個性『魔法少女』   作:Assassss

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感想、誤字報告、高評価等ありがとうございます。

オリジナル(ヴィラン)が出てきます。今回だけの出演の予定です。


入学編
JCが(ヴィラン)を超おだててみた!


「あああー!!!志望校変えたいけど変えたくないーーー!!!」

「あ、あはは……でもほら最低ランクじゃないし……ね?」

「下から2番目じゃん!私勉強めっちゃ頑張ったんだよ!それでこれってひどくなーい!?」

「そうよ。あなたはあまり頭が良くないんだから、もっと頑張らないといけないわ。私も出来る範囲で手伝うから。」

「ほむらぁ……それ絶対励ましてないよね!?むしろ貶してない!?」

「手伝うのは事実よ。同じ魔法少女仲間が別の学校って、かなり面倒だと思うわ。」

「ううう!うがああああーーーーー!!!」

 

さ、さやかちゃんが机をすごい勢いで叩いてる。魔法少女なんだから気を付けないと机が壊れちゃうよ……

 

今の季節は秋に差し掛かるころ。最近は高校受験のために勉強漬けで大変です。今日は模試が返ってくる日で、私とほむらちゃんは大丈夫だったんですが、元々勉強があんまり得意じゃないさやかちゃんが結果が悪いみたい。もちろんさやかちゃんはサボってるとかじゃない……はずです。毎日ほむらちゃんに手伝ってもらって、時間停止で勉強時間を作ってもらって一緒に勉強している時間があるんですけど、その間はちゃんと真面目にやっています。

 

「……さやかちゃん、諦めないで頑張ろうよ。みんなで一緒の高校に行きたいのは私も同じだよ!」

「そうよ……私だって、私だってめっちゃ同じ高校に行きたいよぉ……!……で、でも、こんな調子だったら私高校入ったらどうなっちゃうの……?そもそもついていけないんじゃ……!?」

 

言われてみると……確かにそうです。無理してレベルの高い所に入っても、入った後のことを考えるとあんまりさやかちゃんの為にならないかも……?

 

「……いっそ、みんなで志望校変える?」

「え……いや、そこまで……ううう、でもこの状況を考えるとちょっと断りづらい……」

「でも、この辺で一番近い高校が雄英よ?通学時間が短くて済むのは明確なメリットよ。」

「うっ……確かに……」

「それに、みんなで別の高校に行ったら、マミさんが独りぼっちになるわ。」

「……マミさん、ぜひ一緒に来てって言ってたよなあ。あああ、めちゃくちゃ寂しがるマミ先輩が眼に浮かぶ……やっぱり雄英に行かなきゃなあ……。」

「杏子ちゃんが行方不明の時は本当に暗かったよね、マミさん。……うん、やっぱりみんなで雄英に行くのが一番いい……よね。さやかちゃんには頑張ってもらうことになるけれど……。」

「私の青春が勉強漬けになりそう……あ、いやでもほら!雄英って言っても学力はピンキリとかないかなあ!?いや、そもそもさ!別に成績悪くても卒業自体はさせてもらえるんじゃないかな!」

「……美樹さやか。あなた、私が時間を止めてる時以外の時間は、ちゃんと勉強しているのかしら?」

「え、そりゃしてるよ?昨日は家帰ってから2時間やったよ。」

 

……えぇ、ちょっと短くないかなあ……?

 

「……短いわ。私昨日4時間くらいやったわよ?」

「…………マジ?」

「逆に聞きたいのだけれど、どうしてそんなに短いのよ?」

「家帰って、気になる動画とテレビ見て、メッセして、ご飯とか食べたら大体そのくらいの時間しか残らないよ?」

「それを止めなさいよ。どう考えてもそれのせいで時間が無いんじゃない。」

「えぇー!?」

 

さやかちゃん、思ってたより勉強してない……。む、昔からあんまりそういうの我慢しないタイプだったかも……。

……よし。ここは私が一肌脱がないとね!

 

「さやかちゃん!」

「うおっ!えっ、何?」

「このままじゃだめだよ!今日から毎日学校に残って一緒に勉強しよう!」

「うえー……そ、そんなにヤバい?」

「さやかちゃん、一人だと多分勉強できないタイプだよね?このまま別の高校に行くなんて私嫌だよ。だから、一緒に頑張ろう?」

「マジかぁ。うーん、まあ確かに言われてみるとそうかも……。分かった。今日から毎日授業終わったら一時間」

「一時間じゃなくて、門限ギリギリまでやろう!家は誘惑がいっぱいだよ!」

「えー!?そこまでやるのぉ!?」

「やるべきよ、美樹さやか。なんなら家に帰ってからもまどかと一緒に……いや、なんでもないわ。」

「……私にはわかる。」

「何よ?」

「今、嫉妬を感じた!ほむらから私への嫉妬!ふっふっふ。でも今回は」

「うるさいわ。」

「あ痛あ!ちょっと、何するのよ!?」

 

ほむらちゃん、いつもツッコミでさやかちゃんの頭にチョップするけど、今結構すごいスピードだったよ?さやかちゃんが回復に優れる魔法少女だからってちょっと手加減なさすぎない……?

