メシマズキヴォトスを美食研究会と一緒に救いたい先生 作:tarako
「ああ、それにしてもラーメンが食べたい……!」
豚骨を、醤油を、味噌を、麺を啜りスープを飲みたい。チャーシューを食べて、ライスと合わせて、ラーメンをただ、食べたい。
突然に脂っこいものや、味の濃いものが食べたくなる現象が襲いかかってきた時、これがこのメシマズキヴォトスでは辛い。
なにせ、食べたくなった物がキヴォトスには存在しないのだから。
異世界転生してビッグマックを食べたいと願っても、それが無理なのと一緒だ。
冒頭のラーメンが食べたいという願いも、スープに麺にと、素人の料理知識だけではどうにもならない問題が多くて、叶うことのないただの願望の筈だった。
「────ラーメンが食べたいですか、先生」
ふと気づくと、シッテムの箱が起動して、アロナが語りかけてきていた。
まるで「力が欲しいか」と尋ねる超常存在のように、私にラーメンが食べたいかを問う。
答えは決まっていた。
「────ああ」
ふっ、とアロナは笑うとシッテムの箱の中で、何やらダンボール箱を取り出して、その中に詰まった本をあーでもない、こーでもないと放りだし始める。
そうすることしばし、目当ての本を見つけたのかこちらに見せてくれる。
『お家で簡単!自家製ラーメン作っちゃおう!』
『焼き豚はこう作る!失敗しない、しっとりジューシーなチャーシュー』
『自家製麺の魅力!簡単に個性的な麺が作れる!』
『スープへのこだわり。プロのラーメン屋100人が選んだ究極のスープとは!?』
元の世界で発刊されたであろう雑誌や本がそこにはあった。
なるほど、確かにこれを読めばラーメンを作れそうだ。もちろん、諸々の調味料がキヴォトスでは足りない等があるかもしれないが。それでも麺の作り方やスープの仕込みの方法を知れるのは大きい。
アロナに感謝しながら、お礼の言葉を探していると、沈黙を疑心と受け取ったのかアロナが弁解する。
「……古代の秘伝書です(小声)」
「ありがとう、アロナ。詳しい事情は聞かないけど、本当に感謝してるよ」
「……!聞かれないならやりたい放題ですね!」
そう言って、シュッシュッとシャドーボクシングをするアロナ。
照れ隠しなのかも知れないが、腰の入っていないへなへなパンチは可愛らしかった。
「でも、いつか話せる時が来たら話して欲しいな。私は全生徒の味方だから。もちろんアロナもね」
「………………はい。いつか、必ず」
儚い笑みを見せるアロナに、私は電車の内部を空目した。
すると、目の前がぶれて夢と現実の境界が曖昧になる。
ああ、なぜかとても懐かしい気分になる。がたん、ごとん。がたん、ごとん。と体が慣れ親しんだ電車の音に揺られる。ガタン!と一際大きく揺れる音がすると、私が居る場所はシャーレでも電車の中でもなく、夕焼けの町を歩く情景へと移り変わる。
この町はアビドスかな。ふらふらと、夢か現か分からないままに、私はどこかへ歩き出す。
そうだ。あそこへ行く予定だった。夕暮れ、屋台のラーメン屋。柴関ラーメンに。
一緒に行ったとても大切な人が居た気がする。その子の顔も名前も、何もかもが思い出せないけど、一つだけ思い出せた事がある。確か、彼女はこう言っていた。そう────
「やっぱり柴関ラーメンはチャーシュー増しが最高!」
「……!!せ、先生……記憶が戻って……?」
「いいや。その台詞だけはなんか、思い出せたみたい。……というより何か私が忘れてる記憶でもあるの、アロナ?」
「~~♪~~♪(誤魔化す口笛)」
プツン、とシッテムの箱の電源が切れる。逃げないで、アロナ。
……まあ、追及しても仕方がないだろう。私はラーメン関係の本を読んで勉強することにする。
ポチ、ポチ、とシッテムの箱の電源を入れようとするが、アロナから拒否されている気配が伝わってくる。本のデータはそっちにあるんだから電源入れないと読めないでしょ!
