さて、この地点で地下生活者は大きな問題に突き当たった。それは簡単に言うと「金」である。
住んでいる場所の修復などはトリニティ学園からの金で何とかなったが、それでもこれだけの人数にきちんとした衣食住を提供するのはやはり金がなければ何事も始まらない。
金を稼がなくてはならないと地下生活者が一番最初に目をつけたのは、やはりアリウス派の武力・戦力である。こちらに忠実で極めて高い戦闘能力を持っているアリウス派の戦力を活用しない手はない。
つまりアリウスたちを傭兵やボディガードとして運用する『民間軍事会社』として金を稼ぐという方法である。
そのために作り上げた会社が《民間軍事会社【ロゴス】》これが地下生活者が新しく始めた事業である。
ますは最精鋭であるアリウスたちを派遣して【ロゴス】の評判を高めて注文を勝ち取り金を稼ぐ。
慣れていけばヘルメット団(特に彼女たちの保有している戦車はロゴスにとって極めて重要な戦力である!)やスケバンたちも【ロゴス】として働いてもらう予定である。
そんな風に【ロゴス】はブラックマーケットのみならず、あちこちの「大人」のボディーガードや戦力としての活動を始め、熟練兵士であるアリウス生徒たちの戦力としての評価は非常に高いものだった。
だが、年若い綺麗な少女たちが護衛として働くとなれば、当然不埒な事を考える輩も出てくる。
もちろん、そこまでいけばアリウス生徒たちも反撃するだろうが、ギリギリを責める……いわゆる「セクハラ」をしてくる「大人」たちはやはり多かった。
「いやあ、中々ボディガードとして優秀ですなぁ!! 戦闘訓練も積んでいて手駒として最適! いやあこれからも贔屓にさせていただきますよ」
にこにこと地下生活者にそう言ってくるのは犬の顔をした獣人の一人である。そんな彼の傍に立っているのは、無表情でバニー姿にされたまま立っているアリウス生徒の一人である。
ボディーガードを頼まれたので人員を派遣したのだが、年若い女性なら華のある格好を! という事でバニースーツを着せてお酌をさせて楽しんだらしい。もちろんこれが無理矢理性的な事をしたのなら、アリウス生徒から銃弾を叩き込まれても文句は言えないが、彼としては契約のギリギリをついた感じである。
極めて不機嫌で憮然とした顔のアリウス生徒をいやらしい目つきで見ながら、その獣人は言葉を放つ。
「まあちょっとバニーにしてですなぁ……。お酌をさせていただきましたけどな……。ま! これぐらいはね! これからも贔屓にさせていただくという事でね! 今度は寝室でのボディガードとか頼みたいですなぁ! ガハハ!!」
「なるほど……。つまり……『契約違反』とそういう事ですな」
ぱちん、と地下生活者が指を鳴らすと、ロゴスのメンバー……アリウス生徒たちが一糸乱れぬ行動で獣人である社長を取り囲む。その彼女たちが発生する威圧感に、社長は圧倒されて怯える形になってしまう。
彼女たちも自分の仲間が辱めを受けて怒り心頭であることは間違いない。皆無表情ではあるが、彼女たちから無言の怒りのオーラが感じられる。そして、そんな彼女たちの後ろから、地下生活者は淡々とした言葉を放つ。
「お客さん、困りますよ……。ウチの子にトラウマを負わせるような事をされてしまっては……。
『契約違反』ということでね。ちょっと裏で『違約金』のお話をさせていただきましょうかね……?」
そういう地下生活者の背中には、拳を鳴らしながら、ぬうっと姿を現す七囚人の『栗浜アケミ』の姿があった。
並みの男性(この世界はロボなどしかいないが)より遥かに背の高い筋肉の塊の女性が拳を鳴らしながら威圧してくるのだ。ここで逆らって殴り倒されたら、ヘイローも存在しない獣人の体はどうなるか全く予想がつかない。
その獣人の社長は下半身のズボンを濡らしながら言われるままに「違約金」の小切手を差し出し、そのまま悲鳴を上げながら全力逃走していった。
