個性『魔法少女』   作:Assassss

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高評価、誤字報告、感想いつもありがとうございます。

あけましておめでとうございます。お年玉です。

原作で心操と一緒に居た庄田、尾白はそれぞれ鱗、小大のチームに入れられました。役割は近接攻撃強化と、接近時の対応要員みたいなイメージです。

あと、点数は結構適当です。計算めんどかったのでノリで書きました。計算してみたら合わないなとか思ったら、まあまどかが入って順位変動したんやな的な感じで脳内補完お願いします(丸投げ)


騎馬戦

「実質一千万の争奪戦だぁー!」

「はっはっはー!緑谷君、覚悟ー!」

 

騎馬戦の初動は、ほぼすべての騎馬が1000万を持つ緑谷に向かうものだった。身構えていたまどかの騎馬に近付く者はおらず、少し緊張を解く。

 

「はぁ……よかった、私のところに一気に来たりしなくて。……なんでみんな緑谷君の方に行くんだろ?」

「そりゃ、アイツが持ってるポイント1000万だからな。」

「……あれホントだったんだ、すごいポイントだね。」

「一周遅れの反応……」

 

緊張感がない会話をしつつ、まどかは改めて周囲の状況の把握に努める。

 

「えーと……私のハチマキを奪われないようにして、他のハチマキを獲れば良いんだよね?」

「ああ。ただ俺達のチームの持ち点だと、このまま保持し続けるだけじゃ4位以内は無理だな。」

「つまり……どこかから奪わないとダメなのかぁ……うーん、どうしよう……」

 

まどかは何とはなしに、光の矢を生成してつがえてみた。彼女の個性からすれば当然の攻撃手段だ。しかしその瞬間、ミッドナイトのアナウンスが入る。

 

「繰り返しになるけど、悪質な崩し目的での攻撃はダメよ!例えば遠距離攻撃出来る個性で他の騎馬を不意打ち攻撃したらその時点でレッドカードとします!」

「す、すみません!」

 

明らかに釘を刺されたまどかは、慌てて矢を消して弓を降ろす。そして、考えていた作戦がダメになってしまったんだろう、何とも困った表情をまどかは浮かべるのだった。

 

彼女は何気なく行っているが、生成したものを自在に消すというだけでも個性としてはかなり不可思議に分類される。心操は、疑問が湧き出るのを抑えられない。

 

「うーん、やっぱり撃つのはダメみたい……」

「ま、まあとりあえずレッドカードで退場には最低限ならないように気を付けてくれ。……結局、その個性なんなんだ?鹿目さん。」

「え?えーっと……」

「あ、いや、答えられないなら無理にとは言わないが……」

 

事故を起こしてしまった手間、心操は強く聞けなかったがそれでも気になるのは当然といえる。

 

厳密に言うと、怪我人や器物損壊が発生している訳ではないので事故というよりは意図しない暴発なのだが、それを加味しても彼女の様子を見る限り現状を素直に歓迎できていない事は感じ取れる。彼女にとってこの現状はなにか不都合があるのだろうと心操は感じていたが、具体的になぜ歓迎していないのかはよく分からないのだった。

 

「……その、めちゃくちゃ不思議なんだけど、鹿目さん弓を習ってたことあるのか?」

「え?無いよ。」

「その割には、今すごい流暢に矢を構えてたなって。」

「え!?あ、えーと、多分個性のお陰でなんとなくやり方が分かるの!」

「…………」

 

なんだそのご都合主義の塊は、という言葉が彼の喉まで出かかった。個性で勝手に技能を習熟するなど前代未聞である。個性とは身体機能の一つというのが定説であり、何かの経験値を勝手に得るようなことは、個性のこれまでの傾向からしてかなり考えづらいものだ。

 

そして同時に、今回は確認を怠った自分に非があるものの、羨望を抱くのを止められない。自分と違い、明らかにヒーロー向けの個性。勝手にコスチュームのような姿に変身出来て、映える光の矢を放つ、さながらコミックの魔法少女。(ヴィラン)向きと言われ続けた自分とは正反対だった。

 

「いいな、羨ましい。本当にヒーロー向きだよ。」

「わ、私そんなんじゃないよ……」

「……あんま俺が言うことじゃないかもだけどさ、あの光の矢の雨を見せられたら羨むなって方が無理筋だって。対(ヴィラン)戦においては遠距離攻撃できるってだけで仕事になるし、それにあれだけ派手にやっておいてけが人なしってマジで何なんだ?あの、なんか、バリア?みたいなの張ってたし、いったいいくつの機能があるんだ?やる気さえあればもうプロヒーローの中で一緒に仕事してても違和感ないよ。」

「でも……私、私よりももっとずっとヒーローな友達がいるの。ええと、たとえ個性が強くても……まだまだ足りないところなんて一杯あるの。」

「……そうか。いい友達がいるんだな。」

 

思っていたよりも実感を伴ったような発言だったので、羨望の念が少し引っ込む。しかしそれ以上に、あれほどの個性を持ちながら羨むなど一体どんな人物なのかと少し興味も湧いた。

 

「さ~~~~まだ2分も経ってねえが早くも混戦混戦!! 各所でハチマキ奪い合い!! 1000万を狙わず2位~4位狙いってのも悪くねぇ!!」

「……あっ。」

 

プレゼントマイクのアナウンスを耳にした心操は、今が騎馬戦だというのに呑気にお喋りしていた事を軽く後悔した。

 

「そ、それでだ鹿目さん。俺の個性は把握してるよな?現状だとタネが割れていないから初見殺しにはなると思うが、状況を変えられるほどの物にはならない。ここぞというときの一発屋が今の俺だ。頼りきりで情けないが、騎馬戦で勝つには鹿目さんの力が不可欠なんだ。」

「ふぇ?え、わ、私!?」

「ああ。鹿目さん……俺の為に頑張るって言ってくれたよな?個性の事は、この騎馬戦では聞かない。本当は戦略とか考えるうえで必要なことだけど、やらかしちまったからな。だから、鹿目さんが指示を出してくれ。騎馬戦の間、鹿目さんの指示を信じることにする。これしか勝ち目はない。」

「ふえ、えええええ~~~!?」

 

今までリーダー的立場などに立ったことの無いであろう彼女は慌てふためく。

そしてさらに追い打ちのようにヤジが飛んだ。

 

