地下生活者はチーレムしたい!   作:名無しのレイ

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第二話

「うーチーレムチーレム……」

 

 今、チーレムを求めて歩いている小生は、ごく普通の元ゲマトリア。

 強いて違うところをあげると、とんでもないチート能力を持ってるってことかナ。

 そんなわけで帰り道にある裏路地にやって来たのだ。ふと見ると薄汚れている裏路地に数人の若い女が座っていた

 

 ウホッ! いい女たち……。やらないか? ……それはともかく、時間は少し戻る。

 

 あのスケバンの過去に干渉にして大金を『差し込んで』おいていたら、スケバンの態度は急変化した。

 さーてそれじゃあな! あばよ! とふらりと外の世界に旅に出ようとした地下生活者を顔を赤くしながら引き留めにかかったのだ。

 

(ふむ、なるほど。いい金蔓を逃がしたくないという訳か……。確かに拠点となる場所は必要だろうしまあ住処を提供してくれるというのなら悪い条件じゃないか……。それはそれとして顔は赤いのは腐りかけたものを食べて体が熱を出しているだろうから体を大事にしたほうがいいと小生思うな!!)

 

 確かに地下生活者にとっても拠点、自らの住処は絶対必要である。手に入れた金を使ってこのボロボロの家はスケバンの不法侵入ではなく、きちんとした所有者として買い取りを行い、さらに住処の改修も行われている。それが終われば比較的快適な住処になるだろう。

 そこを拠点とするのは、地下生活者にとってもメリットがある。確かに悪い話ではない。

 ……それはそれとして、顔が赤いのは体を壊してるんじゃないか? と毛布で寝かしつけたり、色々なきちんとした食事を食べさせてあげたら、何かますます挙動不審になるのはホワイ? と彼は思っていた。

 

(小生のこの容貌でモテるはずもない……。となれば、やはり洗脳!! 洗脳しか勝たん!! 待ってろ美少女生徒たち!! みんな洗脳して美少女モブハーレムを作り上げてくれるわワハハ!!)

 

 地下生活者は、ホシノに対して行ったように特定の人間に対して洗脳……恐らく思考誘導能力を持っている。完全な洗脳能力とは異なり瞬時に術者に絶対服従を誓うような物ではないが、この能力の利点は効果が絶対的でない代わりに「自分の意志で選んだ」と誤認させる事ができるということだ。

 術者の関与を疑わせないし、術者本人を糾弾しても「それは自分で選んだ事だろう」と言い訳ができるのも大きい。つまり、いざとなったらこちらに向けられるヘイトを大幅に軽減させられるのだ。

(メタ視線で読んでいる「読者」と違って)

 この能力を上手く使えば、ブルアカのモブ生徒の思考を上手く利用してイチャラブハーレムを作る事も可能なはずである。

 

(こんな能力持っておいてチーレムを作らないとかバカじゃねーの? やっぱり時代はチーレムですよチーレム!! ハーレムイチャラブしか勝たん!! 人生勝ち組待ったなし!! やったね地下生活者ちゃん、明日はホームランだ!!)

 

「小生がブルアカのネームドメンバーに干渉すると絶対先生も切れるだろうし……。

 どこかにいい感じの干渉して文句が言われないハーレム要員はいないものか……」

 

 いわゆるブルアカのネームドメンバーを狙う気は彼には毛頭ない。大抵彼女たちは「先生」に心酔しきっているし、彼女たちをハーレム要員として引き込むなど、ボコボコのフルボッコにされても何一つ文句がいえないからである。

 そう!! ならば狙うはモブキャラ!! ネームドではないモブキャラならば!! いくらハーレム要員にしても文句は言われないはずである!! 

 

(わははは!! 待ってろモブキャラ!! 小生のハーレム要員に加えてやるでござるよぉおおお!!)

