雄英の入試システムの話が出ますが、ほぼ独自設定です。
ヒロアカの最新話のアニメエモかったね……廻天の新映像も綺麗だったね……(語彙力)
職員室に入って、一番初めに目に入ったのはパパとママでした。私を見つけると、ママは真っ先に駆け寄って真っ先に抱きしめます。
「まどか、人質にされたって本当なのか!?」
「あっ……その、うん……」
「どうして言ってくれなかったんだよ!?とにかく、無事でよかったよ、本当に……」
「パパも今回は肝が冷えたよ……まどかが学校に行った後に警察の人から連絡が来て、本当に驚いたんだ。」
ママはちょっと怒りながらも、私の頭をなでながらギュッと抱きしめてくれました。パパも、今まで見たこと無いほど焦った顔をしています。
私はパパとママを心配させてしまったことを申し訳なく感じながらも、言い訳のように答えました。
「ご、ごめん、パパ、ママ。その、心配させたくなくて……」
「そんなこと、まどかが気にすることじゃない!とにかく、怪我は無いんだね?変なことされてないかい?」
「うん、大丈夫だよ。」
「……いや、まどか。その……ネット上に上がっている動画のことは……知ってるかい?」
……あの事件、小さいとはいえニュースにもなっていたし、私がかかわっていると知ったなら事件のことをネットで検索するのは当然だよね。
「うん……知ってる。」
「その……その動画の中で心配なシーンがあって、本当に大丈夫なのかい?」
パパが、私の目を見て覗き込んできます。
おそらく、私の顔が殴られたシーンのことでしょう。……そうだよね、普通の人から見れば結構思いっきりやられちゃったもん。でも、魔法少女のことは当然言えない。どうやって説明すればいいのかな……。とりあえず誤魔化してみるしかないのかな……?
「あ、あれはね。見た目は結構いたそうだけど、個性の関係なのかなんか『ポヨン』て感じで、割と柔らかかったよ!」
「まどか……。まあそれも気になったけどさ。その後の説得だよ!アレいったいどうしたんだい!?」
「あー……あれはその……」
言われてみれば、人質になっているのにあんなことを言うのっておかしいです。魔法少女じゃなかったら、震えて涙を流していたでしょう。それに加えて、テレパスで友達と話せたこともあります。どうしよう、こっちはもっと説明できないよ……
「……その、なんか、ノリ……?」
「ノリって……そんな理由であんな危ないことするんじゃないよ!逆上して刺されたらどうするんだ!?自分の命を粗末にするバカには育てた覚えはねえぞ!」
「ひっ!?ご、ごめんなさい、ママ……」
ママがピシャリと、私に厳しく言い放ちます。すごく怖い顔と声。こんな怖い顔をされたのはいつ以来でしょうか。ワルプルギスの夜と戦いに出る前に呼び止められた時に、こんな顔をされたのを思い出しました。いつも優しいママだからこそ、余計恐ろしく思えます。チラリと横を見ると、パパもちょっと怖い顔。私がやったことを客観的に見れば、こんな反応になるのは当たり前です。でも、それだけ、パパとママが私のことを大切にしてくれていることが分かります。
「……もう二度と、あんな危ないことはすんなよ。いいね?」
「わかった、ママ。もう二度としない。」
これからは、私が魔法少女としてではなくただの人間の鹿目まどかとして、自分がどう見えるのかを気にしなくちゃいけないと強く感じました。私だけ危なくないってわかっててもダメなんです。家族のみんなも安心させないとね。
しばらくママは私の顔をじっと見ていました。しかし、私が理解したことを感じたのか、ふっと顔を緩めます。
「……よし、じゃあお説教はここまで。もう一回聞くけど、本当に怪我は無いんだな?」
「うん、ないよ。」
「本当によかったよ……。さて。次の話だけどね。先生。」
ママがそう言うと、横で黙って話を聞いていた担任の先生が前に出ました。
