

「かなりの手練だな。師団はまだか!」

「そ、それが師団も攻撃を受けている模様!!」

「なんだと!? 師団すら抑えるとは·······」

 

オルガ中隊を抑える傍らで万単位の師団すらも抑えられる第2空挺連隊に、オルガは想像以上の手練だと認識を改めさせられた。第2空挺連隊は高所の立地と野砲の有無でオルガ中隊に対して優位な状況で戦闘を続けていたが、オルガ中隊の一兵が投げたイルタ1式手榴弾によって戦局が変わった。

 

滑り止めの溝が刻まれた卵型の手榴弾は本体に沿って成形された安全レバーが外された状態で宙を舞い、直線的な撃針で作動した底部のねじ込み式栓の信管が炸薬のバラトールを起爆させる。

シェラックで防水された炸薬は高温多湿な熱帯雨林でも難なく威力を発揮し、マングローブの木が空挺連隊側へ倒れる予想外の結果を齎す。銃弾が幾つも命中した事によるダメージの蓄積こそあれど、第2空挺連隊はいきなりの倒木で若干の混乱に陥った。

オルガ中隊はその隙を逃さず、銃撃を浴びせた。想定外の邪魔と銃撃が重なって、幾許の死傷者を出した第2空挺連隊は六十二式対戦車砲や六十八式軽迫撃砲から煙幕弾を撃ち込んで、視界を奪っている内に逃亡を開始した。白い煙幕に遮られながらも、薄っすらと見える影で敵の撤退を悟ったオルガ中隊からは勝利の歓声が上がる。

 

「敵部隊引いていきます!! やりましたね!!」

「手榴弾1発の反撃で撤退するのは罠にしか見えないが───やるしかない! 全軍追撃!!」

 

オルガ自身は少しの混乱で退却した敵の行動に違和感を抱きつつも、自らの師団を守るべく追撃を命じた。敵を撃退していきり立っている兵士らは雄叫びを上げながら、空挺連隊目掛けて密林を走り出す。

兵士らは密林踏破のスキルを遺憾無く発揮し、kgの小銃やkgの軽機関銃を持っているにも関わらず、枝葉で視界の遮られた熱帯雨林を軽々と駆け抜けていく。雄叫び中隊の密林踏破能力に驚かれた空挺連隊は六十六式短機関銃の連射や六十四式手榴弾の爆発で足止めを図るも、オルガ中隊はそれをものともせずに鬱蒼とした熱帯雨林を突っ走っていく。

 

空挺連隊を追いかける状況に勝利を確信していたオルガ中隊だったが、彼らの視界を覆っていた熱帯雨林が開ける。そこに街道沿いの村々が熱帯雨林を切り拓かれたキャッサバ畑があり、オルガ中隊の姿は丸裸になっていた。

 

「視界が開かれた!? やられた! 全員森林へ引き戻れ!!」

「ちゅ、中隊長!? そ、空に何かが飛んでいます!!」

 

東和の策略にハマって自らを守る密林が失われた事に気づいたオルガは総員に退却を命じるも、東和軍は既にオルガ中隊への集中攻撃を仕掛ける準備を整えていた。

 

オルガ中隊が畑に到達したのとほぼ同時に、空挺連隊の要請を受けてテッラ基地を出撃した東和空軍第14航空師団第18戦闘航空隊第187飛行隊が上空へ飛来した。第10師団の師団飛行隊の五十七式観測機に先導された七式戦闘機 10機は、隠すものを無くしたオルガ中隊へ襲いかかる。

 

先陣をきった5機は機首の六十七式二十一粍機関砲 2基と主翼の六式十三粍機関銃 2基で機銃斉射を始め、21mm弾と13.4mm弾の雨が畑と密林の境に向けて撃ち込む。機銃斉射を食らった兵士は四肢を散らし、内臓を無残に撒き散らして命を落として行く。外れた銃弾も地面を抉り、木々を呆気なく倒して退路を断つ。

立ち往生したオルガ中隊に対して残る5機は緩降下を始め、胴体下部の350kg爆弾を投下し、片翼下に3発ずつ積まれた六十一式対地ロケット弾を撃ち込む。投下された350kg爆弾と発射された対地ロケット弾は肥沃な土壌と植えられたキャッサバを巻き込んで爆発し、多くの兵士に死の先導を与える。

 

「無我夢中で密林に逃げ込め!! 自らの命が惜しかったら、仲間は見捨てろ!!」

 