 


 

 ここはキヴォトスであり道を歩けば美少女はいくらでも生えている。

 そこらへんに美少女でも落ちてないかなーとひょいと路地裏に入り込んだ地下生活者は、路地裏にいた生徒たちに銃を突きつけられる。あちこちにつけられている紋章からすれば、彼女たちはいわゆる「アリウス生徒」だろう。

 エデン条約を終えたアリウス生徒たちは大半はキヴォトス内のトリニティ学園に保護された……らしい。だが、当然不俱戴天の仇であるトリニティ学園に保護された事に不満を持つアリウス残党生徒たちは多数存在した。トリニティの中には、テロリストの残党としてあからさまにこちらを見下してきたりバカにしたりしてくるモブ生徒たちも存在したのだ。

 そんな状況に嫌気がさして保護区から逃げ出したアリウス残党生徒は、スケバンやヘルメット団のように独自の勢力を築こうとしていたのだが、やはり金もなにもない彼女たち……しかも悪名高いアリウス残党に金や支援など手助けする存在はいない。

 保護下から逃れた彼女たちは、半分ボロボロの浮浪児化していたのだ。

 

「ベアトリーチェ様の統治していた時代はよかったなぁ……。少なくとも、我々がこんな惨めな状況にはならなかった……」

 

「あの羽根つきども……。私たちを露骨に見下しやがって……。あの時に一人でも多く羽根つきを道連れにしておけばよかった……。そうしておけばこんな事には……」

 

「今度は……。今度は私たちは間違えない。信じられる者の元で戦って喜んで死ぬ。それこそが私たちのやるべきことだったんだ……。あの時ベアトリーチェ様のための盾になって散っておくべきだったんだ……」

 

(ええええええぇぇ……)

 

 地下生活者、アリウス派のあまりの惨状にドン引きするの巻。というか明らかに思想的にヤバい方向になっているじゃないか。保護しているはずのトリニティ学園自身が彼女たちを迫害しているらしい。

 そして、その白眼視に耐えかねて彼女たちは保護下から離脱したのだが、外に出た彼女たちはさらに白眼視と苦しみにさらされる事になったらしい。このままいけば、彼女たちは間違いなくさらにろくでもないテロリストになってしまうだろう。

 

(ハーレム以前にあんな可哀そうな子たちを放っておけるかぁああああ!! 連邦生徒会もトリニティも何してるんだぁあああああ!!)

 

(小生が……。小生が何とかしなければならない!! 美少女は世界の宝!! 彼女たちを悲惨な末路にさせるわけにはいかない!! うぉおおお!! 突撃ィイイイイ!!)

 

 ザッ、と彼女たちの近くに近寄った瞬間、彼女たちは一斉に銃を向けてこちらに対して攻撃してこようとする。今の彼女たちにとって信じられる者は誰もいない。近づくものは全て敵である。

 だが、引き金を引いた彼女たちはかちり、と撃鉄が落ちるだけの音に思わず驚愕する。彼女たちの銃の銃弾は、全て『不発』だったのだ。数十人の銃が全て『不発』することなどあり得るはずがない。そのあり得ない状況に対して精鋭部隊である彼女たちは思わず驚愕の表情を浮かべる。

 

「無駄でござるよ。その銃の火薬は不良品で撃てないように『差し込んで』おいた。何なら他にも試してみるがいい」

 

 アリウス残党の彼女たちはマガジンを取り換えて再び撃とうとするが、さらにそれらも全てうんともすんとも言わない。グレネードランチャーや他の火器すらも何も反応しないのだ。

 地下生活者は、過去改変を行う事で、彼女たち全ての銃器の火薬を『不発弾』に差し替えたのだ。

 

(さて、どうしたものか……。ここで「救ってやろう」なんて上から目線だと絶対反発買うだろうしなぁ。とりあえず説得しないといけないとどうしよ。)

 

「ふむ、まずは落ち着くといい。小生は君たちに害を行うつもりはない。小生は──―。」

 

 だが、次にアリウス残党の生徒が行った行為は予想外の行動だった。なんと彼女たちの一人はいきなり地下生活者に対して土下座したのである。

 

「お願いします!! 私たちを助けてください!! 私たちは薬も!! 食料も!! 清潔な水も!! 包帯も!! 弾薬も何一つ足りないんだ!! お願いします!! 貴方は魔法使いなんでしょ!? 何とかして下さい!! 何でもする!! 何でもするからぁああ!!」

 

 見ればあちこち薄汚れた包帯姿のままアリウス生徒や弱って地面に寝転がっているアリウス生徒すらいる。

 こんな状態など、あのミネ団長が決して許すはずもないのだが、彼女たちはそのミネ団長の監視すら潜り抜けて脱出してしまったのだろう。

 

(やめろぉおおおおお!! ボロボロの少女が土下座するとかやめろよ!! 小生は可愛い女の子たちとイチャイチャしたいのであってこういうのは解釈違いなんだよぉおお!!)

