半分繋ぎ回みたいな感じです。
まどドラリリース マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
少し時間を巻き戻し、レクリエーション直前の時間。
「最終種目のガチバトル。抽選の結果、組み合わせは、こうなりました!」
ディスプレイに、凝ったアニメーションと共にトーナメント図が表示された。
芦戸 - 柳
常闇 - 八百万
拳藤 - 切島
麗日 - 爆豪
轟 - 瀬呂
緑谷 - 心操
鹿目 - 上鳴
飯田 - 発目
これを見た瞬間、上鳴は
「ぎええええええ!!!よりによって初っ端あの人ォ!?」
と猛烈に焦りだす。
ちなみに、当の鹿目まどかは上鳴を知らないために「上鳴さん……知らない人だなあ。」と呟いて終わった。
上鳴とよく話す切島や峰田が、怯える彼を心配して話しかける。
「まあまあ。上鳴、戦う前から諦めるのは男らしくねえぞ、頑張れ!」
「いやいやいや!お前も見ただろお!?弓で遠距離攻撃連発してくるし、身体能力が爆豪並らしいし、オマケに最後なんか浮いてたぞ!戦闘訓練の轟を思い出すレベルの個性の暴力だよ暴力!」
「おめーにだって、電撃っつー遠距離攻撃あるだろ?初手ブッパして痺れさせれば勝機はあるんじゃねえのか?」
「そんなに上手くいくかあ?正直何がなんだかよく分からねえ個性だし、突然バリアー!とかやられるんじゃないかってめっちゃ不安だよ。くっそー、最初から強敵が相手だなんて運がねえなあ……。」
「まあここにいるのは全員最終種目まで勝ち残ったわけだし、弱い奴は居ねえって。気合入れるしかねえだろ!」
「ああ……オイラも同意するぜ、俺達は運が無い。」
「なー?峰田もそう思うだろ?チクショウどうすれば……」
「オイラは見た、そりゃもう良く見たさ。……あのスカートの中には布が詰まっていて、絶対パンツが見えない仕様だったんだ。こ、これが表現規制って奴なのか……!?」
「あー、うん。峰田、頼むからヒーロー科の株落とさないでくれよな?」
そして約二時間後。
「七回戦!スパーキングキリングボーイ、上鳴電気!対、この体育祭で一番の番狂わせ!普通科からの刺客、鹿目まどかァ!」
彼の前には、先ほどの強大な印象とは程遠いどこにでもいるような普通の女子が立っていた。試合前に個性を使うことは当然禁止であるため、何の変哲もない雄英の体操服を着ている。
「あわわわわ……す、すごい見られてる……」
「いえーい、まどか、頑張れー!」
「鹿目さーん!ファイトー!」
「あ、うん!ありがとー!」
必要以上に周囲をキョロキョロしている様はまさに大舞台に立つことを想定しない常人であり、彼は自分でも気が付かない程度に油断し始めた。
観客席には、彼女の友人と思しき女子数名が声を上げていた。大きく彼女のデフォルメされた顔が描かれた旗を振っている。まどかはそれを見つけ、勇気づけられ手を振り返した。
上鳴は彼女のことを観察してみるが、特におかしな点は見つけられなかった。
(……こうして見るとマジでザ・女子だな。さっきのあの光のラスボスみたいな雰囲気が全然無い……)
「あ、えーと、あなたが上鳴君なんだね。よろしくお願いします!」
「え?あ、ウッス。よろしくおなしゃす。」
(なんかのほほんとした空気出してるけど、実力はマジのガチで油断ならねえから気合入れねえと初っ端弓矢でドカーン!されて終わっちまう。ここはもう、ショート覚悟の開幕放電全力ブッパで先手必勝狙うしかなくね?試合前になんかいい感じに会話して油断さそうとかできねーかなあ……)
警戒する彼だが、女子を前に彼の
(つーか……キレイっつーか……可愛い系の王道じゃねえ?よし、今度お茶するしかなくねえ!?よぉーし!)
ナンパのような事が彼の頭を埋めたとき、実況が響く。
「第七回戦、スタート!」
「まずえーと、えい!」
当然のように変身するまどか。見た目はヒーローのように派手になり、上鳴は心なしか威圧感を感じた。
しかしそれでも、油断を誘う意味も含め会話を誘う。
「これ終わったらメシとかどーよ!?」
「……え?ごはん?えーと……?」
虚を突かれたまどかは、試合中にも関わらず相手の言葉の意味を考え始める、よく言えば相手に対し真摯、悪く言えば間抜けな様子を晒した。
「俺で良ければ慰めるよ?」
「…………え、えーと?ごめん、私あんまりよく」
「だって多分この勝負、一瞬でおわっから!!!」
彼は彼女が油断したと判断した直後、個性により帯電を始める。
「全力無差別放電、150万ボルトォ!!!」
彼の放電がまどかへ迫る。常人なら怪我ではすまないレベルなので上鳴は元々放つ気が無い電圧だったが、相手の個性が正体不明すぎるために手加減はできなかった。
「で、電気!?ど、どうしよあばばばば!」
意外なことにまどかは特に対策をすることもなく、放電をもろに喰らってしまう。数秒ほど放電を受けた後、まどかは膝から地面に倒れてしまった。
「上鳴の全力放電が炸裂ゥーーー!謎の個性を持つ鹿目と言えども、これはひとたまりもないィー!」
「ウ、ウェーー!」
反動でアホ面を晒しつつも、ショートしかけている脳を使い喜びのガッツポーズをした。障害物競走の時の様子から何か対策がされると思っていたので、想定以上に上手くいったのだった。
フラフラになりつつも、彼女を場外へ追い出すか行動不能を確認するために彼女に向かって上鳴は走る。
