個性『魔法少女』   作:Assassss

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高評価、誤字報告、感想ありがとうございます。

繋ぎ回です。

明示的ではありませんが外伝要素が出ます。


現実と向き合わないと……

 

雄英一年生は、ステージの中央に集められた。普通はこの場はほとんどヒーロー科しかいないらしいけれど、今回に限っては普通科の生徒がそこそこいた。私達3人も集まっている。

 

「今年度雄英体育祭、一年の全日程が終了。それではこれより表彰式に移ります!」

 

豪勢な花火と歓声とともに、ステージから演出用の煙が噴射される。おそらくあそこからトップ4人、いや轟君は病院に送られたらしいから3人が出て来るのだろう。

……と、思っていたのだけれど。

 

「ん゛ん゛ん゛~~~!!!んんん゛ん゛!!」

 

なんというか、すごい唸り声が聞こえてくる。

ステージから出てきたのは、まどか、常闇君、そして……柱に拘束されながら暴れる爆豪君。……色々なベクトルで並外れた人なのだなと思う、本当に。性格の尖り具合で言ったら多分私が知っている同年代の中で一番だ。

 

「ね、ねえ……緑谷君、あの人何なの?」

 

さやかが隣にいる彼に聞いた。爆豪君は緑谷君の幼馴染らしい。

 

「あ、あはは……かっちゃんは、なんていうか完璧主義者なんだ。多分、不戦勝で優勝って言うのが気に入らないんだと思うよ。」

「……だからってあそこまで暴れるのおかしくない?」

「暴れるのがかっちゃんなんだよ、美樹さん。」

「……す、すごく苦労してるんだね緑谷君。まどか大丈夫かなあ……。」

 

ヒーロー科の面々も呆れ顔で、表彰台にいる常闇君も「もはや悪鬼羅刹……」などと零している。A組の中でも相当な異常者扱いのようだ。

 

「2位には轟君がいるんだけど、前の戦いで病院に搬送されました。命に別状はないそうです。ご了承くださいな☆」

 

ミッドナイト先生がカメラに向かってウインクする。ミッドナイト先生、改変前の世界だと芸能人でもやっていそうな人だ。

 

「それではメダル授与よ!今年メダルを贈呈するのは勿論この人!」

「ハーハッハッハ!」

 

どこからともなく力強い声が聞こえてくる。上を見ると、小さいながらも存在感のある影が見えた。それだけで会場は歓声に包まれる。

そしてそれは、ドン!とステージ中央に力強く着地する。

 

「私がメダルを持って「我らがヒーロー、オールマイトォ!!!」来たァ―!!!」

 

声がかぶり、一瞬の静寂が訪れた。……まあ雄英でもこういうミスはあるんだろう。

 

「……そ、それではオールマイト、3位からメダルの授与を。」

 

気を取り直して、オールマイトが表彰台に近付いていく。最初は常闇君のようだ。

 

「アッハハハハ……常闇少年、おめでとう。強いなあ、君は。」

「もったいないお言葉。」

「ただ、相性差を覆すには、個性に頼りきりじゃだめだ。もっと地力を鍛えれば、取れる択が増すだろう。」

「……御意。」

 

……前から思っていたけれど、彼はなかなか口調が特徴的だ。同年代でナチュラルに御意なんて言葉を使う人は初めて見た。

 

そして、オールマイトはまどかに近付いていく。

 

「さて、鹿目少女!3位おめでとう!」

「ありがとうございます!」

 

オールマイトはまどかの首に銅のメダルをかけた。まどかは素直に嬉しそうに受け取る。

 

「個性のことは色々と気になるが、この場は君自身の健闘を讃えさせてほしい!普通科でこの順位は、雄英創設以来初の快挙だ!おめでとう!」

「ありがとうございます!」

 

サムズアップするオールマイトにまどかは自然と笑顔を見せる。

 