ポチポチポチポチ ヤダヤダヤダヤダ
「何やってるんですか、二人とも……」
呆れたプラナの声で、私はようやくラーメン制作の第一歩に取り掛かれるのだった。
ある程度本を読んで分かったことは、やっぱりラーメン作りって時間がかかる。
例えば、豚骨ベースのスープでは手間暇掛けて、豚骨を鍋に掛け、焦げないようにかき混ぜる工程なんかは、先生の激務をこなしつつ並行するのはきつい。そこで、だ。
柴関ラーメンに直接頼んで、レシピを提供して、ラーメンを作ってもらおうかなと。
あわよくば、その様子を動画にしてドキュメンタリー風にしようかなと。
「いやあ、大歓迎だよ先生さん。こっちも先生の動画を見て、色々研究してた所なんで。ドキュメンタリー動画の話も、もちろんオッケーでさあ」
「見てくれてたんですか。ありがとうございます!」
あっさりと話は決まった。柴大将が乗り気で本当に助かった。
早速スープの作り方やら何やらを、大将と古代の秘伝書(うん)を確認しながら、ラーメンの完成に向けた道筋を確認していく。
「なるほどなあ。あらかた分かったが、醤油ってのが無いのがきついねぇ」
「ですねえ。調味料の開発も進めようとは思っているのですが、まだ初期も初期の段階で」
「ううむ。まあ無いものねだりをしても仕方あるめえ。豚骨ベースのスープをとにかく作ってみなきゃな!」
「お願いします。大将」
これもメシマズの呪いにかからないように、最初に私が手順を一通りやってから、大将が同じことを繰り返す。途中で味を二人で確認しながら、どんどんとスープ作りの本通りに進めていく。
デカい鍋にどんどんと豚骨を放り込んで煮込んでいくのは、結構に気持ちがいい。
ちょっとした非日常気分で、大将と談笑しながら完成したラーメンの味を想像する。
うん、これはなかなかにいい感じの味になりそうだ。
「あとは、麺も大事だな。これは製麺所に先生が行って、作ってもらわないと、ちと効率が悪くなりそうだ。ちょっと待っててくれよ…このページの…そう、これこれ。ちぢれ麺、ストレート麺、細麺に太麺。一通り試してみたいんだけど、お願いできるかい?先生」
「もちろんです。折角なので、麺全般を打ってきて、そばやうどんなんかも美味しく食べられるようにしてきますよ!」
そりゃいいやと
……スープばっかりに目が行って、麺の事はすっかり抜け落ちてた事は大将には内緒にしておこう。
時間はすっかり夕方。柴関ラーメンの看板娘が来る時間だ。
「こんにちはー今日もよろしくお願いします」
「おお、セリカちゃん。今日も頼むよ」
「こんにちは、セリカ。アルバイト頑張ってるね」
「あれ、先生?なんでいるの!?」
ピンと耳が立って、私が居ることに驚くセリカ。
その目は、私の撮影用のビデオカメラと、スーツに柴関ラーメンのエプロンを付けた私の格好をくまなく見る。
「もしかして料理動画の撮影に柴関ラーメンに来たの?」
「ああ、ラーメンみたいに複雑な工程の料理だとやっぱり専門店に頼るのが一番だからね。大将も快諾してくれたし、ラーメン編も良かったら見てね」
「……まぁ、大将が許可してるならいいけど……その、色々と邪魔しないでよね!」
ふん!とエプロンを付けながら接客の準備を始めるセリカ。
ちらちらとカメラを見ながら言ったのは、ああ、撮られると誤解してるのかな。
「このカメラはラーメン作りの撮影用だから大丈夫。セリカは映らないよ」
「え、そうなの?……ならいいんだけど」
「はっはっは。うちの看板娘が映っちまったら客が沢山来すぎて行列が出来ちまぁね!」
「大将も……もう!」
ぷんすことセリカが怒る。可愛い。
しばらく眺めていたい所だが、もうやることはやり終えたので、今日は帰るとしよう。
「それじゃあ大将。今日はこれで。次は麺を一通り持ってきます」
「おう、お疲れ先生。こっちもスープの仕込みに、それに合わせるタレも一通り試してみるよ」
「なんかよく分からないけど、お疲れ様?」
うにゃんとあくびをしたセリカに見送られ、柴関ラーメンを後にする。
製麺所に行くという新しく生えてきたタスクをこなさなきゃ。
ラーメンを食べるために頑張ろう。私は、気合を入れて麺を打つ決意をする。
