New world note in Earth 作:YUKANE
今作では陸上兵器を中心に東和へ輸出する為に撤廃は間違いなく行われるでしょう。そこら辺の言及もしておくべきですね。
東和が足を踏み入れたパータの北北東、約180kmに位置するスワンカ。ジャドリンド島に乱立した王国が首都を置き、ティアンワによる統一後も100万超えの人口を有する西海岸の重要都市として君臨していた。
北部の未開領域へ進出する“バウラット計画”始動に伴ってスワンカは進出拠点として港湾と街道の整備が行われたが、同時に万が一に備えた防衛設備もより強固にされた。防衛の要であるスワンカ要塞とガンネイ砲台には近代化工事が行われ、上陸地点と見積もられたイルバ海岸に沿って障害物が設置されていた。
経済としても軍事的にも重要な価値を付与されたスワンカの街並みを、ヴィジランド陸軍から観戦武官として送られたロイズ・リヴァーベル少尉が要塞の最上部から眺めていた。
ヴィジランドらトラクティア諸国の要塞は航空攻撃に備えて高射砲や機関砲・レーダー・聴音機が配備されているが、航空の概念が無いティアンワの要塞はスッキリした天井になっており、抜群の見晴らしを誇っていた。
「最初は物悲しかったが、慣れると見晴らしが素晴らしい。」
「ここは開けてますから、接近する敵は直ぐに見つけられましょう。加えて、沖合に守備艦隊が展開してますので、余裕をもって対処出来るでしょう。」
「そうであると有難いですが···········」
朝焼けに包まれたスワンカを眺めていたロイズに守備隊司令官のクルファ・ドエル・ヘルヴァンド准将が自信満々に語りかけたが、その言葉は空元気にしか聞こえなかった。
理論上であれば効果的に迎撃出来る手段であったが、これは同レベルの技術水準かそれ以下の相手にだけ通じるもので、万が一にでも上回っていればいとも簡単に崩れ去る諸刃の刃。加えて2度の海戦で艦隊そのものが消える惨敗を喫し、バリア島も半日足らずで占領された結果は、上陸して来るであろう日東が自国を凌ぐ軍事力を持っていると知らしめていた。
最もこのプランが机上の空論でしか無いのはクルファ自身も察していたが、絶望的な状況を打開出来る策が浮かび上がらなかった以上、このプランを使うしか選択肢は無かった。
「司令! パータに敵軍が上陸した模様!!」
「やはりパータには上陸したか! 全隊を臨戦態勢へ!! 守備艦隊にも電信し───」
「監視塔から狼煙が!」
「何っ!? あ、あれは艦隊攻撃時の狼煙!! こっちにも敵が来たぞ!!」
守備隊兵士の報告を受け、自らの部隊へ対応を命じたクルファが目撃した狼煙は彼を絶句させる。狼煙は間隔によって一種の通信手段にもなり、クルファとロイズが目撃した狼煙は守備艦隊が攻撃を受けている際に上げるモノだった。
「パータと同時に上陸する気だ!! 砲台に砲撃指示を!!」
「遠くから何かが3つ飛んで───っ!?」
パータとの同時上陸だと悟ったクルファが砲台に攻撃指示を出したその瞬間、ロイズが遠くから翔んでくる3つの何かを見つけた。先が丸まり、台形の羽根が対角線上に生えた円柱は朝焼けを切り裂きながら高速で近づいていたが、刹那一転して進路を天高く向ける。紅く灯ったJ402-CA-400ジェットエンジンを見せびらかして舞い上がった3本の銛はある地点で進路を真逆へ翻し、砲撃準備が完了しつつあったガンネイ砲台へ音速超えの勢いで突き刺さった。
ガンネイ砲台へ着弾した3本の
「ガンネイ砲台があんな呆気なく────これでは迎撃出来ない!!」
「間違いない。あれはミサイル。敵は遥か彼方にいるかもしれないが────だとしたら、監視塔の報告と釣り合わない·······」
「沖合に巨大艦複数!! 」
「見える程に近くに────あれか!?」
「な、な、なんだあの巨大で不気味な艦は!?」
スワンカ防衛の要を担う筈だったガンネイ砲台が一撃にして崩される光景に、迎撃プランの崩壊を悟ったクルファは膝から崩れ落ちる。