 

「別に、気にしないで。」

「それはそっちが言うもんじゃなーい!」

 

あ、あはは……。全然元気そうだね……。

 

こんな感じで、いろいろ大変ですけれど、杏子ちゃんの件もどうにかなって、また普通の日常が戻ってきたって感じです。平日は勉強に追われて、休日は杏子ちゃんの居る施設にみんなで行ってお話しするのが

最近のルーティン。マミさんは平日でも無理やり時間を作って行くことがあるみたいですごいです。

杏子ちゃんの話によると、大人しくしていれば来年中には一応出所(?)出来るという話みたいです。ただ監視とかがまだ付くみたいで、その間私たちに会わないというのは無理があるので、なんとかして自然な形で交流できるよう考えないといけません。牢屋暮らしということで最初はとっても心配でしたけど、聞く限りかなり待遇が良いみたい。出てくるご飯が美味しいとよく話してくれます。……それと勉強の愚痴も。杏子ちゃん学校行ってなかったから、勉強に慣れていなくて大変だよね。魔法少女と言えども、結局勉強で苦労はするみたい、あはは……。

 

このまま……私たちは大人になるのでしょうか?魔女が消えて戦う理由がなくなったので、それが一番良いんだと思います。高校から大学に行って、就職して、結婚もするのかな?最近は結婚しない人も増えてるって聞きます。さすがにそんな先のことは分かりませんけど……。

 

でも、本当にごくたまに、私はこのままでいいのかって思う時もあります。

だって私……ずっとおどおどしてて、自分の持つ力をみんなの為に使えていません。

ほむらちゃんを見てると特にそう思います。時間停止が本当に便利です。最近はもっぱら私達の勉強時間確保のために使ってくれて大助かりです。杏子ちゃんにグリーフストーンやシードをこっそり安全に届けられるのもほむらちゃんだけです。……こういうこと、ほむらちゃんに言うととても強い否定が返ってきます。「あなたはそのままでいいの。今と違うあなたになろうなんて考えないで。あなたはそこにいるだけで十分役目を果たしているわ。今のあなたが一番素晴らしいんだから。」って言われます。そういえば、初めてほむらちゃんと会ったときもそんなことを言われたっけ。あの時は、意味も分からず保健室に私を連れて行くものだから、とっても戸惑ったなぁ……。

ほむらちゃんは、私が魔法少女になってしまったことをとても悔やんでいるみたいで。聞いた話だと、私を魔法少女にしないためにいろいろ頑張ってきたらしいです。だから、これ以上私が危ない橋を渡ることが許せないんだと思います。

 

私はほむらちゃんを心配させたくないし、そもそもこの気持ちはそこまで強いものじゃない……と思います。でも時々、前の世界で、私の魔法少女としての力を求められたときのことを思い出します。例えばワルプルギスの夜との戦いや、そうでなくても普通の魔女との戦いでも、私は自分の魔法を他の皆に役立てられることがとてもうれしかったです。でも、平和になったこの世界では、ほとんど魔法の出番がありません。この世界では、私の魔法は『個性』という力に分類されていて、それは許可が無いと勝手に使っちゃいけないことになっています。……ほむらちゃんは普通に使っているみたいだけれど、悪いって思わないのかな……。

ともかく、私はなるべく法律は破りたくないので、基本的に普段は魔法を使いません。……マミさんとの特訓の時には使ってますけど、コソコソ個性の練習する人はこの世界にも一杯いるみたいなので、このくらいは良いんじゃないかってみんなで決めました。それでも私は時々、本当にやって良いのかなあって、胸にチクリと来るものがあります。

 

でも、大手を振って人の為に個性を使える職業があります。それがヒーローです。……ほむらちゃん、私にヒーローには特になってほしくないと思っているだろうなあ。実際私も、あんまりなりたいとは思いません。なんというか、この世界の人たち、危ない仕事のはずのヒーロー業をショーみたいに見てて……ちょっとそういうのはどうかと思います。例えば(ヴィラン)との戦闘中に呑気にカメラで撮影してたりして、そういう困った人たちを守るのもヒーローの役割ということになっています。正直、そこまで責任を負わされるのは無理かも……。

 

でも、人の為に個性……魔法を使いたいと思っているのも事実です。ほむらちゃんみたいに友達の助けになりたいし、マミさんみたいに格好良く魔法で戦えるようになりたい……そう思っているのも事実。ほむらちゃんにこう言うと、多分私をヒーローにしないためにながーいお話が始まるだろうから、この気持ちはまだ誰にも言えてません。

 

そんな悩みはありますが、それでも前の世界で戦っていたころに比べれば微々たるもの。迷惑かけないためにも、このくらいは我慢します。そんなちょっとした悩みと、大切な友達と一緒の日常という何物にも代えがたい幸福を味わいつつ、私はこの世界で生きています。

 

 

後日、私たちはとある大型ショッピングモールに、私、ほむらちゃん、さやかちゃん、マミさんと一緒に居ました。

 

「あーーー!!!お買い物サイコーーー!!!これぞJCのあるべき生活だぁーーー!!!」

「み、美樹さん。声が大きすぎてちょっと目立ってるわ。」

「ちょっとくらい許してくださいよ先輩!私もう2週間もこういうのやってなかったんですって!」

 

受験勉強に疲れたさやかちゃんが、「勉強しすぎた!ご褒美欲しい!」って言いだして、今日だけ4人でお買い物することになったのです。……こういうの、受験が終わってからやるものじゃないのかなあ。まあ、たまには息抜きってことでいいのかな……?でも、さやかちゃん一人だと本当になかなか勉強に取り掛からないから、ちょっと心配です。無理矢理にでも、一緒に勉強しようって言ってよかったです。さやかちゃん、ずっと片手にスマホを置きながら勉強するのは良くないよ……私がカバンにしまうように言ってあげないとぜんぜん集中しないんだもん。そりゃあ成績上がらないよね……。

 

それはともかく、みんなと一緒に久しぶりのお店巡り。杏子ちゃんがいないのが寂しいけれど、来年までの我慢です。私も久しぶりにファッションを追求出来てとっても楽しい!ちなみにこの世界、異形型個性を考慮して元の世界よりさらにバリエーションに富んだ服が売られています。今でもそういう服を見ると新鮮で、中には私も着てみても良いんじゃって思える服もあります。

 

……と、この瞬間までは楽しくできていたんですけれど……。

 

(……みんな。気付いているかしら?後ろの方。)

(…………ええ、気がついているわ。ずいぶんと悪意が強いわね。)