「上鳴、まどかへ向かって走る。このまま場外へ押し出す為か?でもめっちゃフラフラしてるなオイ!まあそんなことしなくてもそもそも行動不能の鹿目まどか敗ぼ「うう、いたたたたた……」く……あ、あれ?」
「ウェ、ウェェェ!?」
上鳴は絶望感のあるウェイ声という、なかなか器用な感情表現を見せる。
鹿目まどかは、痛がりはするものの平然と立ち上がった。ところどころ焦げているような様子から確実に電撃は喰らっているはずだった。
「か、鹿目まどか、なんと立ち上がるぅ!!!オイオイ、あの電撃はプロヒーローだって喰らったら戦闘不能になるレベルだぞ!その姿マジでどーなってるの!?タフすぎんだろ!」
「……効いてはいるようだが……」
会場のプロヒーロー用の観客席からざわつきが起きる。マイクの言う通り、威力だけならば十分プロヒーローが脅威に感じるレベルであり、一時的に動けなくなったとはいえ痛がるだけで平然と立ち上がるまどかの姿は驚きを齎すのだった。
「よ、よーし今度は私の」
「ウェ、ウェ、ウェェェェェェェ!!!!!」
「ま、またあああああああばばば!」
上鳴はまどかが弓を取り出して矢を構える彼女を見て、反射的に再び放電した。自分の最大威力が効かなかったことに恐怖を覚えたことによる、反射的行為だった。
「ああーっと!再びの大放電!さすがに二回目の放電は鹿目もキツイかー!?」
「この威力……まったく、後先考えない阿呆が。」
「おいおい、どーいうこったイレイザー!?」
「見れば分かる。残念だが勝負は決した。」
電撃が落ち着くと、地に倒れたまどか。
「ううう……こんなにビリビリなの何発も受けてたら持たないよ……」
しかし、次の瞬間には先ほど同様立ち上がる。そして油断なく再び矢を構えようとした。
「……あ、あれ、上鳴君……?」
「ウェ、ウェ、ウェェェ……」
しかし彼女の前にあったのは、まどかとは逆に立ち上がれなくなりピクピク痙攣するだけの上鳴の姿だった。
「勝負は決したってのはこういうことだ。二回目の大放電は明らかに上鳴の許容量を超えた放電だったからな。今回は相手が特殊だったとはいえ、自分が動けなくなるほどの大放電は基本的には愚策。自分の得意分野が通じなかった場合の対策を怠ってきたツケってことだ。俺が緑谷に言ったこと、聞いてなかったのかあいつ。」
「辛辣ゥー!可愛い教え子に容赦ねえなあ、おい!」
「まあ、大抵の
鹿目まどかは上鳴に警戒しつつも近寄り「大丈夫ですかー……?」と恐る恐る声を掛けるが、彼は意味ある言葉を発することが出来なかった。無理矢理文字に起こすと「
「上鳴電気君、行動不能!鹿目さんの勝利!」
自滅に近い結果に、会場から熱気は生まれない。派手だが盛り上がりのない試合となった。
会場のプロヒーロー達は、熱を帯びない冷静な脳でこの試合の結果を振り返る。
「ど……どーんまーい!」
「ドーンマイ!ドーンマイ!」
会場からのドンマイコールは今日二回目で、観客席にいた瀬呂は「上鳴には悪いけど……仲間が生まれてメッチャ嬉しい……!」と感動した。
「まあ、威力だけなら即採用クラスだな。個性で有利でもない限りはアレは耐えられねえよ。」
「後は苦手分野の克服、いや立ち回りを考える能力に今後は期待かな……」
「というか鹿目さんの方は指名できないのか?どう考えても皆あっちを指名したいだろ。」
「あの子、一応普通科だから多分無理じゃないかしらねえ……」
今後に期待、というプロヒーローの彼への中途半端な評価とともに、上鳴電気は保健室へ連れていかれるのだった。
◇
私は生徒用の観戦席に来ていた。まどかの試合は第七試合で結構後なので、それまではまどかと一緒に……なんて思っていたが、学校側がギリギリまで彼女の個性の安全確認をしたいと言い出し、結局第一試合が終わるまではまどかに会えなくなってしまった。
普通科用の席の一番端に私は座る。その隣にさやか、3年ステージから移動してきたマミさんが座る形となった。ちなみに私が一番端なのは、さっき私が騒動を起こしてしまったがためにクラスメイトが剣呑な目つきで見つめてくるがために、さやかが気を使ってくれたからだ。さやかの耳にさっきの件が入ってるのかは知らないけど……何かあることは察してくれたみたい。
「はぁ~~~……」
「もー、ほむら。いつまでも暗い気持ちでいないでよー。ほら、普通だったら何万もする体育祭の特等席に入れるんだよ!」
「まっっったく興味ないわ。まどか以外の試合なんて。」
「まあまあ、暁美さん。これを持って元気出して。」
マミさんに渡されたのは、大きな布だ。広げてみると……まどかの顔が可愛らしくデフォルメされていて、応援にピッタリだ。髪留めの位置も正確で顔のパーツも良く、普通にクオリティが高い。
まどかの試合中は、せめて笑顔で居てもらえるようにこれを掲げていよう。
「ありがとう、マミさん。応援にピッタリです。」
「ろ、露骨に明るくなったわね……」
……私、そんなに単純なのかなと、少し不満を感じてしまった。違うとは言わないけれど……
「あー、ほら。ほむら、試合始まるよ!」
正直まったく興味は無いが、他にやることも無いのでとりあえず試合を見ることにした。
● 一戦目 芦戸 vs 柳
芦戸という人は手から酸を出す個性らしく、相手に向かって酸をかけようと追い回している。もう一方の人は……なぜか個性も使わず逃げ回るだけ。
「どうしたどうしたー!逃げ回るだけじゃ勝てないよー!」
「こ、この試合フィールド本当にウラメシい!!!」