「ええと、あの事件で色々と警察の人から連絡が来ていてね。まず、事情聴取の為に一応警察署に来て欲しいて言われていて」
「えっ!?そ、その、断れませんか?」
大丈夫だとは思うけれど、万が一私の個性が他と違うってことがバレたらと思うと……ちょっと、そういうところに行くのは怖いです。
「えっ!?……鹿目さんがそう言う反応をするのは珍しいですね。まあ……とりあえず警察の方に、本人が拒否したって返しておきます。」
「お願いします。すみません……」
「それで、次になんですけれど。ヒーローのシンリンカムイさんから、人質となったときの会話に関して公式に話を聞きたいという要望が来ていまして。『異形型個性の人々に対し、君はどう考えているのかを教えて欲しい。多少無理がある部分もあったが、異形型に対してあのような態度を取れる者は現代にはなかなかいないのだ。もちろん無理にとは言わない。』だそうでして。」
「あー……」
あの時の会話、ネット上で話題になっていたのは知っています。異形型に対する差別や偏見の問題で、いろいろなところで良くも悪くも話題になっていました。ただ、やっぱりこの話は炎上しているところもあって、私も少し調べたところでみんなすごい怒っているのが怖くなって見るのを止めちゃいました。ほむらちゃんも、「ネットで罵詈雑言が飛び交っていたわね。まどかは見なくていいと思うわ。」って言ってたし……。
それにそもそも、私は異形型に対してそこまでどうしたいという想いがある訳じゃありません。そんな気持ちで、シンリンカムイさんとお話しするのはちょっと失礼だと思います。
目立つとまたほむらちゃんを心配させちゃうし、これもお断りしようかと思います。ごめんなさい、シンリンカムイさん……
「ご、ごめんなさい。そっちもちょっと……」
「……いいんですか?鹿目さんはヒーロー大好きというふうじゃなかったですけれど、せっかくの機会ですし、ちょっとはお話ししても良いのではと先生は思いますけどね。むしろ私が話してみたいくらいですよ。」
「あんな態度だったけれど、人質にされたもんな。そりゃ、思い出したくないってもんだろ。」
ごめんママ、本当は怖いとかじゃないんだ。でも、説明できないことだから、ここは話を合わせます。
「そ、そうだね。ママの言う通り、あんまりいい思い出じゃないかな。だから、それもお断りさせても良いですか?」
「……分かりました。では、シンリンカムイさんにもそう答えておきます。」
そうして、先生はパソコンで何かカタカタしてました。メールに返信でもしてるのかな?そしてしばらくすると、再び私の目を見て言いました。
「さて、今回のメインの話ですけれど。鹿目さん、ヒーロー科に行くつもりはありませんか?」
「えっ!?で、でも私、進路希望には普通科って書いたはずです。」
ヒーロー科……いつもほむらちゃんに口を酸っぱくして「行ってはダメ」って言われています。どうして先生は勧めてくるんだろう……?
「まずですね。鹿目さん、いつもおどおどしてる自分を変えたいって入学時の面談で言ってましたよね。」
「え、ええ……」
私は、学校の面談とかで、「君の欠点は何かあると思う?」って言われると、私はいつも「おどおどしてるところ」って答えるのです。
「先生も、こう言っては何ですけれど、鹿目さんは大人しい性格の子だと思っていました。でも、昨日の動画を見て、鹿目さんならもっと自分を変えられるって思ったんですよ。」
そういって、私に昨日の人質の時の動画を見せる先生。……改めて見せられると、私首に包丁を当てられてるのに普通に犯人と話す変な子に見えます。うう、やっちゃったなあ、私。でもあの時ああしないとほむらちゃんが何するか分からなかったし、どうすればよかったんだろう……。
……それはともかく、多分この動画のせいで、先生に変な勘違いをさせてしまったみたい。何とかして誤魔化せないかな……?