「……まあ偶然強い個性が目覚めたおかげですけれど……」

 

しかし次の瞬間には謙遜してしまう。確かまどかは、ヒーロー科に対して自身の努力量を引け目に感じているらしいのだっけ。

 

「む、私としては確かに君自身が勝ち取ったメダルだと思うぞ!謙遜することは無いさ。確かに個性の強さによる勝ちはあるだろうが、しかし君自身の行動力、判断力、そして友を想う心もまた強かったと、この私が認めよう!」

「……ウェヒヒヒ!」

「…………うぇひひひ?」

「あ、いや、ありがとうございます!」

 

今のがただの笑い声だったことを認識すると、彼は気を取り直して話を進めた。

 

「さて、君は普通科の生徒だが、将来の進路の希望などはあるのかな?普通科からでもヒーローになる道はあるが……」

「うーん、ヒーローになるとか、そういうのはまだ……」

「なるほど。だが、せっかくだからこの機にヒーロー仮免許だけでも目指してみてはどうだろう。君の個性ならば試験の突破は大いに期待できる。君の個性を必要としてくれる人も世の中にいるかもしれないからね!」

「……正直、こんなにヒーローがいる中で私の出番なんて殆ど無いと思いますけど……」

 

謙遜続きのまどか。しかし、『必要としてくれる』の言葉あたりでまどかの目に光が増し、上を向いて元気にこう宣言した。

 

「でも、私の個性で勇気づけられてたりする人がいたら、それはとっても素敵なことだなって思います!」

「うむ!これからの君の活躍に期待している!」

 

会場から歓声と拍手が沸き起こる。そしてまどかは会場の観客に手を振り返した。もうすっかり大勢の人に見られることに慣れてしまったようだ。

 

オールマイトはまどかから離れ、最後に今にも爆発しそうな爆豪君のところへ金メダルを持って近付く。

 

「さて爆豪少年!……と、こりゃあんまりだ。」

 

オールマイトは、彼の口枷を外した。……唸るだけで大人しくしている。噛みつくかと思った。

 

「選手宣誓の伏線回収、見事だったな!」

「……オールマイトォ……!」

「ん?」

 

地の底から響くような怒りの声が放たれる。

 

「こんな一番、何の価値もねえんだよ!世間が認めても、自分が認めてなきゃ、ゴミなんだよぉ!!!」

 

……顔すごい。一瞬魔女かと思ったほどにツリ目だ。

 

「うむ。相対評価に晒され続けるこの世界で、不変の絶対評価を持ち続けられる人間は、そう多くない。」

「慰めなんかいらねえんだよ!今すぐこの拘束解きやがれ!んで轟呼んで来い!今すぐ決着つけさせろぉ!!!」

「む、無茶言うな少年!」

 

……彼、轟君が病院送りになったことを知らないのだろうか?……いや、多分知ってて言ってる。

 

「あとテメエもだ!ピンク髪!」

「ひっ!?」

「鹿目まどか、我が背後へ。」

 

突然敵意を向けられ、まどかは怯えだす。しれっと隣に立っていた常闇君が庇うような立ち位置に入った。……その行動に正直妙な嫉妬を覚える。

 

「テメエは余力ありまくりだろ!?テメエの敗北だって互いに舐めプかました半分野郎のラッキーみてーなもんだ!テメエも倒さねえと、真の一番になれねえんだよお!」

「こらこら爆豪少年。彼女にだって都合というものがある。」

「じゃあ表彰式終わったらどっかの競技場に来い!そこで白黒ハッキリつけてやる!!!」

「待て待て、鹿目少女はヒーロー科ですらないんだぞ。無理強いは良くない。」

「……な、なんであなたはそんなに一番になりたいの?」

 

まどかがおずおずと質問する。まどかは気が強くは無いけれど、こんな風に分け隔てなく相手のことを見ることができるのは間違いなくまどかの美徳。私もかつて、そのやさしさで救われたのを思い出す。

