マギレコアニメ見たんですけどいやあいいっスね(小並)
やっぱり外伝の設定も入れられそうなら入れようと思います。
まどマギ原作はテレビアニメだけだと情報量少なすぎるんじゃい!
「さァさァ序盤の展開から誰が予想できた!?今一番にスタジアムへ帰ってきたその男———緑谷出久の存在を!!!」
雄英体育祭第一種目の障害物競走、その一位が決定した瞬間、会場はおおいに沸いた。割れんばかりの歓声が、一位となった彼に降り注ぎ、次いで現れる二位、三位の生徒に順に視線が注がれる。
第一種目の山場は一通り終わった、誰もがそう思っていた。
1位の喜び、2、3位の悔しさといった感情にかまわず、実況はスケジュール通りに進行する。
「2位は『俺が一位になる』とせんせーしていた爆豪!3位は推薦入学者のエリート、轟だ!続々とゴールに来る生徒はやはりヒーロー科が多い!果たしてこの中で何人が次の種目へ……ん?え、何?地雷原の方?」
実況していたプレゼントマイクが誰かからの報告を受け、画面が第三種目の地雷原の方に切り替わる。
そこには、明らかに雄英のジャージではない派手な格好の、例えるならヒーローコスチュームのような服を着た少女がいた。可愛らしさと神聖さを両立させるその姿は、地雷原で足を止めていた生徒の視線を集めており、しかし近寄る者はいなかった。
「……?ん?なんだアレ!?地雷原に現れたのは、ヒーローコスチュームに身を包んだ謎のGIRLだ!てかマジで誰だあれ!?なんか弓持ってるしジャージを着ていないってことは……乱入者?HEYお巡りさん!つまみ出しだしてプリーズ!って何しようとしてんだアイツ!?」
よく見ると、その少女は弓のようなものを持って、光る何かを空に向かってつがえていた。やや虚ろな目で空を見る彼女が、自らのためにやっているのかそれとも妨害目的なのかは誰にも分からなかった。
そして次の光景は、プレゼントマイクの実況もあって様々なメディアに映し出された。
その桃色に光る何かは、地雷原の上空に停止した。次の瞬間、桃色の不可解で巨大な幾何学模様が現れる。丁度地雷原を覆うほどの大きさだった。耳当たりの良い機械音のような音を発するそれは、地雷原のあたりを走っていた生徒は勿論、中継を通して画面越しに目撃していたドーム内の観客の目をも釘付けにした。
地雷原に差し掛かろうとしていた生徒はその神々しい陣の真下に入ることを恐れて走りを止め、地雷原の終わり際だった者は大急ぎで地雷原のゴールを目指す。中間あたりでせっせと地雷を避けていた者は、なす術なくあんぐりと口を開けて空を覆うそれをただ見るしかなかった。
「なんだあのデカい、えー、魔法陣が上空に……!?」
DJとして知られているプレゼントマイクは普段そのマシンガントークを止めることは無いが、今彼の目に映る光景に関しては、実況するには脳で処理する時間が必要なようだ。
魔法陣から直下に、何かを浄化する雨のような光が降り注ぐ。実際には矢が降り注いでいるのだが、魔法陣から突如現れ神々しく発光するそれは、見る人々に例えば弾丸だとか、光線、人によっては霊的な何かと捉えるなど、それに対する認識は殆ど統一されない。
多数のそれらは地面に着弾すると同時に、次々と大爆発を引き起こす。埋められた地雷が起爆していることに加え、なぜか降り注ぐ矢自体も桃色に爆発していた。
それが収束し土煙が晴れると、地雷が一つ残らず消え去っていることが確認できた。
「な、何が起ったァー!?謎のGIRLが作り出した矢は、地雷原に降り注ぎ地雷を一つ残らず消し去ってしまったァ―!残されたのはクリィーンで走りやすいコースだ!」
プレゼントマイクは衝撃を受けつつも、持ち前の実況センスで場を繋ぐ。
しかし、観客のかなりの部分は未だ衝撃から抜け出せていなかった。
その光景を間近で見た生徒は、
「ヒーロー科にあんな個性の人いたっけ……?」
「武器を持つのは違反じゃねえのか!?おい、審判!」
「な、なあ俺、吹っ飛ばされたのにマジで擦り傷一つねえんだけど……てかなんか一瞬ピンクの何かで覆われた?」