「そ、その、ごめんなさい。改めて見せられると、おかしなことをいって犯人を刺激しちゃだめですよね。」
「まあ、そうですね。こういう時は、おとなしくするべきでしょう。でも、鹿目さんの行動は、おとなしくするよりもずっと勇気が必要なものだと思います。あの状況下で冷静に相手のことを褒めるだなんて、普通出来ません。ましてや……ごめんなさい。先生、正直に言っちゃうと、あの異形型の犯人のことを気持ち悪いって思ってしまいました。……先生失格ですね、こんなことを考えるなんて。」
……私も、魔女のあの恐ろしい姿に慣れていなかったら、そういう態度を取ってしまっていたかもしれません。私は、この先生を責める気持ちは全然湧きませんでした。
「い、いえ!なかなか難しいところもありますよね!」
「……ありがとう。でも、鹿目さんはそんな相手にあそこまでいい所を言えるなんて、と先生は感銘を受けました。それで、私は鹿目さんが、なんて勇気があって、そして優しいんだろうって思ったんです。心の面だけならまさにヒーローだと思いました。」
「そ、そんなことないですよ!」
私、魔法少女の5人の中では多分一番勇気が無い方です。前の世界では、結界内の戦いではいつも後ろの方に居ました。魔法の武器が弓なので、自然にそうなっちゃうところもあるんですけれど、それでも前に出るのはちょっと怖かったです。躊躇なく前に出る私以外の4人を、いつもすごいなあ、頼りになるなあって思いながら見ていました。
それに優しいっていうのも……あんまり実感はありません。ほむらちゃんは「あなたは優しすぎる」って言ったこともあるけれど……私、特別他人に対して優しくしようとしているわけじゃないです。
「いーや。まどか。まどかが優しく育ってくれたってことは、私が自信を持って言える。この点は本当に嬉しくなったもんだ。」
ママが、感慨深そうにそう言いました。
「僕は……パパとママはね。まどかやたつやにいっぱい愛のある言葉をかけて育てようって決めてたんだ。子供たちに、人の心を大切にできる子供に育ちますようにって、ね。まあ、だからって具体的にどうなってほしいとかあったわけじゃないけどさ。あの会話を見て、『ああ、まどかは人の心を大切にできる立派な娘に成長した!』って確信できたんだ。パパとして本当に鼻が高いよ。」
「よくやったぞ~まどか!まさに自慢の娘だな!」
そう言って、パパとママはそろって私の頭を撫でます。先生がいる前なので恥ずかしいけれど、それ以上に胸の中に温かいものが広がっていきました。
私にも、役に立てる所がちゃんとあったんだって。こういうと自慢みたいだけれど、私が人の心を温められる人になれているなら、それはとっても嬉しいなって思いました。
……でも、職員室の他の先生たちがこっちに注目しだしちゃった。さ、さすがに恥ずかしすぎる……!
「ぱ、パパ、ママ、先生が見てるよぉ……。」
「あ、あはは……この位にしておこうか。」
パパとママが私の頭から手を離したところで、再び話を始めます。
「……本当に素晴らしい家族ですね。まあ、それはともかくとして。ヒーロー科、どうですか?ヒーロー科に入って、形だけでもヒーローのように振る舞っていれば、そのおどおどした部分も変えられるかもって、先生は思うんです。」
「な、なるほど……」
……私も、それはちょっと思ってました。ヒーローという職業の実態はともかくとして、いつも自信にあふれていて、かっこよく人を助ける姿には……正直憧れます。ああいう風になりたいっていうのは……否定できない私の望みなのでしょう。
「それに、進路希望の紙なんですけど。鹿目さん、一旦『雄英高校 ヒーロー科』って書いて消してますよね。」
「あっ……」
消し方が雑だったみたい……。先生に出された調査の紙を見ると、確かにその跡が見えてしまっています。……消し方が甘いの、私の心の迷いが出てるなあって、今更ながら思いました。
「多分、一回書いてみて『私には無理だ』ってなって消したのだと思うけれど、先生はチャレンジしてみるべきだと思うな。」
「え!?まどか、雄英ヒーロー科志望したのか!?」