 

「ハァ?」

「その……向上心、っていうのも大事なのかもしれないけど、みんな個性に良い所があると私は思うんだ。別に一番じゃなくても、一人一人が出来ることを頑張っていけばいいって、私はその、思うんだけど……?」

「なんだその生ぬるい思想はァ!?上を目指さねえ人生なんか御免だァァ!!!」

 

……その優しさは今の彼には不要のようだったけれど。まどからしい優しい考えは、彼に水と油だろう。まどかはやっぱり共感できないという風で彼を見た。正直私も共感できないし、さやかやマミさんも心底彼の気持ちが理解できないようだ。

 

「爆豪少年、一番を目指すことは確かに素晴らしいことだ。しかし例えば今日の騎馬戦のように、人と協力して成し遂げることも重要だ。あとで自分以外のチームの活躍を見るといい。今の鹿目少女のような考えも意義があると、賢い君なら分かるはずだよ。この世には色々な性格の人がいる。そういう社会勉強も君には必要だ。その第一歩として、このメダルは受け取っときなよ。決して現状に満足しないための、自分の『傷』として!」

「要らねーっつてんだろ!」

「まあまあ!」

「だから要らねーって!」

「……セイ!」

 

オールマイトがメダルを彼の首、ではなく口に無理矢理かけた。これが一位というのはかなりユーモアがあると思う。なんというか……不思議と私は彼のことが嫌いになり切れない。他人を一方的にボコボコにしていたら間違いなく嫌いだっただろうけれど。

 

それが済んだところ、オールマイトはカメラ、いやステージ全体に向かって宣言する。

 

「ここにいない轟少年も、すばらしい戦いだった!途中までは迷っていたものの、彼の素晴らしい友人の力で立ち直り、最後の最後で勝ちをもぎ取ったのだ!彼の今後の成長に、私は大いに期待している!さあ、今回の勝者は彼らだった!しかし皆さん!この場の誰にも、ここに立つ可能性はあった。御覧頂いた通りだ。競い、高め合い、さらに先へと登っていくその姿!次代のヒーローは確実に、その芽を伸ばしている!」

 

一分の歪みもない体勢で天を指さすオールマイト。その年でこういう決めポーズをとっても普通にキマっているように見えるのは素直にすごいと思う。

 

「てな感じで最後に一言!皆さん御唱和ください!せーの!」

「PLUS「お疲れさまでした!!!」ULTRA!!!」

 

……また被った。マミさんとさやかがまた笑いをこらえ始めた。

 

「え~!?そこはPlus Ultraでしょオールマイト!?」

「ああいや、疲れただろうなって思って……」

 

会場がブーイングを始めると、笑うのを許す空気になったと感じたらしい二人は我慢を止め笑い出した。まどかもすこし戸惑いつつも笑い顔だ。

色々なことはあったが、こういう余興があると肩の力を抜ける。今日はまどかの楽しそうな姿をたくさん見れて、私にとっても思い出深い日だった。

 

……まどかが楽しそうで私も楽しい。まどかのことを見ていれば。

 

…………まどかを見ていれば……。

 

………………はあ。

 

表彰式が終わって、まどかは普通科の面々やヒーロー科の人に囲まれまた質問攻めにあっている。

そうしてまどかの姿が見えなくなると、私は現実のことに頭をまわすことになる、思わずため息をついてしまう。

 

今日のことでまどかは日本国民の何割、というレベルで認知されることになってしまった。もうどうやっても元には戻せない。

今のところ、まどかは強い個性が偶然発現したラッキーな女の子という認識になっている。でもそれが厄ネタにならないかと大いに心配だ。強個性目当てに誘拐されるなんて話は時々ある。そういうのは大抵治癒個性とか、犯罪の痕跡を消せたりする個性とか、違法薬物を作るのに役立つ個性が狙われる。