一方のロイズは見張り員の絶叫で考察の坩堝から引き上げられると、東から昇った太陽の光で輪郭が浮き上がった複数隻の艦影を見つけた。クルファも底に等しい気力を振り絞って立ち上がり、沖合に現れた艦隊の姿を目の当たりにしたが、ティアンワの遥か常識を凌ぐ巨大さと帆船とは余りにもかけ離れた見た目に慄いた。
スワンカに現れるは米海軍第7艦隊に属する第7遠征打撃群。イージス巡洋艦とイージス駆逐艦が水上戦力を担い、1隻の強襲揚陸艦と3隻のドック型揚陸艦が揚陸戦力の根幹を務めていた。今回に限っては海上自衛隊のおおすみ型輸送艦「LST-4003 くにさき」が加わり、日米が協調した一大作戦であると知らしめる。
「あの艦は───イージス艦!!」
「イージス艦とは何ですか!?」
「数百もの目標を捕捉し、複数の目標へ同時に対処出来る化け物です! 国旗は星条旗───アメリカのアーレイ・バーク級とタイコンデロガ級か!!」
「数百の相手を同時に!? あれが守備艦隊と砲台を!?」
自前の双眼鏡で艦形と国旗を確認したロイズからイージス艦の説明を受けたクルファは驚愕しつつも、あの艦が攻撃を仕掛けたと察した。
現にアーレイ・バーク級駆逐艦「DDG-113 ジョン・フィン」はガンネイ砲台へ3発の
ロイズとクルファの両者が見ている中、タイコンデロガ級巡洋艦の「CG-67 シャイロー」が2基の、アーレイ・バーク級の「DDG-86 シャウプ」が1基のMk.45 5インチ砲mod4をスワンカへ旋回させた。計3基の砲が重い砲撃音を立てて発砲したかと思えば、30kg超えの砲弾がイルバ海岸沿いの障害物へ立て続けに着弾した。
「一撃着弾!───だから砲身が一つで済むのか。」
「あ、あぁ··········折角造り上げた防衛線が·····」
着弾した砲弾の炸裂は砂煙を巻き上げ、竹筋コンクリート製のトーチカ・見様見真似で作り上げたチェコの針鼠*1・木製の
爆発で巻き上げられた土砂や障害物の破片は土塁の奥に掘られた塹壕へ降り注ぎ、中で待機していた兵士を巻き込んでいく。兵士らは塹壕と言う逃げ場の無い狭い空間に閉じ込められ、例え塹壕から這い出たとしても天高くから降り落ちるモノから逃れる術など無かった。
巡洋艦と駆逐艦1隻ずつが行った短時間の砲撃にて、イルバ海岸沿いの防衛陣地は文字通り壊滅した。トラクティア諸国から齎された最新技術を持ってして、出来る限りの工夫と努力で造り上げた防御線は叶うはずも無い圧倒的強者によって軽々と踏み躙られた。
ティアンワの絶望っぷりを知る筈も無い第7遠征打撃群は、より沖合に布陣する第7艦隊旗艦にして遠征打撃群の旗艦も任された「LCC-19 ブルーリッジ」の指示を元に次の段階へ動き出した。
ウェルドックを廃止して航空運用能力を上げたアメリカ級強襲揚陸艦「LHA-6 アメリカ」が、長方形の航空甲板に並べていた第3海兵遠征軍第36海兵航空群第169海兵軽攻撃ヘリコプター飛行隊の
ほぼ同時にサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦「LPD-20 グリーン・ベイ」は12両のAAV7を、ホイッドビー・アイランド級ドック型揚陸艦「LSD-47 ラシュモア」が4隻のLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇を立て続けて出撃させた。AAV7とLCACにはうるま港で載せた米海兵隊第3海兵遠征軍第31海兵遠征部隊第1海兵連隊第2大隊の兵士と装備が載せられており、本隊である自衛隊が降り立つ橋頭堡を築くべく、朝日の逆光を浴びながら進んでいく。
一連の攻撃で大半の火砲と射撃陣地を失ったティアンワ側に反撃の手段は取れず、AAV7とLCACは一発の砲火も浴びずにイルバ海岸の砂浜へ滑り込む。後ろのドアを開けたAAV7は海兵隊員を、艇首のを降ろしたLCACは装輪装甲車を降ろしていく。