(私も感じます……。これ、事件起こすやつ?あああ、私のせっかくのお買い物が……)

(わ、私も感じます……。)

 

後ろの方で、強い悪意を感じます。ソウルジェムが反応しているのでわかります。これ、もともとは魔女の探知に使われる機能なので、相当負の感情が強くないと人間には反応しないんですけれど、今回は……それほどの悪意を持った人が居るみたい。

チラリと、目立たないように後ろを見ていると……異形型個性でしょうか?虫みたいな見た目の人たちが集まって歩いています。先頭を歩いている人、上手いこと服を着て隠してますけど、あれ多分、ゴキブリの異形型個性……だよね?その後ろにはムカデとか、あと爬虫類?あとはハエ?みたいな見た目の人もいます。

この世界では、異形型個性の人たちがその見た目から差別を受けるという、社会問題があります。学校でも、個性で差別をしてはいけないと、耳にタコができるほどに聞かされる話です。自分が望んでいないのにそんな姿になるなんて、人生がすごく大変になるだろうことは簡単に想像がつきます。異形型個性の身体は悪い所だけじゃなくて、例えばシャチの身体を持つヒーローが超音波で攻撃できるという物があったりと、その生き物が持つ能力を使えたりという利点があったりします。……でも、それでも見た目の問題はどうしてもついて回るみたい。普通の人間の身体をしている私はあんまり口を出せる話じゃありませんね。

 

……ところで、後ろの人たち、私たちが2回角を曲がったのに、その人たちも同じ角を曲がりました。……もしかして、私たちについてきてる?え、なんで?

少し人気のない所に出ると、その人たちは歩くスピードを上げ、私たちに近付いてきました。……そして。

 

「……動くなぁ!!!」

 

私の首に刃物を当てて、そう叫びました。私以外の3人にも同じようなことをしています。……え、これってもしかして私たち、人質?あと、隣にあった宝石店の店員も人質にしてるみたいです。

 

「この宝石店は我々『ペスト・ブラザーズ』が乗っ取った!こいつらは人質だ!おいお前!この店の宝石と金をヒーローが来る前に全てこの袋に入れろ!さもないとこいつらの首が飛ぶぞ!いいか?ヒーローが先に到着してもこいつらの首を斬るからな!」

 

そう言って、店員の一人に大きめの袋を押し付けました。

その店員さんたちはすっかり怯えた顔をして、言われたとおりに宝石を集めだしました。

 

(……うわあ、この世界の(ヴィラン)初めて見た。)

(宝石店強盗って……すごいありきたりねえ。)

(ど、どうすればいいのかな……?)

(……念のために言っておくけれど、人質にされるだけなら、魔法を使う必要はないわよ?)

(ま、まあそうだけど、でも悪い人たちなんだし、何されるかわかったもんじゃないわよ?)

(いざとなったら私が時間停止で何とかするわ。)

(ほむら、本当に便利だよねそれ……)

 

……なんて感じで、私たちはテレパシーで会話してました。

人質にされているのになんだか緊張感がありませんが……だ、だってこの人たちが使ってる刃物、多分その辺のホームセンターで買ってきたみたいな普通の包丁です。首筋に魔力を集中させておけば、刃は多分通りません。……魔力無くても大丈夫かも?銃を持っている人もいますけど、一人だけだし、その人だけに注意しておけば多分大丈夫なはず……。そもそも、私たちはソウルジェムが無事なら魔力で復活できます。その魔力は最近グリーフシードやストーンが大量に集められるのでほとんど困っていません。……でも、今の状況は普通に嫌だなあ。なんというか、首筋に刃を当てられていることに本能的な恐怖があります。

 

(……本当にどうしよう?この状況。)

(殺す気が無いみたいだからおとなしくしておけばいいのではないかしら?)

 

「だ、誰かヒーローを呼んでくれえ!」

「私もう通報しました!」

「おいテメー!誰に許可を取ってヒーロー呼んでんだあ!?」

「うお、キモい(ヴィラン)が人質とってんぞ!」

「宝石強盗か。典型的な(ヴィラン)だなー。見るからに(ヴィラン)っぽい連中だぜ!」

「ぜってえ面白いヒーローVS(ヴィラン)のバトルが見られるぞ!録画録画ァ!さてどんなヒーローが来るんだあ!?」

 

どうやら、周りの人が通報をしてくれたみたいです。……でも、あんまり個性のことをキモいって言うのは良くないんじゃないかなあ。それと撮影するのはもっと良くないと思う。早く逃げようよ……?一応銃持ってる人いるんだし……

 

(……ちょっと変なのはいるけど、ほら。通報が済んだのだから、直にヒーローが来るわ。)

(えー?でもこの宝石店はどうなるのさ?)

(私達には関係ないわ。)

(……流石に冷たすぎない?魔法を使うのは)

(ダメよ。せめて個性届にある範疇でやるべきね。……いえ、それでさえ、一般人が個性で強盗に対抗したなんて話になったら、ネットで注目されてしまうわ。)

 

ほむらちゃん、私たちのことを第一に考えてこう言ってくれているんだと思うけれど、この宝石店の被害を気にしなさすぎじゃないかな……。うーん、でも、どうせここで宝石を持っていかれても、この辺ならすぐヒーローが捕まえてくれる……のかな?さっきの発言からして、あんまりヒーローに対抗できる自信がある訳じゃないみたいだし、やっぱりこのまま放っておくべきなのかな……。

なんてことを考えていると、

 

「……なんか思ってたより大人しいっスね、こいつら。」

 

強盗の一人がそう言いました。テレパシーで会話しているなんて普通思いませんよね……。

 

「クソ、つまんねえな。なんでこいつら俺たちを怖がらねえんだよ。」

「まあいいじゃないですか。下手に暴れられるよりは。このままさっさとずらかるべきですよ。」

「俺は良いツラしてるヤツの顔が歪むのを見たくてコイツらを人質にしたんだ!なのにこのすまし顔だ、クソ!」

 

(えぇ……なにそれ。)

(……怖がってるフリでもしておく?)