しばらくすると、身体能力が素で高そうな芦戸さんの方が柳さんに肉薄する。
間合いに入ったところで、殴打しようとした。しかしその瞬間、彼女の酸が飛び出してきて顔に命中する。
……触れた物を操る個性なのだろうか。だから、このフィールドでは操る物体が無くて個性が使えなかった、ということなのか。
「これで、おゥワリィィィィィったあああああ!?」
「何もしないで悪態ばっかりウラムのもヒーローじゃないからね!!!」
「おぉーッと!柳、ここにきてついに反撃!芦戸の酸を操ったか!芦戸の目に酸が、めっちゃ痛そう大丈夫か!?」
「まあ、個性柄芦戸の皮膚は酸に強い。とはいえかなり効くだろうな。」
大慌てで柳さんから距離をとる芦戸さん。
しかし、柳さんも無事ではなかったようで、
「……ったたたた……」
「酸を操るためには酸に触れる必要がある。ダメージ的には痛み分けといったところか。」
彼女の手はなかなか痛々しいことになっている。観客も「うわぁ……」と目を背ける人も多い。
「……えーい、なに、操るタイプ!?」
「そうだよ!さあ、あんたは個性で酸を出せば出すほど私の武器が増える!どうする!?」
芦戸さんはしばらく「うぐぐぐ……」と唸っていたが。
「……な、殴り合いじゃーーー!!!」
「え、ちょ、ちょっと!?そんなのあり!?」
柳さんは芦戸さんの個性に牽制をかけることに成功したようだけれど、逆に彼女がアドバンテージを持っている身体能力を発揮させることになってしまった。
個性を使わず柳さんを再び追いかけ始め、程なくして少し動きの鈍った彼女を捕まえる。
「おんどりゃー!芦戸・背負い投げええええ!!!」
「ちょ、ちょっとおおお!!!」
見事に彼女は一本取られてしまい、芦戸さんが勝利。「こ、こんな負け方、もっと体を鍛えておけばよかった、ウラメシい……」と嘆きながら彼女は保健室へ連れていかれた。
● 二戦目 常闇 vs 八百万
速攻で勝負がついてしまった。物を創造する個性の八百万さんは、最初盾を作りその後槍を作る、としようとしていたようだったけれど、その間に常闇君のダークシャドウと呼ばれていた個性らしきモンスターが場外へ押し出してしまったのだった。
悔しそうに退場する彼女。……多分、事前に何を創造するかを決めておけば多少勝機があった……ようにも見える。というか、そもそも彼女の個性は前線に立つのにあまり向いていないように見えるのだけれど、それでもあんなに悔しそうにしているのは、ヒーロー科の上昇志向の表れなのだろうか。
● 三戦目 拳藤 vs 切島
「俺は硬化の男!本気の殴り合いで負けられるかああああ!!!うおおおおお!!!!!」
「ハァ!ハア!流石に、硬い!『硬化』の名は伊達じゃないってわけだね!」
硬くなることが個性らしき切島君が、拳を巨大化させる個性の拳藤からの殴打をひたすら耐える展開が続いた。
暑苦しい見た目通り彼の根性は相応しいものがあり、自身の倍もある拳からの殴打を何度も耐える。
我慢比べのような戦いが続いたけど、次第に拳藤さんの方が息が上がり始めた。
「お、うおおおおお!最後まで立ってるのは、俺だぁ!!!!!」
「ハア、ハア……なるほどね、鉄哲にも劣らない、流石の男らしさだよ、切島君!」
「あざッす!そっちもすげえ重い拳だ!敵ながらアッパレっす!」
「ありがと!……でも、悪いけど勝負を決めさせてもらうよ!」
「最後の一撃か?いいぜ、受けて立つ……へ?」
そして彼女のしたことは、巨大化した拳で殴るのではなく、彼を握る事だった。
全くこれを予想していなかったらしき彼は、一拍遅れて焦り出す。
「……え?は、おい!」
「そおおおおりゃああああ!!!!!」
ブンブンと回転して勢いを付けてから、彼女は彼を投擲する。空中で推進力が得られない彼は、為すすべなく場外へ放り出されてしまった。
「切島君、場外!拳藤さんの勝ち!」
「よっしゃああああああ!!!」
「よおおぉくやった!流石俺達の姉御、拳藤一佳だ!」
「フハハハハハ!!!A組、ついにB組に黒星だねえええええ!!!」
「拳藤ー!物間が歯止めが利かねえ、早く戻ってきてくれー!」
「はああああ!?なんだよその男らしくねえ勝ち方は!」
「わ、私女なんだけど……」
「そりゃそうだあああ!」
彼の硬くなる個性、正面突破してくる相手には強いだろうけれど、こうやって正面切って戦わない相手とは滅法相性が悪いだろうな、とちょっと可哀そうになってしまった。
……多分、拳藤さんが最初からそれをやらなかったのは、彼女が彼に免じて真正面から勝負を挑みたかったとか、そんな感じなんだと思う。
● 四戦目 麗日 vs 爆豪
爆豪君は掌から爆発を生み出す個性のようで、麗日さんは確か触れた物を無重力にする個性だったっけ。
彼を浮かせようと麗日さんは何度も手を変え品を変え突撃する、が運動神経のいい彼に悉く対応されてしまい、傷だけが増えていった。
……実況によるとそんな感じらしいけれど、麗日さんが彼を浮かせても別に有利にはならないと思う。むしろ、重力による枷がなくなった彼が、より元気に空中で暴れまわるようになるだけなんじゃないだろうか。
そんなことを考えていると、会場から爆豪君に向けてブーイングが巻き起こった。まどかの時と同じように、か弱い女子をいじめる男子のように映っているらしい。
正直、魔法少女という女子しかいなかった世界にいた私には理解しがたい感覚だ。試合運びは爆豪君が圧倒的ではあるけれど、見たところ麗日さんは普通にまだまだ動けてるし、弱い者いじめという程じゃないと思う。