虚構の優勢から誘い込まれた現実の敗北に直面したオルガ中隊は、辛うじて生き延びたオルガ中隊長の号令で密林へ退却していく。飛行隊は逃げ込む兵士にも機銃での攻撃を続けていたが、視界の遮られた密林に入ると攻撃を諦めて上空へ機首を向ける。

 

第187飛行隊による攻撃は僅か10分にも満たないものだったが、僅かな時間でオルガ中隊に致命的な打撃を与えた結果は第3師団だけでなくティアンワ軍に大きな衝撃を走らせた。この戦闘は航空機による地上攻撃の有効性をティアンワ軍へ思い知らせ、進軍中の各師団と旅団に対して航空機への対策を練らざるを得なかった。

また師団と中隊を同時に抑え込みつつ打撃を与えた第2空挺連隊の精強さも思い知らせる結果となり、それを逃してしまった事実はパータへ進軍する第3師団と第5旅団に後方補給線の遮断と言う耐え難い問題を抱えながら東和の主力軍と戦わざる終えない厳しい戦いを強いらせた。加えて空挺連隊を送り込んだ六十五式輸送機によって、弾薬や食糧・医薬品等の物資を空中投下で補給された事で第2空挺連隊の存在意義は揺るぎなかった。

 

ティアンワ国内に自由自在に動く遊軍を置いた状態で、日米東合同の紺色作戦開始を迎えようとしていた。

*1
七式輸送滑空機

敵国の後方に降下する事が想定された空挺部隊に各種車両や火砲などを運ぶ事が出来る軍用グライダーとして東和軍工廠で製造された。外見モデルはク7。

双胴式を採用した事でアルミニウム合金製の四角い胴体内に六十六式軽戦車 1両を搭載可能な大型の貨物室を確保でき、胴体後部には油圧式の上開き扉と下開き昇降板を備えている。高翼配置された主翼はアルミニウム合金製の骨組みに合板を貼り付けており、主翼から胴体後部へ伸びる双側胴は全木製で作られている。

動力を持たない事から六十八式爆撃機や六十一式爆撃機によって曳航され、降下ポイントで切り離した後に滑空で着陸して人員や火砲・車両・物資といった搭載物資を下ろす運用法が想定された。

動力を持たない為に曳航機の速度や機動性が落ちて撃墜のリスクが高まる上に着陸した機体は殆ど再利用出来ない弱点を持っていたが、各種装備や物資・兵士を纏めて展開出来る上に動力が無い事から静かで降下を察知されにくい利点を持っている。また木材を多用している為にレーダーに写りにくく、木材関係の工場でも製作出来る事から1機あたりのコストパフォーマンスにも優れている。

スペック

全長:20m

全幅:35m

翼面積:112.5㎡

重量:4500kg/12000kg(全装重量)

最高速度:330km/h

乗員:2+40名

積載量:7500kg

*2
六十四式手榴弾

既存の手榴弾は装薬室を取り付ける事で擲弾発射器でも発射出来る様にしていたが、射程が200m程と短かった上に五十七式擲弾発射器で射程距離を長く出来る専用榴弾が開発されて使用頻度が減った為に、手投げ専用の手榴弾として東輝産業で開発された。外見モデルは九七式手榴弾。

四十八式と同じく爆発の際に適切な大きさの破片を生成する為の筋目が本体の外面に入っているが、手投げ専用になった為に本体下部の装薬室は無くされた事で100g程軽くなっている。起爆装置には安全栓を抜くとばねで固定されていた撃鉄が下がって銅製の信管が自動点火する方式が開発された為に使用する際の動作が減らしている。

また擲弾としての使用を想定していない為に遅延時間は数秒短縮されており、相手に投げ返される可能性を減らしている。

手投げ専用になった為に生産性や扱いやすさが格段に改善された手榴弾として、前任を置き換えて主力手榴弾として使用されている。

スペック

全長:10.1cm

重量:484g

遅延時間:4~5秒

*3
六十八式軽迫撃砲

空挺部隊向けに六十七式と砲弾を共有可能で、小型軽量で分解輸送が出来る迫撃砲として浜登工業で開発された。

徹底的な軽量化を行った為に発射方式は前装撃発式が採用されており、発射には砲身後部のピンを何かしらで叩く必要がある。外見モデルは九九式小迫撃砲。

分解すれば2名で運ぶことが出来るほど軽量な上に、六十七式と同じ火力を投射可能な為に想定通り空挺連隊に配備され、輸送機からの空挺降下でも運べる貴重な火力として使用されている。他にも海軍艦艇に自衛装備として搭載されている。