「……女神の、使い……?あの神々しいものは神の裁き……!?」
先にゴールして、ディスプレイ越しに見ていた者たちは、
「え、な、何だあれ!?ミッドナイト先生!これはもしかしたら想定外の事故が!」
「分かってるわよ緑谷君。ちょっと待っててね、えーともしもし……」
「……すげぇ。攻撃と同時にバリア張ってたな?」
「な、何だあの個性……!クソが、今、俺は、また……!」
そして、観客のプロヒーロー達も。
「……何だあれ、あの生徒……生徒か?あの女子が独りでやったのか?」
「あんな広範囲攻撃ができる個性、プロでも中々ないぞ。」
「生徒なら、あんな強い個性なんだからヒーロー科に決まってるだろ。」
「おい……よく見ろよ。爆撃の中心にいた子が傷を負ってない。あんな一斉に爆発したんだから、多少は傷ができるもんだろ?」
「なんだって?つまり、地雷の爆発による怪我が起きないように調節出来るのか。なんて有用なんだ……今からでもサイドキック指名が殺到しそうだな。」
などと、中継を見ている誰もが注目する。
「……ていうかマジでアレ何の個性だ?つかどこ行った!?」
プレゼントマイクが実況を再開しようとする。しかし、それを放った少女はいつの間にかその場からいなくなっていた。残されたのは、多数の爆発が起こったにもかかわらず均一に均され走るのに適しているようにしか見えない地面、範囲外から一連の現象を見て呆然と固まる生徒、なぜか外傷は無いが爆発に巻き込まれ何が起きたか分からず放心状態で倒れる生徒だった。
「マイク、この場は頼んだ、俺は下へ降りる。」
「え。おいイレイザー、おい!?」
そしてそれを見たイレイザーヘッドは、緊急事態と判断したのか放送席を出て行った。
プレゼントマイクは、仕方なく一人で実況を続ける。普通の体育祭なら一時中止となる事態だが、これはヒーロー科生徒の将来、そして国民的スポンサーの数々の支援が乗っている催しであり、人的被害が無いならば強行してしまうのが例年の対応だ。
「あー……イレイザーは運営の事情で一時退出するようです。まあLEAVE IT ASIDE、あの謎の女子はどこ行ったってもうゴール目前じゃねーか!なんかピョンピョン跳ねてるし、あいつは増強系の複合個性なのかァ!?」
その少女は、桃色のオーラのようなものを脚部を中心に纏いながら兎のように飛び跳ねる。ゴールまでの距離をみるみる縮めていた。無表情なので不気味さはあったが、それをかき消して余りある可愛らしさと神聖さで、次々と追い抜く生徒の注目を集めていた。
「ん……え、誰!?」
「な、なんだあの姿!?」
『ウ、ウワアアァァァ!!!浄化サレテシマウゥゥゥ!!!』
「おい、どうしたダークシャドウ!?……貴様の個性による攻撃か!?」
最後のセリフは、常闇踏陰が発したもの。彼の個性は
しかしその
「その姿……雄英生に非ずか。貴様のような乱入者を取り押さえるのもヒーローの役目。捕らえろ、
『ア、アイヨォ……』
彼女を乱入者と認識した彼は、個性で彼女を取り押さえようとする。
だが彼女の片足が地面に接した瞬間、ギュルン!と、接地面から桃色の何かを放ちながら異様な高速回転。次の瞬間には、矢をつがえ
「!?なんという機動力!まずい、よけろ
『ワ、ワァ、浄化、浄化ノ光……』
しかし何故か弱っている
「無事か、
『セ、セカイガ、眩シイ……』
完全にダウンしてしまった
そして、ドン!と。
その見た目からは想像できない重厚な着地音を伴って、彼女は障害物競走のゴール地点、スタジアムの中に到着した。その後、彼女はゴール地点に立ったまま何もしないでいる。
彼女の様子は途中から中継されていたので、ほぼすべての目線が彼女に集まった。が、話しかけようとする者はいない。彼女の表情をよく見ると妙に上の空であったことが不気味だったのだ。
「謎のGIRLはこれまで何やってきたんだってスピードでごぼう抜きしてゴォール!!!ところでいい加減アレ何なの……ん?え、何?え、普通科の生徒なの!?マジかよ!!?」