ちなみに、私から彼への好感度は……微妙だ。騎馬戦中は執拗にまどかに攻撃する彼が嫌で、途中時止めで妨害しようか考えたほど。あとまどかの髪引っこ抜いたし。でも、さっきまどかと話してみたら、あの戦いは結構楽しかったらしい。
……でも正直また嫌いになりそう。彼、暴言がひどいから。魔女退治のストレスからガラが悪くなってしまった魔法少女はそこそこ見てきたけど、それとは別ベクトルの不良に見える。なんとも変な人だ。
ブーイングが大きくなると、イレイザーヘッドが「麗日は必死にやってるんだ。爆豪が油断できないのが分からんのか!」的なことを怒りながらアナウンスした。どうもさっきのブーイング、一部の現役プロヒーローさえ飛ばしていたらしい。……正直彼と戦うのが可哀想に思うのなら、
そうこうしていると、麗日さんが仕掛けた。空中に溜めておいた瓦礫を一気に爆豪君へ落とす。……が、彼は高威力の爆破でそれらを一掃し、ついでに麗日さんを吹き飛ばしてしまった。その後何とか立ち向かおうとする麗日さんだったけれど、程なくしてダウン。爆豪君の勝利となった。
ちなみに、さやかは
「いや~、お茶子さんあんなに根性あったのか、流石ヒーロー科だな~。」
と感心していた。麗日さんとも普通に仲がいいさやかは、感じるところがあったのかかなり集中して試合を見ていたと思う。麗日さんは、同年代の女子に比べれば色々鍛えているように見える。ループ中は私も色々努力したけど、あんな風な……何というか、青春?みたいな感じじゃなくて、とにかくまどかを助けるのに必死で楽しくはない努力だったと記憶している。爆薬調合のための化学知識、最初はすごい苦痛だった。
きっとヒーロー科の人たちは、ヒーローという夢に向かってとても楽しく努力できる生活なのだろう……と思って、すこし妬ましくなってしまった。……本当に彼らが楽しくやってるのかは知らないけれど。
● 五戦目 轟 vs 瀬呂
こちらも一瞬で片がついた。瀬呂君は個性らしきテープで轟君を拘束し場外へ追いやろうとしたが、轟君が高威力の氷結で瀬呂君を凍らせてしまった。かなりの高威力で、会場の天井まで届くほどの巨大な氷が生成されていた。
魔女退治にも十分通用する氷結だ。……ただ、聞くところによると彼は炎熱系で日本最強クラスのエンデヴァーの息子らしい。彼は炎をこの体育祭で一度も見せていない。遺伝しなかったのだろうか。
● 六戦目 緑谷 vs 心操
なんでこの人の試合観なきゃいけないの……なんて事を口にすると面倒になることは流石に分かる。クラスメイトの一部が、心操君の試合が始まるあたりからチラチラこちらの様子を伺っていた。
頭も口も無にすることを意識しながら試合を見る。心操君が緑谷に話しかけていた。
「お前の個性、他の奴から聞いた話だとオールマイト並の超パワーだったか。いくら強力だからって、自分が動けなくなるんじゃ世話ねえな。」
「確かに、今は無理かもしれないけれど、それで……」
洗脳を知らなかった緑谷君はまんまと引っかかり、場外へ歩きだす。
しかし、場外ギリギリでなぜか彼の個性が発動し洗脳が解けた。指を損傷しているので、衝撃で無理やり解いた、という感じらしい。……彼の個性、よく調べてないけど、オールマイトのを受け継いだのではという疑いが私の中にある。あの超パワーは似ているから。ただ、オールマイトがいまだに普通に活動しているのが私には不可解だ。
そして、緑谷君は心操君へ殴り掛かろうとするが……
「ヒーロー志望なら体は鍛えとかないとなァ!!!」
「う、うわあ!!!」
意外にも、鍛えていたらしい彼は緑谷を一瞬で地面に投げ飛ばす。私から見てかなり流暢な動きだった。心操君が普段どう過ごしているかは知らないけれど……精神医療系のヒーローの勉強に加えて、体術か何かの訓練でもしていたのだろうか。
「オラオラ、どうしたヒーロー科!普通科にフィジカルで負けてんじゃねえぞ!!!」
「……!」
緑谷は個性を警戒してか、何も喋らなくなってしまった。しかし、目に見えて驚愕と悔しさ、そして焦りが出ている。見たところ指がかなり痛んでいるために動きが鈍いのだろうけれど、それでも個性無しの殴り合いでは心操君の方が明らかに上を行っているように見える。殴りかかる心操に対し防戦一方なので、プライド的に悔しいとかなのだろう。
しかし、個性が通用しないというディスアドバンテージは流石にどうしようもなかったようで。
「……SMAAAASH!!!」
緑谷君の個性を使ったパンチが、体術など関係無いレベルで心操君を吹き飛ばし、場外行きにしてしまった。
その後は半分悔しそうな顔をしつつ、プレゼントマイクが促した試合後の握手を軽くしてから立ち去ろうとする。しかし彼の去り際、普通科の生徒から
「お前スゲーなあ!ヒーロー科とあそこまでやり合うなんてよお!」
「俺達の特訓の成果が出てたよォ!俺ぁ猛烈に感動してる!!!」
「俺達普通科の星だよお前!!!」
と声をかけられ、プロヒーローからも彼の個性や努力を称賛する声がちらほら聞こえてきた。
そんな歓声を受け、彼の表情はまあまあ喜んでいた。けれど、私の顔を見るなり……表現が難しいけれど、何かを求めるような顔になった。
……そういえば、体育祭の前に「見ていてくれ」って言われてたっけ。もしかして「俺はここまでやったんだぞ!ヒーローの事を見直してくれ!」と言いたいの?