「どうして動かないんだ鹿目まどかさーん!?もしかして調子悪いのー!?」

「あのド派手な個性もっと見せてくれよ!何のために騎馬戦出てるんだよ~!?」

「鹿目ちゃ~ん!かわいいいいい!!!」

「ああっーと!!リスナーから鹿目チームへのヤジが飛び始めた!!ここまで突っ立って学生TALKに花を咲かせている鹿目と心操。しかしリスナーは『個性』を使ったド派手なぶつかり合いを御所望だあ!!果たして、この二人はいつまで棒立ち状態なのかぁ!?あ、もし本当に危険な時は容赦なく中断する予定なのでその点はご了承お願いします。」

 

聴衆とプレゼントマイクの煽りを受け、まどかはようやく煮え切らない態度を止め、騎馬戦に勝つことに本気で頭を回し始める。持っている弓と矢と、周囲の騎馬をまどかは10秒ほど眺めた。

 

「……で、でもどうやってハチマキ獲ろう、撃っちゃダメみたいだし……うーん……あ、そうだ!」

「何か思いついたのか?」

 

何かを思いついたまどかは、光の矢をつがえる。まどかの矢が直接騎馬に向いていないことを認識した教師たちは、予想外の事態を警戒しつつも黙って彼女の挑戦を見守ることにした。

と同時に、一部の騎馬がそれに反応する。

 

「おい、鹿目さんがなんかやってるぞ!気を付けてくれ!」

「俺の個性で壁は作っとく!物間は前を見てくれよ!」

「つ、ついに鹿目さんが来る!爆撃されるぞ!」

 

一部のチーム、特に周囲の観察に徹していたB組の生徒を中心に彼女の行動に対し過剰なまでの反応が発生する。

 

「す、すごい注目……ここで失敗したら恥ずかしい……でも、初めてやってみるけど……要領は大体同じのはず!」

 

矢の先端が形状を変えていく。少しずつ膨らみを持ち、ぱかりと開く。それは、弓についている花も同時だった。

 

(……鹿目さんの弓、元はステッキの形状で弓として使うときだけ変形するのか。しかも上の端に花がついてて……撃とうとするときに咲くのか?マジで何なんだコレ……)

 

心操は、見れば見るほど不可思議な彼女の個性に困惑しつつも、彼女の行いを静かに見守る。

やや下向きに放たれたそれは、上方向に軌道を変えつつとある騎馬に向かっていく。

 

「いっけええええ!!!」

「おーっと!鹿目の放った弓はハチマキをかすめ取り、そのまま場外へ……ではなく、なんと放った後に旋回!ギュルンと回って鹿目の元へ!ブーメランかよ!?もうなんだ、アレだな、あの個性ズリィな、なぁイレイザー!」

「…………確かに強力だな。」

 

叫び声とともに、その矢はある騎馬のハチマキを矢先で絡めとる。そして軌道の変化は続き、ちょうど円のようになった。

そして円の軌道をなぞるということは、最終的に元の位置に戻ることであり。

 

「よっ、と!ふう、上手くいって良かったあ!えーと……705Pだって!」

「鹿目さんよくやった!だけど100%の4位圏内じゃない、1000Pは欲しい。もう一発頼む!」

 

対して、ハチマキを獲られた塩崎、鉄哲、骨抜、泡瀬の騎馬はワンテンポ遅れて獲られたことに気が付いた。

 

「クソ、今の何の個性で頭を……あああ!俺のハチマキが一つ無いいいいィ!」

「ああ……邪な手段で拝借した罰が降りたのでしょう……あれはまさしく神の力、私は甘んじて受け入れます……」

「いや受け入れるなよ塩崎!チクショー!!!だからあそこの騎馬を先に狙おうって俺は言ったんだ!てかなんだよあの個性、あの弓本当に個性で作ったのか!?」

「と、遠い……いや、悔しいが俺たちは先に爆豪の鼻を明かす!取り返すのはその後だ!」

 

かなり距離がある状態で狙われた上、鉄哲が爆豪、A組に執着していたためにまどかから取り返す方針にはならなかった。

 

「よーし、この調子!」

 

まどかは再び弓を構える。そしてこちらに注意が向いていなさそうな騎馬に再び狙いをつけ、再び放つ。

そしてそれは再び成功し、彼女はハチマキを手にする。

 

「よし、今度は665ポイント!この調子で……」

「……やりやがったなァ?ピンク髪!」

「ひっ!?」

 

地の底から響いてそうな、怒りの籠った声がまどかの耳に届く。騎手の爆豪が、憤怒の形相で振り返った。

 

「鹿目さん……よりによって苦手そうなタイプの人のを獲っちまったな。まあ、腹を括るしかないか。」

「え?なんなのあの人……あ、宣誓してた人!?」

 

心操は気合を入れなおすようにそう言った。まどかはまずい相手に手を出してしまったと悟った。

 

「作戦変更だァ!デクの前に、あのピンク髪から取り返す!」

「わ、分かったけど頼むからやりすぎるなよ!」

 

人一倍負けず嫌いの爆豪は、自分のハチマキを奪われたことに激怒し標的を変えてしまった。

そしてまどかは、爆豪に対しかなりおびえてしまっていた。そもそも彼女自身争いを好むような性格ではなく、彼のようなタイプに害が与えられても反撃せずに逃げようとするだろう。ゆえに、彼のようなタイプと相対した経験はほぼ無いために、適切な対応もわからない。

 

大事な試合であることを加味しても異様な怒り具合であったことから、まどかは何か自分に非があることをしてしまったのかと第一に考えた。

なお、実際は彼が元から常時キレている性格だということが真実なのだが、彼女が知る由もないことだろう。

 

「その訳わかんねえ個性もろともぶっ潰したらあァァァ!!!」

「えええ!?あれズルじゃないの!?」

「テクニカルだからアリよ!でも、地面に足が着いたらアウトね。」

 

爆豪は個性『爆破』による推進力でまどかに一気に接近する。騎馬を完全に離れ彼一人での突撃だった。まどかは思わずルール違反ではと抗議したが、ミッドナイトによるお墨付きが出てしまう。

 

「死いぃぃねえぇぇぇ!!!」

「し、『死ね』!?」

 