(ツラが良いだってさ。いやー、ちょっと照れるなあ。ていうか、今のまどかを見て言ってなかった?)

(美樹さん、こんな時にふざけないで頂戴。)

(えー、でもやること無いし、どうせこいつらに私達殺せないし。)

(まどかがかわいいから、きっと嫉妬されたのね。)

(ふえ、ちょ、ちょっとほむらちゃん!?)

(あ、暁美さんまで……。)

 

「おい、今俺の顔見て笑ったなァ!?お前もかこの野郎!」

 

突然、ゴンと顔に衝撃が走りました。私がほむらちゃんの発言にちょっと顔がニヤついてしまったのが強盗に見られていたみたい。一応全身を魔力強化しておいてあるので、痛いとかは無いですけど……顔を殴られるのは良い気分じゃないです。

発言的に、この人は多分個性のせいで色々苦労したんだと思いますけど、それでもこういう方向性になっちゃうのはなんだか悲しくなります。

 

……あれ、なんかさっきからすごい怖い気配がする気がする……?

 

ふと横を見ると……ほ、ほむらちゃんがすごく怖い顔で殴った人を見てる!私が殴られたから!?

 

(ちょ、ほむら、気配がヤバいよ!)

(暁美さん、お、落ち着いて!ほら、暴れると目立っちゃうわ!)

(……顔を潰してやろうかしら。コイツ、自分の顔が嫌いらしいからいっそ無い方が清々するわ。)

(ス、ストップほむらちゃん!ほら、私は全然平気だから!そんなことしたらダメだよ!)

(まどかの肉体は無事でも、尊厳は無事じゃないわ。)

 

な、なんか手に魔力を込めだしてない!?このままだとほむらちゃんこの人たち殺しちゃうよ!どうしよう、ええと、ええと、……

 

(あ、そうだ!説得できないかな!?)

(えっ?ちょっと、まどか!?)

 

「あ、あの!さっきのは別にあなたを顔を嗤ったわけじゃなくて!それにあなたの顔にも良い所があると思いますよ!」

「……ハァ?」

 

私がそう言った瞬間、強盗の人たちが一斉に私を睨み始めました。

 

「どーいうことだぁ?人間の顔したテメーに、個性『ゴキブリ』の俺の人生の何がわかるんだあ?」

 

……そうだよね。普通の人間の姿の私が言っても説得力ゼロだよね……。私ったらなんて無神経なことを……。

 

(……えーと、まどか、ここからどうするつもりなの?さらに怒らせてしまったようだけれど。)

(…………どうしよう。わかんない……)

(まさかのノープラン!?)

(ごめんなさい!なんというか、このままじゃいけないと思って、気が付いたら言っちゃった……)

(……うーん、責任取って褒め殺しにするとか?)

(え、え?)

(いや、なんというか、いい所があるって言っちゃったから、責任を取れ!的な……?)

(な、なるほど?さやかちゃんの言う通りにやってみるね!)

(……なんなのかしら、この流れ。)

(大丈夫かしら……)

 

ほむらちゃんとマミさんがすごく怪訝にしているけど、強盗の人どんどん怖い顔になってきてるし、何か言わなくちゃ!

 

「えーと、その、ほら!ゴキブリの顔ってよく見ると目がクリクリしてて意外と愛嬌がありますし!羽で空も飛べて便利っていうか!」

「出鱈目言ってんじゃねーぞコラ!今までそんなこと言ってきたやつなんて居ねーよ!じゃあオメーはゴキブリ素手で触れんのかよ!?」

 

私は頭をフル回転させて、ゴキブリの個性の良い点を考えました。確かに日常で出てきたらヒッってなるけど、このくらいの大きさになると割と平気でした。

 

「それは……確かにアレですけど、人間大になったあなたなら割と様になっているというか!ほ、ほら!虫サイズだったら嫌な足の毛もこのくらいの大きさだったらなんか動物みたい!」

 

この人の足の毛をちょんちょんってつついてみます。……動物の毛に近い感じですね。慣れればそこまででもないかも……?

 

(……よく触れるわね、まどか。)

(ゴキブリの足の毛って毒とか無いの……?)

(確か毒は無いはずだけれど、私も直にあんまり触りたくないわ。もともと不衛生なところにいる虫だから不潔なイメージが強いのよね。鹿目さん、度胸あるわ。)

(あはは……ずっと近くで見ていて慣れたっていうか……。)

 

「……な、何言ってんだよお前。俺だってゴキブリキモいと思うし、みんなこの毛を不潔だって」

「えーと、ほら!そう言う割には結構ツルツルじゃないですか!毎日洗って綺麗にしておかないとこうはなりませんって!」

 

……言った後に気付いたけど、人間なら普通だいたい毎日お風呂入りたいと思うよね。私はなにを当たり前のことを……。

 

「…………で、でもよぉ、この個性で走るときはゴキブリみたいな姿勢になって走ることになってキモいし」

「あ、でもほら!ゴキブリっていつも逃げ足が速いって言われるじゃないですか!」

「……ま、まあスピードは自信あるけどよ、キモいのは間違いな」

「そ、それに!そのスピードで壁とか登れるんじゃないですか?天井もいけるかも!?すごーい!災害救助に役立つこと間違いなしですね!」

 

(まどか、よくもまあそんなに誉め言葉が出てくるねえ。)

(ひ、必死なんだよ私~!さやかちゃんもなんか言ってあげて!)