スペック

口径:84mm

砲身長:672.6mm

重量:26.8kg

初速:85m/s

有効射程:710m

*4
六十六式短機関銃

チャルネスで短機関銃を開発中との情報を得た為に、短機関銃が用いられるであろう近接戦闘で互角に戦える短機関銃として木野山工業で製造された。外見モデルは一〇〇式機関短銃。

銃身内の耐久性を向上させる為にクロムメッキが施されており、六十七式軽機関銃や六十八式小銃でも採用されている。銃口の下には六十六式銃剣を装備可能な着剣装置が設けられている。銃弾には拳銃で採用されている8.4mm弾を採用しており、製造や補給の効率化を行っている。

撃発機構には撃針と遊底が一体になったオープンボルト式を採用しており、ボルトの後端にはコイルスプリングを緩衝材として設置している。自動装填機構には遊底の後進速度低減機構を持たないシンプルブローバック式を採用している。

引き金の上にセーフティーレーバーが装備されており、先端を引き金に向ける事でセーフティーがかかり、上に向ける事でバースト射撃モードに、銃口に向ける事でフルオート射撃モードに切り替える事が出来る。

木製銃床を採用している為に製造コストは高いが、銃本体の製造に電気溶接加工を大々的に使用した事で、製造時間の削減に成功している。また引き金左側面上部の金具を回す事で銃身機関部と銃床を分解する事ができ、整備性と携帯性を向上させている。

軽機関銃よりも大幅に軽く、分解も容易だった為に整備性と携帯性に優れており、空挺部隊や特殊部隊といった塹壕や室内等の閉鎖空間での近接戦闘が予想される部隊に主力火器として配備されている。

スペック

口径:8.7mm

銃身長:230mm

装弾数:30発

作動方式:オープンボルト・シンプルブローバック式

全長:900mm

重量:4.3kg

初速:348m/s

有効射程:160m

*5
イルタ1式手榴弾

ヴェレタ-9やカディファ-77と同じくバウラット計画によるティアンワ陸軍の近代化で歩兵が携帯できる手榴弾の導入が求められた為に、ヴィジランド陸軍で長年使われているアンドレムⅡ型手榴弾が供与され、ライセンス生産権を得たイルタ陸軍工廠でも製造された。外見モデルはミルズ型手榴弾。

防水用のシェラックを自国で調達出来た為に高温多湿なティアンワでも難なく使える使い勝手の良さから、歩兵が携帯可能な装備として運用されている。

スペック

全長:9.5cm

重量:765g

遅延時間:4秒

*6
四十六式信号拳銃

航空機でも使用可能な小型の信号拳銃として木野山工業で製造された。外見モデルは十年式信号拳銃。

ダブルアクションで撃発し、中折れ式で装填と排莢を行う単純な構造をしており、生産性や整備性・操作性は非常に優れている。

信号弾には黒や白・赤・黄・緑の5種類が用意されており、金属ケースに収納されて輸送された。

基本的に袋に収容された状態で腰のベルトに取り付けられており、ケースから用途に合った信号弾を取り出して装填した後に発射された。

小型で扱いやすかった為に陸海空軍の殆どの部隊や航空機に搭載されており、部隊同士の連絡や救難信号を打ち上げる為に使用されている。

スペック

口径:37mm

銃身長:132mm

作動方式:ダブルアクション

全長:270mm

重量:217g




C-130H(ハーク)のグライダー牽引改造
不意に思いついたのでこの展開を作りましたが、何気に日東の合同計画への布石にもなりそうです。

・空挺連隊が進軍中に遭遇した動物
オランウータンはスマトラ島とボルネオ島に、極楽鳥はインドネシアとパプアニューギニアに生息している様でしたので出しました。もしかしたらオランウータンはシーリアにも生息しているかもですが、野生だったら興味を示すのではないでしょうか?

・ティアンワ陸軍の糧食
Wikipediaの“インドネシアの食文化”を見ながら、保存携行に適しつつも腹を満たせる料理を選びました。こういう時にWikiのカテゴリーが役立つ。

・ユートラジア
余談ですが海上揚陸旅団の創設由来となった海兵隊を持っている国です。どの国がモデルだか分かってしまったような···

・オルガ少佐
オルガ中隊の存在はプロットから存在してましたが、フルネームと経歴を書いてなかったので、この場で作りました。経歴内に内戦の表記がありますが、これに関してはもう少し後に詳細を語らせようと思います。
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