ほぼ直線でまどかとの距離を一気に詰める爆豪。これを見ていた観客や生徒は、まどかが弓矢で迎撃することを予想していた。この状況ならば撃っても正当防衛。当然爆豪もそれを頭に入れ、『爆破』での加速中も常に横方向に軌道を変えられるように準備していた。

だが、ここでまどかは予想外の行動を取る。

 

「!!!ごめんね心操君伏せて!」

「なんだ?ってうわ!ブハァ!」

「鹿目まどか、襲い掛かる爆豪に対して弓での迎撃ではなく、なんと跳躍ゥ!!その個性マジでどーなってんのォ!?弓だけじゃねーのかよ!?」

 

まどかは上方向に跳躍。明らかに増強系レベルのそれは、ちょうどサポートアイテムで飛行している緑谷の騎馬と同等程度の高さにまでに至った。

物理法則に従順に考えれば、今の跳躍によって踏み台になった心操には多大な衝撃が来るはずだが、彼女が個性で何かしたのか、彼は桃色の光で一瞬包まれ、特に怪我などはしてなかった。むしろ、一拍遅れて衝突した爆豪からのダメージの方が大きい。

 

「うおおお!なんだそれすげええええ!」

「かわいいいいいい!!!!!」

「弓使わねーのかよ!?」

 

「い、今のは撃っても良いんだ……?」

 

他の生徒からの発言にそう零すまどか。先ほどのミッドナイトの警告から、矢で人を撃つことを過剰に警戒し、上に逃げることを選択したようだった。

 

「……舐めんなァ!!!」

「ちょ、お前踏むなふざけんなブハァ!」

 

爆豪は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに次の行動に移る。心操を無遠慮に踏み台にしつつ、爆破で一気に上昇しまどかを追った。

 

「逃がすかああ!!!」

「えっ、あ、あなたも飛ぶの?爆破で!?」

「飛べるわ!舐めんなゴラ!」

 

引力によって爆豪とまどかは空中でスピードを落とし、一時的にお互い見合う形となった。

爆豪の表情はまさにブチギレそのもの。というよりも、キレていない時間の方が少ないのが彼だ。まどかはますます、彼の態度に困惑するばかりだった。

 

「な、なんでそんなに怒ってるの?私何か悪いことした……?ハチマキ獲っちゃったのは」

「何も悪いことしてねーわクソが!」

「してない?え、え……?」

「ハチマキ返せやあああァ!!!」

 

戸惑うまどかに構わず、爆豪は再び爆破によって推進力を得て少しずつ落下し始めるまどかに急接近。そのまま、右の大振りで爆破しようとする。

 

「ひっ!?こ、来ないで!」

「想定内だゴルァ!」

 

ここに至って、さすがにまどかは弓で迎撃を始める。勿論爆豪の想定内の行動であり、一発目は爆破により横に避けた。

 

「え、ええと!私もハチマキはあげられないの、ごめんね!」

「当たり前のこと言ってんじゃねえぇぇぇ!!!クソがぁぁぁ!!!」

 

しかし爆豪にとって想定外なことに、まどかは矢を連射してきたのだ。光の矢を生成するのには流石に多少のインターバルがあるだろう、その隙を突く、というのが爆豪の事前想定だったが、まどかは弓を引くのとほぼ同じ速度で光の矢を手元に生成していた。

隙が想定の一割ほどしかなかったことに爆豪は盛大に舌打ちしつつも、次策としてまどかの背後に回ろうとする。流石に空中で推進力が得られるわけではないだろうと見た彼は、自身は推進力が得られるという利点を活かして背後を取ろうとした。しかし矢を撃った反動を利用しているのか何なのか、地面で後ろを向けるのだから空中でも当然出来ると言わんばかりに、まどかは後ろを向いて爆豪に矢を撃つ。

 

「爆豪、爆破による推進力で近付くが、鹿目は光る矢を連射して寄せ付けない!というかそれポンポン撃てるの!?まるでマシンガンじゃねーか!一体、普通科にこれほどの実力者がいたことを誰が予想できたのか!?」

「……地面に当たった矢を見る限り、怪我しない程度の威力ではあるようだな。威力次第では試合を中断していた。」

「オイオイ脅かすなよイレイザー!!雄英体育祭の中断はいろいろまずいぜ、大人の事情的にィ!」

 

爆豪は何とか矢の隙間を縫って接近しようと試みる。才能の塊である彼は、少しづつではあるがまどかの撃ち方の癖などを学習し、徐々に距離を詰め始める。

しかしかなり微々たる接近で、ハチマキには程遠い。そして同時に、戦えば戦うほどに彼女の個性の高性能を実感していた。

 

(クソうぜえ矢には実体があるのは間違いねえ、今爆破で相殺はできた。けど前方向から来るやつは俺自身の爆破の反動で距離開けちまう。クソ、このピンク髪明らかに俺の進行方向を予測して偏差射撃してやがるな?俺の爆破での空中移動は時々フェイントを入れてる、それにすら対応してやがるこのクソピンク髪の個性は身体能力、反射神経も向上してんな。そして空中での姿勢制御もこなしやがる。おそらく類を見ないレベルでの機能を複合した個性……まだまだ隠してやがるな?困惑してるが焦りがねェ。)

 

そこまで考えて、爆豪は非常に不愉快な一つの事実を推測した。

 

(騎馬戦だからって相手に……俺に、怪我をさせないようにってか!?クソ!)

 

この騎馬戦における参加者は、当然全力を出しているが怪我させない程度の節度を弁えている。暴言が酷い爆豪でも毎度全力で爆破している訳ではない。イレイザーの先ほどの発言からして、おそらくまどかもそうだ。死ね死ね言う彼にしては意外かもしれないが、彼の言動は粗暴だが一応ルールは守るみみっちさを持っているのであり、暴力主義者というよりも完璧主義者としての側面が強い人物なのだ。

だが一方、彼は全力を出した相手をねじ伏せることにこだわりがある。ねじ伏せた相手が全力でないと、自身の優位が示せないからだ。

 

そして今、その部分で目の前の鹿目まどかに苛立っていた。彼女は爆豪と一見同等に戦っているが、爆豪は今全力だ。その状態で、相手に怪我をさせないように気を遣っている。

 

(俺を舐めてる……あの雑念が混じりまくりやがったような顔で戦いながら、この俺と同等だとォ……!?この、舐めプやろうがァ!!!!!)