パパとママがびっくりしています。そりゃあそうだよね、雄英のヒーロー科って偏差値79とか言ってたし、多分日本で一番入るのが難しい高校なんじゃないかな……。
「ごめんなさい、それ、ちょっと書いてみただけなんです。」
「でも、鹿目さんは確か普通科志望でしたよね?模試の成績を見る限り、そこなら十分合格可能圏内です。なので、併願で普通科にしておいて、ヒーロー科の入試にチャレンジ……っというもの悪くないのではないでしょうか?」
先生が期待に満ちた目でこっちを見ますけれど……ごめんなさい。私だけじゃなく、友達にも迷惑をかけてしまう選択肢なのです。
……そもそも、実力的に合格は無理だと思います。
「まあ、やるだけやってみるのも良いんじゃないか?まどか。人生は挑戦だぞ~?受験料ちょっと高くなるけれど、そのくらいしかデメリットが無いはずだ。」
ママもちょっと乗り気です。……けど、そもそもの話、私合格できないと思います。偏差値79ですよ?そして今はもう秋に差し掛かるころ。どう頑張っても、ここからどうにかなるとは思えません。
「その、せっかく提案してくれたところ申し訳ないんですけれど……そもそも、合格は実力的に無理だと思いますよ?」
「いいや、先生はワンチャン合格できるかもしれないと思っていますよ!」
ワンチャンでどうにかなるレベルじゃないんと思うんだけれどなあ……。でも、先生の方が多分入試に詳しいだろうし、一体どういうことなんだろう?私は実のところ、雄英高校のヒーロー科の入試がどういう感じなのかまったく知りません。
「まず、鹿目さんは雄英のヒーロー科の入試のシステムを知っていますか?」
「いえ、全然……」
「雄英のヒーロー科の入試は、学力テストと実技試験の2つに分かれます。学力の方は、普通の高校と同じですね。鹿目さんがこのままちゃんと勉強していれば、ヒーロー科でも合格を狙えるレベルです。」
「……普通科と同じなんですか?」
「学力テストの方は足切り目的でしかないですね。その基準点が学校側で決められるんです。つまり、『学力テストの結果がこの数字以下だったら不合格』というわけで、それを超えたらひとまず第一段階合格、というわけです。それで、実技入試の方なのですが、毎年試験内容が変わります。」
「……え?テスト内容が変わる?」
「なんでも、『ヒーローたるもの臨機応変に状況に対応するべし』とか何とかで。とはいっても、戦闘技能が重視される内容ではあります。去年はロボットの妨害を避けながらの障害物競走、その前は受験者同士で即席のチームを組んでロボットと戦わせる、だったかな?すごい労力とお金かけてますよ、あれ。どうやって公平に採点するかも毎年決めてるみたいで、本当に雄英は規模がすごいですね。」
す、すごいなあ。私、さやかちゃんとお勉強会をしたときに自分で問題をつくったことあるけど、すごく大変だった。それを毎年やるなんて、さすがは最高峰って感じです。
……あれ?でも、そういえば。
「……あれ?じゃあ、毎年試験内容が変わるなら、偏差値79って言うのはなんなんですか?」
「あれですか?あれは、ヒーロー科の受験を目指す中学生が受ける全国統一模試があって、その実技試験の偏差値ですね。」
そんなのあるんだ……知らなかったなあ。毎年ヒーローを目指す子はたくさんいるから、そう言う需要も生まれるんですね。
「で、鹿目さん。あなたの個性、確か『ピンク・マテリアル』だったかしら?」
「え?は、はい。」
「『手にピンク色の物体を集める。投げつけると軽く爆発する。』だったかしら?」
「あー……はい、そんな感じです。」
あれ、手に魔力をちょっと集めて投げつけてるだけなんだよね……。まあこのくらいなら、この世界の個性の「普通」の範疇だと思う……多分ね。
「つまり攻撃力がある個性なのよね。すごくヒーロー向きだと思います。ヒーロー科に入れば、合法的に個性を伸ばす訓練を受けられる。鹿目さんの個性が成長すれば、きっととっても美しいものになるんじゃないかって、先生は思うんです。」
……この世界だと、個性を伸ばすのは勝手にやっちゃいけないってことになっているのです。なので、私の個性が成長することを楽しみにする先生の気持ちもちょっとわかります。魔法少女の本来の力と比べるととても小規模ですけど、それでもピンク色の魔力がはじけて綺麗なんです。
