個性『魔法少女』   作:Assassss

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高評価、誤字報告、感想、ここ好き等いつもありがとうございます。

出て来るヒーローに関しては独自解釈が含まれます。まあいつものことですが……



読者の君は、まどかはどのヒーロー事務所に行くと思うかな?予想してみよう!
(これを感想欄に募集するとハーメルンの規約違反になるらしく、前回は書けなかった)


先生って大変だね……

 

今日はいよいよ職場体験の日。私は何とかして学校をズル休みしようとするほむらちゃんを宥めて、A組のみんなと一緒に駅の構内で相澤先生の説明を受けていました。

思えば、職場体験なんて昔小学生の時に一度やったきりです。中身は全然別モノなんでしょうけれど、なんだか遠足に行くようなワクワクを感じます。

 

「全員コスチューム持ったな?本来じゃ公共の場じゃ着用禁止の身だ。落としたりするなよ?」

「まどかちゃんはいーなー、個性のお陰でヒーローコスチューム要らずだもんね!」

「芦戸、説明の途中だ、喋るな。」

「はい……。」

「くれぐれも、体験先のヒーローに失礼の無いように。じゃあ行け。」

「「「はい!」」」

 

というわけで解散して、ここから電車に乗って各々の職場体験先に行くことになっている……のですけど、気になることがあります。

 

飯田君、やっぱり暗いです。お兄さん、やっぱり再起不能みたいで……あんなにお兄さんのことを誇っていただけに、見ていてとっても心配になります。

 

お茶子ちゃんと緑谷君もそれを感じ取ったようで、彼に駆け寄ります。

 

「飯田君!」

 

飯田君は、何も言わずに立ち止まります。

 

「本当にどうしようもなくなったら言ってね。友達だろ?」

「うん、うん!」

「わ、わたしも大したこと言えないけど、辛くなったら友達に相談してね!」

 

私含め3人は真剣に声を掛けます。それに対し、飯田君は硬い表情をこちらに向けました。

 

「……ああ。」

 

それだけ言って、彼は行ってしまいました。やっぱり、見ていて不安になります。もしここにキュゥべえがいたら、迷わず契約しちゃいそうな雰囲気です。

 

「飯田君、大丈夫かなあ……私心配だよ。」

「……これ以上、正直かける言葉が見つからなかった、僕。」

「私、身近な人がそんな目にあった経験ないし、励ましをしようにも説得力が無いんよね……」

「…………まあ職場体験先のヒーローが見守ってくれる、よね?」

「……今は、そう信じるしかないかな……。あ、そろそろ行かないと。じゃあね、二人とも。」

 

そうして、私とお茶子ちゃんと緑谷君はスッキリしないまま別れました。

 

……もう私にできることはありませんよね。気持ちを切り替えるしかありません……。

 

 

電車に30分ほど揺られ、降りた先は都心部。そこから5分程歩くと、お目当てのヒーロー事務所に辿り着きます。流石、人気のヒーローはお金持ちなんですね。ここ、地価がすごく高そう……。

 

その事務所の扉を開け、私はとりあえず挨拶をします。

 

「し、失礼しま~す。ええと」

「服を綺麗に心もピカピカ!洗濯ヒーローウォッシュッシュ!ワシャシャシャ!!!」

 

目の前に、洗濯機から手足が生えたような人が、大仰なジェスチャーとともに出迎えてくれました。

この人が私の職場体験先のヒーロー、「洗濯ヒーローウォッシュ」です。子供達に大人気のヒーローで、ウォッシュの歌を歌えない子供は殆どいないと言われるほど。元の世界で言うと、教育テレビの歌のお兄さん……みたいな感じなのでしょうか?

 

多分、今の挨拶ってファンサービスみたいな感じだよね。職場体験で来てくれたからファンだと思われたのかも?ごめんなさいウォッシュさん、私子供の頃にウォッシュのことを知っていたわけじゃないんです。この世界の私くらいの年齢の人なら「昔テレビでずっと見てたウォッシュさんが現実にいる!すごい!」ってなるのかもしれないけれど、私はちょっと反応に困っちゃう。

…………なんてこと言っても仕方がないので、とりあえず普通に挨拶を返します。

 

「……ど、どうも!鹿目まどかです。今日からよろしくおねがいします!」

「いやあ、良く来てくれましたよ。ではまず事務所の中を案内させてもらいますね。」

 

今の私結構ノリが悪い反応をしちゃったのに普通にスルーしてくれました。言ってて気まずくなってしまうかもと思ったので、ありがたいです。

 