 

彼女が多大な雑念を持ちつつ戦っていることを感じ取ってしまった彼は、ますます怒りが増してしまう。

 

二人は個性の反動で時折勢いを殺しつつも、重力にひかれて自由落下する。

 

「爆豪!飛ぶときは言えっての!」

「ま、まって鹿目さん俺増強系じゃ……グフッ、あ、あれ意外と衝撃が無いな……」

 

二人は共に無事元の騎馬に着地した。着地時はそのまま衝突すれば怪我が確実のスピードだったが、爆豪は直前で爆風によりロケットの逆噴射の要領で減速した。まどかは減速などせず相当な勢いで心操に衝突したのだが、着地直前で彼女の脚部が桃色に光り、それの影響なのか心操に怪我はなかった。

直後、爆豪が吠える。

 

「てめぇ!全力出してねえな?俺を舐めてんのか!?」

「こ、今度は何!?私普通に」

「全力出してねーだろ!障害物競走の時のヤツに比べればさっきから個性の出力が小さすぎんだよ。俺じゃ力不足だってか?アァン!?」

「ええっ?だ、だって全力だして怪我でもさせたら……」

「舐めんなァ!テメーの全力なんざ俺が上から完膚なきまでにねじ伏せてやるよ!」

「おい爆豪!時間がそろそろ半分だし、この鹿目さんのハチマキは諦めて他の、例えば緑谷の一千万獲った方が良いんじゃねえのか?このままじゃ次に進めなくなるって!」

「そーだよー!私達の次への出場も掛かってるんだからー!」

 

爆豪のワンマンプレイに抗議の声が上がるが、彼は諦める気配が無い。ただ、一理あることは認めており少し迷っているそぶりを見せる。

 

「ンググ……」

「そ、そうだよ、私じゃなくても他のを狙った方が良いんじゃないかな……?」

 

まどかの今の言葉に悪意は一切なかった。自分を狙ってほしくないという打算と、自分以外のポイントを狙った方が良いのではという純粋な親切心から来る言葉だった。

 

しかしプライドの高い爆豪は、悪鬼羅刹の表情となってしまう。まどかが今の言葉が逆効果だったと気付いた直後、爆豪は再び先ほどと同様にまどかに突進する。

 

「ア゛ァ゛ン゛!?虚仮にするのも大概にしろやァ!!!死ねええええ!!!」

「ひ、ヒィ!?」

 

そうして両者は再び飛び上がり、空中戦に移行する。

残された元騎馬の4人の間に、置いてきぼりとなった妙な空気が生まれた。

 

「…………ど、ども?」

「あ、ウス。……俺達、置いてきぼりになっちまったな。お互いすげえ騎手だな!」

「そうだねー……もー、爆豪ばっかりズルい!私も空中戦やりたーい!ここからじゃ私の酸が届かないよ!」

 

爆破と光矢が空中にて派手に展開される中、地上には切島、瀬呂、芦戸の騎馬3人と、心操だった。

騎馬戦とは思えない状態になり一瞬互いに見合う膠着状態になる。ハチマキを奪える状況でもなく、『洗脳』のための声は空中にいる爆豪には届かないだろう。出来ることが思いつかない心操は、状況的に気まずくなり妙な挨拶をした。

 

先に動いたのは瀬呂だった。彼の個性の『テープ』で心操を拘束しにかかり、心操は慌てて走って回避する。

 

「うわっと!?危ねえ!」

「悪いね、普通科の人!ルール的に騎馬を拘束するのはOKっぽいんスよ!」

「クソ、やっぱり攻撃力のある個性は羨ましい!」

 

3対1という状況では、個性の『洗脳』による行動阻害も効果が見込めない。今の彼に出来ることは、次に繋げるためにとにかく逃げ回ることだけだった。

 

 

「爆豪、果敢に接近しようと試みるが、鹿目の弓矢はとどまることを知らず連射、連射ァ!!空中での派手な個性のぶつかり合いは実にBEAUTIFUL!!喜べマスメディア、お前ら好みの撮れ高だぁ!!」

 

日本全国の視聴者を含む観客の目は、爆豪とまどかに集中していた。もう一分以上も空中での攻防が続いていた。

 

爆豪は空中で推進力を得られるため、自在に激しく動き回れる。空中飛行が出来るというだけでもなかなかの強個性である上、彼自身の才能も素晴らしいのだ。例えばロケットの打ち上げの制御には幾重にもシミュレーションが必要となるように、爆破による飛行において必要となるものは、威力、角度、爆破位置を制御できる精密さだ。常人がこの個性で飛行しようとしても、少しでも左右の威力のバランスが崩れたり、重心をずらしてしまい余計な回転が入ってしまうのがオチだろう。その上細かく動く空中戦をするとなれば、それらの制御など前提条件。敵の位置や状況を3次元的に常に把握し動く必要があり、それを当然の如くやってのける爆豪はまさに才能の塊と言える。事実、そのような苦労を一切見せない爆豪の空中機動により、爆破による空中制御の難しさなど視聴者は一切頭に浮かばず観戦を楽しんでいたのが彼の安定性の証拠だ。

 

対するまどかも、時折足元から桃色の何かを爆発させ、空中浮遊の助けにさせることがあった。しかし爆豪の爆発程の威力は無い。ただ爆豪は、仮に頭上から爆発を当てまどかを地面に激突させた場合、場合によってはレッドカード扱いになると踏んでいた。現状においては頭上から仕掛けるメリットが特別ある訳でもないため、自然に爆発での攻撃が横か下からになる。それを迎撃して下方向に矢を撃ったまどかが、反動である程度浮き、それが続いて空中戦となっている、という状況だった。

 

両者とも、故意に空中戦をしたわけではない。単なる成り行きだが、二人がどうあろうともこの派手な戦いはメディアの目を引き続けている。特にまどかの矢は空中に桃色の神秘的な線を描き続け、常に空に何かの記号を作り出す形となっている。

 

「爆豪は爆発で鹿目をダウンさせようとするが、鹿目はシレっと爆豪の速度に付いて行ってるぞ!!すげーな、マジでどんな個性なんだアレ!?俺『なんだあの個性!?』ってもう30回以上言ってる気がする!!イレイザー、お前はどうよ!?」

