地下生活者「美少女最高! 美少女最高! イェイイェイ!! お前も美少女最高といいなさい!!」
──―トリニティとD.U.の境界領域に存在する無数の廃屋。その廃屋の一角を地下生活者たちはきちんと金を支払って買い取り、自分たちの拠点地へと変えつつあった。
何故よりによってこんな所を選んだかと言えば、トリニティとD.U.……連邦生徒会のちょうど境界地点に陣取れば、二勢力も面倒だからそうそう手は出せないという判断だからである。*1
もちろん、当然二勢力から挟み撃ちされる危険性も大いにあるが、今の弱体化して混乱状態にあるトリニティと連邦生徒会など大したことはない。(ミカなど決戦存在が殴り込んでくるのでもなければ)最悪、拠点地を放棄してさっさと逃げればいいだけの話だ、と地下生活者は判断したのだ。
(念のため、D.U.の方面にも逃げ込める用の隠れ家を作り上げる予定である)
(まさかこんな弱小戦力に決戦兵器のミカとかが殴り込んでくるはずもない。それ以下はただの雑魚でしかない。それ以外など恐れるに足らずだ! ましてや連邦生徒会など!! というか連邦生徒会、困ってる美少女を救わずに何やってんだよクソどもが!!)
実際は連邦生徒会も大混乱状態であり、それどころではないというのは地下生活者も知ってはいるが、目の前で餓えや寒さに苦しんでいる美少女たちに何もせず黙殺している連邦生徒会に対してヘイトを向けてしまうのは、彼の視点から見れば仕方ないだろう。
はーホンマクソだわ、と地下生活者が歩いていると、アリウス生徒は彼を見た瞬間、直立不動になって銃を胸に当てて構える。
「我らの救世主! 我らの先導者たる地下生活者閣下に! 捧げー! 筒!!」
以前保護したアリウスたちも、ボロボロの姿からきちんとした衣食住を与えられたり、傷の治療を受けたりして大分まともになっている。あの精神崩壊していた生徒も大分具合は良くなってきているようだ。
弾薬などの補充を受けた彼女たちは、自主的に周囲の警戒に当たり、その隙のない動きは流石厳しい訓練を積んだ兵士と言えるだろう。
(彼女たちもきちんとした自立をさせないと……。やっぱり傭兵とか護衛任務とかPMC活動が鉄板か……。彼女たちの実力なら引っ張りだこだろうしな)
だが、そこで地下生活者はふとある事に気づいた。そう、それは人数である。元は十数人だったのが百人規模になり、さらにどんどん膨れ上がっているのだ。
「……ちょっと待って。何かやたら増えてない?」
「はっ! トリニティにいたアリウス生徒のほぼ十分の一がこちらに合流しつつあります!
残りも半信半疑ですが、こちらに合流してくると思われます!!」
うーん……まあ……いいか! と地下生活者はいともあっさりとそれを受け入れた。
美少女が増えるのならこちらとしては万々歳!! 断る理由なんてどこにもない!! 一気に1000人ぐらいまで流れこんで来なきゃ何とかなるでしょワハハ!! と地下生活者は気楽に考えていた。
「……このままじゃまずいな。何とかしなけりゃ」
そう呟いたのは、地下生活者に真っ先に救われたスケバンだった。このままでは数を増やしたアリウスたちにこの場所を乗っ取られてしまい、自分は爪弾きにされてしまう。
そして、それを防ぐためには、自分たちの仲間……スケバンたちをどんどん引き入れて仲間を増やす事だった。
地下生活者自身も「美少女たちが増えるのならいいでしょ!」と気軽に賛同し、スケバンたちの仲間がどんどん増えた彼自身は気づいていないが、現在、この場所はアリウス派とスケバン派の冷戦状態になっているのだった。
そして、そんな彼女たちに対して、目を付けたさらなる第三者勢力が存在した。それはいわゆる「ヘルメット団(の一部)」である。
「ハッ! あいつらは簡単に篭絡されたみたいだが……アタシたちはそうはいかないぜ!」
「そうそう、アタシたちヘルメット団はそんなにチョロくないぜ! アタシたちは上手く美味しい所だけいただく!! ちょっとした事で篭絡されるとかアホな事はしないぜ!!」
ヘルメット団は、その代名詞であるヘルメットを脱いでスケバンに紛れ込む事で配布されている携帯食糧を掠め取ろうとしていたのだ。やる事がショボいと言われるかもしれないが、ヘルメット団も生きるのに必死なのだ、そんな事は言っていられない。彼女たちにとっては携帯食糧は命綱であり、その命綱が無償配布されるとあっては並ばない理由がない。だが当然、そんな事がバレないはずもなかった。