「うーん、このかわいいピンク色のものを投げつけて
「そ、そうかな……?うーん……」
ちょっと想像してみます。ひたすら手にある魔力を
「というわけで、個性とまぐれ頼りにはなってしまいますが、鹿目さんは合格の可能性が1%位はあるんじゃないかと思うのです。どうでしょう、受けてみませんか?」
「え、えぇ~?」
1%って……それじゃほぼ受からないよ……。でも、先生やパパとママからしたら、受けるだけならお金以外はデメリット無いんだよね……。
「パパも良いと思うよ?落ちても元の志望通りになるだけだしね。せっかくの機会だから、ヒーローを目指すって言うのがどんな感じで、どのくらい厳しいのかを知ってみるのもいいかもね。その中で善戦でもできれば、『今の私はこのくらいはやれるんだ』って思えるかもしれないしね。」
「パパ……」
「あ、万が一受かったら授業に付いて行けるか不安って思ってる?大丈夫だよ、ヒーロー科から普通科に移籍したっていう雄英の子の話も聞いてるんだ。入って合わなければ、そうすりゃいいじゃないか。」
「ママ……」
「鹿目さん……どうですか?今年雄英のヒーロー科志望がいなくてですね。いつもは、受験後に『ヒーロー科の試験どうだった?』って聞く役割の人が居ないと困るイベントが毎年あるんですよ。鹿目さんお願いできれば、私達とっても嬉しいんですけど……どうでしょう?」
お、大人の事情……
「まどか、どうだい?」
「まどか、どうかな?」
「鹿目さん、どうでしょう?」
ずずずっと、3人の顔が私に迫ります。ど、どうしよう。これ、私が受験する流れになっちゃってない……?ちょ、近い近い……!え?私、この空気で「受けません」ってとても言えないよ……!
「あ、じゃあ……受けるだけなら……」
あ、言っちゃった……
◇
「必ず落ちなさい。それがあなたのためよ、鹿目まどか。」
職員室を出た後、扉の前で待ち伏せていたかのようにほむらちゃんが居ました。私が何か言う前に、ほむらちゃんは私の手を取り、学校の校舎の裏に連れて行きました。手を握る力がすごく強くて、そして何もしゃべらないでずんずん歩いていくから、ちょっと怖い気持ちになってしまいました。
そして開口一番に、そう言われました。
……そうだよね。やっぱりそう言うよね。杏子ちゃんがやったことを無駄にするわけにはいかないし、魔法少女のことを隠さなきゃだし……。
「……うん、分かってる……」
「まどか、私の目を見て。」
ほむらちゃんは、突然私の顔を両手で挟み込みました。頬が歪んでちょっと変な顔になってしまっている気がします。ほむらちゃんが、私の目を覗き込みました。ほむらちゃんの目は怖いくらいに開かれていて、数センチの前にある引き締まった顔は、誤魔化しを許さないと暗に言っています。
「本当に分かってる?この世界でヒーローになるということが、ヒーロー科に入ることが、どれだけデメリットが大きいか。」
「うん、わかってる。」
「正直に答えて。まどか、ヒーロー科に行きたくないって本当に思ってる?心のどこかで、ちょっと行ってみたいとか考えてない?」
その問いかけは、私のフラフラしていた心を縛り上げるような鋭い問いかけでした。……正直、行きたいと思っているということを、ほむらちゃんには言いたくなかったです。今みたいに、心配させちゃうから。
今のほむらちゃんは、私に対して怒っている部分もあるかもしれません。でもそれ以上に、何かにおびえているようなのです。ほむらちゃん、特に前の世界では「あなたを戦わせるようにしてしまって本当にごめんなさい。」って言ってくるんです。キュゥべえが騙したりするのが悪いと私はいつも言っているんですが、ほむらちゃんは私が魔法少女になったことに対して、私じゃなくて、自分が許せないみたいなんです。