(いや~、まどかさんが褒め上手で思いついたことは全部言われちゃったからなあ~)

(そ、そんなぁ~……)

 

さやかちゃんのテレパシーに答えつつ、これで落ち着いてくれないかなあと周囲を見渡してみます。

……ご、強盗の人全員こっち見てる!ひいい、プレッシャーがすごいよ!……あ、でも、そこまで怒ってない感じかな?ソウルジェムの感知する負の感情がちょっと収まってきたような。

 

「……さっきからペラペラ……そんな見え透いたご機嫌取りなんざ嬉しくねえ!どうせお前はその良いツラで今まで人生余裕だったんだろ!?」

 

刃物を持つ手が震えて、首に当てる力が強くなっています。でも、どうしよう……実際、私はこの人より恵まれた人生を送ってきたのは確かです。やっぱり私が何か言っても怒らせるだけなんじゃ……?

 

(……まどか、さっきは冷静さを欠いて殺すなんて言ってごめんなさい。でも、説得は無理そうよ?やっぱり私が時間停止で気絶させておくべきかしら?)

(うーん、でもなんというか、この人かわいそうだし……)

(自分を害してくる相手に同情なんて不要よ。あと、首から軽く赤い液体を流せるかしら?多分彼の力加減だと少し皮膚が切れていないと不自然ね。)

(そういうの今気にするところかなあ……)

 

ほむらちゃん、本当に私達以外に容赦がないなあ……この強盗の人たちのこと、それと宝石店がどうなろうがどうでもいいって考えてるんだろうなあ……。でも私は、ちょっとはこの人たちのことを考えてあげても、とちょっと思います。

でも、どうしよう。今は脅されてるだけで済んでるけど、もしこれがヒートアップして、説得できないってなっちゃったら、流石に力で抵抗するしかないよね……。

 

「恵まれたテメーに俺の気持ちなんざわかる訳ねえだろ!おめーは『お似合いのエサだぜ!』とか言われながら虫の幼虫口に突っ込まれたことあんのかよ!?ねえだろ!このキモい体のせいで、とーちゃんには叩かれるし、かーちゃんには生まれてこのかたずっと避けられてきた!テメーに俺の気持ちはぜってえわからねえ!お前らみたいな整った顔をした連中が軽々しく『すごーい!』とかふざけんじゃねえ!何をどうしたってこの異形の身体は人間社会で絶対受け入れられねえ!だから俺らは(ヴィラン)になってずっと周りに迷惑かけてやろうって決めた。受け入れられねえんだったら、もう俺らはお前らとお行儀よく付き合う道理なんざねえんだよ!」

 

あ、あわわ、この人どんどんヒートアップしてる……。それに、パパやママにさえ受け入れられなかっただなんてちょっと想像がつかなかった。私、やっぱり不用意なこと言っちゃったみたい。どうしよう、私のせいで余計怒らせちゃった……。

 

「えーと、その……」

 

(まどか、早く何とか言わないとまた殴られるよ!)

(ど、どうしようさやかちゃん。言うこと思いつかないよ、まさかあそこまでひどい境遇だとは思わなくて……)

(えー……し、仕方ないなあ、ここは私が!)

(さやかちゃん……大丈夫?何を言うつもり?)

(親友のピンチだから一肌脱ぎますか!まあ見てなって。)

 

ピンチって言っても、私が元々悪いんだけれど……。申し訳ない気持ちでいっぱいです。でも、さやかちゃん何を言う気なんだろう?すごい自信たっぷりな顔だけど……。

 

「ええ!?そんなひどい境遇でその年まで(ヴィラン)にならずに我慢してきたの!?すごーい!」

「は、はあ!?」

 

ちょ、ちょっと斜め上……いや、斜め下?でした。言われた人、あっけにとられてます。さやかちゃんのドヤ顔が、すごく浮いてる……

 

(ちょ、ちょっとそれは逆効果なんじゃないかなあさやかちゃん!?)

(え?そう?)

(美樹さやか。あなたはどこまで愚かなの?)

(ちょ、ほむらひどくない?)

(うーん……私だったらバカにされたって感じるかもしれないわ……)

(えーーーー!?ど、どうしよう!?)

 

みんなから突っ込まれて、さやかちゃんが今になって焦り出しました。ど、どうしようこの状況……。

 

(え、えーい!こうなったらとことんやってやるんだから!)

 

どうしてそうなっちゃうのさやかちゃん……。でも、ここで強盗の人たちに謝っても、状況は良くなる気がしないし、やるしかないのかな……?

 

(……私、リボンでこの強盗を拘束する準備をしておくわね。何かあってからじゃ遅いし……)

 

マミさんは呆れ顔です。ほむらちゃんは……げんなりした顔をしています。ごめんねほむらちゃん、マミさん。私が変な空気にしちゃったせいで……。

 

「いやー、私だったらそんなことされたらナイフでメッタメタのブッスブスに刺しまくってるね!でも、えーと、皆さんは初犯なんでしょ?」

 

さやかちゃんが、なんというか、開き直ったふうにそう言いました。ちなみに、強盗の人たちのことをなんて呼べばいいのか分からないみたいで、「皆さん」って呼ぶのにかなり時間がかかってました。

……強盗の人たちってなんて呼ぶのが正解なんでしょう?なんて、どうでもいいことを考えてしまう程度には、さやかちゃんの発言で緊張感が抜けてしまっています。

 

「へ?ま、まあ初犯だけど……。」

 

強盗の人たち、ものすごく困惑しています。後が怖いなあ……馬鹿にされてるってやっぱり怒るんじゃ……?

