New world note in Earth   作:YUKANE

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7月25日、26日と続いて震度6レベルの地震が続きました。こうして連続して起きると、何かの前兆なのかもしれないと勘ぐってしまいます。
今作の様に日本の異世界転移とか言う現実離れした事は起きないでしょうが、大震災レベルの大地震は絶対に起きて欲しく無いものです。


Episode.73 4ヶ月の幕引き

ティアンワが誇る首都 ジャラカ。国内の先進技術と経済・文化が集まる大都市だったが、在日米軍が行なった爆撃から半月が経過してもその衝撃と傷は癒えていない。

F-35Cが投下したJDAMが文字通り一直線に直撃した城壁の胸壁部は崩れたままになっており、灰色の石壁には未だに爆発の焦げがついていた。実質的な被害は城壁のみで、市街地には一発とも誤爆しなかった為に被害だけでなく犠牲者すら無かった。

 

しかし、市民に与えた見えない傷は遥かに甚大だった。

空と言う届かない領域とは言え、敵軍の侵入を呆気なく許すだけでなく、守備の要たる城塞を攻撃した。ジャラカの守護者として君臨していた野砲群は一発も撃てずに破壊され、一発たりとも反撃出来ずにF-35C(鉄の鳥達)の撤退を見送るしか無かった。

 

“敵軍の首都への侵入を許しただけでなく、攻撃された挙句、無傷での逃走を許した”。この事実はジャラカに住む全ての者に衝撃を与え、同時に反撃すら出来なかった軍部とあの様な敵国との戦争に踏み切った政府への疑心が沸き起こった。

 

この様な市民感情は戦争遂行どころか、王国存続すら危ぶまれる事から政府は速急に対策を行おうとしたが、首都空爆の翌朝にはスワンカとパータに日東軍上陸の一報が流れ込んできた。

本土侵攻と言う直接的な脅威への対策に注力おえない関係で、市民感情への処置は後回しとなった。その結果として何も言わなかった国家上層部に対する市民の疑心感は強くなり、それは人々の往来や手紙・電信によって国内各地へ伝染していった。奇しくも同日にスラヴァやメジェラ・パランドンと言った国内各地の都市に行われたのも相まって、日東の恐ろしさと開戦に踏み切った国家への疑念が瞬く間にティアンワ全土へと浸透する最悪の結果になった。

 

更に運の悪い事に本土上陸した日東軍の迎撃に赴いたティアンワ陸軍は尽く大敗を喫した。多くの将兵が戦死する中で辛うじて生き延びた脱走兵の証言からその事実は市民に伝えられた。かねてから東和軍機による偵察飛行が日々目撃されており、散発的に港湾や国鉄線に対して行われた航空攻撃の話が噂話として広まっていたのもあり、市民にうっすらと蔓延した恐怖と疑念を確信に変えた。

 

数々の敗北を喫した挙句、市民が国家への不信感を抱く最悪の状況の中、ジャラカの南側に広がる旧市街の中核を担う王宮では、居住者であるマイヒン王族の面々と政府主要陣が一堂に介して、今後の行く末について話し合っていた。

 

「ベラレとダノスでの戦いの結果、陸軍は2個師団を喪失致しました。残る第2師団はジャラカ防衛、第4師団はスラヴァ防衛の任に就いている以上、動かす事が出来ませぬ。よって陸軍による積極的な防御作戦を再度行うのは不可能です。」

「そうか────ここまでやられるとは·····」

 

ティアンワ軍総司令官のワンダール元帥の報告に国王 ヴィワダは淡々と返す。ワンダールの報告は国土を踏み躙る敵軍に対する反撃どころか、打って出る迎撃すら出来ない事を示し、敵国による国土の蹂躙を見ているしか無くなったと宣言するものであった。

 

連日の敗戦報告を聞いていた面々はざわめきもせず、軍部に罵声を浴びせることも無く、何も出来ない現状にただただ俯いて嘆くしか無かった。

どうしようもない現実に対する溜息が幾つも溢れる中、集まっていた面々の一人であるティアンワ陸軍首都守備隊司令官を務めるメリテン・ゴウオ・マイヒン中将が席から立ち上がり、ヴィワダの元で膝を付く。

 