さてそのウォッシュさんは、普通のお仕事場のようなオフィスに案内してくれました。

 

「みなさん、少しいいですか?職場体験でお呼びした鹿目さんが来てくださいましたので、挨拶をお願いします。」

「か、鹿目まどかです!お声がけしていただきありがとうございます!皆さんこれからよろしくお願いします!」

 

中にはサイドキックらしいヒーローの人や事務の人達がいて、「ようこそ!」と挨拶してくれました。普通に歓迎ムードで良かったです。それを経て、ウォッシュさんはヒーローコスチュームを脱ぎました。

……ふ、普通の男の人が中から出てきました。なんだろう、すごく失礼な感想だけれど、ちょっと残念に感じちゃったなあ……。

 

その後部屋にあるデスクの一つに座らされ、この職場体験の説明が始まりました。

 

「さて、改めて職場体験の誘いに乗ってくれてありがとう、鹿目さん。ヒーロー科でもないから正直ダメもとでのお誘いだったんですけど、まさか本当に来ていただけるとは思いませんでしたよ。」

「あはは、こちらこそありがとうございます……。あの、どうして私を?やっぱり個性が気になるからでしょうか?」

 

改めて考えてみると、ヒーローはとても忙しい職業なのにわざわざ私に時間を割いてくれるなんて、とても光栄なことだと思います。そうすると、ますます普通科の私を勧誘した理由が気になります。

もともとウォッシュさんが職場体験をしないヒーローだというならともかく、いつも指名をするようなヒーローだとしたら私がいなかったら指名されていたかもしれない人にちょっと申し訳なくなります。

 

「ええ、確かに。個性に興味があるのは事実です。しかしそれだけでお呼びしたわけではないですよ。鹿目さんは、将来その個性を使ってどのような職業に就きたいか考えはありますか?」

 

私の将来……うーん、正直全然わかんないや。魔法少女になる前は大学受験して会社でママみたいにOLにでもなるのかなあって思っていたくらいで、それも別に強い想いっていうものじゃないしなあ。

……というか、個性を使っての職業?

 

「あの、個性を使っての職業って何ですか?」

 

私が見る限り、個性に関係ない職業に就いている人もいっぱいいるように見えます。この世界のママが多分そうです。

 

「特別な意味は無いですよ。君のように強力な個性があってヒーロー志望でないなら、それを活かした職業に就くのがまあ普通だろう、と言うことです。個性相性が有利だと採用されやすいですから。例えば嗅覚が優れる個性の人は警察官になりやすい、とか。」

 

ああ、なるほど。マミさんが『リボン』を活かした職に就くために資格が欲しいと言っていたのを覚えています。そんな感じのお話ですね。

 

……え、でも、魔法少女の力を活かした職業って何……?魔法少女はそれぞれ固有魔法を持つけれど、それとは別に魔女と戦うための戦闘能力を大抵の子は持っていました。戦う力……あれれ、魔法少女が向いている職業ってヒーローなんじゃ……?

でもそもそも、私自身の性格はヒーローに向いていないという自覚があります。

 

「……私の個性を活かしたお仕事……ってなんなんでしょう……?」

「ありゃ、あんまり考えていない感じですか。うーんと、確か学校から送られてきた資料だと、個性名を正式に『魔法少女』にしたんですよね。体育祭の映像も勿論見ましたけれど、本当に多彩なことができるように見えます。学校から送られてきた資料によると『不明点は多いが、身体強化、耐久力増加、弓矢の創造、桃色のエネルギーを扱う……(中略)……等の複合であると考えられ、さらにまだ見ぬ性質が秘められている可能性も考慮すべきである。』なんて、なかなかすごいことが書いてありますよ。」

 

……改めて言われると、魔法少女って何ができて何ができないんだろう?自分でもよく分かりません。何でもできるわけじゃない……と思うんですけど……。

 

「そうなんですよね、いやー、本当にこんな強い個性が出てラッキーですよー。」

「正直言って、僕もちょっとうらやましいです。多分肉体労働が絡む仕事なら大抵で有利になれると思います。勿論許可を得たうえでの話ですけれどね。」

「そ、それは嬉しいです。」

「まあ、それとは別にですね。僕たちとしては、体育祭の映像から鹿目さんが将来こういう職に就くんじゃないかって予想……というか僕のおすすめの職業があるんです。」

「というと……?」

「詳しいことは別室に移動してから説明します。その前に個性の性能等に関して色々と調べさせてください。」

 

そうして私は別室のトレーニングルームのような部屋に案内されました。一体何をするんでしょう……?