 

「うんうん、そんなひどいことされてここまで我慢できたなんて、むしろ正義感が強い方なんじゃないかなあ逆にね!?」

「い、いやその、ガキの頃はその、オールマイトみたいな、ヒーローに憧れてた時期があって、ヒーローならやられてもやり返さないっていうか……」

「え?ヒーローになりたかったの?うんうん!なれるなれる!多分その個性ならイケるって!この子のいった通り災害救助とかイケるんじゃないかなあ!?」

「何言ってんだよ、こんなキモい個性で今からヒーローになんてなれる訳が」

「で、でもほら!確かヒーローの免許って年齢関係ないし!そうだよね!?」

 

最後、私もフォローに回っちゃった。とりあえずここはちゃんと肯定しておかないと後が怖そうで、反射的に言っちゃった……けど、大丈夫かな……?

 

(ほむらちゃん!実際の制度は知らないけど適当に頷いて!)

(え?い、一応制度上はそうだったはずだけど、確か相当難易度が高いって聞くわよ。)

(ならいいよ!良い感じに返事して!お願い!)

(ま、まどかがそう言うなら……。)

 

「そ、そうですねー。制度上は可能ですし、異形型のヒーローは普通にいるので、あなたの努力次第でなれるかもしれませんね。あなたの個性なら可能性はゼロじゃないと思いますよ。」

 

よ、よかった。ほむらちゃんが普通に乗ってくれた。無茶振りしちゃってごめんね……。

 

強盗の様子を見てみると……俯いています。……負の感情はかなり薄まった気がするけど、大丈夫かな?

このまま思いとどまって、あわよくば自首してくれたら嬉しいけど、そう上手くいくわけないし、ここからどうしよう……?

 

(……なんか、ちょっと落ち着いてくれたみたい?)

(ひとまず負の感情は感じないわね……)

(ていうか、俯いて動かないけどどうしたんだろ?)

(あなたの言葉があまりにもわざとらしくて呆れているのではないの?)

(…………だ、大丈夫だよ!……大丈夫だよね、みんな!?)

(あ、あはは……)

 

……今思い返してみると、結構無理ある発言多いんじゃないかな、って思えてきたよ……。

 

(まどか!?大丈夫だって言ってよ!)

(まあ、いざとなったら時間停止で気絶させるわ。)

 

「……なんなんだよ、お前ら……」

 

ゴキブリの人が、声を震わして口を開きました。

 

「さっきからよお……ヒーローになれるとかよお……今まで、ずっと殴られたり暴言吐かれたりしたのに、耐えて、耐えてきた。どっかにこんな見た目でも受け入れてくれる奴がいるかもって思って、ずっと耐えてきたんだよ。この個性でもヒーローみたいに人に役立てられるかもって、心のどこかで思ってたさ。でも、何をどうやったって、この見た目はキモい。前にヒーローにさえ本物のゴキブリを見たみたいな反応をされて、俺は心が折れて、もう構うかってなって、今日ついに(ヴィラン)として好き勝手な人生をって思ってたのによ。」

 

ゴキブリの人が顔を手に当てて、嗚咽を漏らし始めました。手から透明の液が流れ出ています。他の強盗の人も俯いている人たちが多いです。

 

「おせえよ……(ヴィラン)になる前にお前らに会いたかったんだよ俺たちは。ヒーローになれるって、お世辞でもいいから言ってほしかったんだ。もう俺達前科ついちまったよ……。どうすんだよ……」

「え、前科……?あ、いやほら、私も時々カッとなって人を殴っちゃったことあるし?そういう相手でもちゃんと謝れば仲直りできたし!今からでもちゃんとここの人たちに謝ればなんとかなるんじゃないかなあ!?」

 

さ、さやかちゃんちょっと話が小さすぎるんじゃないかな、それ……。

 

「だからそれだよ……なんで肯定してくれんだよお前らは……」

 

……割と通じたみたい?

首に当ててる包丁、力がとても弱まってます。……正直かなりまずいこと言っちゃったと思ってたけど、意外と説得が上手くいってるかも……?

 

(……なんかうまく行ってない?)

(落ち着いてくれたみたいだけど、ここからどうしましょう……)

(……結局この強盗が私たちのことを解放してくれないと意味が無いのよね。)

 

「先制必縛ウルシ鎖牢!」

 

私達がテレパスで話していると、どこからともなく木の根っこのようなものが伸びてきて、強盗を拘束してしまいました。

伸びてきた元を見てみると、ヒーローらしき人たちが来ていました。あ、そう言えばそもそもヒーローが来るまで待ってればいいという話でしたね。変な流れになって頭から抜けちゃった……。ちなみにあの人は確か、シンリンカムイさんでしたっけ?まじかで見てみると、身のこなしが魔法少女みたいに卓越しててすごいと感じられます。

 

「貴様らの境遇には同情するが、だからと言って彼女たちを人質にしていい理由にはならん!潔く諦めるのだな!」

「…………」

 

あれ?この人の性格的に、捕まったら「クソっ!」みたいなこと言いそうですけど、すごく悩まし気に、泣きながら大人しくしていますね。身を捩ったりもしていません。

 

「彼女たちのいう通り、貴様らには情状酌量の余地があるかもしれん。幸いけが人もいないし被害も少ない。誠意ある態度を見せれば刑期が縮まるかもしれんぞ?」

「……そうかよ。」

 

そういうと、ゴキブリの人は私の首に当てていた包丁を離してくれました。それに続いて、他のみんなも解放されました。よ、よかったあ……。

捕まえられた強盗の人は、体に丈夫そうな板?のようなものを取り付けられて身動きを取れなくされました。

 

……ゴキブリの人、こっちを見ている気がします。ど、どう思われてるのかな、あの人が出所した後に逆恨みで襲われたら嫌だけど、さすがに考えすぎだよね?

 

(……まどか。早くここを離れましょう?長居は無用のはずよ。)

(あ、うん!そうだね。)

 

ほむらちゃんに急かされて、私たちはその場を後にしようとしました。周囲の人たちの視線はシンリンカムイさんに向けられているので、多分目立たずに行けるかな?

 

「あ、君たち!怪我はないか?」

 

……シンリンカムイさんに呼び止められました。そりゃあ呼び止めるよね……。人質にされたんだもん。

 

(まどか、何をしているの。早くいきましょう?)