何の妨害も無くティアンワの国土へ上陸していく海兵隊に塹壕内で生き延びていた守備隊兵が攻撃を仕掛けようとするも、塹壕上空へ飛来したUH-1YがスタブウィングのハイドラロケットとM134ミニガンを雨霰の如く叩き込み、数少ない守備隊兵の数を更に減らしていった。そこへ兵員を降ろし終えたAAV7とLCACで運ばれた6両のLAV-25・海兵隊員が運んで来たM327 120mm迫撃砲がダメ押しの一撃を浴びせ、スワンカ守備隊による水際防衛の思考すら粉砕した。
加えて、AH-1Zが撃ち込んだ
街道と言う退路を断たれ、日米が旧太平洋と呼ぶ大海とガワント川に挟まれたスワンカは文字通りの背水の陣と化した。第7遠征打撃群はスワンカに対する最後の一手を打つべく、唯一の海自艦である「くにさき」と「LSD-48 アシュランド」がウェルドックからLCACを解き放つ。第8師団の隊員と装備類を満載した6艇のLCACは第31海兵遠征部隊が築いたイルバ海岸の橋頭堡へ到達し、積載していた隊員と車両が次々とスワンカの地を踏んでいく。
第12普通科連隊を根幹に西部方面戦車隊・西部方面特科連隊で組み上げられた西部方面隊第8師団の到着は、戦場が新たな段階へ入った事を示す合図でもあった。山影からゆっくりと昇っていた太陽がその全容を現した時、熾烈な市街戦の開幕を告げた。
◇
ガワント川に沿って形成されたスワンカの街をタイヤが未舗装の道を駆ける走行音と、銃火器の発砲音・手榴弾や迫撃砲弾の爆発音が包み込む。建物の一部は爆発の衝撃で崩れ落ち、火災で発生した黒煙が幾つも立ち上る。
第12普通科連隊第3普通科中隊の軽装甲機動車 20両や高機動車・第2大隊軽装甲偵察小隊のグロウラーITV 6両・ハンヴィー 18両・AAV7が瓦礫まみれの道路を縦横無尽に駆け回る。建物の影や死角・路地に潜むティアンワ兵を見つけるや、屋根のターレットに取り付けられた機関銃が容赦なく撃ち込まれる。
車両から降り立った米海兵隊員と陸自隊員は分隊ごとに進み、建屋を1軒ずつ制圧していく。室内で遭遇したティアンワ兵に対し海兵隊員は最新のM7小銃やM27 IMRで、陸自隊員も暗視装置付きの89式小銃を撃ち込み、1人ずつ確実に射止めていく。
他の場所でもMINIMI軽機関銃やM249機関銃の雨霰に撃たれ、L16 81mm迫撃砲の曲射に気付かぬまま吹き飛ばされ、M14 DMRによって相手を認識する間もなく射抜かれ、バレットM82 対物ライフルで建物の壁ごと貫かれ、MGL-140が発射したグレネード弾や手榴弾の爆散で四肢が飛び散らせながらと、方法こそ違えどスワンカ守備隊は日米に対して反抗出来ずに追いやられ続けていた。
一方的にやられる現場が大半であったが、一部の場所は日米に対して効果的な反撃を食らわせていた。あるT字路では建屋の2階からカディファ-77重機関銃が道路への斉射を続けており、7.7mm機関銃弾の弾幕で陸自の2個分隊は足止めされていた。
「奴ら機関銃なんか持っていたのかよ······」
「資料を見なかったの? 鹵獲された中に水冷式の機関銃があったよ!」
ある陸自隊員の愚痴に第3普通科中隊副中隊長の常盤蒼也一等陸尉が本人の過失だと嗜める。朱雀戦争で守備隊の生き残りとして活躍し、
「ん。どうやらこの状況は終わりそうだ。絶対に外すなよ!!」
「
常磐は鉄粒の豪雨の中で機関銃が置かれた建物の1階へ辿り着いた米海兵隊員に気付く。死角を使った大回りで建屋の下へ辿り着いた海兵隊員常磐の応援に答え、自らのM7を斜め上に向けて構えたが、引き金を引いたのは銃身の下に取り付けられたもう一つの銃。M203 グレネードランチャーが放った40mm擲弾は弧を描いて建屋の2階へ入り込み、木造の壁を吹き飛ばす爆発を起こした。
「今だ!! 小銃てき弾撃てぇ!!」
常磐は擲弾の爆発で機関銃の弾幕が途切れた瞬間を逃さず、反撃を命じた。89式の銃身に装填された06式小銃てき弾が実弾によって射出され、“戦場の守り神”とも呼ばれる重機関銃を失ったティアンワ兵に弾頭の炸裂がダメ押しをかけた。
連続の爆発によって強度が失われた2階の床は機関銃と弾薬箱の重さに耐えきれず、死にかけと既に骸となったティアンワ兵を巻き込みながら崩れ落ちる。
その様子を目の当たりにした常磐らは機関銃の脅威が完全に消え去ったのを確認すべく、周囲に目を向けながら崩れ落ちた建物へ歩いていく。