 

 

「私の思いを乗せて、貫いて!シューティングスター!」

 

冷静になってみると結構恥ずかしいセリフを大声で叫びながら、私は魔法少女の姿で矢を真上に打ち上げます。それは空中で不思議な模様になり、あたりに綺麗な光の粒を降らせます。まあ、体育祭のとは違って当たっても痛くないようにしたものですけどね。

 

「おおおお!」

「き、きれー……!」

「まどかおねーちゃーん!」

 

目の前にいるのは、確か棲奈御小学校の子供たちです。この子たちは、元の世界におけるヒーローショーと同じような興奮の目で私を見ています。

 

これが、今日の職場体験での私の役割。元は「上手に洗濯できるかな?ヒーローウォッシュと服も心もみんなでウォッシュ!」という、手洗いうがいなどの子供向け啓蒙活動イベント……でした。

元々私は前面へ出る予定はなかったんです。ウォッシュさんが中心となってのショーで、私は個性を使ってちょっとしたお手伝いをして、最後にちょっと顔を出そうか、という感じでした。

でも、中盤で私の姿が見られちゃったみたいなんです。子供たちの一人が「あ!まどかちゃんだー!」って指さして叫びました。そしたらウォッシュさんより私の方に目が行っちゃって、「魔法見せて~!」とか言われて。ショーの途中だったので、私が「ウォッシュさんの言うこと聞かないとダメだよ~?」って注意したんですけど、ウォッシュさんは逆に「せっかくの機会ですし、早いですけど鹿目さんも前に出ましょうか!」とアドリブを利かせたんです。

 

そして、私が体育祭の時みたいにちょっとかっこつけながら魔法を使ってみたのが、今の状況。セリフは相変わらず恥ずかしいけれど、目の前の子供たちは満面の笑みです。

 

「ほらみんな、最後にご挨拶して!」

「ウォッシュー!まどかちゃん!ありがとー!」

 

最後に先生と子供たちがそう言って、このショーは終わりました。元の世界のヒーローショーをしていた人、こんな気持ちだったのかななんて思います。

……でも、私個性使って目立っただけで何かしたわけじゃないなあ、というもやもやを抱えつつも私は帰る子供たちに笑顔を作って手を振りました。

この後もイベントは続くので、私たちはその準備をします。

 

「いやあ、お疲れ様です。鹿目さん。助かりましたよ。」

「鹿目さん、これどうぞ、差し入れです。」

 

ウォッシュさんとサイドキックさんが私を労ってくれました。差し入れの飲み物もいただきつつ、私は作業と並行して疑問を投げかけます。

 

「ありがとうございます。……でも、正直私何にもしていないですよね……?」

「いえいえ、そこに居るだけでもありがたかったですよ。体育祭での姿は子供たちの憧れの的になっているって事前調査はしてたんですが、まさにその通りでしたね。鹿目さんを呼んだ甲斐があるというものです。もし鹿目さんがヒーロー志望だったら、むしろ将来人気を取られることを恐れたかもしれません。」

 

まあ冗談ッシュ!なんておどけるウォッシュさんですが、私にはよくわかりません。つまり今回、私がカッコよかったから呼んだって事なんでしょうか?でも、それなら他にも人気のヒーローとかいると思うんですけれど……

 

「えーと、それならヒーローの皆さんも人気なのでは……?」

「今の時代、子供たちに無条件で憧れられる人というのは本当に貴重なんですよ。プロヒーローは確かに憧れられるものですが、彼らは多忙なのでこのような催しには中々お呼びできません。鹿目さん、僕が君を呼んだ背景として、身近な大人を尊敬できない子供たちが増えているというのがあるんですよ。」

 

初耳です。私は小学校の頃は個性がない社会にいたので、多分私には想像もつかない理由なのだと思います。

ただそれをそのまま言うわけにはいかないので、違和感の無い内容にしてから返答します。うう、時々こんな風に頭を使わないといけない場面が地味に多くて、いつかミスするんじゃないかと不安です。……というか、前に杏子ちゃんのことで口を滑らせてしまっていますね、私。思い返すとまた申し訳なさがこみ上げます。

 

「そうなんですか?……うーん、私の子供の頃はそんなことは無かった気がするんですが……」

「これは最近の傾向の話なんですけれどね。個性は世代を経るごとに強く複雑になるという話を聞いたことはありますか?」

「まあ、ちょっと聞いたことがあります。個性が遺伝するせいでそうなるって……。」

 