(え?でも、警察とかで事情聴取をしなきゃいけないんじゃ……?)

(法律的には応じる義務はないわ。多分、かなり目立ってしまったのだし、早く行きましょう?)

(え、そうなの?)

 

人質にされた人って、警察に協力しないといけないんじゃ……あれ?でも言われてみると、ドラマとかで取り調べ拒否してるシーンとかあったっけ?なら私達も拒否してもいいのかな?何も悪いことしてない……はず、だよね。

 

「わ、私たちは無事なので、大丈夫です。すいません、私達はその、ちょっと急いでいるので、行っていいですか?」

「無事で何より。君は包丁を首に当てられていたが……ん?傷が無いな。安心した。一部始終は聞いている。単なる巻き込まれて人質になってしまったのは、本当に不運だったな。」

「ええ、まったくです。すみません、急いでいるので、私たちはもう行きますね?」

「あわわ、ちょ、ちょっとほむらちゃん!?」

「えっ?あ、ちょっと君たち!?出来れば少し話を……」

 

シンリンカムイさんが呼び止めるのを無視して、ほむらちゃんが私を強引に引っ張って行っちゃいました。……警察やヒーローの人たち、本当に追ってきません。行ってもよかったのかなぁ?

 

……呼び止めていたシンリンカムイさんにはちょっと悪いことして、申し訳ない気持ちですが、ごめんなさい。目立つのは避けたいんです……!

 

 

翌日、人質となったときの動画がSNSでバズっていました。

 

「はぁ~~~~…………」

「ほむら、今のため息おっさんみたいだったよ?」

「うるさいわ美樹さやか。」

 

スマホを片手にものすご~く嫌そうなため息をつくほむらちゃん。いつもだったらさやかちゃんのことをひっぱたいたりして突っ込むんだけど、そういう元気もないみたい。

 

というのも、昨日の人質の時の会話を撮っていた誰かが、ネットにアップしてたみたいです。それがなんか100万回以上再生されてる……どう考えても目立ちすぎです……。

コメントでは

 

 

 

「人質にされても一切ひるまず逆に説得にかかる鋼の心を持ったJCorK集団」

「なんで首に包丁当てられながら平然としているのこの子」

「ワイ異形型、この動画を見て再びヒーローを目指すことを決意」

「お世辞にしても良い所を見つけるのが上手すぎる。相手ゴキやぞ?嫌悪感とか感じないのか?」

「青髪の子の肯定無理ありすぎて草、絶対内心バカにしてるやろ」

「俺虫系の異形型だけど、ここまで個性を褒めてくれた人に出会ったこと無い……実際言われたら相手がどんなに恵まれてたとしても絶対泣ける自信がある」

 

 

 

みたいな感じですごく話題にされてました。褒めてくれるのは嬉しいけれど、あれが本心かと言われるとちょっと微妙だし……。それに、私達テレパスで会話してたのが、『刃物で脅されているのに平然としているすごい女の子たち』みたいなふうになっちゃってました。

 

「どうしてこうなるのよ……。強盗と、馬鹿な盗撮犯と、あとあのヒーローのせいね。これだからヒーロー社会は……」

「えー、でもまあ褒められてるのは嬉しくないの?」

 

さやかちゃんは、いわゆるエゴサをしてニヤニヤしています。嬉しいのかなあ、あれ。私はなんかこそばゆいよ……。

 

「全然嬉しくないわよ。そもそも勝手に動画を撮るなんてマナー違反よ。あのヒーローまでそれに乗っかって……」

 

ヒーローのシンリンカムイさんなんですが、あの後バズっていた動画に関してコメントを出してたみたいなんです。その内容が、

 

『……そもそも、勝手に一般人を撮影しインターネットにアップロードすることはしてはいけない行為だ。……ただ、異形型をあそこまでフラットに評価できる人間は少ない。私もよくこの見た目のせいで色々と苦労したものだ。……綺麗ごと抜きで悪いが、特に虫系はその見た目から被差別の対象となる者が多い。嫌悪感という物は、抑えようとしてもどうしても感じてしまうものであるゆえにな。彼女たちは、そういった人々に対してのヒーローたり得る素質があるだろう。しかし、いいか?繰り返すが、勝手に一般人を撮影しアップロードするのは……』

 

みたいな感じで、何かのインタビューで言っていました。シンリンカムイさんが最近注目されるヒーローというだけあって、その動画がさらにバズってしまったみたいです。……ごめんなさい、私異形型について何か想いがある訳じゃないんです……。

 

「……私達が特定されるのも時間の問題でしょうね。……いえ、もうなってしまったものを悩んでも仕方がないわ。どうせすぐに流されて、忘れられるでしょう。」

「そ、そうだよね!悪いことしたわけじゃないんだし、大丈夫だよね!」

「そうね。まあ今のままなら様子がちょっとだけおかしいだけの人間のはず。そういう人はネットで過去にもいたはずだし、実害は無いと信じるしかないわね……。」

 

今のところ、クラスの皆からはこれに関して聞かれてないし、パパやママにも聞かれてません。そもそも心配かけたくないからなあ。あの状況であんな会話するなんて、危ないことするなって絶対叱られちゃう。

……まあでも、気にしてもしょうがないよね。私にはもうどうしようもないことです。

 

「はーい、それじゃあ皆さん。席についてください。今から進路希望調査を始めます。」

 

あ、そうでした。今日は、どの高校を受験するのかを決定する日です。

 

渡された調査の紙を眺めて、『第一志望: 雄英高校』まで書きました。私はもちろん、普通科を……

そこまで考えて、私はふと思いました。いいえ、魔が差した、と表現する方が良いかもしれません。

 

本当に、普通の人生でいいのでしょうか?