「知らん、俺に聞くな。」

「おいおい、生徒が頑張ってんのにさっきから冷たくねーか!?」

「俺に裁量権があるのはヒーロー科の生徒に対してであって、普通科はまた別なんだよ。個性関係の情報は色々とセンシティブな可能性があるからな。彼女の情報について迂闊に口を開くわけにはいかん。ま、色々調べるのは後の話だ。」

「あ、大人の事情だったのね。しかしアレだな、これもう騎馬戦じゃねーだろ!?爆豪と鹿目の元騎馬達は……おおっと、こっちも瀬呂がテープで心操を捕まえようとしてるぞ!一応騎馬の形を崩さないで追いかけているけど……やっぱこれいいのか?もう騎馬で組む意味ねーじゃん!HEY、ミッドナイト!」

「うーん……まあ、今更細かいルール付けるのもアレだし、見ていて楽しいからアリにするわ!」

「適当ォー!!」

 

余談だが、この時ミッドナイトはかなり判断に困っていた。彼女としても、これを騎馬戦としてOKにするかはかなり首をかしげる。しかし先ほど、爆豪が一時的に跳び上がったのを「テクニカルだからアリよ!」としたのだ。そのせいで、ナシにするならば今の状況が『飛んで』いるのか『跳んで』いるのかの判断をしなければならなくなり、果たしてどうやってその境界線を示せばいいのか……という話になってしまう。幸い、エンターテインメント色が強い催しなので気にする人は少ないが、ミッドナイトは自分の発言の迂闊さを少しだけ後悔してしまった。

 

そんな実況の中、爆豪とまどかの攻防は続いていたが、徐々に拮抗が崩れつつあった。

 

「……温まって来たァ!!!覚悟しろやクソピンクゥ!!!」

「ちょ、ちょっと、うわ!!!」

 

爆豪はスロースターターなのだ。彼の爆発は汗由来。よって、動いて汗をかけばかくほど個性を発動しやすくなる。爆破の頻度は上がり、少しづつ強力になっている。まどかの表情に少しづつ焦りが出始める。

そしてある時、爆豪は何かを見切った。

 

「ここだァ!しょうゆ顔、テープ!」

「瀬呂な!ごめんよ鹿目さん!」

「へ?うわっ!」

 

爆豪は爆破と同時にそう叫んだ。そのタイミングはちょうど瀬呂に背を向けていて、加えて疲労が蓄積しつつあったらしい彼女はあっさり捕まってしまいグルグル巻きになってしまう。

 

「え、これテープ!?えーっと」

「醬油顔、引っ張れ!」

「ルール的に大丈夫かなあこれ……」

 

瀬呂がテープを引くと同時に、まどかは反射的に後ろを向いて、拘束するテープの元を何とかしようと弓を構える。

 

「当然後ろ向くよなァ!?テメエのクソ矢はホーミングするが、見えない物を撃ち抜ける程じゃねえからな!獲ったァ!!!」

「キャッ!!!痛い!!!」

 

その一瞬の隙をついて、爆豪は爆破で急接近。まるでまどかの頭を全力で殴るかのように腕をすれ違いざまに振りぬき、頭に巻いていたハチマキを掠めとった。

 

衝撃を受けたまどかは落下し、心操が何とかして受け止める。爆豪も騎馬に戻った。

 

「おめえ乱暴だったけど流石だな!2本とったのか、上出来だぜ。」

「よーし、点数的にこれで通過は確実」

「まだだァ!」

「ハァ!?」

「俺のハチマキを取り返せてねえ!俺が獲るのは完膚なき一位だ!俺の持ってたのも取り返して、一千万へ行く!」

「……っていうか、爆豪それ!」

「あ゛ぁ!?」

 

突如、芦戸が爆豪が手に持つハチマキを指す。その手には、桃色の糸がかなりの本数絡みついている。

どうやら鹿目まどかの髪の毛らしく、あまり余裕がなかった彼は相当乱暴にハチマキをもぎってしまったらしい。心操に乗っている彼女は少し痛そうに頭をさすっていた。

 

「たぶんあの子の髪の毛だよね!?女の子の髪はもっと丁寧に扱わないとダメだよ!いくら騎馬戦だからって、そういうの大事にしないとだよ!?」

「ハァ!?知るか!!!本気の勝負でんなこと誰が気にすんだよ!」

「爆豪……マジで止めといた方が良いぞそういうの?」

「知らねーよ!わざとやったわけじゃねえ!」

 

騎馬3人は爆豪を諫めるが、当の本人は全く聞く耳を持たない。

そして先ほどの戦いから引き続き、当然今の事もメディアで注目されている。これを見た観客がブーイングを始めるのも全く不自然ではないだろう。親指を目立つように下に向ける者が増え始める。

 

「……いくらわざとじゃねーとしても、流石に酷くねーか!?」

「そーだそーだ!女の子の髪をむしり取るなんてひどい!」

「お前それでもヒーロー志望かよ!?さっきから死ねとかクソとかよぉ!」

「BOOO!BOOO!BOOO!!!!」

 

そしてまどかに対しては、爆豪と逆のメッセージが集中し始める。

 

「まどかちゃーん!頑張ってー!」

「あんな(ヴィラン)みたいな奴とやりあってるなんてすげえよ!」

「かわいいいいいーーー!!!」

「まどか!まどか!まどか!」

「あの生意気な(ヴィラン)じみたやつをぶっ飛ばしてくれ!」

 

まさしく爆豪は悪の(ヴィラン)、まどかは希望のヒーロー(魔法少女)という空気になってしまった。

これが普通の騎馬戦だったなら「次は気を付けてよね!」で済むかもしれないが、彼はヒーロー志望なのだ。人々の規範となるべき立場と見做される。加えて、彼の戦いはこの騎馬戦において注目の的であり、それはつまり彼の粗暴な言動が詳しく中継されてしまったということだった。ヒーローの真逆を行くような「死ね!」「殺す!」を連発する姿は、見ていて不愉快に感じてしまうのも当然だろう。

 