ウォッシュさんは、いつもの子供相手に見せる明るさを引っ込め話し始めます。

 

「まあ世間では個性特異点なんて話が陰謀論として語られますけれど、僕らのようなヒーローや教育者……要は子供に接する職業ですね。そんな僕らは、個性特異点以前に困っていることがあるんです。子供たちの個性が強くて、やんちゃをなかなか止められないんですよ。個性の深化は、少なくとも昔より加速しています。」

「昔より……ですか?」

「ええ。単純計算でも指数関数的に強化……ああいや、例えば雑な例えですけど、例えば強さ1同士の個性の親を持つ子供の個性の強さは足して2だけど、その子供世代のその子供の個性の強さは2+2=4です。つまり親世代よりも強化度合いが大きいんですね。そしてその子供世代はさらに強くなっていく……ということです。」

 

うーん……私数学とかは苦手だけど、その話を聞くと確かに大変そうな気がするなあ……。

 

「勿論現実の個性は単純じゃないですよ?でも、時々小学校の先生の方々のお話を聞くとですね、子供達の制御に困っているって人が多いんですよ。個性が強すぎて。下手したら教師よりも強い個性の子供がいるって場合もあって、そういう子供が個性でやんちゃしているのを物理的に止められないっていうパターンを時々聞きます。そしてそもそも先生だって法律を守らなければいけませんから、そう簡単に個性も使えません。子供同士の喧嘩が先生方の力だとどうにもならなくなってしまって、小中学校からのヒーロー出動要請に至る、なんてのが年々増加の一途なんです。そしてそんな先生を見た子供たちは、先生を『力のない相手』と見なしてしまう。端的に言えば舐められるということです。似たような状況が家庭での親にも時々あります。つまり、子供たちが素直に言うことを聞く相手がヒーローしかないという問題ですね。」

 

この世界の学校の先生や親って大変なんだなあ。みんなが強い力を持っているっていうのも考え物ですね……。

もし元の世界で魔女が居なくなったら、魔法少女はそんな風になってしまうのかな……と思います。

……そもそも私たち、元の世界でも法律とかあんまり守っていなかった、というか気にしてなかったのですから、その子供たちのことを悪く言えません。

 

「それで、鹿目さんの個性が輝くわけですよ。」

「……え?」

 

ま、まさか力で抑えて欲しいということなのでしょうか?子供相手にちょっとやり過ぎじゃないかなあ……

と思ったのですが、続くウォッシュさんの話によるとそう単純な話ではなく、そして力というものがどうしても必要になることが分かりました。

 

「つまり、子供たちが話を聞いてくれる存在というわけです。要は、やんちゃしている子供達も相手にしてくれるということですね。さっきの棲奈御(すなお)小学校の子供たちが君に向けていた感情は、まぎれもなく憧れだったでしょう?そんな君の言葉なら、彼らの心にも響くということです。」

「う~ん、それって結局力で抑えているだけじゃあ……」

「力で抑えられるというだけでなかなか貴重なんですよ。勿論僕たちヒーローが負けるなんてことはありませんが、個性の訓練をしていない大人となるとどうしても不安な場合もあります。そしてさらに、君はその『魔法少女』という姿で子供たちに好かれている。そんな君なら、将来子供を相手にする職業……つまり教師やカウンセラーなどですね。そんな職業に就いてほしいなと僕らは思うわけです。本当に需要が大きい話なんですよ。流石に将来的にそんな場面での個性利用は徐々に解禁されていくと思いたいですが……それでもやっぱり僕らの界隈の人間は不安に思っています。鹿目さん、将来そんな職業はいかがですか?僕らのような、加減を知らず個性を振り回してしまう子供たちを相手にする業界は、鹿目さんを大いに歓迎しますよ。ついでにお給料も沢山出ることでしょう!」

「で、でもさっきの子供たちは私がいなくても割といい子でしたよ……?」

「まあ、さっきの棲奈御(すなお)小学校の子供たちはいい子たちだって評判です。でも、次の市立伊喜利(イキり)小学校の子供たちはそうは行かないでしょうね。後10分もしたら来るはずですよ。」

 

このイベントは前後半に分かれていて、それぞれ別の小学校の子供たちが来る予定です。前半は問題なく終わったけれど、後半に来る子たちはそんなに大変なのかなあ……?