食材を切って、塩を振っただけの、そんな簡単な料理から一気に進歩した文明の味を想像しながら、私は夕暮れのアビドスを歩く。
『ラーメン美味しかったね、先生!また来ようね!絶対だよ!!』
『分かった、分かった。また来ようね◯◯◯』
『うん!』
今、何か。……いや、気のせいか。
・
・
・
少しの時間が経ち、麺の問題はクリアした。
私が教え、機械化した製麺の工程に適用する。一言で説明すると、簡単なのだが、色々と苦労した。
まあまあ、それはいいんだ重要な事じゃない。
一番大事なのは、美味しい麺が製麺所で作られるということ。
中華メン、そば、うどん、パスタ、春雨などなど。古代の秘伝書(ありがとう)に助けられつつ、様々な麺を作ることに成功した。
製麺所奮闘編はぜひ先生の料理チャンネルをご覧ください。
「という訳で麺を持ってきましたよ、大将」
「おお、ありがとう先生!早速茹でてみるから、食べていってくれ!」
「ありがとうございます。頂いていきますね」
朝も早くに柴関ラーメンの調理場に顔を出すと、濃厚な豚骨臭と共に大将が出迎えてくれる。
うんうん、このラーメン屋に来てるぞみたいな香り。いいね。
煮込まれてる豚骨を見ると、寸胴鍋が一回り……いや、二回り大きくなっている。
「大将、鍋大きいのにしました?」
「これか。いや、なに。料理動画が宣伝ばっちりだったみたいでよ、お客さんがじゃんじゃか来てな。そん中に金物屋もいて、相談したら即日作ってくれたんよ」
「なるほど。それで」
「大工も常連さんでな。屋台だと客捌くのも限界があるってんで、店舗の再建も計画中なんだわ」
「おお、景気のいい話ですね。手伝えることがあったら何でも言って下さいね」
「はっはっは、先生にはラーメン作りで大層お世話になってるから、これ以上は世話になれんよ」
笑顔で麺を茹でる柴大将。
つくづく回りの皆には世話になってるなと呟く彼は、そのもふもふな姿で今出せる最高のラーメンを作っていく。調味料も何もかも足りないキヴォトスだけど、大将の工夫と情熱で作られたラーメンには熱い思いが乗っている。
大将が作った柴関ラーメンは具も何も無い試作のラーメンだが、非常に食欲をそそった。
「へい、おまち!これが今の柴関ラーメン、とりあえずのちぢれ麺バージョンでさ!」
「いただきます」
もう、見ただけで分かる。絶対に美味い。
何年ぶりだろう、こうしてラーメンを食べることが出来るのは。
丼からずずっと麺をすすると、ああ。美味い。醤油を使わずにこんな、美味い複雑な味が出せるのか、いや、本当に美味い。
大将も一緒に試食をしているが、一口食べて、もう手が止まらないようだ。
わかる。凄いわかる。
私と大将は、ずるずると麺をすすって、あっという間にラーメンを食べ尽くしてしまった。
「…………はぁ。美味しかった。ごちそうさまです」
「……こりゃあ、凄いな。うちのラーメンがここまで化けるとは……」
この世界に来てから時々襲われていた"ラーメンが無性に食べたくなる病"はこれでもう大丈夫。
美味いラーメンを食べて満足した時の幸福感よ、お久しぶり。
これでまたキヴォトスが一つ幸せになったね間違いない。
──ガチャ、と調理場のドアが開く。セリカのエントリーだ。
「んん、先生?おはよっ、大将もおはようございます」
「おはよう、セリカ」
「セリカちゃん丁度いいタイミングで来てくれたね、今先生が美味い麺を持ってきてくれたんだけど食べていくかい?」
「やった!頂きます!」
セリカはラーメン作りにもハマって、スープ作りから麺の茹でに、チャーシュー作りに、大体何でもこなせるようになってきている。
もし、柴大将が風邪で休むことがあっても一人で店を回せるレベルだ。
そして、動画への顔出しも何か積極的になっている。
きっかけは、試作のスープを私が飲む動画を撮ってる時に、折角だから大将もスープを飲んでる所を撮って、流れでセリカもスープを飲んでリアクションすることになったのだ。
一口スープを飲んで、宇宙猫のような顔をするセリカはバズった。それはもうバズった。
リアクションがわかりやすく、完璧だったのだ。
今もラーメン猫みたいなタイトルで切り抜き動画がSNSに大量に流れている位だ。
その動画のコメントを少し見よう。
Kayoko.O
7:05
猫ちゃん登場!!