…………まあ、確かに、努力は沢山したのだと思う。魔法込みの私でも、あそこまで対人で淀みなく動けるかと言われたら微妙だ。そんな技術の習得を、他の生徒よりも勉強に追われながらこなした。ヒーローを目指す為にそこまで出来るなんて、確かにすごい。私はそこまで出来ない。
だけど、それで私の中のヒーローへの評価は上がらない。例えれば……嫌いなシチュエーションの漫画を作ることに全力をかけられたような、そんな気分。彼自体への評価はせざるを得ないけれど、だからって彼自身や、彼が目指すことを好ましくは思えない。体育祭で彼は評価されることだろう、けれど……その先に何があるのか、私にはよく分からない。
「今日の俺の体育祭の活躍、どうだった?」と聞かれれば、私は「その努力を他の事に向けるべきだと思う。」と答えてしまうだろう。
彼の視線のメッセージを私が正しく受け取れたかは分からないけれど、今の私には彼に微笑みかけたりする気は全く起きなかった。
● 七戦目 鹿目 vs 上鳴
「いえーい!頑張れー、まどか!」
「鹿目さーん、ファイト!」
肝心のまどかの試合。相手は、上鳴電気というなんだかチャラそうな男子。
マミさん特製まどか応援旗を頭上で振りつつ様子を見る。まどかはこちらに気が付くと、純粋に嬉しそうに手を振り返してくれた。
(3人とも、ありがとう!私、頑張るね!)
(いやあ、なんだろう、私今すごいこの試合ワクワクしてる!)
(私もちょっとワクワクしてるわ。なんていうか、ほら、小さい頃はテレビのアニメでやってた『魔法少女』がみんなに応援されながら戦うシーンとか好きじゃなかったかしら?その頃の気持ちを思い出すわ。鹿目さん、会場の歓声も相まって、かっこいいわよ!)
……私も、まどかと出会うよりも前はそんなことを考えていたっけ?正直まどか以前はずっと病院暮らしだった。その頃の感動とかは全然覚えていない。病院の外に対しては、本などの知識だけから少しの憧れと多大な恐れを抱いていたような気がする。
(え、えへへへ……みんな、ありがとう!)
(ほむら……なんか言ってあげたら?あんたの大好きなまどかの大舞台だよ?)
さっきの出来事のショックがまだ抜けきらない私は、一見晴れ舞台に見えるところに立って嬉しそうにするまどかに喜びを分けてもらいつつも、純粋に応援する気になれてはいなかった。
(……まどか、少しでも異常を感じたらすぐ言って。それと、もし不愉快な人が周りにいたら、私が何とかするからテレパスで教えて欲しいわ。)
(ほ、ほむらちゃん構えすぎだよ……)
(暁美さん……そんなに気張っていたら、楽しめるものも楽しめないわよ?ほら、フリでもいいから『まどか、頑張れー!』って言ってあげたら?)
(そうだそうだ!あんたが暗いと、まどかまで暗くなるかもよ!)
……それは嫌だ。仕方なく、私は慣れない応援というものをしてみることにした。人が大きい場所で叫ぶ経験なんて殆ど無かったから正直恥ずかしいけれど……。
「……が、頑張れー、まどか。」
「声ちっさ!」
「……他の普通科の人たち、暁美さんの言葉に気が付いていないみたいよ……?」
「…………」
自分でも驚くほど覇気のない声が出た。顔から火が出そうなのだけれど。もう二度としたくない。
(わ、私はしっかり聞こえたよ、ほむらちゃん!元気出して!私、応援されてうれしかったよ!)
まどかがこっちを見てそうフォローしてくれた。……まあ、時と場合によってはまたいつかやろう。まどかの笑顔が見られたのだし。
ともかく、第七回戦が始まった。
「無差別放電、150万ボルトォ!!!」
カッコつけなのか何なのか、まどかをご飯に誘いながら放電した彼。……だが、魔法少女というものは魔女と戦うために頑丈にできている。あの程度だと、まどかなら有効ではあるけれど致命傷にはならない。……今まで、電撃を使う魔女と戦う事が無かったのでもしかしたらソウルジェムに通電してしまうのではと少し恐れた私は、念のために時間を止めてまどかのソウルジェムを確認したけれど、魔女との戦いで発生する程度の穢れに留まっていた。念のために穢れを除去しておいてから、私は時を戻して試合の続きを見る。
動かしてみると、やはりまどかは無事だった。服が多少焦げている程度なら大丈夫だろう。……むしろ相手の方がダメージを受けているように見えた。なんというか、放心状態?に近い表情をしていて、まどかに接近しては来るもののなんだかすごくフラフラしていた。
まどかが立ち上がると、動揺して焦ったのかまた同じ放電を繰り返す。まどかがそれに耐えてまた立ち上がるが、逆に彼は完全に動けなくなってしまった。それが彼の行動不能とみなされ、まどかの勝利となった。
……傍から見ると、彼は自分が行動不能になることを頭に入れずに、ひたすら全力で個性を発動して勝手に負けたように見える。実況のイレイザーヘッドも言っていたが、電気が効かない相手を全く想定していなかったがための敗北だと言える。だってまどかは一切攻撃をしていないし……。正直彼の戦いは威力以外褒めるところが無いものだった。
まあ……新人の魔法少女だって後先考えないで攻撃してしまう、なんてよくある話だったし、戦いの経験が無ければそんなものかと思った。
さて、いい加減接触許可は下りるだろうし、まどかを迎えに行かないと。
◇
「治癒あざっす!……ハァ、すごいダルい。緑谷が戦闘訓練時滅茶苦茶疲れてたのがよく分かるぜ……」
「君の全力放電は自身にもダメージが行くから、無闇にやらないようにね。」
「う、ういっす。じゃあな緑谷。俺先に観客席にもどっから!」
「うん。上鳴君、放電もすごかったよ!僕も負けてられないね!」
「さんきゅ緑谷!おめーも気を付けろよ、見慣れてるんだろうけどその指と腕めっちゃグロいぞ!無理しねえようにしろよな!」