まどかはそういう面は目立たないし、何よりまどかの家と雄英がそう遠くないお陰でこの辺は治安がかなりいいから大丈夫、だとは思う。基本的に集団で行動して裏路地とかに入らないことを心がけてるから、変な人に狙われることはない……と信じたい。

けど、オール・フォー・ワンなんてのもいるし、今日の個性事故みたいなことだってあり得る。そう考えると不安はどうやってもぬぐい切れない。しばらく私はオール・フォー・ワンの捜索よりも優先してまどかと一緒にいるつもりだ。

 

とりあえず目下考えることは、まどかの個性の精密検査がどうなるか、ということだろう。問題があれば改ざんするつもり、だけれど正直そんなの上手くできる自信はない。私には医療技術、ましてや個性の研究内容なんて分かる訳がない。本当にどうしよう。

 

……それと、杏子にはちゃんと謝っておかないと。

 

 

結論を言うと、まどかは、魔法少女は精密検査を受けても特別な情報は出ないようだ。

病院に行くまどかに付いて行って、検査中に出てきた数字やらを他の人と見比べてみて大丈夫かずっと監視してたけど、とくにおかしな数字は無かったと思う。

魔法少女の姿もいろいろ見られたけど、「出てきた服もただの布で、体も無個性の人間と大差ない」という結論だったらしい。ソウルジェムは、調べられないように私が預かっていたから調べられていない。ひとまずソウルジェム以外の普通の検査なら変な事にはならなさそうで一安心だ。

 

懸念事項が一つ消えて、私達4人はもう一つの問題に向かっていた。

 

(ごめんね、杏子ちゃん。私が迂闊なばっかりに……)

(はぁー、そうだったのか。個性ってやっぱ油断できねえなぁ。体育祭のニュース見たときは一時間くらいずっと口開けてたよ。)

 

杏子のいる施設の近くで私達4人は集まっていた。まどかは、先ほどからずっと申し訳なさそうにしている。

私達の存在を隠すためにずっと体を張ってくれていた杏子。それがほぼパーになってしまったのだから、申しわけなく思うのも仕方ない。私も、いつでも時間停止を使えるようにもっと気を張りつめておくべきだった。

 

(本当にごめんね。杏子ちゃん、私達の為にずっと秘密を守ってくれてたのに、それを台無しにしちゃって。)

(……私からもごめんなさい。もっと神経を尖らせるべきだったわ。)

(ほむらのせいじゃねーっつーの。というか、まどかも結構えげつないとこあるんだな。『本気』を出したらほむらを妨害なんて。)

(多分杏子から学んだんじゃない?)

(はー!?それどういうことだよさやか!)

 

さやかが茶化してくれたおかげで少し空気が和んだ。

 

(佐倉さん……本当に怒ってない?)

 

マミさんがおずおずと聞く。声の感じだと怒っていないけれど、それでも気を使ってしまう物なのだろう。

 

(うーん……まあ、初めて見たときは目を疑ったよ。)

(だ、だよね……)

(でもさー、まどかがめっちゃいい笑顔で戦ってたからさ。)

(いい……笑顔?)

(なんか、この世界に来てのまどか、なんとなーーくモヤモヤモヤモヤしてる感じだったからな。で、体育祭の時のアンタはそのモヤモヤが取っ払われてた。まあ、上から下まで良かったなんて言わねえけどさ。アタシなら、人生は細く長くより、太く短く!っていうのが良いと思うぜ。)

(ちょっとやめてよ、短くなんて縁起でもないわ……ちょっと不満があっても、私は慎ましく暮らしていたかったわよ。)

(そうか?今のアタシは刺激が欲しくてほしくて喉から手が出そうだよ。)

(あー……)

 

……一年弱、ずっとこの施設暮らしだものね、杏子。良い子にしていたために最近では施設内ならまあまあ出歩けるようになったらしい。外出は許されないらしいけれど、それでも殺人犯の扱いとしては相当緩い部類だろう。

 

(それに、こんな個性なんて魔法みたいな力がある世界じゃ、何が起こるかなんてわかんねーよ。話聞く限りもうまどかが変身しちゃったのほぼ事故だし。どーしよーもねーって。まどかだけじゃなくて、マミやさやかやほむらも、いつか魔法少女の姿で人前に出ることになるのは覚悟しとくべきだな。)

 

…………仕方ない。そういう心づもりはしておかないと。

 

(それに、さ。魔法少女は夢と希望を振りまくんだろ?)