「すげぇ。本当にマキシム機関銃だ。」
「このデカい筒の水で冷やしてんだよな?」
「あぁ、米軍との共同演習で行った時に訪れた博物館で見たことあるが、稼働状態のは始めて見たぜ。」
「こんな原始的な装備で
粉々になった建物の瓦礫に混ざって転がっていたカディファ-77重機関銃の残骸を見ながら、自衛隊員は思い思いの感想を語っていく。そんな中で常磐は1世紀もの技術差がある中で戦い続けたティアンワ兵に心の中で敬礼した。
「しかし、市街戦の前に市民は避難させてたのは驚きだ。ティアンワってのは予想より人道的だな。」
「確かにそうですね。
「ま、もしそうなっていてもAAVで何とかするだけよ。」
「でも、市民を避難させてまで市街戦する辺り、人道的な相手では無いですよ」
「そもそもそう言うのを理解出来る相手なら戦争になりませんし。」
「それは一理あるな·········」
戦場となったスワンカ市民を事前に避難させ、市街地を水没する手段を取らなかったティアンワに人道的な印象を抱いた常磐だったが、他の隊員達によってその理解を改める必要があると認識させられた。
日米による市街地の制圧が進む中、スワンカ要塞の攻略戦が同時進行で始まっていた。
西部方面戦車隊所属の10式戦車 10両がイルバ海岸から一直線で急行する様を監視塔が見つけるや、要塞砲のイルタ-127カノン砲が砲撃を行った。しかし、1200馬力を叩き出す三菱8VA34WTK 水冷4サイクルV型8気筒ディーゼルエンジンが発揮する機敏な機動力で砲撃は当たらず、奇跡的に当たったとしても1世紀前の精錬技術で作られた上に、対装甲相手を想定してない砲弾は複合装甲によって軽々と無力化された。
カノン砲の砲撃を防いだ10式戦車は主砲の10式戦車砲を要塞砲へ向け、120mm砲弾を撃ち込んだ。国産の44口径120mm滑腔砲で放たれた10式装弾筒付翼安定徹甲弾はデジタル技術を詰め込んだ射撃統制装置によって狂わず導かれ、目標の要塞砲を的確に破壊した。
要塞最大の火砲を失わせた10式戦車に代わって、西部方面特科連隊第2特科大隊第3中隊及び第4中隊の19式装輪自走155mmりゅう弾砲 5両ずつが現れる。
底面だけを接地させて反動吸収を行える
戦車と特科による二段階攻撃で無力化された要塞へ、第12普通科連隊第1普通科中隊の89式装甲戦闘車 10両が接近する。そのうちの1両の角張った砲塔側面に取り付けられた長方形の箱の前扉が開き、中に仕舞われていた
89式装甲戦闘車に座乗していた第12普通科連隊連隊連隊長の
勇ましく突撃しようとしていた稲郷や自衛隊員らは呆気ない降伏に拍子抜けしたが、交渉役を自ら務めたクルファによって要塞内に避難していた市民を守る為だと知るや、市民の安全を最優先に扱うティアンワの姿勢に感心すると同時に、避難していた場所を容赦なく攻撃していた不甲斐なさを実感させられた。
日米によるスワンカ制圧は数える程の損害を出しつつも順調に進んでいたが、歩兵の上空支援を務めていた
◇
「斥候からの報告です! スワンカの街の大半が占領された模様!! スワンカ要塞も白旗を上げたとの情報!!」
「上陸して僅か数時間だぞ!? おのれぇ········」
ティアンワ陸軍第8旅団旅団長のタンム・ザリヌ・ガバロードン少将は送り込んだ斥候の情報に驚くと同時に、日米の上陸に間に合わなかった自らを責めた。
彼が率いる第8旅団は機動力と即応性を重視した部隊であり、その特性を活かして主力の第1師団が到着するまでの先遣隊として送り込まれたが、到着目前にしてスワンカは事実上陥落した為にその役目は果たせなかった。ティアンワ内戦にて機動力を重視して鍛え上げた騎馬隊でスワンカを制圧する功績を上げたタンムにとって、自慢の機動力で相手に先手を取られたのは最大級の屈辱的であった。
「タンム少将如何なさいますか? 我が部隊は機動力重視故に野砲の数も少なく、一度攻勢に出れば圧倒的な戦力差で押し潰される可能性がありますが·······」