「……どこからどう見ても美人局ですわねこれ。」
アケミはそれを見て呆れたような声を上げる。結果だけ見たら美人局と言っても過言ではないだろう。
だが実際は向こうが契約違反でやらかしただけのツケを払ってもらっただけで、こちらは被害者である。
「結果的にそうなっただけで意図してやったわけではないからノーカン! ノーカン!」
地下生活者も焦ってこうは言っているがやはり被害者であることには変わりない。治安がもはや死んでいるといっても過言ではないこのキヴォトスの地。信じられるのはやはり力のみであり、舐められたら終わり! の世界観である。信頼できる企業であると同時に舐めた事をされたら殴り倒すという事も周知しておけば、そうそう今回みたいなろくでもない事をする人間たちもいなくなるだろう。
ともあれ、バニー姿というセクハラを受けて頑張ってくれたアリウス生徒のメンタル保護もしなければならないが、自分のような人間が美少女たちに変なことを言ってセクハラ扱いされるのも、キモいおっさん扱いされるのも怖い。どうしたものか……と地下生活者は頭を悩ませていた。
「小生みたいにキモいおっさんが言ってもキモがられるだろ!? 小生キモいといわれるのが何よりトラウマ!! え? いいから行け? 甘いもの差し入れてこい? トホホ……。これもチーレムのためチーレムのため……」
そんなウジウジ言っている地下生活者に対して、アケミはいいから行きなさいなと睨みつけて、そんな彼女の言葉に彼はふぁい……とおとなしく従うしかなかったのであった。
そんな風にアリウス生徒たちに傭兵稼業を行ってもらっている間にも、地下生活者は己のやるべき事を行おうとしていた。それは原作知識を生かした原作打破ルート……つまりホシノ・テラー降臨阻止である。
ホシノ・テラーを降臨するために暗躍している自分がいないのだから、ホシノがテラーになることはありえまい。
だが、その阻止のための手は打つべきだろう。そして、その大きなきっかけとなるのは、アビドス砂漠に眠っている『列車砲シェマタ』である。
雷帝の遺産であるシェマタの情報を流すだけでマコトは本気で動いてシェマタ確保に動く。
カイザーやほかの勢力が小細工をしても、本気で動いたマコトはそれら全てを粉砕してシェマタの破壊を行うだろう。だが、どこの馬の骨とも知らない地下生活者が流してもゲヘナが本格的に動かないだろうし、アビドスのメンバーもゲヘナが動いたらそれに対抗して動いてしまうだろう。
ならば、アビドスとゲヘナに強い繋がりがあり、ゲヘナに対しての信頼できる情報源、そしてアビドスに対して動かないでほしいと言える影響力のある人間、つまりは『先生』に動いてもらうことにしたのである。
先生とある程度交流を持つ事に成功した地下生活者は、きちんとアポイントメントを取って真正面からシャーレへやってきて先生との会話を行っていた。
「と、いうわけで……アビドス砂漠には『厄ネタ』が砂漠の中に埋もれている。列車砲『シェマタ』
かつてアビドス生徒会とゲヘナの『雷帝』が開発した超兵器とも言える代物だ。
アビドス自治区から手を引いたカイザーコーポレーションなどもこれを手にするために動き出すだろう。
何としてもこれを破壊しなければならない。」
「ゲヘナの生徒会長『羽沼マコト』と『空崎ヒナ』に「アビドスの砂漠には雷帝の遺産がある」と直接情報を流してほしい。彼女たちから信頼を寄せられている『先生』ならば信じてくれるだろう。後は『ホシノ』に話を通してマコトとヒナがシェマタを破壊するのを干渉しないようにしてほしい。
「雷帝の遺産」と聞けばマコトも本気で動いて破壊してくれるだろうから、後は彼女たちに任せればいい。ここまでが小生の話せる地点である。どうかな?この通り彼女たちに情報を流してもらえないだろうか?」