 

多分、受験が上手くいけば、私はこのまま普通科に行って、魔法でちょっとだけ得をしつつ、普通の暮らしができるんだと思います。でも、そうしたら私はおどおどした自分を一生変えられない気がします。ほむらちゃんをはじめとしたみんなはそれでいいって言ってくれるけれど、私は……やっぱりモヤモヤします。

昔から、私はおどおどしてて、決断が遅くて、臆病でした。魔法少女になってからは、すこしだけ勇気が出た気がしましたけど、最近はそういう機会はありません。訓練では、ほむらちゃんとマミさんのすごさを見上げさせられてばっかりです。

……ヒーローになれたら、多分そういう自分とはおさらばできるでしょう。魔法少女による力以外でも、なんというか、人間力?的な部分で強くなれる気がします。さっきのシンリンカムイさんも、無理やり帰っちゃった私達のことは全く責めないで、ひたすら勝手に撮影されたことに憤ってくれていました。私よりも何倍も立派な人だと思います。

私は、ヒーローという職業はやりたくないけれど、ヒーローみたいなかっこいい人にはなりたい……そう思っています。

だから試しに、私は紙に書いてみました。

 

『第一志望: 雄英高校 ヒーロー科』

 

……改めて見ると、名前の圧がすごいです。時々、このヒーロー科に受かる為に毎日10時間訓練!とか、大学の内容を勉強!とかしている人をテレビやネットで見かけます。仮に受かっても、そういう人たちには個性以外の部分で置いてきぼりにされちゃうのでしょう。

でも……私の個性、というか魔法を使えば、きっと多くの事ができて、堂々と人を魔法で救えるんだろうなあ。私は、もともと人を救うために、魔法少女になったのです。

 

……ヒーローになったら、私は……

 

(まどか、何を書いているの?)

(ひゃうっ!?)

 

ほ、ほむらちゃん?まさか、時間停止で私の紙を盗み見たの!?

 

(どうしてヒーロー科なんて書いているのかしら?私、いつも言っているわよね。この世界でヒーローになることのデメリットがどれだけ大きいか)

(ごめんねほむらちゃん!こ、これは試しに書いてみただけだから!第一志望普通科だから!)

 

そ、そうだよね。この世界で目立って、魔法少女の力がバレたら大変だもんね。それに、杏子ちゃんが頑張ってヒーローや警察相手に隠してくれてるんだもん。その頑張りを無駄にしちゃだめだよね。

私は急いで、消しゴムで消して『第一志望: 雄英高校 普通科』と書き直しました。あ、焦って消したから紙がぐちゃってなっちゃった……

 

(……まどか、一度じっくり話し合う必要がある気がするわ。あなたがヒーローについてどう思っているのか)

 

か、勘弁してよほむらちゃん!こういう時のほむらちゃん、真顔で延々と詰めてきてとっても怖いんだよ……!

 

 

ほむらちゃんの怒涛の質問と説得攻めで疲れ切って、ヒーロー科は絶対行かない宣言までしちゃった放課後、なぜか私だけ先生に呼び出されました。そこには。

 

「鹿目まどかさん。雄英のヒーロー科を受けてみる気は……ないかしら?」

「まどか。人生は挑戦だぞ~?」

 

私のママと先生が、昨日の人質の時の動画を片手に、不敵な笑みで私を見ていました。

 

…………ど、どうしてこうなったの~!?




・さやかの学力
頑張った結果が、上鳴や芦戸程度の勉強の成績になると想定。

・メッセ
脳内でJCJKに流行っているイマドキSNSの名前で置き換えてください。

・一般異形型被差別過去持ち(ヴィラン)
個性でゴキブリとかダニとかゲジゲジの異形型になったらガチで地獄だろうなって思いながら書いてました。センチピーターさんとかマジでよくあそこまで紳士やれるなと思う。
ちなみに、個性でゴキブリの異形型になっているとはいえ、そこまでコテコテにゴキブリナイズされた見た目は想定していない。下半身は大体人型で、上半身や腕にゴキブリの特徴がある。ゴキブリの腹部はない。ギャングオルカに近い見た目。
個性上、音を立てずに床や天井を高速移動できるし、生命力や検知力に優れ、空も飛べる(ただし人を本能的に嫌悪させる羽音付き)ので、個性を鍛えればヒーローも夢ではないかもしれない。しかしゴキブリという見た目が全てを歪ませてしまっている。

・ヒーローになれる
(ヴィラン)「個性が『ゴキブリ』じゃあどうやっても受け入れられないぜ……ましてやヒーローなんか」
かわいいJC「頑張れ頑張れできるできる絶対出来る頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めんな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!ギャングオルカやシンリンカムイだって頑張ってるんだから!」
(ヴィラン)「…………俺でもいけるかも……?」

・そう言えばそもそもヒーローが来るまで待ってればいいという話
自分たちだけで戦っていたせいで、こういう非常時にヒーローに頼るという思考になりにくい。

・なんで首に包丁当てられながら平然としているの
魔法少女として魔女と戦った経験から度胸とグロ耐性がついている。あと普通に包丁では首を切れないと思われる。ソウルジェムを狙われているわけじゃないので怖くない。そもそも魔力が潤沢なので肉体的な安全に関してはかなり強い状況。人質にされているのは嫌だと感じているが。

・ほむら
頭を抱えている。迷惑な野次馬め……!

・まどか
ヒーローにはなりたくないが、ヒーローのような人にはなりたいと思っている。

・テレパスで会話
基本的にテレパスは必要な時だけやっている。声に出さない会話をしていてリアクションでも取ったら怪しまれるため、当然と言えば当然かもしれない。

・シンリンカムイ
インタビューでは、発言内容が撮影した動画のアップロードに関する苦言が半分以上だったのだが、例によって会話内容に関するコメントの部分だけ切り抜かれてバズっている。
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