そのせいなのか、ほむらちゃんはいつも私のことをずっと気にしています。魔女の戦いの時にも、ほむらちゃんはずっと私を守る様に戦いました。この世界でも、ことあるごとに私を助けようとしてきます。ちょっと怖いとすら思えるほどに。例えば小さなことでは、私が自販機で小銭が無くて困ってるとほむらちゃん毎回出してくれるし、グリーフストーンやシードをいつも「余分に持っておきなさい」って渡してきます。この間なんか、「まどか、筆記試験の方は大丈夫だと思うけれど、万が一分からない問題が沢山あったらテレパスで伝えなさい」って言ってきました。それって思いっきりカンニングだと思うので、やめるように言っておきましたが……とにかく、度を越しているとすらいえるレベルで、私の力になろうとするのです。
ほむらちゃんは、私のことを助けるために、私のことを一番よく見ている人です。だから……今のほむらちゃんは、私が「ヒーロー科に行きたい」と考えていることを見抜いて、そのことを悔やんでいるのだと思います。そう考えると、私はほむらちゃんに申し訳ない気持ちが一杯になって、せめて、正直にこの気持ちは伝えないと、って思いました。
「ごめん……ヒーロー科、ちょっと行きたいって思っちゃった。自分勝手だよね、本当にごめん……」
「……ヒーロー科に行きたいのは、なりたい自分になるために?」
「えっ!?」
この発言には流石に驚きました。私が、ヒーローみたいな人に憧れていること、私は殆ど話していないはずです。
「……よく分かったね、ほむらちゃん。うん、わたし、自分が臆病で、おどおどしているところが気に入らなくって……だから、もっとかっこいい自分になりたいって思っちゃってる。」
「そうね。まどかは、そういう人なのよ。」
「ごめん……失望させちゃうよね。他人への迷惑も考えないで……」
「悪口じゃないわ。まどか、あなたは、いつもそうだった。」
「いつも……?」
「私が何度も時間遡行したことは話したわよね?その中で、あなたはよくマミとの会話で『マミさんみたいなかっこいい人になりたい』とか言っていたし、果ては『魔法少女になってみんなを助けたい』という、それだけの理由で契約してしまったこともあったわ。」
……そうです。ほむらちゃんは、何度も時間を繰り返していると聞きました。私よりもほむらちゃんの方が、私と一緒に居る時間が長いんです。だから、私の知らない私のことを、ほむらちゃんは知っている。なんとなく、ほむらちゃんには勝てないって思いました。
「……だから、まどかがそう考えることも、なんとなく予想はしていたわ。」
「…………」
「でも、忘れないで。あなたが思う以上に、あなたを大切に想う人が居るってことを、あなたはそのままのあなたで、もう十分素敵なの。自分では実感が無いのでしょうけれど、あなたのやさしさで救われる人が沢山いる。」
「うん……昨日の動画を見たパパとママに、優しいねって言われた。」
「あの強盗犯ね。そうね……あんな状況下でも他人を思いやれるのは、まどかの一番大きな美徳で間違いないわ。」
私のワガママで迷惑かけてるのに、ほむらちゃんは決して私を責めようとしてません。心の中で抑えているという風ではなく、そもそも私を責めることがいけないことだと思っているようです。なんというか、崇拝に近いような感情を向けられているような。私、そんな気持ちの受け取り方、わかりません。ただ、ほむらちゃんを大切にしようって言う発想しか出なくて、これでほむらちゃんからの想いに応えられているのか心配になります。
「ありがとう、ほむらちゃん。そして……やっぱりごめんね。ヒーロー科の試験、ちゃんと当日は受からないようにしておくから。」
「……でも、当日になって心変わりしないと言い切れるかしら?」
「それは……」
絶対にしない、とは言い切れません。現に、さっきも「ヒーロー科、ちょっといいかも」って心のどこかで思ってました。そうだよね。私の決意が固いって、信用することができないのは当然です。
「ごめんほむらちゃん。さっきまで迷ってたから、信用できないよね。」
「確かに、その点は信用できないわね。でも、それを自覚出来ただけでも偉いと思うわ。」
こんな情けない私でもフォローしてくれるのが嬉しくて……そして、そんな情けない自分は、やっぱり嫌だって、今も感じました。この気持ちは、今後も抱えていくことになる。ほむらちゃんの言う通り、私は当日に心変わりをするかもしれません。
……いえ、そもそも。今からでも、受験を止めるって先生に言おうかな……?