「こいつらヘルメット団だ! スケバンになりすまして食料をチョロまかそうとしやがって……許せねぇ!!」
「地下生活者様の御心を無碍にする愚か者め!! 処刑だ処刑!!」
それに気づいたスケバンたちとアリウス生徒たちは思わず怒りを顕にして処分しろ! といきり立つが、当の地下生活者の対応は実にのんびりした物だった。
「まあまあ……このくらいで怒らないの。これぐらいのチョロまかし可愛いもんだし。
それに君たちもこれぐらいじゃ足りないでしょ? ちょっと待っててね」
ドンドンドン! と彼女たちの前に携帯食糧が満載したダンボール三箱が置かれて、擬装していたヘルメット団は思わずポカーンと口を開けていた。
「とりあえずこれでいいでごさるか? 本当はね……美少女たちには美味しい物を食べさせてあげたいんだけど、手持ちで日持ちするのがこれくらいしかなくてね……」
「ち……地下生活者様!! いくらなんでもそれは……甘すぎます!! 文字通り盗人に追い銭ではないですか! 泥棒にタダで食料を分け与えるなんて……!!」
そのアリウス生徒の反論に、地下生活者はすっと背筋を伸ばして無表情になる。その静かな威圧感に思わず後退りするアリウス生徒に彼は静かに言葉を放つ。
「美少女はね、綺麗な服を来て、美味しい物を食べて、楽しそうにニコニコ笑ってなきゃいけないの。*2美少女たちが餓えて苦しんでるなど……小生には耐えられんのだ!!」
それとも何か? 小生の判断に異を唱える気か? と聞くとアリウス生徒は背筋を伸ばしてそんな事はありません!! と直立不動して返答する。
(別に小生は救世主でも聖人でもない。この世界の全てを救えるとは思っていない。けど美少女だけは救う!! *3少なくとも救う努力はする!! 美少女最高! 美少女最高! お前も美少女最高と言いなさい!! イェイイェイ!!)
小生、聖人ならぬ性人てか? やかましいわガハハ!! チーレム王に……小生はなる!! と一人で脳内ボケツッコミしている上機嫌な地下生活者に対して、スケバンとアリウス生徒たちは深刻そうに目配せを行ってこっそりと頷いた。
ーーー拠点内の会議室(仮)。そこではアリウス生徒とスケバン、そして(何故か)ヘルメット団の一部も存在していた。
アリウス生徒は、会議室の机を叩きながら思わず激昂する。
「あの方は甘い! 甘すぎる!! このキヴォトスでそんな甘さを見せたらどうなるか!! 砂糖に群がるアリのように有象無象が救いを求めて押し寄せてきてしまう!!」
彼女が激昂しているのは、地下生活者自身の「甘さ」……正確に言えば「甘さを食い物にしようとする有象無象」である。確かに地下生活者の甘さは大きな美点であり、彼女たち自身も救われた以上大きな事は言えないが、この治安最悪のキヴォトスでは、それを貪ろうと老若男女が餓鬼のように襲いかかってくるだろう。それだけは防がなくてはいけない、と地下生活者に心酔している彼女はそう考えているのだ。
「……ぽっと出のアンタたちは気に入らねぇけど、確かにその通りだ。今のままホイホイ無尽蔵に物資を放出していたら絶対どこかであの人は倒れてしまう。何とかしなきゃならねぇというのには賛同だ。
だがそれ以上に気に入らねぇ事がある。……何でお前らここに参加してんの?」
じろり、とスケバンは隅で小さくなっているヘルメット団を睨み付ける。あのままこそこそと帰っていくと思っていた彼女たちは、何故かそのままこちらに協力を申し出たのだ。
「ふ、ふざけるな! アタシたちだってプライドはある! 乞食みたいに物を恵んでもらってハイさようならじゃヘルメット団の誇りが廃る!! 貰った分は手助けをする! それがヘルメット団だ!」
確かに言ってる事は全うだ。しかし、それで借りを返すついでに、あわよくば自分たちも取り込まれれば少なくとも食糧、物資には困らないだろう、と考えているのは目に見えていた。だが、それは戦力を求めていたアリウス生徒&スケバンにとっても渡りに船である。
その意思を確かめると、アリウス生徒は静かに言葉を放った。
「……そこで『同盟』だ。我々「アリウス分校」、貴女達「スケバン」「ヘルメット団」は、地下生活者様とこの地を守るための三者の『永久盟約』を行い、お互いに手を組む。この地を『絶対中立地帯』『聖域(アジール)』として他校や他勢力からの侵攻を撃退する。これでどうか?」