プレゼントマイクは、会場のスタッフから渡された暫定情報を話し出す。DJとしての場の盛り上げというより、観客に向けての安全宣言の意味合いが強い行動だった。
「えー……謎のGIRLは乱入者などではなくれっきとした、鹿目まどかという名のウチの生徒ですです。あのCUTEな恰好は多分個性による『変身』の結果で、レギュレーション違反でもありませんでした。現在詳細を確認中なので、リスナーの皆さんはWAIT A MINUTE!……え?スポンサーから時間に合わせてくれって……おっと、しばらくオフレコにさせてもらうぜ!」
プレゼントが取り込み中になった。この間、彼女はそこから微動だにしなかった。
しかし、10秒もすると眠りから覚めたよう反応を始めた。
「…………ん……ん?ほむらちゃん?え?え?えと、え、え、えええ~~~!?」
自分の居る場所と、自分の恰好を確認して突然慌てだす。その慌てる姿は、突然この場に放り込まれた年相応の子供のようだった。
「え!あ、わ、み、みんな見てる!?ど、ど、どうしよう!?」
一人だけヒーローコスチュームのような恰好をしているだけでも目立つというのに、先ほどの矢の雨のせいで余計に注目を集めていた。彼女はひたすらに周囲をキョロキョロするが、状況が把握できていないのは周囲の生徒も同じである。
が、少しすると慌てる様子を可哀そうに感じた生徒が彼女に近寄り始めた。しかしそのタイミングでアナウンスが始まる。
「えー、想定外のハプニングがありましたが、時間も押してるからいったん次の競技の説明をするわよ!」
主審のミッドナイトは、第二種目となる騎馬戦の説明をした。3人か4人で騎馬を作り、ポイントが書かれた鉢巻を頭に巻く。その鉢巻を奪い合うのが競技の目的となる。一位は何と1千万ポイントとなり、多くのポイントを持つものほど狙われてしまうバトルロワイヤルとなる。
……などと、真面目に競技に参加する気ならば聞き逃せない説明が続いたが、鹿目まどかは意に介さずただキョロキョロ周囲の様子をうかがうことしかしなかった。ミッドナイトの話に耳を傾けようとするそぶりはあったが、途中で突然誰かに話しかけられたように集中を切らしてしまう。
「……チーム決めの交渉タイムスタートよ!あ、場合によっては数分伸びる可能性もあるのでご了承くださいな。」
「えっと、えっと、えーと……」
「だ、大丈夫か鹿目さん!?」
ミッドナイトの説明が終わった直後、鹿目まどかに話しかける生徒がいた。彼女のクラスメイトの心操だ。
「あ、し、心操君!?ど、どうしよう!騎馬戦だって!私、えーと、えーと……」
「ま、まずは深呼吸だ鹿目さん。」
「う、うん……」
彼女は言われた通り深呼吸する。挙動不審な動きは幾分か落ち着いた。
「えーと、色々聞きたいんだが……その姿はなんなんだ?」
「えっ!?まほ、あ、いやえーと、なんか、個性が暴発、したみたい?」
「ぼ、暴発……?あの動きでか?」
疑問形のように答える彼女に、心操は納得できるはずもない。確かに個性が思わぬ形で発現する事故は現実に起こりえるが、彼女ほどのものは暴発と形容するには違和感があった。先ほどの障害物競争での走りは彼も目撃しており、明らかに増強系のようなパワーに慣れている走りだった。
ただ、その挙動不審さから少なくとも彼女が予期していない事態であることは心操にも信じられた。
「えーと……体が痛いとか、気持ち悪いとかはないのか?」
「だ、大丈夫だよ。元気。」
「その……元の姿に戻れるのか?」
「あ、うん。えい!」
ボンというような音を立てて一瞬で元の姿に戻り、そして再びコスチュームのような姿へ戻った。この一連の動きを、心操は少しの羨望と多大な困惑を持って見ていた。
「な、なんなんだそれ……。とにかく、無事でよかった。後で暁美さんに無事を伝えといた方が良いぞ。」
「えっ、ほむらちゃんに?」
