狩人さん、新エリー都へ逝く 作:ネットの狩人
黒雁街跡地。
白祁重工が主に作業を行う場所であり、今回のアルバイトの面接場所として指定された場所でもある。
「えーと……それで履歴書は?」
「履歴書とは何だ?」
狩人はアルバイト面接の前に色々と頓挫した。
今回の面接官として応対しているベンは非常に困惑しつつ狩人の常識の無さや履歴書を持ってこないやらと言う立ち振舞いに困り果てていた。
服装は良い……新エリー都には一風変わった服装をする者等探せば沢山いる。
アルバイトの面接とは言え、狩人だけに指摘するのは流石に酷と言うものである為、そして比較的温厚な性格のベンもそこは触れなかった。
しかし……。
「困るよ……履歴書が無いと面接所じゃないよ……?」
「そうか……アルバイトなるものは出来ないのか……」
「いや、常識だからね?履歴書を用意するのは……」
正社員だろうとアルバイトだろうと連絡先やアピールが書かれた履歴書は用意するものである。
ベンとしては白祁重工に入社してから何年も経つがまさか此処まで常識外れの世間知らずに出会うとは思っても見なかった。
そして狩人もまた、まさか履歴書なんて物が必要だとは予想外だった。
流石に会って即採用なんて事は無いと思っていたが交渉する以前の事態になるとは思わなかった。
「「う~ん……」」
二人は何処かの玉ねぎの唸り声よろしく腕を組んで困り果てた所で。
「まだ面接してんのか?」
そこへ白祁重工のアンドーが通り掛かり、ベンが困った様に溜め息を吐いた後、事情を言う。
「この面接に来た……えーと……狩人?さんが履歴書を持ってきていないそうでな……最初は忘れてきたのかと思ったがどうにも最初から用意していなかったらしい……」
「はぁッ!?俺でも履歴書くらいは用意するぞ!?どんだけ世間知らずなんだお前!?」
「すまない……」
何だか申し訳なく思えてきた狩人は流石に採用されないと考え始めた時、アンドーが炎が燃え上がる様な勢いで提案した。
「なら、実際に仕事をこなして貰おうぜ!俺達にアルバイトの応募に来たんだ!それなりに体力には自信があるんだろ?」
「えぇッ!?採用もしないのに働かせたら社長にドヤされるぞ!?」
「流石に本格的な作業はさせねぇよ。軽いテストの様なもんだよ。なぁ、相棒!」
アンドーはそう言ってハンマードリルに向かって相棒と言う姿に狩人は少し親しみを持てた。
「ふむ……貴公は道具を大切にするのだな?」
「あたぼうよ!何だ?お前も相棒を持っているのか?」
「似たような武器ならあるぞ。これだ」
狩人はそう言って見せたのはパイルハンマーだった。
仕掛けは単純、備えられた杭を押し込み、敵に向かって叩き付ける様にぶつける事で一撃必殺の威力を叩き出せる破壊力とロマン特化の火薬庫由来の仕掛け武器だ。
扱いこそ難しいが使いこなせばどんな強敵であっても大打撃を与えられる高い可能性を持つ仕掛け武器の為、狩人のお気に入りの一つだ。
「おぉ!お前もなかなかのもんを持ってんな!気に入ったぜ!」
「俺も貴公の相棒も素晴らしいと思う……うん!その武器なら獣を更に良い一撃を与えられるだろう!俺も欲しいくらいだ!」
「獣?何だが知らねぇがその武器はうちの作業を楽にしてくれそうだぜ!お互い良い相棒を持ったもんだな!」
「あぁ!」
互いにほぼ似た様な武器を持ち合わせていた事で狩人とアンドーが急速に仲を深めた事でアンドーの提案が現実味を帯びつつあった。
一方のベンは内心では上手く狩人に帰ってくれると思っていたので再び溜め息をついた。
ベンは内心、狩人を初めて見た瞬間、ゾッとする様な悪寒に襲われた。
ベンは訪れた狩人をよく観察し、何故、そんな悪寒を覚えたのかと探れば狩人から出ている不吉な気配とそして一瞬の殺気だった。
不吉な気配は兎も角、一瞬とは言え何故、殺気を向けられたのかベンは分からず狩人は明らかにヤバい何かだと悟って上手く追い返そうと考えたのだ。
此処にはベン以外にも熊のシリオンが沢山働いている。
狩人を正式にアルバイトとして雇って白祁重工に不和が生じるなど人手不足解消の為の策で起こってしまうのは目も当てられない。
それにもし、万が一に作業員に狩人が手を出したとしたら……ベンは嫌な考えばかりが過り狩人がテストに合格する事がない様に祈った。