「国王陛下!! やはりこれは首都守備を任された私めの失態!! 国内に混乱を招いた責任を取りたい所存であります!!」

「何度も言っておるであろう。例え誰が指揮官であろうとも、飛行機相手には何も出来なかったであろうから問題無いと。」

 

王族の血を引く上に、首都防衛の大役を任されたが故か、この惨状の責任を全て引き受けようと自ら進言したメリテンだったが、ヴィワダはただ相手が悪かったとして提案を拒否した。

ヴィワダの判断は彼なりの慈悲であったが、皮肉にもそれがこの戦いの全てを物語る。どんな選択肢で善戦しようとも、相手はそんなの関係なく打ち破れる力を持つ。勝利は最初から日東の手の中にあり、ティアンワが何処まで足掻いても敗北しか無かったのだった。

 

「国王陛下! ヴィジランドやフラスタリアに参戦を求めるのはどうでしょうか!!」

「無理に決まっているであろう!! 我々よりもかの国の方が日本の恐ろしさを知っているわ!!」

「そもそも知っていたからこそ我々に代理戦争をやらせたのだろう!! そんな奴らが救援を出すと思うか!? 寧ろ切り捨てられるだろう!!」

 

何も出来ない状況に耐えかねた政府要人の1人が立ち上がって提言するも、他の面々から不可能だと罵倒される。罵る彼らもティアンワの敗戦を受け入れがたいのは同じだったが、打つ手が何も無い現状を認めざるおえなかった。

 

「皆の者、静かにせよ。直感的な言葉は議論にならん。ヴィジオ──お前はどう思う?」

「兄上────私としては国を存続させ、立て直す事が重要だと考えます。このままジャラカでの防衛戦に突入しても勝てる見込みはありません。

皆も知っているでしょうが、今の国内情勢は不安定に陥ってます。各都市への立て続けの攻撃に加え、本土上陸を許した事で市民には国家への疑心が起きております。これを放置すると革命やクーデターが起きかねません。

ティアンワを独立国家として存続させる為にも、この戦争を終わらせるのが最優先でしょう。」

 

議論にもならない言い合いを抑え込んだヴィワダは、弟にして宰相のヴィジオへ意見を振る。ヴィジオは各地から入って来る情報を元に、戦争遂行よりも国内を纏め上げる方が重要だと訴える。

既に各々の伝から不安定な国内情勢を知っていた要人らはヴィジオの意見に納得せざる終えず、ただただ黙って受け入れるしかなかった。

 

「つまり直ちに日本と東和へ降伏すべきって事か?」

「プライドに任せて国家を滅ぼすよりも、プライドを捨てて国家を守る事こそが我々のやるべき役目だと考えます。」

 

戦争を起こしたプライドを殴り捨て、国家を存続すべきだとヴィジオは訴える。勝てる筈も無い戦いを続け、漸く纏め上げられたティアンワを滅ぼすか。潔く負けを認めて、ティアンワを存続させる可能性に賭けるか。

どちらを取っても滅亡か屈辱かの厳しい決断を強いられるものだったが、どちらが最善かは全員が理解していた。

 

ヴィワダ()がこの戦争を起こした主として、全ての責任を引き受けよう。ヴィジオ(お主)は戦争に反対したとのシナリオを作って、私の代わりにこの国を収めよ。」

「兄上·········」

「救世主の一国に勝てる見込みなど無かったのだ·······ヴィジオ。お主はトラクティア諸国を回った経験がある。その経験があれば、この国をより良く出来るだろう。皆もヴィジオの元で尽力してくれ。」

 

自らが戦争の全責任を引き受けると言い切り、弟にティアンワの未来を託したヴィワダに対して、当の弟は哀愁に満ちた表情を向ける。メリテンら王族の面々や政府要人らも同じく悲しげな表情をし、中には涙を流す者もいた。その涙には戦争に負けた結果と、国を存続させる代償を国王に負わせてしまった不甲斐なさが混じっていた。

 

ティアンワの運命を決めた会合の翌日 4月10日。ティアンワ王国は日本及び東和に対して無条件降伏を行なった。その旨はヴィワダ名義の電信で国内各地へ伝えられ、一部の苛烈な愛国者は戦争継続を訴えたが、日米東の攻勢を目の当たりにした将兵や行政従事者は直ぐに受け入れた。