(……!!)

(アンタがどのくらいの覚悟でそれができるのか、アタシも興味があるよ。まあこの世界じゃあんまそういうことする機会なさそうだけどなー。)

 

まどかの宣言は、杏子にも好意的に受け取られたようだ。確か杏子も、魔法少女になった当時はそんなつもりで魔女と戦ってたと聞いている。それを正しいと肯定してくれることは、彼女にとっても悪いようには聞こえなかったようだ。

 

……後半の方もその通りだと思う。むしろこの世界は『希望漬け』だ。安全に暮らせるのが当たり前だと感じて生きている。それが特別なことなんだと頭では分かっているのかもしれないけど、それでもヒーローの存在を見ているとその辺モヤついてしまう。

 

少しの間の後。

 

(でもさ……私の努力台無しにしたのは……事実だよなあ?)

 

打って変わって、杏子が悪そうな顔、は見えないけど声をした。明らかに何かを企んでいる。

 

(それは……ホントにごめん……)

(悪く思ってんならさあ……)

 

杏子は一拍置いてこう言った。

 

(アンタの家族をアタシの里親にしてくれ!!!)

 

突然の発言に、皆あっけにとられる。

 

(えーと?)

(頼むよ!このままだとなんかどこの馬の骨とも知らねえ奴に引き取られそうなんだよ!なんかこう、いい感じに「元から知り合いでした~!!!」って感じでさ!なんとかなんない!?)

 

……そうか。杏子は後数ヵ月したらもう出所か。引き取り先は確かに問題だ。

そこへ真っ先に声をかけたのは勿論マミさんだ。嬉しそうに提案する。

 

(それじゃあ私の家に……!)

(それがさあ、ちゃんとした大人がいないとダメとか言ってるんだよアイツら!マミの家ってなぎさしかいないだろ!?多分拒否される……た、たとえばまどかの家とかどうだ!?なんか母さんが結構偉いんだってな!)

(ふええ!?と、突然言われるのは困るよ、ちゃんとパパやママとお話ししないと……で、でも魔法少女の事抜きに誤魔化せば、何とかなる……かな?)

(あと、アタシの親の件が表にバレると嫌だからある程度公安とパイプがないと無理だって!)

(えええ!?さ、さすがにうちにはそんなの無いよ!)

(じゃ、じゃあさやかは!?)

(私んとこだってただの一般家庭だよ!パパは警察もヒーローも関係ない仕事してるし……)

(じゃあほむら!)

(わ、私の親は海外で、ずっと一人暮らしよ。)

(うぐぐ……くっそおぉ、どうすりゃいいんだ……)

 

魔法少女仲間は物理的にも近くにいて欲しい。変なところに引き取られて、電車で移動しないと会えない場所に住まれたら困る。本当にどうすればいいんだろう。

 

(……いつまでに決めないといけないのかしら?)

(大体三か月以内。それまでにアタシが公安が納得できる希望先を示せなかったら強制的に里親を決めるって……)

(うーん……)

(……そもそも、私達の誰かが知り合いってことを向こうに明かすだけでも嫌よねえ。この世界でだけど、佐倉さんの親をあんな風にしちゃうらしいし。人が変わったとはいえ……ねえ。)

(信用できないよね……とくにまどかと繋がってるなんて知られたら、絶対個性に疑い掛けられるよ。)

(うん……私もそんなのと関わり持つのはちょっとためらっちゃうなあ……)

 

まどかにそこまで言わせるなんて中々無い。一応謝罪と賠償はすると言っているから好感度は最悪ではないけれど、それでもこれ以上近付きたくない。

 

(……私達以外で信頼できそうな人って誰か知ってるかしら?)