「いや、言うまでも無く鹿目さんすごく大切にされてるだろ。さっき、鹿目さんが、えーと、変身か?とにかく俺が洗脳をかけたとき、俺はすぐ鹿目さんを追いかけたんだけど、時間差で後ろから『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!』って暁美さんのこの世の終わりみたいな声が聞こえてさ。きっと滅茶苦茶心配してる。」
「あ、あはははは……」
困ったように笑うまどか。心操はその反応が微妙に場に合っていないような違和感を覚えたが、小さい引っ掛かりだったのでスルーして話を続けた。
「それと、すまん。ああいうのは事前にもっとちゃんと確認するべきだった。『応援要るか?』で確認したつもりになってた。」
「あ、あはは……その、あの障害物競争もともと個性での妨害アリだったし……心操君はもともと私を助ける必要なんて無かったんだからさ。私の為にやってくれたことは嬉しいよ。」
「……でも、なんか想定外の事態みたいだし……」
心操は、これが他者を蹴落とすことが主題の個人戦であったにもかかわらず、起きたことがあまりにも大きすぎて彼女をルールに則らない形で害してしまった気になっていた。
「えーと、で、でも次の騎馬戦……えっ棄権?」
突然、反復するようにまどかは「棄権」という言葉を口にした。
「え?鹿目さん棄権するのか?」
心操は個性の異常事態だから棄権したいのかと一瞬思ったが、それにしては彼女が棄権することを嫌がっているようにも見えた。
「え、でも、ここでそれは空気が……あ、ごめん心操君。ちょっと待ってね。」
「待ってねって……独りで何言ってるんだ?あと時間多分12分くらいしか」
「あのー、鹿目さん?ちょっといいかしら?」
「鹿目さん、で合ってるか?少し話を」
「はわわわわ……」
一気に多人数に話しかけられ、鹿目まどかは再びおどおどとし始めた。教師のヒーロー、ミッドナイトとイレイザーヘッドが彼女の元へ来たのだ。
先に口を開いたのはミッドナイトだ。
「えーと、見たところ怪我とかはなさそうだけれど、その恰好は何なの?」
「な、なんか個性が暴発したみたいで……」
「……ん?『暴発したみたい』ってどういうことだ?つまり暴発させないと」
「え!?あ、いや!なんか個性使おうと力んだらなんかこうなっちゃったみたいな感じです!か、体は多分健康です、多分!」
イレイザーが疑問を口にしかけたときに、彼女は被せ気味にそうまくしたてる。
「まあ元気そうなのは良かったわ。」
「あ、はい……。」
「元気なのは良かった。だが君、その個性の制御はできるのか?」
「えっ?私の個性だからもちろん制御できます……?」
「……暴発したんじゃないのか?」
「え、いや、えっと……」
イレイザーヘッドが理詰めで彼女に次々と質問するために、まどかはほぼ反射的に答えるしかない。
「……つまりだ。個性の制御が怪しい奴は次の騎馬戦に参加させにくい。例年はこの晴れ舞台は多少の無茶は許容するんだが、今年はとある事情で安全対策に割くリソースがカツカツでな。」
イレイザーは、騎馬戦に参加する生徒の誰かを横目で見た。
「君は知らないことだろうが、この場には万が一の個性事故を防ぐための設備や人員が多数配置されている。が……先ほどの、なんだ、光る矢の雨か?アレを見る限り、君が意図せず他者を必要以上に傷つけることを、俺たちは防げないかもしれない。君が個性の制御を失ってしまったらな。」
「あー……その、確かに……」
「だから、君が個性を制御出来ないというならば、俺たちは君を騎馬戦に参加させることができない。」
「いや、制御に関しては大丈夫だと思いますよ。」
しどろもどろの彼女を見かねて、心操が助け舟を出した。
「ええと、俺、あの光矢で地雷原が爆発したときに手前にいたんですけど、見た目と感触で言えば骨折もあり得るレベルの衝撃がありました。でも、巻き込まれた俺はもちろん、地雷原ど真ん中で巻き込まれた人も怪我してませんでしたよ。衝撃で呆けてはいましたけど。」
「……それが本当なら確かに安全ではあるが……君、それは意図してやったのか?」
「えーと、多分……?」
「多分ってどういうことだ?曖昧だと判断に困る。」
「俺から説明します。実はさっき俺の個性の『洗脳』で……」