進軍中の日東両部隊に対しては白旗を掲げた伝令在来馬に跨って急行し、両軍との接触を果たした。接触して暫くは日東双方が不意打ちを警戒するも、国王の直筆署名が書かれた英語の降伏文章を見た事で降伏が事実だと知った。奇しくも東和陸軍第10師団に随伴する陸自将校らが持ち込んだ広帯域多目的無線機によって、日東双方に同じ降伏文章が届けられた事が分かったのも大きかった。

 

ティアンワ降伏の旨はスワンカを警備する在日米軍にも伝えられ、バリア島のテッラ基地を介して日米東各艦隊と本国へも伝達された。

戦勝ムードに包まれた東和では国内各地で市民が熱狂に湧き、商店では自主的な戦勝セールが行われる程だった。対して日本では戦争が終わった安心感に浸る者が多く、戦勝を大々的に祝う者は極少数だった。日本政府も4ヶ月に渡る戦争の終結に安堵しつつも、講和条約の内容や賠償金の規模・ティアンワに対する今後の接し方と言った戦後処理に追われる事になる。

 

当のティアンワでは日東軍のジャラカ及びスラヴァへの部隊進出ならびに艦隊寄港が求められ、降伏文章を届けた伝令によって知らされたヴィジオは直ぐに承諾した。

間もなくしてティアンワ陸軍による先導の元で、陸自第8師団はジャラカへ、東和陸軍第10師団はスラヴァへと入る。日米東艦隊に関しても、正確無慈悲な攻勢を辛うじて生き延びた艦艇の先導でスラヴァへ入港し、街とパールティア要塞を望める沖合へ錨を下ろした。

 

この出来事で大抵のティアンワ市民が日東と初めて触れたのだが、ヴィジランドらトラクティアの超大国に類似した東和の地上兵器群と艦艇群。それらとも似つかない様相ではあるが、東和のものより遥かに巨大な地上兵器の車列と、対照的にシンプルな外装の艦艇。

 

自国とは似ても似つかない巨大船が埋め尽くす様に停泊し、存在すら無い動く鉄箱が大挙して進む様は、戦ってはいけない相手に挑んでしまった後悔を知らしめた。

市民と同じく王宮の見張り台からメイン通りを進む第8師団の姿を光景を眺めたヴィジオは、自らが絶対に勝てない相手への戦争を挑み、代え難い多くの犠牲を出してしまったのだと痛感させられた。

 

 

ティアンワ降伏の一報はジャラカに置かれたトラクティア諸国の大使館にも続々と入る。ヴィジランド含む全ての国がこの結果を予測しており、東和を含むTRM諸国と日本にどの様に接触するかに興味を向けていた。

 

「ティアンワは降伏したか。あんな時代遅れの装備品で、日本相手に数ヶ月持ったのは素直に称賛ものだ。」

 

昼食中に降伏の一報が入って来たフラスタリア大使館では、駐丁大使のクラーケ・アイブリークがグラスに入れられたノンアルコールのシャンパンを呑みながら、ティアンワに対して自国なりに労いの言葉をかける。

 

「して、今後はどう動くつもりだ? 貴殿の網に何かかかっているか?」

「現時点では国内統制に動く模様です。まずは日東双方と協議した後に、敗戦の事実を国民に周知させます。国の上層部はヴィジオ宰相を反戦派として演出し、現国王ヴィワダを差し出す形で国家存続を図るそうです。」

「ヴィワダ国王に犠牲になってもらう形か。反戦派の捏造は通じないと思うが、もし日本が我々の知っている姿ならば、植民地にはしないだろう。経済的に支配される可能性があるがな。

ティアンワの今後は正直どうでもよい。重要なのは日本とどう接触するかだ。ヴィジランドの動き方に関する情報は入っているか?」

 

クラーケはシャンパンの入ったグラスを純白のテーブルクロスが掛けられたテーブルに置き、昼食であるほうれん草とティラピアのキッシュを切りながら、ティアンワ降伏の旨を伝えた大使館職員 アリーザ・ベアランテに今後に関する情報を問う。

アリーザが自らの伝で得た情報を語るのを、食べながら聞いたクラーケはあまり興味なさげに返す。クラーケの思考は日本に接触する事が優先されており、敗戦国となったティアンワは正しく踏み台としか見ていなかった。

 