 

当然誰も知らないために、沈黙が流れた。

 

(誰も知らなさそうね……。まあ、そうよねえ。そんな特殊な人と都合よく知り合いな訳、無いわよね……)

(それ以前に、どうやって私達が杏子と知り合いと向こうに明かすかから考えないといけないわね。もともと杏子は知り合いを一切明かさないでここまで来ていたのよ。それで、私達に公安の怪しい人が来てないってことは、本当に私達の事を掴んでいないのでしょうね。)

(……考えてみるとよくバレてないわよね、私達。相手公安だよ?なんかすごい権力持ってそうじゃん。)

(うーん……世界改変の影響で、私達の付き合いがこの世界だと無いことになっているのかしら?……でも、私達改変後も何度も普通に会っていたわよね。)

(マミ、私だってアンタたちに会う時はバレないように色々気を遣ってたんだよ?)

(……ありがとう杏子ちゃん。私全然気づかなかったよ。)

(…………でも、これからは人前で堂々と会えるように、納得できる言い訳を考えないといけないわ。)

 

公安の監視が付きそうな杏子に、これからも前みたいに人目を避けて会うなんてのは現実的じゃない。

みんなが黙り込む。しばらくすると最初にさやかが口を開くが……

 

(逆に堂々として会うってのはどう!?「え?私達は昔からズッ友ですがなにか?知らなかったのはそっちの調査不足じゃないですかぁ~?」みたいな感じで!)

(納得してもらえるわけないでしょ……)

(……ぎゃ、逆に「みんなはここを出たときに最初に出来た友達です!」っていう感じで、杏子ちゃんの方から紹介してもらうのはどうかな!?)

(杏子にそんな友達作るオーラある……?)

(おい、どういうことだ……いや、まあ、改変前はそんな感じだったな私……)

(……二人とも、最初から「逆に」って頭につけてるのよね……)

(あはは……)

 

奇抜な事しか思いつかないほど、無理難題ということだ。私もどうすればいいのか思いつかない。

この世界で私達魔法少女は、力はあるけど地位は無い。目先の(ヴィラン)は何とか出来ても、社会はどうにも出来ないのだ。

 

(……一応矛盾が無いのは鹿目さんの案だけれど、それでも相当怪しまれるわよねえ。)

(……なあ。)

(どうしたの?)

(やっぱり私達のこと、思い切って打ち明けたら?動きづらすぎるだろ、このままだと。)

 

……たまに私も考えるけれど、やっぱりそれは怖いと思う。

杏子がそれを言うと、みんな黙りこくった。私みたいに悩んでいるのだと思う。

 

(……そんなに嫌なのか?ほら、世界改変のことだけ伝えずに魔法少女としての力だけ見せればいいじゃんか。不思議がられても「そういう個性です!」で済ませらんないか?まどか、検査されても大丈夫だったらしいし。)

(…………杏子。体育祭の後、まどかがどんな扱い受けてるか知ってる?)

(え?いや……アタシずっとこの施設にいたから何も。)

(『未来の魔法少女ヒーロー』ですって。)

(え……?まどか、表彰式で将来はヒーローとは決まってないって言ってたよな?なんでそうなるんだ?)