「あ、あはは……レポートも頑張ってね。僕も同じような悩みを持ってるし、手伝うよ!」
「課題のこと思い出させるのは止めろォォォ!!!」
保健室にて、リカバリーガールの治癒を受けた上鳴は悲痛な声をあげながら部屋を出ていく。残ったのはリカバリーガール、緑谷、そしてトゥルーフォームのオールマイトだった。
彼がいなくなってしばらくすると、緑谷は部屋の扉を少し開けて周囲を確認する。誰も居なくなったことを知って戻ると、彼とオールマイトの空気はほんの少しだけ重くなった。
「本当にごめんなさい、オールマイト。僕の口が軽いばっかりに……」
上鳴がここに来る前、緑谷はオールマイトとリカバリーガールに自身が個性の継承者であることが轟と爆豪にバレてしまったことを告白。小言は貰ったものの、オールマイトから大した折檻は受けず、むしろリカバリーガールから小言を大量に貰ったところだった。
「ふむ……まあ、二人とも安易に言いふらす人間ではないと思うから、今度私から改めて話をさせてもらおう。それに、聞いた限りはあの時以降はちゃんと秘密を守っていたようだったからね。近くに偶然爆豪少年がいたのも運が悪かった。まあ、私からこれ以上とやかくは言わないさ。」
「まったく、気を付けておくれよ緑谷。オールマイトの秘密を知られるなんて、もっと発言には気を付けないと!」
「うっ……すみません。」
「まあまあ、今回バレてしまったのは轟少年が予想以上に観察眼がすばらしかったからなんですよ、リカバリーガール。あまり緑谷少年を責めないであげてください。私も露骨に彼を贔屓してしまった面がありますから。」
「アンタもアンタだよオールマイト!教師になった以上は公私の分別を付けなくちゃいけないだろうさ!」
「ほ、本当にその通りです、全く面目ない……」
「リ、リカバリーガール!オールマイトは悪くありませんよ!例えば授業の時は」
「アンタたち、庇い方までそっくりだね!そんなとこまで師弟で似なくていいだろう、まったく!」
「「す、すみません!」」
二人はシンクロしてリカバリーガールに謝罪する。一拍遅れて何が起こったのかを把握した二人は、苦笑し合いつつも別の話に切り替えた。
「しかし、轟少年の考察能力には驚かされるね。まさか『個性を奪う個性』を想定してここまで考えられるなんて。この話、思いついても『実在したらとっくに知れ渡ってる』で終わっちゃうからね。警察内でも、そんな個性の存在を受け入れられる人は、AFOの捜査当初は少なかったと友人から聞いている。」
「あ……いえ、全部轟君が思いついたってわけじゃなくて、別の人の話からアイデアを貰ったそうなんです。」
「おや、そうだったのか。ちなみに誰とか聞いてる?」
「それが……暁美ほむらさんなんですよ。」
「暁美ほむら……ふーむ、私の知らない名前だ。」
「ほら、前に海岸でトレーニングしていた時に、すごい印象に残ったことを言った黒い髪の女の人がいたじゃないですか。彼女ですよ!」
「ん?あー、彼女……え、ちょ、ちょっと待って!あの子雄英に入ってたの!?」
オールマイトとしても、彼女との会話は印象に残っていた。彼女との会話で行動が変わったというわけではないが、「私ももう少し後進育成に力を入れようかな……」という気にはさせられた。実際のところ、結局ヒーロー活動を優先してしまい大したことはできていないのだが。
「はい……すみません、これ早く言っておくべきでしたね。タイミングが無くて……」
「いやいや、気にすることは無いよ。その、彼女とはどこで?」
「大食堂で、偶然。普通科に入ってたみたいなんです。ええと……あの時は苛ついていたとか謝られました。その後も話をしたかったんですけど、ちょうどマスコミ侵入の警報が鳴って、それ以降はちゃんと話す機会が無かったです。一緒に昼食を取るときはあったんですけど、いつも口数が少なくて……」
「なるほど……まあ、彼女とは学校生活を続けていれば、いずれじっくり話す機会があるだろうさ。まだ入学してから数ヵ月だからね。」
その時、保健室の扉がノックされ、許可の後に開かれた。
「すみませ~ん、一応傷を見て貰ってって言われて……」
「か、鹿目さん!?」
「あれ、緑谷君?久しぶり~。……オ、あ、その、どなたですか?」
「ああ、私は事務員の八木という者だ。彼、緑谷少年のことは知っているのかい?彼と個人的に交流があって、ちょっとしたお話をね。」
鹿目まどかが、雄英指定の体操服で入ってきた。肌に焦げたような跡はあるが、体操服は綺麗なままという少々不可解な恰好だった。
「ああ、あんたは上鳴の全力放電を浴びたんだったね。見ておいた方がいいだろう、こっちにおいで。」
「は~い。」
リカバリーガールは、部屋の一区画をカーテンで仕切り、中で診察を始めた。
そして、緑谷は彼女を見て思い出した話を始める。
「……ああ!そうだ、鹿目さんって、暁美さんと友達だったよね!」
「え!?鹿目少女、そうなのかい?」
「ほむらちゃんのことですか?はい、私の大事なお友達なんですよ。」
カーテン越しにそう答えられ、緑谷は期待と緊張を抱えつつ話を続ける。すこしでも彼女に関する情報が欲しくなったのだ。
「ええと、その……暁美さんって、どんな人なの?」
「どんな人?うーん……」
「ほ、ほら、ご飯食べるときに、暁美さんいつも口数が少ないからさ、どんな人なのかなーって。」
「なるほど、そうだなあ……」
10秒ほどの思考ののち、まどかはポツポツと語りだした。
「ほむらちゃんは……口数が少なくて、もしかしたら薄情に見えるかもしれないけど、実はとっても優しい子なんだよ。友達の事を優先できるくらいで、そのために出来ることは何でも出来ちゃう頑張り屋さん、かな?ただ、友達以外のことにはほとんど興味が向かない子だから、初めて会う人はちょっと戸惑っちゃうかもしれないの。緑谷君も、もしかしたら冷たくされたって感じたかもしれないけど、実は嫌われてるってわけじゃないから……緑谷君も、ほむらちゃんと友達になれると思うよ!」