地下生活者の言葉を聞きながら、「先生」は鋭い視線で地下生活者を射抜く。この情報提供の目的はアビドス砂漠に埋もれている列車砲『シェマタ』の破壊の依頼。
ホシノが暴走したきっかけはシェマタを巡る争いである。ならば先手を取ってシェマタを破壊して原作ルートを回避する! シロコ・テラーに銃を突き付けられるのは御免だ! というのが地下生活者の本音である。
今の彼は本編と異なり、ホシノ・テラーを呼び起こすなんて真似などする気も起きない。
美少女を精神的にいじめて何が楽しいんだよ! アホか!! おじさんのトラウマを呼び起こすな!! という気持ちである。その地下生活者の話を聞いた先生は、すっと目を細めて指を組みながら地下生活者へと問いかける。
「……なるほど。でもそれが本当に信頼できる情報なのかな? 悪意のある情報を流して僕やゲヘナやアビドスに対して悪い方向に動かそうという保証はないよね?」
そこですっと先生は目を細める。性癖を晒しあって意気投合した彼らであったが、ビジネスの話となればまた別である。そもそもどこでそんな情報を知ったのか? 何を目的にしてその情報を流すのか? と突っ込まれたら地下生活者は黙り込むしかない。未来知識であるホシノ・テラーの事を口にしたら絶対に大揉めになるのが分かりきっているからである。と、なれば別の品物で何とかするしかあるまい。
「そこで先生には信頼の証として「これ」を用意しました。どうぞお収めを……」
「こ、これはまさか……!!」
地下生活者の差し出した箱……それは地下生活者がブラックマーケットのコネ(と暴力と金)を使って手に入れた限定レアプラモデルの箱である。ロボ好きな先生ならばプラモも好き。そう考えた地下生活者はこのプラモデルを先生の好感を得るための交渉材料として活用しようとしているのである。
貴重なロボプラモであるカイテンジャープラモデルを見て、先生の顔がキラキラと輝いているのを見て、ここで押し切るしかない!
「そう!! ブラックマーケットで手に入れたカイテンジャーロボ『KAITEN FX Mk.0』のプラモデル!! これでどうぞ……何卒!! これでだめならロボ系プラモデルの仕入れを頑張りますので……。
さらにはウチの地下に自分だけの「秘密基地」を作っているので……そこに先生も避難権利を差し上げますので……!!」
「ひ……秘密基地!?」
「ひ、秘密基地に”プラモ”……持ち込んでいいんか!?」
「持ち込んで良しッ!!」
「秘密基地で”お菓子”や”ジュース”持ち込んだり、いい感じの”木の棒”持ち込んだりしていいんか!?」
「持ち込んで良しッ!!」
「秘密基地」の一言でうぉああああああああ!!と盛り上がっている二人を見て、シッテムの箱内部にいるアロナとプラナは(何やってんだこいつら……。)という白い目で見ていたが、テンションが上がっている二人はそれを気づくことはなかった。
「あっでもこれは生徒を利用する形になりかねないから慎重に行きたいな。ちょっと考えてみるから少し待ってほしい。」
うわああああ!急に冷静になるな!と思わず突っ込みたくなったが、先生を頼らざるを得ない地下生活者は大人しく先生の言葉に頷くしかなかった。
「アッハイ。」
「……ねえねえ。知ってる? どこかに『死者を死ななかったことにすることができる』能力者がいるんだってさ。まあ噂で聞いただけなんだけどね。その能力者がいれば何でも願いが叶え放題なんだってさ!」
「えー? ヤバー。マジ凄いじゃん。……いやいや。そんなのありえないでしょ。そんな化け物みたいな事できる人間なんていないって。もしいたとしたら……マジヤバイって。皆ソイツを狙って動き出すじゃない。都市伝説ってヤツ?」
「そんなヤツいるわけないよねー!アハハ!」
地下生活者「原作ルートなんてお断り!阻止しまーす!」
某生徒会長「ダメでーす。できる限り修正しまーす。」
大体こんな感じ。