「爆豪、女子の髪をむしり取るとんでもないヒールっぷりを披露!ポイントはGETしたが、ついでに悪評もGETだァ!」

「ア゛ア゛ア゛ァ!!!いちいちうるせーなァ!クソがァ!」

「もー、爆豪どうしてくれんのさー!?なんか私達(ヴィラン)みたいな扱いされ始めてるじゃん!」

「こーいう扱い嫌なら暴言改めよ?な?別に暴言吐かなきゃ全力が出せない個性じゃないだろ?」

「知るかクソがぁ!いいからクソピンクからハチマキ奪うぞォ!!!」

「迷いなく奪いに行くなお前……まあ、クヨクヨしてるのも漢らしくないか。今は全力でハチマキ奪いに行って、試合が終わったら全力であの女子に謝ろう、な!爆豪!」

「アァ……全力でハチマキ奪って、一千万も獲って完膚なき一位を取る!!!」

「謝るのも忘れんなよ!?」

 

爆豪の強靭なタフネスは精神においても同様で、会場中から批判されても全く落ち込まず反発している。ただ避けられるなら避けるべきことだとは認めているらしく、ますます苛つきは増加してしまったようだ。

 

爆豪は頭に獲ったハチマキを巻き、鹿目まどかを睨みつける。得点的には確実に次へ進めるというのに、彼は全く満足していなかった。

 

 

頭をさすりながらも、まどかは申し訳なさそうに心操と話す。

 

「ごめん、ハチマキ獲られちゃった。……この騎馬戦、私ずっと慌てっぱなしだよ。」

「……の割には、さっきの戦いぶりすごかったぞ?最終的には獲られちゃったけどよ、あの爆豪相手にさ。」

「そう……かな?なんだかあの人、ずっと怒ってて私どうしたらいいのか分からなくて……」

「まあ、宣誓でも滅茶苦茶不遜な発言してたし。プライドが滅茶苦茶高いタイプなんじゃないか?とりあえず鹿目さんが気に病むことじゃないと思う。それに、そんなアイツ相手に怒らずにあそこまで対処できるなんてすごいと思う。鹿目さん、実はどこかであの姿で戦ったことがあるんじゃないのか?」

 

彼は言動は酷いが、才能マンと一部で評される。一般入試でも一位を取った実力は嘘偽りなく、彼の機動力、反射神経は並みのものではない。雄英ヒーロー科は日本最難関と呼ばれ、その一位なのだから同世代で日本トップの運動神経なのだ。それに対し、特に運動系の趣味も、部活にも入っていない彼女が対抗しているのを見せられれば、そんな感想も当然である。

 

「え!?いや、無いよ?本当本当。た、多分個性由来の力じゃないかなあ?」

「いくら個性だからってあんな……まあ、実際あの力で戦ってたんならすぐに見つかるか……?あ、いや今はそんなこと考えてる場合じゃない。」

 

色々と疑問を持つ心操だったが、今がどんな場面なのかを思い出し頭からそれを追い出す。

 

「……今のままじゃ点数的に次へ行けるか怪しい。ハチマキがもっと必要、だけど……」

 

周囲を見渡すと、軒並みハチマキ無しの騎馬しかいない。一部のチームは虎視眈々とこちらの様子をうかがっていた。強チームにハチマキが奪われることにより、一部のチームにのみハチマキが集中していた状況だった。確実に狙うなら、目の前の爆豪のハチマキを奪うしかない。

 

「あの、爆豪君のハチマキ奪うしかないよね……」

 

まどかは、少し遠慮がちにそう言った。先ほど髪の毛を抜かれたことと、そもそも彼が粗暴で彼女が近付きたくないタイプであることが、彼女を足踏みさせる要因だろうと心操は感じた。

 

「……あんまり、爆豪と戦わせない方が良さそうだな。俺のやらかしがあってのこの状況だ、無理はしないでくれ。逃げつつ他の騎馬を」

「あ、ええと、戦いたくないってわけじゃないの。」

 

心操はかなり意外に思った。個性は非常に強力だが、普段の様子からすると気が強い性格である印象は彼女にはない。

 

「そうなのか?……鹿目さん、爆豪についてどう思ってるんだ?怖くないのか?」

「うーん……乱暴な言葉を使うのはちょっと嫌だけど、その分いい所もあると思うし、嫌いって感じじゃない……かな?」

「え、いい所?あんな死ねだの殺すだの言ってるヤツが?」

「だって、あの人爆発であんなに空を飛んでるでしょ?あれを見て、私本当にすごいと思ったの。まh……前に、個性であんな感じで浮いてみようってチャレンジしたことがあったけど、すぐに体が回転しちゃって全然できなかった。それなのに、あんなに崩れずに飛び続けるなんて……多分、私が想像もつかないほど努力したんだと思うの。」

「まあ……確かに努力はな。」

「今は……えーと、なんか、そう、すごい個性の暴発でこんな力を得ているけど、多分私の心は変わってない。私ね、騎馬戦が始まるときまで『こんな状況でここにいていいのかなあ……』って思ってたし、結局私自身なんでここにいるのかよく分からないの。みんな将来がかかってる中で、私だけどうしてここにいるのかよくわからなくて、心操君に悪いから4位以内に入ろうとしてるけど、それがなかったら私、この場にいるのが申し訳なくなっちゃって本当に棄権してたかも。」

「……」

 

心操は、ここに至るまでのまどかの様子を思い返していた。確かに、強い意志でここに参加したがっていたわけではなかった。

 

「でも、あの爆豪って人は本当に心の底から勝ちたいんだと思う。私みたいにフラフラしないで、自分の心に決めた事を貫き通せるみたいな感じ、かな?私には、そういうの無くて。だからね、そういう意味では、私よりもヒーローに近いって思うの。あ、そうそう。前に心操君がほむらちゃんに『ヒーローになれるか?』って聞いたみたいだけど、全然ヒーローになれるんじゃないかな。私よりは全然向いてるよ。個性強くても、結局私みたいなフワフワした心じゃ、すごくなろうとしても難しいと思うんだ……。」

 

まああの言葉遣いはちょっと嫌かな、とすこし困った風にまどかは付け加えた。

 

まどかの発言を聞いた心操は、胸に熱いものが一瞬こみ上げた。

そして自虐するまどかをみて、彼はもう一つの失敗を悟った。

 

「そうか……俺、あの時は確認不足だけじゃなくて、やり方も間違えてたのか。」

「え?やり方?」

「……」

 

(結局、俺の個性は心を変えられない。美樹さんがいい例だ。俺が個性かけてる間は集中して勉強してるけど、かけてない時はかなり眠そうにする。結局、本人の本質が変わる訳じゃないんだ。……だから、さっきみたいに俺が『全力を出せ』って言ったところで……まあ、今回は色々特殊な事があったけど、本人の気質は多分変わってない。今だって、結局鹿目さん心が決まり切ってないみたいだし。)

 

いまだに彼女からは、やる気のようなものが他の生徒と比べるとあまり感じられない。本当にこれでいいのかと、あらゆる行動がワンテンポ遅れている。先ほど爆豪とやりあっていた時の姿はどこへやらであった。

 

(このまま戦っても本人的にはあんまり気持ち良くないだろうな。ああいう姿を見ると……なんかしてやりたい、とは思う。でも、さっきのことがあるから個性を掛けるのはちょっとな。……あれ?)