「…………本当にごめん、ほむらちゃん。心が弱くて。今からでも、先生に行って出願を取りやめてもらおうかな?」
「そうするべきなのでしょうけれど……不自然だし、あの先生もうまどかが雄英のヒーロー科を受験するってほかの人に言ってしまってるわ。」
「え、そうなの?じゃあ今から止めるって言ったら、迷惑になる?」
「強く言えば通してもらえるでしょうけれど、まどかの出願状況を考えると『なんでデメリットの無い受験をこんなに嫌がるんだ?』って逆に疑われるわね。変な心配をさせる可能性はあるわ。」
「そ、そうなんだ……」
私の場合、落ちても元通りの普通科に行くだけですからね。それを嫌がるというのはちょっとおかしいと言えばおかしいです。う~ん、ちょっといい言い訳が思いつかないなあ……
そんなことを考えていると、ほむらちゃんは私の手をおもむろに取りました。
「でもね。まどか。あなたの気の迷いでも、もしヒーローになる道を選ぶってなったら。私も付いて行くわ。」
「え?そ、そんな!?私の為にそこまでしなくても!?」
「別に高校じゃなくても、ヒーロー免許は取れるんだから、私も頑張ればヒーロー免許は取れるでしょう。時間停止をいい感じに縮小解釈した個性にすればいいでしょうね。」
「で、でも、ほむらちゃん自身の進路とか」
「無いわ、そんなもの。」
ほむらちゃんは、本気です。私に付いて行く以外のことをする気が無いんです。私は今ほど、ほむらちゃんの想いを感じたことはありません。私のためなら、嫌っているヒーローにもなるって言いきっているんです。
それがとっても嬉しくて、それを通り越してその大きさが怖くて、どうしたらいいのか全く分からなくなりました。ただ、今のほむらちゃんをぞんざいに扱いたくないって想いだけが私の中にありました。
「……ほむらちゃん。その想いに応えられるように、どうすればいいのかわからないけれど、私頑張るね。とにかく、何かしてあげたいって思ってる。」
「私の為に頑張る必要はないわ。自分の幸せを掴むために頑張るべきよ、まどか。」
「嫌だよそんなの。私、人の想いを雑に扱いたくなんてない。それが私の美徳だって、さっき言ってたよ?ほむらちゃん……。」
「……ふふ、そうね。」
ほむらちゃんの張りつめた顔が、ふっと緩みました。ずっと近くにあったほむらちゃんの存在が、うれしくて、心強くて。ずっとそばにいて欲しいって、そばに居れる私になりたいって、強く思いました。
「お二人とも、その距離は……!?」
聞き覚えのある声がしました。声の方を見ると……仁美ちゃんがいました。口に手を当てて、驚きの表情をしています。
仁美ちゃんとは、最近は割と会う機会がありません。というのも、さやかちゃんが恭介君に振られて、仁美ちゃんが付き合っているらしいのです。基本的に誰とでも仲良くなろうとするさやかちゃんですが、その失恋で死にかけたこともあって、さすがに会うのが気まずくなっちゃったみたい。仁美ちゃんが私と話していても、さやかちゃんは話そうとせずに黙っていることが多いです。
……それはそうとして、仁美ちゃんがすごく驚いていますが、一体どうしたんでしょう……?
「その距離で見つめ合って……まさか、最近流行りの『壁ドン』を!?いや、まさか、く、口づけを……!?」
「いえ、違うわ。」
ほ、ほむらちゃん……こういうのによく冷静に返せるよね。恥ずかしいとか無いのかな……?