「それに関してですが、オルガネート大陸に展開する第6艦隊の一部に出港の動きが見られるとの一報が同地の領事館から入りました。ヴィジランドは今回の戦争に対して観戦武官を送り込んでいるので、観戦武官を回収する名目で送り込むのでしょう。」

「観戦武官の回収としつつ、実際は東和の軍事力探りだろうな。ティアンワ(ここ)に一番近いヴィジランドの領地はオルガネートだから妥当な判断だ。

我が国も艦隊を送って欲しいが、当事者では無いからまあ無理だろう。送る艦隊の詳細は分かるか?」

「駐留武官から送られた情報によると、旗艦の「ファークミリオン」と第6艦隊唯一の航空母艦「アーク・ロイエル」を中核に、巡洋艦2隻・駆逐艦4隻だと思われます。」

「ほぼ総動員じゃないか。それだけの艦隊を送り込む価値は間違いなくあるだろうから無理もない。」

 

ティアンワに上位の格差を知らしめ、実質的な宗主国となったヴィジランドが観戦武官回収の名目で合法的に自慢の海軍艦隊を送り込める事実にクラーケは悔しがる。同時に艦隊の詳細を掴めるアリーザの情報網に感心した。

フラスタリア海軍はスラヴァ港に複数隻の通報艦を配備してはいるが、最も大きなシャロエワ級大型通報艦*1でも駆逐艦並みの船体に防護巡洋艦譲りの14.2cm単装砲を備えた艦など、ヴィジランド海軍が誇る超弩級戦艦の相手にもならないのは明白だった。

 

「先手は越されたが、これで本国が黙っているわけない。ヴィジランドはユートラジアとの関係悪化で、そっちに注力せざる終えない。この隙に日本に艦隊でも向かわせれば、我が国がトラクティアの仲介役に成り上がれるだろう。」

「ですが、それを果たす為にはここで日本と接触する必要があります。」

「無論だ。折角の機会を逃すわけにはいかないだろ。ヴェラール戦争での雪辱はここで果たせて貰おう。」

 

ナプキンで口元を拭くクラーケは、獲物を狙う猟師の如き視線をしながら答える。その言葉にはヴィジランドが日本だけに構ってられないが故の隙をつける確信と、ヴィジランドへ抱いていた雪辱を果たす執念が混じっていた。

 

かつてヴィジランドとの間に勃発したヴェラール戦争。ヴィジランドの勝利で終わり、賠償金を払わされたフラスタリアの屈辱は市民にも根深く残っていた。ヴィジランドと同等ではなく、その上に立って積年の恨みを晴らす切り札として日本が巻き込まれ様としていた。

*1
シャロエワ級大型通報艦

点在する植民地の防衛や治安維持の支援・遠く離れた本土との航路防衛といった役目も担っていたフラスタリア海軍は、それらの任務に対応出来つつも長期間の展開が可能な装甲巡洋艦と指揮・通信能力に優れた砲艦を派遣していたが、ヴェラール戦争後に艦隊・艦艇の近代化を一早く進めるべく多大な予算をつぎ込む事が計画された為に、2隻分の運用コストを削減すべく両艦の役割を統合した植民地警備の主力艦として建造された。

艦首乾舷が高い長船首楼型船体は100m程の全長ながら船体の中央には搭載艇と移動用のクレーンを設置しており、長期間の任務を想定している為に艦内には燃費の良いディーゼル機関や充実した設備を有している。

主砲には防護巡洋艦から降ろされた14.2cm砲を背負い式で2基ずつ搭載しており、通商破壊を行うであろう仮装巡洋艦と互角の戦闘が出来ると判断された。後部煙突に取り付けられたデッキには連装機銃を配置し、艦尾には港湾と航路を閉鎖すべく機雷を投下する機雷投下軌条を設けている。

装甲巡洋艦の代替になる充分な火力と汎用性・砲艦並みの通信能力を兼ね備えていた為に、植民地警備の主力艦として各地へと配備された。

スペック

排水量:2500t

全長:102m

全幅:12.95m

吃水:4.31m

機関:ヴァリティアス PsL-07型ディーゼルエンジン 2基

出力:3700馬力

速度:15.8ノット

武装:14.2cm単装砲 4基

   48mm連装機銃 1基

   機雷投下軌条 2基

   機雷40発

搭載艇:

乗員:146名




今回は後書き解説に書くことが見当たりませんでした。
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