心操は、自分が彼女に全力を出すよう洗脳をかけた以降の、一連の流れを説明した。彼の落ち着いていてわかりやすい説明は、教師に迅速な理解をもたらした。
「……経緯は分かった。ひとまず、俺の責任の下騎馬戦への参加を許可する。ただし、俺達が危険だと判断したらすぐに下りさせる。そこは覚えておいてくれ。あとこれが君のハチマキだ。」
「あ、ありがとうございます……?」
まどかは、何故か騎馬戦への参加が既定路線であるかのように進んでいることに強烈な違和感を覚えつつも、場の空気に流されてそう答えてしまった。
彼らヒーローの教師たちはまどかが騎馬戦を棄権するなどまったく考慮していなかった。この体育祭で棄権する生徒などほぼいないのだ。
先ほどの個性の暴発のゴタゴタを一通り処理し教師たちが元の持ち場へ戻る。そして二人は、騎馬戦にやっと注意を向け始める。
「……えーと、騎馬戦かあ。…………えっと、チームどうやって決めるんだろ?あと、このハチマキ何……?」
「…………鹿目さん、もしかして説明聞いてなかった?そのハチマキの奪い合いをするんだよ。」
「あ、うん、ごめん慌てちゃってて……」
「仕方ないな……周りはもうほとんど組が出来ちまってるみたいだし、俺と組むしかなさそうだ。あ、肩車はOKだってさっきミッドナイト先生が説明してたよ。」
「へー……?あ、あと時間30秒しかない!心操君私肩車するね!」
心操に躊躇なく肩車をしようとする彼女に、彼は慌てて離れる。
「は!?ちょ、ちょっとストップ!なんでそっちが騎馬なんだよ!」
「え?だって私の方が力強いし、それに心操君に迷惑かけちゃってるし……」
先ほどの光景を見ていれば、彼女の身体能力が増強系並になっていることは分かるのだが、それであっても見た目的に悪い方向にインパクトがあるものとなってしまうだろう。可愛らしい女子に肩車されるというのは、彼のプライドや世間体が許さなかった。
「絵面がヤバいからやめてくれ。俺が下になる。」
「そ、そう……?わかった。」
心操はまどかを肩車する。無個性なりに鍛えているために肩車程度なら全く問題ない。
だが、彼は肩車しても渋い顔だった。
「……その、このスカート何とかなんないか?」
「え、なんとか?」
「すごいもこもこしてて首が動かせない。」
同年代の女子を肩車するのは、この年の男子ならどぎまぎしてしまうかもしれないが、今の心操には当てはまらない。彼女のスカートの中はかなり布が詰められているようで、心操の頭はかなり圧迫されてしまっていた。
「咄嗟に横を向いたりするのが難しいんだ。つまり機動力が、多分この中だと最低クラスになる。元の姿に戻ったほうが……いや、やっぱいい。その姿の方が個性が強そうだ。」
「ご、ごめん心操君。でもこの姿の方が、えーと、なんだか力が湧いてきて、えーと、どうしよう……?」
心操はここで初めて、自分たちが騎馬戦のための相談ではなく、騎馬戦を『勝つ』ための話が全くできていないことを自覚した。
「……もう始まる。やれることをやるしかないさ。本当は作戦とか考えたかったんだが……とにかく鹿目さんは、その個性で近付いた奴を反則にならない程度に攻撃して、ハチマキを奪ってくれ。」
「う、うん。ごめんね、私がこんなことになっちゃったせいで、たった二人だけなんて……」
この騎馬戦において、人数が大いに越したことは無い。人が増えればその分個性が、つまり手札が増えるからだ。
「いや、予想外だったけどもともと俺の撒いた種だ。だから文句は言えない。」
「……でも、私心操君が頑張ってたの知ってるし……」
「え?」
「心操君、朝HRが始まる前にずっと走り込みとかしてたんだよね?いつもシャワー浴びてから教室入ってきてた。授業終わった後もずっと図書室籠って分厚い本とにらめっこしてたし、土日も学校来てるって聞いてるよ。そんなに頑張ってる人が落ちるなんて、私も悲しくなるもん。」
思っていたよりも高い自分への評価を示され、少し暗い気持ちが晴れた心操。この場にいる他の参加者と同じように、純粋に勝ちを狙いに行く精神になっていく。