「そ、そうなんだ!?」
抱いていたよりもかなりの高評価を聞かされ、戸惑いつつも少しホッとする緑谷。彼女の言う通りならば、今後も海岸での話の続きをするチャンスがあるかもしれない。
「鹿目少女、体の方は大丈夫なのかい?」
オールマイト改め八木俊典も、純粋な心配からそう尋ねる。
ただ、これに最初に反応したのはリカバリーガールだったが。
「オ…いあんた、それを今私が診察してるんだよ。せっかちだねえ。」
「ああいえいえ、個性の暴発の件が心配で……」
「ああそれですか。全然大丈夫ですよ。」
「そ、そうかい?その、着ている服があんなふうに変化したりする個性なんて聞いたことがなくてね。なんども聞かされて鬱陶しいかもしれないけれど、本当に暴発で済ませて良いのかなっておじさん心配で……」
「えーと……すいません、なんというか突然できるようになったとしか……」
そのタイミングで、仕切りのカーテンが開かれる。
「ハイ、診察は終わりだよ。あんな電撃浴びせられたのにまったくもって健康だよ。私もどんな個性か気になるねえ。」
「す、すみません。突然こうなったとしか……でもあのビリビリ攻撃は私も中々きつかったです。」
「キツいで済んでるのがおかしいんだよ。あんなの一発でも喰らったら普通は気絶、大けがもあり得るレベルだよ。私がいなかったら止めるレベルさね。本当になんでピンピンしてるんだい?」
「えーと……気合?」
無個性の人間の身体ならば、電撃攻撃など気合で何とかなるものではない。彼女の説明は到底鵜呑みにできるものではなかったが、かといって他に仮説が立てられるのでもなかった。
変身時の彼女の外見は、異形型などではなく可愛らしいコスチュームを来た無個性の人間だった。その情報だけから、彼女があの電撃に耐えられた理由は見つからない。一応、診察中は彼女にその姿へ一時的に変身してもらったのだが、特に異常は発見できなかった。
「はあ……まあ、いいよ。今日の体育祭が終わったら、病院でちゃんと検査してもらいな。個性の性質は正しく把握しないと、思わぬ大怪我に繋がるかもしれないからね。」
「け、検査?」
訊き返すまどかに、緑谷やオールマイトは少し違和感を覚えた。
「どうしたの鹿目さん?」
「あー……いや、その、恥ずかしい話だけど昔から病院とか検査って苦手で……特に注射とか、ね!ちょっと嫌だなあって思っちゃったの。」
「む、そうか……しかし、個性の検査はキチンとした方がいいとおじさんからも言っておこう。今回は体育祭という場で、プロヒーローが多くいる場だから何とかなるだろう。しかし、思わぬ形でまた個性が暴発してしまって、友達を傷つけてしまったなんてことがあったら嫌だろう?」
「あはは……その通りですね。心にしっかりと刻みます……!」
この発言、「心に刻む」とは言ったものの「検査を受ける」とは言わなかった。ただこの微妙な引っかかりをいちいち指摘するほど、今の他三人は彼女に対して懐疑の目を向けてはいなかった。
「いやあ……でもそれ以上に本当に鹿目さんの個性はすごいね。プロにも全然通用するよ!」
「そ、そうかな?でも私、ヒーローの人たちみたいにテキパキ動ける人間じゃないし……」
「いやあ、そうだとしてもその場にいるだけで心強いよ鹿目さん。僕さっき騎馬戦の様子を動画で見返したんだけど、鹿目さんの個性は本当にすごいよ。ホーミング出来る遠距離攻撃って言うだけでも需要が大きいのに、かっちゃんの爆破を喰らっても崩れない耐久力、あのピンクの矢の攻撃力、足からのエネルギー噴射による機動力、見る限り普通のプロヒーローが持つべき水準を満たしてる。おまけに変身してヒーローコスチュームのような姿になれるなんて、もし鹿目さんがプロヒーローデビューしたらチャート入り間違いなしだよ!一体あのピンク色の光何なんだろう?見た限りはエネルギーのような何かだけど、かっちゃんが爆破で相殺してたから実体はある。でもエネルギーなのだとしたらそのエネルギーはどこから?八百万さんみたいなタイプの個性みたいに体内の脂質とかのエネルギーを変換しているのか?それにしては躊躇なくバンバン撃っててそれでいて大して疲れていないし。いやそれ以上に注目すべきは、着地の時に心操君が潰れなかった点だ。あの時のピンク色の光が」
「え……えーと?」
「緑谷少年、鹿目少女が戸惑っているぞ……」
「あ、す、すいません!」
彼の悪癖であるブツブツ考察芸を披露し、当然にまどかに戸惑われてしまった。オールマイトの言葉で、彼はようやく我に返る。
「まあ、ただ私も君の個性が素晴らしいというのは同意だ。私も騎馬戦は見ていたんだけど、まさか爆豪少年にあそこまで対抗し、ほぼ引き分けに持っていくなんてね。」
「あ、ありがとうございます。」
「その……あの戦いぶりを見ていると、どうにも君が戦いに慣れているようにしか見えなくてね。君はもしかして以前に……」
「え、いえ!あの姿になったのはあの時が本当に初めてで、戦えたのも多分個性のお陰です!いやー、本当にこんな強い個性が発現してラッキーですね!」
「そ、そうなのかい……?」
戦闘経験豊富なオールマイトから見ても、騎馬戦での彼女は明らかに戦い慣れていた。爆豪が正面から接近しようが背後に回ろうが、何の迷いもなく迎撃して見せたのだ。迷いの無さとは、大抵経験の豊富さから得られるもの。従って、あの動きの流暢さを全て個性で片付けるのは無理がある話だったが、さりとて否定できる材料を持っている訳でもない。
誤魔化しにも見える笑顔を浮かべる彼女を見て、オールマイトは疑問は残るもののあまりほじくり返しても良いことは無いと判断し、この話を終わりにするつもりだった。しかし、思わぬところから彼女の謎を探る転機が生まれる。