 

 とりあえず、過去に『差し込んで』大金を獲得した地下生活者は早速アリウス残党たちを救うために活動した。はっきり言って地下生活者の能力なら、金なんて文字通り湯水のようにいくらでも合法的に湧き出させる事ができるのだ。もちろん連邦生徒会やらカイザーやら色々な企業はいきなり生えた異常な金の動きに警戒するだろうが、はっきり言ってあんな「雑魚ども」は地下生活者にとってはどうでもいい存在である。

 連邦生徒会だろうがカイザーだろうが、地下生活者のチート能力の前ではただの雑魚でしかない。

 地下生活者が恐れるのは「先生」のみ。トリニティだろうがゲヘナだろうが警戒が必要な存在でしかないのだ。

 大金だけではなく注文も『差し込んで』おいた地下生活者がぱちん、と指を鳴らすと同時に、道の表に数体のトラックが止まり、そのトラックの中から大量の荷物、ダンボールの山がどんどん積み重なっていく。

 

(うぉおああああああ!! 薬!! 抗生物質!! 医薬機器!! 新鮮な水!! 大量の清潔な包帯!! 大量の保存が効く食料!! 大量の武器弾薬!! とりあえずこれだけあれば何とかなるなヨシ!!)

 

 心の中で現場猫を決めている地下生活者をよそに、その山と積まれた無数のダンボールを見て、アリウス残党たちはぽかーんと口を開けて見守っているしかなかった。

 何とかしてくれ、と言ったがまさに秒単位で何とかしてくれるとは、流石の彼女たちの予想外だったのだ。呆然としている彼女たちだったが恐る恐る口を開く。

 

「お、お願いします! それならこの子も! この子も助けてあげてください! お願いします!」

 

 そこに背負われていたアリウス生徒は、白目を向きながら口をあけて虚空を眺めているだけの生徒……。ほぼ完全に精神崩壊してしまった生徒である。聞くところによると、彼女は幼馴染をベアトリーチェの命令により処刑した後、精神が崩壊してしまい役立たずとして放棄されていたが、さすがにアリウス生徒たちは見捨てられずに保護……そしてミネ団長の元で保護されていたが、信用できない、との理由で連れ出してきたとのことだ。

 

(おいいいい!! そんな重症患者連れ出してくるなぁあああ!! ミネ団長の元でしっかりした治療を受けさせてやれよおぉおおおお!!)

 

 地下生活者は心の中でそう叫ぶが、それだけ彼女たちがトリニティを信用していない、という事の証なのだろう。地下生活者も洗脳……正確に言えば「思考誘導」を行うことができる。*1これを利用すれば精神的な治療ができるのではないか?と地下生活者は判断したのだ。

 

(洗脳ができると言う事は! 逆に言えばそれを使って精神を治療する事もできるはず!! ぬあああ! 何とかなれーッ!)

 

 というわけで地下生活者の洗脳ASMR、もとい思考誘導を彼女に対して行ってはみるが……その結果は惨敗だった。思考誘導は対象を闇に落とすには効率がいいが、精神が壊れた人間を引き上げるには非常に効率が悪かったのである。ダメ元でやってみたのだが、思考誘導では精神が崩壊した人間に対しては治療が難しかったらしい。いや、カウンセラーなどなら可能かもしれないが、地下生活者では無理だったのだ。

 

(ぬあああああ! このままでは小生の権威がー!! ……ん?)