「だから私、せめて迷惑かけないように、心操君が次に残れるように頑張るからね!」
「お……おお。」
本当は俺自身が頑張るのが筋なんだけどな、という贅沢な本音を隠し、心操は全く先の読めない騎馬戦に臨む。
◇
障害物競走をかき乱した少女の存在は、先にゴールした生徒たちの注目も引きつけていた。スタジアムに設置された巨大スクリーンは、マイクが実況を始めたあたりから彼女の姿を写しだし、地雷原に矢の雨を降らせた場面はバッチリと中継されていた。
しばらくは皆、個性社会においても現実離れと形容できるほどの光景に息を飲むばかりだったが、彼女がゴールした直後の頃、最初に緑谷出久が気付いた。
「……ん?あの人、もしかして鹿目まどかさん!?」
緑谷は鹿目まどかとはそこまで親しいとは言えないが、雄英における普通科の友達と言われたら最初に思い浮かぶ程度には心に残っている人物だった。
続いて麗日、飯田も彼女が鹿目まどかだと認識する。
「あ!確かにまどかちゃんや!顔と髪形……間違いないよ!」
「……確かに、鹿目君で間違いない。なぜ学校指定のジャージを着ていないのだ……?」
「緑谷、知っているのか?」
「うん。お昼の時に話す事があった普通科の人なんだ。……常闇君、その、どうしたの?
常闇踏影の
「ああ。彼女とはゴール直前にすれ違ったんだが、彼女の個性……だと思われる強すぎる光が、我が闇を照りつけてしまってな。」
『ウウウ……浄化ァ……浄化コワイ……』
「だ、大丈夫……?」
「おそらく個性の影響だろう。ここだけの話だが、
「ただの光じゃないってことか?一体どんな個性なんだ……それにあの姿は……」
「緑谷ー、アイツのこと知ってるのか?」
緑谷の近くに、話を聞きつけた上鳴や切島と言ったA組の生徒が次々と集まってくる。緑谷は、常闇にしたように彼女との接点を彼らに説明した。
「……へー。なるほど、……考えてみりゃ他の科との接点ゼロだな今のところ。」
「まさか普通科にあんな強個性持ちがいたなんてな。でもさ、あんなことできんなら今頃とっくに有名になってんじゃないの?」
画面越しでも、地雷原をきれいさっぱり整地してしまった彼女の行いは見る者にインパクトを与えた。出力だけでもヒーロー科に在籍して当然というレベルだった。
しかし、過去に彼女と会ったことのある緑谷や麗日は疑問を呈する。
「うーん、僕入試の時に鹿目さんに会ったことあるんだけど、あんなことしてなかったよ。」
「まどかちゃんの個性って『ピンク・マテリアル』らしくて、ピンク色の何かを生み出して投げつけることができる個性……って前に聞いた。」
「全然別物じゃねーか。……いや、あの光の矢もピンク色だったし、面影がある……かもな?個性の真の力を隠してた、ってことか?でもなんでそんなこと……」
「……なんかすごい慌ててるよ?声かけた方が良いんとちゃう?」
ゴールしてしばらくは虚空を見つめていた彼女だが、ふと彼らが今一度確認してみると、どうすればいいのか全く分からないという風にオロオロする様子が見て取れた。
「そうだね……よく分からないけど本人にとっても想定外みたいだし、とりあえず話を聞かないと」
と、緑谷達が彼女の元へ向かおうとした瞬間。
「えー、想定外のハプニングがありましたが、時間も押してるからいったん次の競技の説明をするわよ!」
(うっ、早く説明してほしかったけど今は止めて欲しかったなぁ……)
ミッドナイトからの説明が始まってしまい、彼らは彼女と話す機会を失ってしまう。体育祭は自らの進路のために非常に重要であるため、説明を聞くことを優先せざるを得ない。
説明が終わった後再び話しかけようとしたところ、今度は普通科のクラスメイトらしき人と、プロヒーローの教師が彼女の元へ集まりだし話を始めてしまう。「取り込み中」という言葉がピッタリな、微妙に入りづらい空間が生まれてしまった。
緑谷達としては、まどか達の話が気になるところであるが、次の騎馬戦のチームも決めなければならなかった。