 

考えを巡らせるうちに、彼はある一つの気付きを得た。

 

(そもそも、人の背中を押すのに……助けるのに、個性使わないといけないなんて縛り、無いよな。)

 

彼は、今までヒーローが活躍する姿を見てきた。彼らはほとんどが個性を使っていた。実際、映像などとして目に入るのは個性を使った活動が主で、なぜなら映えるからだ。だから今まで、映えない自身の個性を心操はコンプレックスに感じていたし、この個性をどうやって人の役に立てるかを考えてきた。

 

(……俺が、雄英に入ってから、人から救けられたのって……個性、使われてないよな。)

 

心操は、今までの高校生生活の中で嬉しかったこと、転機だったことを思い返す。

 

『出来るんじゃないかしら。とりあえずその個性のことをもっとちゃんと調べておくことね』

 

『『洗脳』をキメないと私もうやってけないよ。これからもよろしくね心操君!』

 

『前に心操君がほむらちゃんに『ヒーローになれるか?』って聞いたみたいだけど、全然ヒーローになれるんじゃないかな。』

 

(……そうか、そうだよな。心の問題で、大切なのは個性じゃない。個性が強いからヒーローなんじゃない。順序を逆に考えてたんだな、俺は。だから、俺に言ってくれたことは、俺も言えるようにならないといけないんだ。)

 

心操はひとつの決意をして、まどかに話しかける。

 

「……謙遜してるけど、鹿目さんも十分すごいと思うよ。」

「え、そ、そうかな、でも私……」

「さっきの爆豪との闘い、やっぱり鹿目さん自身のとっさの判断能力みたいなところもあってのあの活躍じゃないかな。ああいうのは、どんなに強い個性持っててもそう簡単には太刀打ちできないものだしさ。」

「あ、ありがとう、多分個性のおかげだけどね……」

 

今の言葉がなぜか彼女にあまり響いていなかったことに違和感を覚えつつも、心操はもう一つの『応援』を試みた。

 

「それにさ、見てみろよ。まわりを。」

「え、まわり?えーと、他の騎馬は……」

「いや、もっと外側だ。」

「え?……え!?」

 

「まどかちゃーん!頑張ってー!」

「あんな(ヴィラン)みたいな奴とやりあってるなんてすげえよ!」

「かわいいいいいーーー!!!」

「まどか!まどか!まどか!」

「あの生意気な(ヴィラン)じみたやつをぶっ飛ばしてくれ!」

 

初めて自身への声援を聞いたのだろうまどか。すこし頬を赤らめつつ、嬉しそうな困惑を見せた。

 

「まあ爆豪の自業自得って面もあるけどさ。この声援は間違いなく鹿目さんに向けられたものだ。もうすこし自信持ってもいいんじゃないか?正直うらやましいよ、この場で一番カッコいい姿を見せてるのは鹿目さんだ。個性でも、行動でも。」

 

心操は一瞬を言葉を止め、改めてまどかを見ていった。

 

「だからさ、鹿目さんもヒーローになれる、と俺も思う。」

 

まどかは、しばらくその声援に聞き入っていた。しばらくすると、

 

「…………うん!」

 

嬉しそうに頷く。

 

「だから、あんたの思い描くヒーローとして振舞ってみても……いいんじゃないか?」

「……わかった!」

 

 

会場のブーイングにキレつつもまどかの様子を油断なくうかがっていた爆豪。まどかの変化に真っ先に気がついたのも彼だった。

 

「!テメエら、ピンク髪がなんか仕掛けてくるぞ!警戒ィ!」

「お、おう!って今度は何だ?なんかすごいピンクに光ってるぞ!」

「ゲームの覚醒イベントみてえ、第二形態かなんかかよ?」

「き、きれー……」

 

再び弓を構えるまどか。しかし明らかに様子が違った。桃色の光の柱のようなものがうっすらと現れ、そして少しづつ浮遊していく。

 

「ああっーと!!鹿目まどか、なんかピンク色に光り出した!!ナニコレパワーアップってか!?一体今度は、どんな個性の力を見せてくれるのかー!?」

 

並々ならない様子に、メディアは再びまどかを映し出す。その表情は迷いを捨て去ったようなもので、わずかながら不敵な笑みを浮かべていた。

その姿に、会場のまどかへの熱狂はさらに大きくなる。

 

「なんかすげえええええ!!!かっけえええええ!!!」

「俺たちの声援が届いたのか!爆豪に一発かましてやれ!」

「かわいいいいい!というか凛々しいいいい!!!」

「普通に浮いてるし、マジで何の個性なんだアレ!?」

 

爆豪にとってはアウェイもいいところだろう。しかし彼は、全く声援が消えてしまったこの会場での扱いを完全に無視しまどかを観察し続けた。他者の評価をここまで気にせずにいられる精神的タフネスは、爆豪の長所であるといえるだろう。

 

そして、彼もまた不敵に笑う。

 

「へっ。それがテメーの全力ってか?いいぜ、ねじ伏せてやんよ。」

 

心変わりし、ついに全力を出そうとしていることを察した彼は、自身が『一番』であることを示せる機会が来たことを喜んだ。

BOBOBO!!!と細かい爆破により高度を上げ、まどかと同じ高さまで浮き上がる。まどかもそれに応えるように弓を構える。

 

少しのにらみ合いの後、まどかが語り始めた。

 