♥1798
Meru.H
7:43
ラ ー メ ン 猫 元 ネ タ 確 認
♥9709
Kayoko.O
8:49
ここ、猫ちゃんの照れ隠しが可愛いポイント!
♥3580
Aru.R
また柴関ラーメンに行きたくなったわ!
♥668
Saki.S
柴大将もふもふで可愛いな……。
♥1177
Renge.F
新しい味のために試行錯誤……これもまた青春!
♥484
Momoi.S
スープめっちゃ美味しそう!今度皆で食べに行ってみたいな~。
♥521
Nodoka.A
寒い日に食べたら絶対美味しいやつです!
♥1227
柴犬の大将と猫のセリカでわんにゃんの柴関ラーメンはいい所だよ。一度はおいで。
そうこうしてると、セリカの分のラーメンも完成したらしい。
「あいよ、ラーメン一丁!」
「待ってました!」
一口食べて、その美味しさに生の"ラーメン猫"を披露するセリカ。
有名な芸人の有名な芸を見たような、そんな気持ちになれる。鍛えたねセリカ。
食べ進めていても、時々ラーメン猫になって、処理落ち状態になる位には今の柴関ラーメンを気に入ってもらえたようだ。
「あー……美味しかった。凄く美味しかったわ!」
「へへっ、こっからトッピングにネギとかチャーシューが乗っかるからな、柴関ラーメンの進化は止まらないぜ!」
「よっ、大将キヴォトスいち!」
「よせやい、セリカちゃん」
善きかな善きかな。
やっぱり美味しいご飯は人を笑顔にするね。後方腕組エグゼクティブ・プロデューサー面で頷いていると、セリカが私に声を掛ける。
「あ、そうだ先生。対策委員会の皆でラーメン食べるんだけど、先生も良かったらどう?」
「うん。お邪魔させてもらおうかな。久しぶりに皆にも会いたいし」
「営業時間中は超忙しいから、営業終了してから特別に皆の分のラーメンを作らせて貰える事になったの。…と、この時間のこの日に来れる?」
「時間を作って必ずいくよ。セリカの作るラーメン楽しみにしてるね」
「まっかせなさい!」
笑顔で力こぶを作るセリカ。うおっ、めっちゃ鍛えられてる……凄い。
ラーメン作りは一段落したが、これからも柴大将とは連絡を取り、色々と意見を交わすことだろう。
もしかしたら、その中ですっかりラーメン屋の風格が備わっているセリカの意見が役に立つ時が来るかもしれない。
その時はまたラーメン猫を見せてね。
「はい、普通の柴関ラーメン3つはホシノ先輩とノノミ先輩とアヤネちゃんね。チャーシュー増しはシロコ先輩と先生。ライスは先生と私。大盛りチャーシュー増し増しは私の分ね」
後日、アビドス廃校対策委員会の皆と私の計6人で柴関ラーメンにお邪魔している。
大将はスープの仕込みで場を外しており、完全に貸切状態だ。
……というよりよく食べるねセリカ。私以外にもそう思った人が複数居たのか、視線がセリカに突き刺さるが、スルーしている。強くなったね。
「「「「「「いただきます」」」」」」
わいわいと騒がしかった対策委員会の皆だったが、いざラーメンを食べ始めると、すっかりと食べるのに夢中になる。余計な言葉は不要とばかりに麺をすする音だけが辺りに響いていた。
うん、あらためて美味しい。チャーシュー増しにしたのは正解だったな。前の世界と違い、醤油が無いので違う味付けのチャーシュー。塩タレに浸けて、燻製したそれはベーコンと呼ぶべきかもしれないが、確かにチャーシューっぽさがある。大将特製の不思議で後を引く美味さの極上チャーシューは、何度食べても美味しい最高のチャーシューだ。
普通の柴関ラーメンを注文したホシノとノノミにアヤネは早々に食べ終えて、大盛りのラーメンを食べるセリカを見て、自らの失敗を悟る。
「なるほどねぇ。おじさんとしたことが見誤ったよ……次は絶対に大盛りを注文しよう」