むう、とその言葉にヘルメット団は腕を組んで考えこんだ。
「別に構わないけど、ヘルメット団は無数にあるぞ? アタシたちは協力するけど、他のヘルメット団はどう出てくるか……。スケバンたちだって同じだろ?」
だが、そのヘルメット団の言葉に対して、スケバンはそれを否定するために首を左右に振った。
「いいや、アタシたちスケバンには『旗印』がある。「あの人」さえこちらに来て力を貸してくれたら、スケバンたちは少なくとも地下生活者様には手を出さない。むしろ防衛戦力として手助けしてくれるはずだ。あの人にはそれだけのカリスマと力がある。ウチらの──―『姐様』はな」
「お、お前!! まさかあの女を味方に引き入れようというのか!? た、確かにあの女の実力はアタシたちが嫌というほど知ってるけど……おいふざけんなよ! アタシたち無茶苦茶復讐されるじゃんか!! 勘弁してくれよ!!」
「ウチらも話は通しておくから会ったら”土下座”かましておいた方がいいぜ? まあ、ウチらから話通しておいて土下座するのなら姐様も許してくれるだろ……多分」
「地下生活者様!! お喜びください!! うちらの「姐様」、『伝説のスケバン』が力を貸して下さるとの事です!! 地下生活者様の資金力&物資!! ウチらの姐様の暴!! この二つが揃えば連邦生徒会といえど手は出せない!! まさに”天下無敵”!! ”鬼に金棒”っすよ!!」
スケバンからその「姐様」とやらのルックスを聞いた地下生活者は思わずテンションが上がった。それはまさに彼好みのルックスの美少女だったからだ。
(美人!! 金髪!! おっぱい大きい!! 巨乳!! *4お嬢様口調!! しかも強い!! 勝ったなワハハ!! この戦い小生の勝利だ!! 小生のチーレム生活はここから始まるのだ!!)
ゴリラゴリラ言っても蒼森ミネや聖園ミカを見れば基本的に美少女が凄まじい力を持っているというのがブルアカ世界のお約束だ。筋肉質と言っても美少女からは外れない……はずだ。
おまけにスケバンたちにあれほど慕われているということは人望もあり性格もまともだという事。
美少女最高! チーレム最高! イェイイェイ!! お前も美少女最高といいなさい!! と彼は心の中で叫びながらスケバンたちの『姐様』『伝説のスケバン』を出迎えに向かった。
「うふふっ。こんにちは。皆様方。美しい夜ですわね」
──―その女は、筋肉(マッスル)だった。
地下生活者やその場にいる女性たちより遥かに高い長身。
そして、ボディビルダーもかくやと言わんばかりの鍛え抜かれた筋肉の塊。鍛え抜かれた上腕二頭筋やシックスパックすら遥かに越える筋肉の塊である腹部はまさに筋肉の鎧そのものであった。
そして愛銃のブローニングM2重機関銃「エリザベス」を肩に担いで、M202ロケットランチャーを片手に持つその姿は、某コマンドーのBGMのデェエエエエエエン!! という曲が流れそうな勢いだった。
( ゚д゚)
( ゚д゚ )*5
パワー系と聞いていたので、てっきり聖園ミカ系の美少女が来ると来ると思っていた地下生活者は、予想外の筋肉マッチョモリモリ美少女が来たのを見て思わず白目を向いてしまう。
(し……。小生砕けちゃ~う……)
(ちゃうねん……。小生の思ってたのと違うねん……。小生てっきりミカ系だと思ってたねん……。だ、だってよ!! ブルアカ世界でお嬢様ゴリラって言ったらミカやミネ系の美少女だと思うじゃん!? まさかこんな……本気で筋肉ゴリラみたいな女性が来るなんて思わねぇよ!!)
「『伝説のスケバン』七囚人が一人『栗浜アケミ』……!! こいつら本気で呼びやがった……!!」
そのヘルメット団の呻き声に、栗浜アケミはにこり、と華のように微笑んだ。*6
ーーートリニティ学園内部、アリウス生徒が行方不明になっているというミネ団長(自分でもさっそく探しにいっている)の報告がナギサに入っている中、それを聞いている一人の少女がいた。
「……? 何か最近保護していたアリウス生徒の数が減ってる?」
「へぇ、ミネ団長もナギちゃんも色々調べてるんだ。うーん、私は比較的暇だし……調べてみようかな。勝手に脱走したのなら「説得」しなくちゃね! それじゃゴーゴー! 行ってみよう!」
次回!襲いかかるトリニティゴリラ!お楽しみ!!