「爆豪君……私ね、今まで個性で全力で『人』と戦ったこと、無かったの。」

「ア゛ァ?どう考えても戦闘経験あるだろ誤魔化すなクソが!」

「私は個性で人を傷つけたくないし、そもそもこんな変な力を誇れるものじゃないって、そう思ってた。」

「知るか!テメーの力だろ、全力で使ってこいや!それを真正面からブチ破ってやるよ!」

「でも今は、この力で全力であなたと戦える、みんなの声を聞いて、そうするべきだって思えたの。」

 

まどかの矢先に桃色の光が収束し始める。同時に、まどかの背後に障害物競走の時に見せた魔法陣のような紋が展開する。

相対する爆豪の10倍はある大きさとなり、人という存在が立ち向かってはいけないような威容を纏いだす。しかし彼は、変わらず闘志を燃やし続けた。

 

「あーーっと!鹿目まどか、障害物競走の時に見せた魔法陣を展開!派手なのが来るぞ!喜べマスメディア、撮れ高の時間だァ!!!」

「……てか、ミッドナイト、あれいいんですか?もうほとんどハチマキ関係ない攻撃ですよね。」

「オイオイ、この展開に水差すなよイレイザー!」

「まあ死にはしないだろうし、青い青春が迸っているからアリとします!」

「いいのかよ。」

 

プレゼントマイクの実況が興奮をはらむ中、まどかの光はますます大きくなる。

 

この会場内で、彼女だけがヒーローコスチュームのような可愛らしい服に身を包み、神々しいといえるほどの魔法陣を背にし、宙に浮いている。さながら、爆豪という(ヴィラン)を打ち倒すために弓を構える天使のようで、会場中の視線はくぎ付け。騎馬戦をしている生徒たちも、特にポイントを持っていない騎馬は試合中だというのに彼女に見とれていた。

 

「天使様気取りかァ?いいぜ、天使だろうが神だろうが俺はその上を行く!」

 

対する爆豪も、迎え撃つために少し高度を上げる。そして、爆風により自身に回転を加えはじめる。

まどかの背後にあった魔法陣の、丸い部分からも光があふれだす。

 

「みんなの声を、私は無駄にしない!これが、私の全力!」

「いい顔になりやがったなァ!ぶっ殺し甲斐があらァ!!!」

 

そして、爆豪は回転が極まった時、一気にまどかに向って加速した。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクトォ!!!)

 

シューティングスター!!!

 

同時にまどかは矢を放ち、背後の陣からも同時に矢が飛び出す。それは寸分たがわず爆豪に向かっていった。

 

自身よりはるかに大きなモノが、爆豪の個性の発生源となる右の掌に、一点に集中する。

 

「クソガアアアァァァ!!!」

「いっけえええええええ!!!!!」

 

数秒間、爆豪の個性とまどかの光の矢が拮抗した。衝突するエネルギーは爆風のような余波を生み出し、周囲の人々の髪をなびかせた。

 

そして、最終的に崩れ、戦いのクライマックスが終わったことを示すひときわ大きな爆風が発生する。

 

「激突ゥ!爆豪の回転を加えた突撃により威力が上乗せされた爆破、そして鹿目の……なんかすごい大量の光る矢が衝突だァ!というか「シューティングスター」って必殺技かよ!?……んで、どーなったぁ!?」

 

爆破の煙が晴れるとそこには、気を失い落下する爆豪と、すこし薄汚れつつも気を失っていないまどかがいた。

 

まどかが競り勝った(爆豪という敵を打ち破った)ことで、会場はおおいに沸き立つ。

 

「えーっと、ハチマキー!」

 

まどかはこれ幸いにと、爆豪に接近しハチマキを奪おうとする。

 

気を失っていたように見える爆豪。しかし実際のところ、まどかの矢の衝撃で体が動かなくなってしまっただけで、意識はあった。

そして、彼に聞こえてきたのは。

 

「うおおおおお!!!まどかちゃんやったねええええええ!!!」

「爆豪敗れたりぃぃぃ!!!」

 

という、絶対に避けなければならない、敗北を宣言する声だった。

 

(俺が……こんなワケ分かんねえ奴に……デクの一千万とってねえのに……負ける、だァ!?)

 

絶対に譲れないものが頭に去来した瞬間、彼の意識が覚醒した。

 

「舐めんなアアア!!!!!」

「え、起き、え!?キャッ!?」

 

爆豪は意地を見せ、獲られる直前で意識を覚醒した。そして、先ほどの突撃で使わなかった左手を使い、まどかを爆破。距離を無理やり取り、ハチマキを死守した。

会場の「えー……」という反応とともに、両者とも元の騎馬に戻る。

 

「タイムアーップ!!!」

 

そして、騎馬戦終了となった。

 

これを聞いたまどかは、心操に対し申し訳ないように言う。

 

「ご、ごめん。心操君。ポイントが……」

「いや、よくやってくれたよ。」

 

彼の手には、一つのハチマキが握られていた。520Pとあるそれにより、合計点は1185Pとなり、次の試合に進めるだろうという期待を大いに抱けるものだった。

個性が解除されて慌て始める拳藤チームをしり目に、彼は少しだけしてやったりという表情を浮かべた。

 

「あれだけ鹿目さんが派手にやってくれたおかげで、俺に注目してたやつがほとんどいなかった。初見殺しってのは、最後まで取っておくもんだな。まったく、暁美さんの言う通りだったよ。」

「……!や、やったあ!!!」

 

まどかは、年相応の女子高生のようにはしゃいだ。




なんか 爆豪VSまどか みたいになっちゃった……
他の人たちあんま描写できなくてサーセン。まあ緑谷と轟の戦いはほぼ原作通りです。

・まどか
なんか普通に体育祭という青春を楽しみ始めてる。

・ほむら
「まどかが楽しそうに戦ってて私もうれしいわー(現実逃避)」

・心操
米欄で曇らせの声がありますが、出すとしてもかなり先です。というのも、現状では彼は「個性事故で偶然秘められたすごい力が引き出された」という認識であって、それを知っていて隠していたことをあまり認識していません。

・爆豪
彼は魔法少女環境に行って一通り全部の真実を知ったとしても「この俺が魔女化するわけねーだろ!魔女も使い魔も全部ぶっ殺したらァ!」って言って実際に有言実行してくれそうなイメージがある。
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