 

 そんな時、精神崩壊しているアリウス生徒の周辺をウロウロしている人魂っぽい残存神秘が地下生活者に確認できたのだ。困り果てたようにウロウロしている残存神秘に対して、地下生活者はこれはもしかして成仏できていない処刑されたアリウス生徒の残存神秘では?と考えた。

 

(何かいい感じに宿っている残存神秘を! 何かいい感じに説得誘導して!! 何かいい感じに彼女と会わせて!! 何かいい感じに説得させる!! うおお! 何とかなれーッ!!)*2

 

 彼女の周囲をウロウロしていた残存神秘(ほかの人間には見えないらしい)を説得して、ゲマトリアの術式で神秘を強化、そしてその残存神秘を彼女の中にシュート!!超エキサイティング!!

 後は彼女の内部、心の中にいい感じの心理空間を作り出して二人きりで会話させる! スピードワゴンはクールに去るぜ!!←いまここ。

 

―――精神崩壊したアリウス生徒の心内世界。

そこではうす暗い世界で体育座りで俯いている彼女の姿が存在した。

 

私が悪い。私が悪い。私が悪い。私が悪い。私が悪い。私が悪い。

私が悪い。私が悪い。私が悪い。私が悪い。私が悪い。私が悪い。

私が私が私が私が私が私が私が。私が私が私が私が私が私が私が。

 

 ひたすら呟き続けるそんな彼女に対して、そんな暗い世界を切り裂くように、光に包まれた天使のような姿をとった残存神秘……彼女の幼馴染の魂は、にこりと笑いかけて話しかけてくる。

 

(貴女は悪くないよ。貴女のせいじゃないよ。だからそんなに自分を責めないで。)

 

 幻でもいい。彼女は泣きながら幼馴染の魂にしがみついて、自分の思った事を全てぶちまけて、二人だけの長い対話の時間が始まった。

 

「あ……うう……。こ、ここは……。」

 

 幼馴染の残存神秘との長い対話の後、何とか残存神秘が彼女を説得できたのか、精神崩壊に陥っていた彼女の精神は現実世界へと帰還していた。彼女は、この世界で贖罪することを選んだらしい。

 

(何とかなったぞ!! 小生凄くない!? めっちゃ凄い!!)

 

 その瞬間、アリウス派の残党生徒たちは一斉に大歓声を上げた。底辺を這いずり回って惨めな生活を送っていた自分たち。ベアトリーチェ様がいた時の方がよかったとまで言い出す生徒たちがいるこの状態でありとあらゆる品物を与えてくれ、精神が壊れた同胞すらも救済した存在。そんな存在が彼女たちにとって「救世主」「癒し手」「魔法使い」と見えても何の不思議もなかった。

 

「地下生活者様!!」「魔法使い様!!」「我らが新たなる救世主様!!」「そうだ!! 彼こそ我々の新しい指導者にして救世主様なんだ!!」「救世主様!!」「救い手様!!」「癒しの手様!!」「導き手様! 教導者様! 我らの行先を導かれる方!!」「どうか我らをお救い下さい!! 我らに救済を!!」「我らに救いを!!」「我らに救いを!!」「救済を! 救済を! 救済を!!」

 

 確かに悪そのものではあったが、ベアトリーチェがアリウス生徒の精神的支えであった事もまた事実である。その心の支えが無くなった時に、全てを与えて救済してくれる存在が表れて自分たちを救ってくれたらどうなるか? 答えはこうである。

 必死で縋りつくように手を伸ばしてくるアリウス生徒。そして自らに対して祈りを捧げてくるアリウス生徒を見て、彼女たちの目に宿るその狂信的な光に、地下生活者は思わずうわぁああ!!と心の中で叫びを挙げた。

 

(うぉおあああああ!! 見るなぁあああ!! そんな目で小生を見るぁあああ!! というかこれカルト宗教の教祖に祭り上げられる流れそのままじゃねーかぁああ!! 小生は!! 小生はただハーレムを作りたかっただけなのに何故こんなぁああああ!!)

 


 

Q:何でアリウス残党に手を出さないの?

A:目が……目が狂信者の目で怖い……。小生はぁ! イチャラブハーレムがしたいんであってぇ! こういうのは解釈違いでぇええす!!

 

 

*1
当作品の独自解釈です。

*2
大体ノリはちいかわ。

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