 

と思いつつ、後半を迎えてみると。

 

「あ!生ヒーロー!すっげ!」

「体育祭にいた魔法少女もいるわよー!」

「こら、君たちヒーローの皆さんにご挨拶を!ステージに上がっちゃいけません!」

「ねーねー!その弓ちょうだい!」

「俺の方が強いぜ!俺の個性で魔法少女と勝負!」

「ウォッシュの洗濯機の中にはいってみよーぜ!」

「おい誰かスカート捲って来いよ!」

「あああああもう、頼むから言うことを聞いてくれ!!!」

 

あー……これは確かに大変です。子供たち、上がっちゃいけないステージに平然と上がって好き勝手遊んでいます。担任の先生は止めようとしていますけど、全然言うことを聞きません。これが学級崩壊っていうものなんでしょうか?

 

「というわけで鹿目さん。この子供たちが伊喜利(イキり)小学校の皆さんです。」

「な、なるほど……大変ですね……」

 

すこし呆然としながら子供たちがやんちゃしてる光景を見ていると、担任の先生が私とウォッシュさんの所に来ました。……顔が物凄く申し訳なさそうです。あと疲れがすごく出ています。お休みした方がいいんじゃないかなあ……

 

「す、すみませんウォッシュさん!私の指導が行き渡らないばかりにとんだご迷惑を!」

「いえいえ、この状況は承知のうえで僕は呼んだのですから気にしないでください。」

「あ、あはは……本当に大変そうですね、先生って……。」

「ん?こちらの方は……え、雄英体育祭の!?ど、どうしてここに!?」

「彼女は、職場体験という形で僕が呼んだんですよ。」

「はい、鹿目まどかです。本日はよろしくお願いします。」

 

とりあえずお辞儀をすると、この先生は感動したような表情になりました。

 

「うう、そんな強い個性を持っておきながらこんなに礼儀正しいなんて……きっと鹿目さんの学校の先生方は素晴らしい教育者だったに違いない。それに比べて私はなんて情けない……」

「い、いや、そんなこと無いと思いますよ……?そちらも十分頑張っているように思えます。」

 

冗談抜きで大変そうですね……この世界の学校の先生。誠実な先生に見えますし、その分元の世界の先生よりもずっと苦労されていそうです。元の世界なら子供たちに力負けなんてあり得ないし……。

 

「では前もって伝えたとおり、今回のイベントで僕は彼らに手洗いうがい、そして洗濯の大切さを伝えようと思います。」

「ほ、本当にお願いします!最近、子供たちの間で『何日間手を洗っていないのを隠せるかチャレンジ』なんてものが流行りだしてまして。もうすぐ来る夏にはノロウイルスや手足口病の流行も不安だというのに、このままでは本当に子供たちが感染してしまいます。どうか、彼らに手洗いうがいの大切さを……!」

「ええ!僕らヒーローにお任せください!」

 

う、うわあ……ちょっと洒落にならなそうな遊びです。これは本当に先生の言うことを聞くように言った方が良さそうですね。

 

私はステージの前に進み、大きな声で呼びかけることを頑張ります。いつもは大勢の前で声を出すなんて緊張するけれど、今はむしろ使命感の方が大きいです。

 

「み、みんなー!ちょっといいかな?」

「あ、オイ魔法少女が話しかけてんぞ!」

「ねーねー!変身は!?どんな姿になれるの!?」

「思ってたよりフツーだな!前見たアニメは『どうしたのかな☆』ってすごいイキってたぞ!」

「きっと『ぼんじんあぴーる』よ。あーあ、やだやだ。可愛い人の心は黒いってユーチューバーが言ってたわ。」

 

話を聞いてくれるのかすごく不安だなあ……私が小学生の頃は、やんちゃな男の子もいたけどここまで酷くなかったし、そういう子とは距離を置いていたからどう接すればいいのか分からない……。

 

「みんな、手洗いうがいはちゃんとしているの?」

「えー!?何ー!?!?」

 

多分聞こえているよね……やっぱりふざけた雰囲気が抜けません。

 

「ね、ねえ、だからその、ちゃんと手を洗ってるの!?」

「洗ってねえ!!!」

「俺、三日もバレなかったぜ!」

「俺四日!」

「うっわ、フケツー!」

「この手で前先生に迫ったら『ウワッ!?』ってビビっててめっちゃウケたギャハハハ!」

 

……え、えー……どうしよう、後で絶対病気になっちゃうよ。でも、どうしたら言うこと聞いてくれるんだろう?気の利いたことなんて私言えないよ……。

 