「……鹿目さんのことは気になるけど、今は騎馬戦のチームを決めないと。って僕の周りに人いないー!?」
緑谷に与えられたポイントはヤケクソの1000万ポイント。どのチームからも狙われることが必至となり、彼のチームがポイントを保持したまま逃げ切るのは至難の技となるだろう。
終盤で1000万を奪う方が理にかなっていると考える者が多く、それゆえに緑谷は避けられてしまっていた。
「さ、さっき切島君とか……」
「悪い緑谷!俺、爆豪と組みてえ!個性の相性的にピッタリなんだ!」
「そうなんだ……やっぱり、保持し続けているより終盤に奪う方が理にかなっているもんなあ……轟君やかっちゃんと違って、個性もちゃんと見せてないから信用も無い……」
「デク君!組もう!」
麗日が、満面の笑みで緑谷を誘う。
「麗日さん!」
避けられていた彼だったが、仲のいい女子から誘われ、足元に水たまりができる程に感激の涙を流す緑谷だった。
◇
その後、紆余曲折がありつつも緑谷、麗日、サポート科の発目、常闇のチームが完成する。
競技が始まるまでの少しの時間、麗日が緑谷に疑問を投げかける。
「ところでデク君。」
「うん?」
「まどかちゃんのチーム……どうするの?」
「どうするって……勿論、僕らのチームは逃げの一手だよ。僕らは1000万ポイントを持ってるから。」
「えーと……2位以下になっちゃったときに、あそこのチームがいたらどうするんって感じで……」
「次善策か。そうだなあ……とりあえずは様子見かな。基本的には近付かないつもりだよ。」
「……緑谷、お前にしては消極的だな。」
障害物競走は鹿目まどかは18位、騎馬の心操は28位だった。ハチマキの点数を合計すると200点であり、2位以下のポイントを争いをすることを考えると大抵のチームが「取れそうなら獲る」という選択をするだろうという、なんとも微妙な点数であった。
だがそれ以上に、緑谷には今回の騎馬戦において彼女に近付きたくない理由があった。
「まず、理由は分からないけれど常闇君の
開始直前なのだが、鹿目まどかのチームはひとまず騎馬、というより肩車の形を現在進行形で組もうとしているところだった。他のチームはもうすでに騎馬は組み終えていて、どのチームを狙うかやどうやって個性を使っているかを話し合っている最中。教師たちとの会話などで色々遅れた結果、とりあえず参加だけ出来るようにしたという印象を受ける状況だった。心操と組んでいるのは、この中で事情を分かっているのが彼だけだったからだろう。
「……もしかしてまどかちゃん、一番脅威のチームってこと?」
「そうなんだけど、多分意味がちょっと違うんだ。暴発なら、つまりあの光の矢の雨は初めてやったって可能性が高い。つまり、もし個性を制御できないんだったら……本人の意図しない高威力の攻撃がきちゃうかもってことなんだ。」
「…………先ほど怪我人が出てはいないらしいが、それでも危険かもしれんということか。」
「うん。仮に鹿目さんのチームが何か危険な崩し行為をして退場になっても、その行為に晒された人の得点が保証されるわけじゃない。例えばハチマキが他チームの危険行為で千切れて落としちゃっても……それを戻すことを認めてくれるほど、雄英体育祭は甘くは無いと思ってる。」
「まあ、そうだよね……。」
まあ危険云々は僕の言えることじゃ正直ないけど、と多少の気まずさを見せつつも緑谷は続ける。
「僕は、鹿目さんはそんなことする人じゃないって知ってるけど……とにかく暴発する可能性があるってことは、そういうこと。だから、この騎馬戦では基本的に鹿目さんの騎馬には近付かない。……というか、どうして数あるチームの中で鹿目さんのチームを気にするの?麗日さん。」
「いや、なんかすごい見ててその、めっちゃ戸惑ってるやん?まどかちゃん。人によってはゴリゴリ狙うと思うし、ちょっと大丈夫かなって……」
「あー……そうだね。」
彼女のパーソナリティを多少なりとも知っている彼は共感を見せるが、同意はしなかった。