「暁美ほむらさん……鹿目まどかさんは、あなたにとってどんな人なんですか?」
「どんなって……大切な人だけれど。」
ほ、ほむらちゃん!?その答えからは誤解を招くよ!でも確かに今は距離が近いし……何とかして誤魔化さないと!
「あ、いや!友達として大切って意味だよね!」
「友達だし、それ以上に私が守らないといけない人、かしら。」
「ちょ、ちょっとほむらちゃん素直すぎるよ!?」
「いけません、いけませんわ……!」
あ……仁美ちゃん、自分の世界に入っちゃった……。こうなると、仁美ちゃんは暴走してあること無いこと言い始めます。
「友情と愛情のすれ違い……これは、女の子同士の禁断の恋の形。最近は暁美さんが鹿目さんにべっとりと聞いてもしやと思っていたけれど、やっぱりそういうことなんですね~!」
そう叫びながら、仁美ちゃんは走ってどこかに行っちゃいました。ど、どうしよう。変な噂とか立てれられないかな。ただでさえ、ほむらちゃん人づきあいが下手だから、そう言うのは気にしなくちゃいけないのに。私のせいでほむらちゃんに変な噂が立ったらと思うと、申し訳ない気持ちになります。……ちなみにですが、案の定女子の間でこのことが噂になってしまっていました。もう、仁美ちゃんったら……。
……で、でも。私は、さっきのほむらちゃんの答え方にも、ちょっと問題があると思うのです。ほむらちゃんなら、私の言うことは素直に聞き入れてくれるよね!
「ほむらちゃん……ちょっと答え方が誤解を招くものじゃないかなあ。私のことを大切にしてくれるのは嬉しいけれど」
「そうなのかしら?でも本気で愛しているのは間違いないし、変に『ただの友達です』っていう方が誤解ではないのかしら。いや、『愛してる』って表現が男女間の関係にしか用いられないからまずいのかしら?友達を超えて大切なのよ、まどか。」
「あい……えっ!?」
「じゃなきゃ、あなたの進路にこんなに口出ししないわ。でも、そうね。今後は『大切な人です』って言った方が良いのかしら……?」
ほむらちゃんは、何か考え込みながらその場から去っていきました。私は、呆然としてその場に取り残されました。
……ほ、本気で愛しているってどういう意味なのほむらちゃん!?私、そんな想いの受け止めかた、何も知らないよ。どうすればいいんだろう……!?
・毎年変わる雄英のヒーロー科の入試
戦闘能力重視という傾向はあるのだろうが、毎年内容は変えていると思われる。でなければ、救助ポイントを秘密裏に用意するなんてできないはずだし。滅茶苦茶準備大変そうお金かかりそう(こなみ)。
・偏差値79
流石にペーパーテストの結果ではないと思われる。あれで学力も含め偏差値79だったら流石にヤバすぎる。多分全国ヒーロー力テストみたいな模試のヒーロー版みたいなのがあって、戦闘能力とか救助能力を測る試験みたいなものを民間企業がやっているイメージ。
・鹿目一家
・エンデヴァー: 仕事はできるが家族との付き合いがゴミ
・鹿目詢子: 仕事ができて家族も大切にできる
う~ん、鹿目詢子の方が格上!w
近年稀にみる超あったかい家族だと思う。
・動画を見たパパとママ
殴られたシーンで肝が冷え、まどかが説得するシーンで呼吸が止まった。
・仁美
あんな失恋したら、恋敵と今まで通り素直にやっていくのはかなりキツいと思う。志望高校も雄英ではないので、今後彼女の出番は多分ない。
・ほむらの進路
将来の進路も含め、まどかに着いて行く以外一切考えていない。まどかが、自分が嫌いなヒーローの道を志したとしても、当然着いて行く。
・ほむまど、またはまどほむ
まどか「私の最高の友達」
ほむら「私の一番大切な人」
これが恋愛に類するかは読者の皆様の想像に委ねます。とりあえず恋愛と明示して話を進めるつもりはありません。