(あそこまで言ってもこの扱いなのよ……)

 

正直、この世界の住民はヒーローに脳をやられている人が多すぎる。「ヒーローになりたいなら悪いことしちゃだめだよねー!」という働きかけにより治安が良くなっている部分もあるけど、やっぱり害の方が多く感じてしまう。

 

(そこまで実害は出ていないけれど、校門前はマスコミがずっと張り付いててまどかが通ったらいつも捕まるわ。雄英にもまどかのインタビュー依頼が結構来たらしいの。そのどれもが「もし鹿目まどかがヒーローになったら?」とか「鹿目まどかの個性でどんな(ヴィラン)退治をするのか?」って感じなの。)

(え、ええー……)

 

思いっきりまどかの将来を決めつけてくる依頼内容に、杏子も呆れている。

 

(まるで強い個性があったらヒーローやるのが当然みたいな感じ。まどかが雄英生なのも拍車をかけてるわ。「普通科ってことはどうせヒーロー科受けたけど落ちたから滑り止めでそこにいるんだろ」って。あと、入学前に人質に取られた件もついでのように掘り返されてるし。)

(いやーあれマジで止めて欲しいよね。ホントうざい、迷惑!)

 

これに関しては、さやかに心の底から同意する。マスコミ関係はあまりにもうざったい。これから毎日登校の時には時間停止で校門を通り抜けようかを結構真剣に検討した。校内に突然姿を現したことを知られたら面倒だからやってないけど。

 

(そうよ。流石に一過性の状況……だとは思うけれど。でも、杏子含め私達5人の魔法少女としての姿が表に出たら……どうかしら?)

(……ヤバそうだな。捕まる前も野次馬がアタシの周りに集まったのを思い出すよ。)

(少なくとも一生事あるごとに言われるわよ。それで私たちがちょっとでも私欲を出したら「ヒーローみたいな個性持ってるのになんてワガママなんだ!?」ってなりそうじゃない?)

(あー、めっちゃありそう。)

(ありそうよねえ、なんだか嫌だわ。)

(うん……ちょっと、私も嫌だな……)

(な、なんかこの中でアタシが一番表に出すの抵抗ないみたいだな?まあアタシも今の話聞いてたらやめとくべきだってなったけど……)

 

……言われて気が付いた。

 

理屈上の問題もあるけれど、私達は魔法少女の事を表の人々に知られるのが『嫌』なんだ。

 

さっきから私は、魔法少女が表に出るリスクばかり考えていて、メリットというものを考えていない。考える気にもならなかった。もうバレているまどかすら、これ以上魔法少女の事が表に出るのを『嫌』と感じたのだ。マミさんとさやかも『嫌』に心の底から共感している。

 

聞いたことがある。魔法少女は、本能レベルでその姿を人々から隠すと。考えてみれば、隠す気が無いなら人間の二千年以上ある歴史上のどこかで魔法少女の事はバレるに決まっている。そうならないためには、最低条件として魔法少女自身に表舞台に立たない意志が必要だ。

思い返してみれば、私達魔法少女は、魔法少女の問題を魔法少女だけで解決しようとしてきた。魔法少女以外の手を借りようなんて話、殆ど出なかった。多分、そういう本能なのだろう。この世界でヒーローに魔法少女のことで「助けて」っていう機会も、きっとない。

 

こんなところで、私達は人間ではない『魔法少女』という存在なのだと思わされる。肉体の核がソウルジェムになっただけではなく、その意志の在り方さえ宇宙の寿命を延ばすためのものに変わってしまったのかもしれない。

 

今はまだこの程度で済んでいるけれど、将来はどうなるのだろう。どんどん人間離れした何かになるのだろうか。寿命を全うした魔法少女は聞いたことが無いから分からない。みんな短命だったから。この世界は戦わずにソウルジェムをほぼ無制限に浄化できるという理想的な世界だけど、それでもやっぱり私達の先行きは不透明だ。家族や親との離別は、普通の人のそれではないのだろうかとか、色々と不安はある。けど、これも今はどうしようもない話だ。

 

結局この後結論は出ず、この場は解散となった。でも、私達の事をなるべく隠し続けることに異論は出なかった。今の私に出来ることは、一刻も早くオール・フォー・ワンという害悪をこの世から消すことだけだ。




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