「だからと言って逃げる訳にもいかないのは察しているだろ。既に野砲が展開済みなのは知っておる·······負けが決まっている状況でも戦わざる負えないのは軍人の宿命よ。」
師団の参謀長が戦力差を上げて攻勢の有無を問うが、攻撃するしか無いと言う発言の中にある意図を汲み取ったタンムは軍人故の宿命だと割り切った。
既に砲撃態勢へ整えられた火砲連隊のイルタ-127カノン砲 12門はその葛藤を示し、軍人の役目を果たすべくスワンカ市街への砲撃指示を出そうとした瞬間、対岸に目を光らせていた見張りが叫んだ。
「対岸に馬車が走ってきて───な、何かを発射しました!!」
タンムらが対岸へ目線を向けた刹那、馬車から赤い光を吐き出す何かが飛び出した。
後部に4枚の矩形翼を携えた弾体はサイドスラスター方式の推進装置を吹かせてガワント川を飛び越え、赤外線カメラとミリ波レーダーの正確な照準でスワンカ市街へ向けられていたイルタ-127カノン砲を的確に吹き飛ばした。
「敵の攻撃で全ての野砲が破壊されました!!」
「全てか!? これでは攻撃すら出来ん!!」
「撤退だ!! 野砲を失い、スワンカにも渡れない我々に価値は無い!!」
僅か一撃で旅団最大の火砲にして遠距離攻撃が可能な手段が失われたのを目の当たりにし、タンムは退却を即断した。鍛え上げた機動力と即応性で逃げられると判断したが為の行動だが、アメリカが誇る即応部隊である米海兵隊の方が速かった。
中距離多目的誘導弾と入れ替わりで現れた第3海兵師団第12海兵連隊第3大隊のM142 HIMARS 8両がガワント川の流れに沿って停車したかと思えば、グラスファイバー製の長方形コンテナを対岸へ向けた。
箱の蓋を突き破って発射された6発ずつのM26 ロケット弾は鉄製の外装を開き、無数の球体をばら撒く。1発辺り644個ものM77二用途向上化従来型子弾は撤退を始めたばかりの第8旅団へ雨の様に降り注ぎ、爆発が無数の兵を飲み込んだ。
機動力を重視した小型版ながら、陸上に死の雨を降らせる
再起不能な一撃を浴びた第8旅団へとどめを刺すかの如く第2大隊砲兵中隊のM777 155mm榴弾砲 8門も射撃を始め、M107榴弾のTNT爆薬で破片となった鋳造鋼製弾殻が辛うじて生き延びたティアンワ兵にトドメを刺していく。
ティアンワ陸軍第8旅団は30分にも満たない攻撃で文字通り壊滅した。HIMARSのロケット弾と榴弾砲の砲撃で半数以上の兵が命を奪われ、生き延びた兵士も何処かしらに大きな傷を負っていった。犠牲者の中にはタンムも含まれており、指揮系統も失った第8旅団は正真正銘戦闘能力を喪失した。
日米によるティアンワ上陸戦は1個旅団を失ったティアンワの完敗に終わった。パータに足を降ろした東和軍と、スワンカに陣を引いた陸上自衛隊。生まれ星の異なる似たもの同士はこの戦いを終わらせるべく動き出す。
・第7遠征打撃群
現実では同型艦の「トリポリ」が「アメリカ」と入れ替わりで配備されてますが、今作では「アメリカ」のままです。また、サン・アントニオ級の「ニューオーリンズ」はアメリカ本土で入渠していた為に転移を免れました。
なお、プロット制作段階で配備されていた艦を登場させた筈だが、連載の遅れで現実との差異が出来てしまった模様。
・事前資料
南鳥島沖海戦やバリア島の戦いで鹵獲したティアンワ軍の装備品を纏めたもの。外見や内部構造が既存兵器と類似している事から、それらのスペックが仮定値として記載されている。
・常磐蒼也
前作に登場した朱雀守備隊の隊員。前作の登場人物は閣僚以外は何かしらの変化を付与させたいところ。
・89式装甲戦闘車
現実では第7師団と富士教導隊のみに配備されているが、冷戦終結後もシ連と対峙していた本作では同じ北海道の第2師団と中国との最前線でもある第8師団、朱雀列島の最前線に位置する第10師団第14普通科連隊にも配備されている。
◇
4月の更新が1回だけに留まりましたが、作者の就職に伴う多忙と生活スタイルの変化に合わせた関係で執筆出来る時間が余りにも取れませんでした。
更新頻度はより遅くなるかもしれませんが、今後もよろしくお願い致します。