「うんうん、次は大盛りチャーシュー増しですねー☆」
「あはは……こんなに美味しいのは予想外でしたね」
こころなしか得意気な顔をするセリカ。
この美味いラーメン作ったのは彼女なんだよね。ありがたい。
少し遅れて食べ終えたシロコが、そんなセリカを見つめる。
「ん、セリカは私の所に嫁に来るべき。大切にする」
「嫌よ。ラーメン目当てでしょシロコ先輩」
「………………そんな事は無い。猫耳目当て」
「結局身体目当てじゃない!」
シロコの最低の口説き文句を聞き流しながら、ライスを食べて、ラーメンを食う。
これだよ、これこれ。最高に美味いラーメンの食い方だよ。
そこにチャーシューが加わればもう、宇宙だよ。
幸せなラーメンタイムに仲良しな対策委員会、これ以上のものがあるだろうか。
「おじさんとしては先生と結婚したいな~。美味しい料理に囲まれて左団扇の生活がしたいよ~。1日中ごろごろしてたいよぉ」
ほんわかとホシノが最低の口説き文句その2を披露する。
「いいよ。披露宴は豪華な料理にしようか」
にやりと笑って返事をすると、ホシノもにやりと笑ってノってきた。
「うへへ~今から結婚式の料理が楽しみだね」
「ん、先生を寝取られて具合が悪くなってきた」
シロコはさっきセリカを口説いていたのに、私とは付き合っている設定らしい。
気が多いね。
「先生、あの空飛ぶ船に乗った時のことを思い出して。メインヒロインが誰だか自ずと分かるはず」
「出ましたね☆シロコちゃんのメインヒロインマウント」
「出たわね……」
「出たねぇ」
「先生の前でも出てしまいましたか……」
普段どれだけマウント取ってるのシロコ……。皆に言われるって相当だよ。
まぁ、流石に本気では言っていないだろうけど。……言ってないよね?
当然だけれど、私は断る。
「さっきまでセリカと付き合おうとしてたのに、メインヒロイン面する子はちょっと……」
「ん(重症)」
ばたり、とシロコが机に突っ伏す。
未だにラーメンを食べてるセリカは飯が更に美味くなったといった表情をしている。
「メシウマね!」
「せ、セリカちゃん、ダメだよ……」
表情どころか口に出してアヤネに窘められていた。
……君たち仲良いんだよね?先生、今どきのJKの事は分からないけど、信じてるからね。
突っ伏していたシロコはよろよろと顔を上げると、精いっぱいの抗議をする。
「せ、先生も気軽に結婚とかそういうのは良くないと思う。うん、良くない」
「ごめんごめん。でもホシノと結婚できるチャンスだったから、ね?」
適当に茶化した返答に、1年生組のアヤネとセリカは苦笑している。
ノノミはホシノと私の顔を見比べてとてもいい笑顔をしている。
「い、いやぁ……照れちゃうね……どうにも……うへへ」
顔を赤くして、これから入籍しますとでも言いそうなホシノ。
照れと嬉しさが乗った声は、本当に喜んでいるのが伝わってきて、こう、気恥ずかしい。
ちょっとピンク色な雰囲気になっちゃったな。ねえ、シロコ?
「ん(致命傷)」
……シロコ?……き、気絶してる。
つんつん、とノノミが突っつくが、悪夢を見ているかのようなうめき声が返ってくるだけだった。
そんなこんながあったけど、アビドスの皆も元気そうで良かった。
美味しそうにラーメンを食べていた皆を思い返すと、美食を広めて良かったと心から思う。
醤油の開発が出来たら豚骨醤油。煮干しや魚介の出汁を取った煮干しラーメン。
色々新メニューも考えてあるから、柴関ラーメンでまた一緒に食べよう。
ああ、そうそう。
「やっぱり柴関ラーメンはチャーシュー増しが最高!」
これだけは確かだって、先生思うわけ。
アロナとプラナも今度一緒にラーメン食べに行こう。
皆(一人は気絶中)の笑顔溢れる柴関ラーメンは、今日も美味しさと幸せに満ちていた。