「でも、みんな将来がかかってる。本気でやってるんだ。手加減なんて出来ないし、する気もないよ。そんなことをするのは、この場に立ってる人に失礼だ。可哀そうかもしれないけれど、ここは譲れない。」
「ああ、俺も同感だ。そもそもやる気が無いならば棄権しているはず。そうしないということは、彼女もやる気だということだ。それに俺達も、そんな気遣いができるほどの余裕など生まれないだろう。」
「うーん、まどかちゃん場の雰囲気に流されただけじゃないかな……」
「私はベイビーがアピールできるなら何でも良いんですけどね!」
結局麗日は最後まで不安を残しつつ、試合開始が近付く。
緑谷と似た理由で、大抵のチームはまどかのチームは一旦狙いから外す方針を採っていた。皆チラチラとまどかのチームに目をやっているが、彼女のチームの周囲には微妙に間が空いていた。
だが、例外もいる。爆豪だ。
「……って、緑谷のチーム言ってるけど。あの、鹿目さんだっけ?のチームはどうするの爆豪?」
「獲るに決まッてんだろ!俺が獲るのは完膚なき一位!一千万獲って、他の騎馬のポイントも全部獲るんだよ!」
「んな無茶な……」
「あの女の子相手に可哀そうだよー!ほら見てあのオロオロ具合!事故とか暴発とかって先生が言ってたの聞こえてたでしょ?爆豪が襲い掛かったら、傍から見たら絶対弱い者いじめだって!」
ヒーローにあるまじき言葉使いと形相でそう表明する彼。対して、鹿目まどかには小動物を思わせる可愛らしさがあった。芦戸は抗議するが、爆豪は意に介さずむしろ焦りを見せる。いじめをする者の表情ではなかった。
「いいか!?俺はここで一番になんだよ!個性が強かろうが何だろうが、俺はそのすべてをねじ伏せて上へ行く!個性が何であってもだ!てめえらもビビったりしたらブッ殺すからな!」
爆豪も先ほどの光の矢の雨を、ディスプレイ越しに見ていた。それを見て彼の心に現れたのは、入学当初の戦闘訓練だ。出久に負かされショックを受けていたところに、轟がビルを凍らせた時のことを思い出したのだ。
敵わないと、あの時思ってしまった。しかし、そんなもので彼の上昇志向は止まらない。プライドを捻じ曲げられたあの日、彼は『敵わない』と感じた自分を断ち切るために、慢心を止め努力し改めて上を目指すと、個性の強さなどに負けはしないと心に決めたのだ。
だが、鹿目まどかが生み出したあの光景を見て、彼は再び敵わないのでは、と思ってしまった。才能あふれる彼だからこそ、彼女の個性が如何に強力かを理解してしまった。あの轟戦を見たときの動揺が、再び自分の心に出てしまった。
そして、その弱い自分を断ち切るために叫ぶ。
「今の俺は……遠距離攻撃が出来ねえとか、傷をつけずに気絶だけさせるなんて出来ねえとか……んなこと、関係ねえんだよ!デクの1000万とって、そしたらあのピンク髪のポイントも獲る!いいな!?」
「あんま乱暴すんなよ?まったく……」
騎馬の3人は彼女を積極的に襲おうとする爆豪にハッキリとした同意は見せなかった。しかし
こうして様々な思惑が潜む中、プレゼントマイクの実況が再開した。
結局鹿目まどかは、勇ましい部分を見せつつも最後までオロオロしていたのは変わらなかった。この様子だけ見れば、とても脅威には見えない騎馬だ。
「さぁて行くぜ!残虐バトルロワイヤル!3、2、1!スタート!」
ただ、弱気だということは実力が無いことを保証するわけではない。
・ほむら
人知れず発狂中。
ちなみにほむらは時止め使用としましたが、全力まどかに『今のままだと妨害されちゃう!』と判断され魔法で妨害されました。
・青山
犠牲になりました。
・「俺の責任の元騎馬戦への参加を許可する。」
え、あんなことがあったならいったん棄権を勧めるだろって?原作でも黒鞭発現しても訓練続けさせようとさせてたしヘーキヘーキ!(あとシナリオの都合)
・「心操君が頑張ってたの知ってるし」
あんま描写できていなかったけど、まどかはほむらと違ってクラスメイトの事をしっかり見ていて、心操が頑張ってる姿を見てるので普通に尊敬してます。