「いやでも……八木さん、鹿目さんは多分土壇場で力を発揮できるタイプなんじゃないですかね?」
「え?み、緑谷君?」
「どういうことだい?」
「ええと、鹿目さん、入試の時を覚えてる?僕、あの時の鹿目さんを見て、本当に焦ってたんだ。ピンク色の弾でどんどん仮想
「……あっ!?」
「ど、どうしたんですか!?オ……八木さん!?」
「いや、私も入試の映像は見ていたんだけど……」
オールマイトはヒーロー科の入試の採点には関わっていないが、しかし得点確定後に気になる受験者に対してコメントをすることはあった。
そして鹿目まどかの実技入試は、彼の注意をそこそこ引くものだった。確かに個性が強力で、人目につかないところで自主練でもしたのか使い慣れている。他者を助ける優しさもある。彼の彼女への評価は決して低くない。
しかし、試験中に仮想
そして、もう一つ彼が低評価をしてしまった場面がある。0P仮想
だが仮に、彼女があの姿に変身できることを知っていたのなら?あの機動力なら、その場から離脱する事はたやすい。あの弓矢なら、0P
人当たりのよい彼女を疑うのは心苦しいが、オールマイトは彼女に対し疑いを持たざるを得なかった。もし事実無根ならば全力で謝り倒す覚悟で、オールマイトはこの件にもっと突っ込んでみようと考えた。
「あの……鹿目少女。こんなこと聞くのは心苦しいんだけれど……」
「はい?」
「ああ、まどか、保健室にいたのね。」
突如、オールマイトにとって聞き覚えのある声が響いた。見ると、暁美ほむらが扉の前に立っていた。
「迎えに来たわよ、まどか。」
「あっ、ほむらちゃん!ありがとう!リカバリーガール、ありがとうございました!」
「はいよ、くれぐれも体に気を付けてね。」
そうしてまどかはほむらの許へ行く。オールマイトは、その先にいる暁美ほむらを見た。
「…………」
彼女は、何も言わずオールマイトを見つめていた。トゥルーフォームの姿であるから、彼女にとっても見覚えのある姿であるはず。しかし、彼女の表情は明るくない。鹿目まどかは彼女を良く評価していたが、オールマイトは彼女がオールマイトや緑谷に抱く感情は、無関心ではなく少し悪いに寄ったものだと感じてしまう。
「……や、やあ。海岸の時以来だね、暁美少女。」
「………………」
オールマイトは彼女にどう接するべきかは分からなかったが、「笑っている奴が一番強い」という彼の師匠の格言を思い出し、ひとまず笑顔で挨拶をした。
ほむらはやはり何も言わないが、一応軽く会釈は返してきた。しかしやはり歓迎されていない。まどかが彼女の傍に寄ると、意図したのかは分からなかったが、ほむらはまどかとオールマイト達の間に体を割り込む位置取りをした。
それを見たとき、オールマイトと緑谷はさらに記憶を取り戻す。「大切な人がいる」という話を海岸でしていたが、もしや鹿目まどかがそうなのではないだろうか?今の庇うような動作を見て、オールマイトはそう感じ取った。緑谷も同様だった。
そしてオールマイトは、自身を避ける人々の動機を思い起こす。オールマイトを避ける人間というのは大抵
鹿目まどかや暁美ほむらがそうだったのならば、オールマイトが一緒のこの状況は受け入れがたいのかもしれない。しかしそれはマッスルフォームのオールマイト相手での話で、今の彼はトゥルーフォーム。まさか正体が見破られているわけではないと彼は思いつつも、しかし先ほどの視線からオールマイトは自身の何かを彼女に見透かされているような気がしてしまった。
向こうが避けたいと思うのならばそっとしてあげたくもなったが、先に口を開いたのは彼なので、ひとまずオールマイトは当たり障りのない話を続けようとした。
「あー、その、改めて自己紹介させてもらうと、私は雄英の事務員の八木」
「リカバリーガール、ありがとうございました。まどか、行くわよ。」
オールマイトの空気を保とうという努力は、暁美ほむらによってバッサリ無しにされてしまった。
「あ、うん。みなさん、ありがとうございました!」
「あっ、ちょっと、暁美少女!?」
「すみません。私達用事があるので、これで。」
明らかに会話を避けてまどかを連れ帰ろうとした暁美ほむら。オールマイトは反射的に呼び止めるが、二人は無視して行ってしまう。途中、まどかが「よ、呼んでるけどいいの?」と言うのが聞こえたが、ほむらは何も言わずに歩みを進めたようだった。
オールマイトとそれなりに付き合いが長いリカバリーガールは、彼の様子が妙に明るくない事を察した。
「……俊典、あんた彼女が気になるのかい?」
「ええ……まあ……」
「……僕も、なんだか気になります。」
「ふーん、どういうところが気になるんだい?まあ雄英には珍しいタイプかもしれないけど、口数少ない高校生なんて一杯いるだろう?」
「それは……そうです……分かりませんけど……」
奇しくもこの時、オールマイトと緑谷出久は暁美ほむらに対して同質の興味を抱いていた。だが具体的な言語化は出来ない。
出来ないが。
「なんか……僕は暁美さんのこと全然嫌いじゃないんですけど……あの人があのままじゃ、なんか嫌だなって……」
彼女の何かが「このままは嫌」という緑谷の感想に、オールマイトは心の底から頷くことができた。
・触れる必要がある(柳の個性)
アニメを見ると、跳峰田とかやってるときに個性使って動きを止めようとかしていないので多分接触の必要アリだと思う。(生物無効だとしても服を操ればいいわけだし)
・上鳴
残念な結果だけど、あのアホ面状態相当動きが鈍りそうだし……初手全力ブッパは行動不能にできなかったらほぼ完全に詰んでしまう攻撃と言える。チーム戦ではまだ他のメンバーに繋ぐというやり方も考えられるけれど、個人戦でそうなったら……ねえ。
・体を鍛えておけば
なんかフィジカルバトルが多いなあ……