「えーっと、手はちゃんと洗わないとダメだよ?病気になっちゃうんだよ?」

「オイマー坊!お前言われてんぞ!」

「ハァ!?お前だって洗ってねーだろ!」

「ねーねー、何時間ごとに洗わないといけないの?何時間何分何秒?地球が何回回った時ー!?」

 

うう……やっぱり話を全然聞いてくれないよ。ど、どうしよう……。

 

「せ、先生の言うことをちゃんと聞いて」

「えーだって先生俺たちより弱いじゃん!」

「てゆーか、さっきからその上から目線何なの?」

「なんかウザくない?」

「わかる、個性が強いからってイキってるのよ!」

「つーか俺達の個性の方が強くね!?こっちは30人だぜ!」

「あ!それ思ってた!魔法少女でも私たちの方が強いっしょ!」

 

あ、あれ?なんだか風向きが悪い方へ変わったような……?子供たちの目つきがちょっと嫌な感じになってしまいました。

 

「見せてやろうぜ!俺たちの方が強いってことをさ!!!」

 

なんだかリーダー格?っぽい男の子がそう言うと、子供たちが一斉に個性を構えました。

 

「だ、ダメだ君達!!!彼女はヒーローじゃないんだぞ!鹿目さん逃げて!本気であなたを叩きのめそうとしている!!!」

 

担任の先生がそういうけれど、子供たちは全く聞き入れる様子がありません。

 

さすがに……これは個性を使って止めた方がいいですよね?私は目線を子供たちから外さずにウォッシュさんに確認を取ります。

 

「あのー、ウォッシュさん……」

「す、すいません鹿目さん。僕の想定だと流石にここまでとは思ってなかったんです。下がっててください、今僕が対処を」

「ちょっとだけ個性を使って迎撃してもいいですか?さすがにこのまま暴れちゃうとまわりに被害が出そうですし……」

「へ?いや、そんな、下がって」

 

そうこうしているうちに、子供の一人がついに個性で攻撃してしまいます。

 

「俺の最強の個性『頭髪槍』だ!食らえ!」

 

髪の毛が槍の形になって、力を溜めたかと思うと私に向けて発射されました。まるで弓を打たれたかのような感じです。仕方ないので咄嗟に魔法で弓矢を出して迎撃しました。

 

「ギャハハ命中!!!前に打った時は先生全力で避けててマジで面白かった……って、あ、あれ?」

 

矢と槍が相殺する形になったのですが、その際結構大きな爆発が起きました。

……こ、これ、当たったら本当にマズいやつなんじゃ?多分人に命中したら貫通してしまうと思います。スピードも本物の矢みたいでした。この子、このままだと本当に傷害事件を起こしてしまうかも。これはきつく言ってでも叱らないといけません。

……でも私、今まで声を荒げて他人にお説教なんて経験ないよ、どうしたらいいんだろう……。昔から怒鳴られたりするとびくってなってしまう私には、無理難題です。

 

で、でもとりあえず今のは本当にやっちゃいけないことを今の男の子に伝えないと。……って、あれ?先ほどと打って変わってなんだか動揺しています。どうしたんだろう?

……ともかく、今は伝えるべきことを伝えないと。

 

「ね、ねえ君、今のは本当に」

「スーの個性が通じてねえ!?」

「前に来てたヒーローだってビビってたんだぞ!?」

「いつの間に武器出したんだよ、さっきまで持ってなかっただろ!?」

「なにか事前に仕組んでたのよ!みんなで一斉にかかれば倒せるわ!」

 

私の声よりも子供たちの声の方が全然大きくて、やっぱりうまくいきません。こういう場面での経験が全然ない私は、下手な手を打って事態を悪化させてしまっているのではと不安になってしまいます。

 

そして子供たちに反省してくれる空気は全然なくて、なぜか怯えて私を一斉に攻撃し始めてしまいました。

 

「サイコカッター!」

「サウンドプレス!」

「ドラゴンネイル!」

「スターラッシュ!」

 

音の壁とか星の弾とかが色々飛んできました……とりあえず弓で全部迎撃します。手を大きな動物の爪にして襲い掛かってくる子もいたので、腕ごとつかんで怪我をさせないように地面に座らせました。あと、コントロールが出来ずに明後日の方向に行ってしまう攻撃もあったのでそれも迎撃しておきます。攻撃が落ち着いたあと周囲を見渡しましたが、周囲には大した被害もなさそうでほっとしました。

 

それにしても、どれもこれもさっきのに負けず劣らずの威力です。私が相手だったからいいものの、普通の人が打たれたら絶対怪我してしまうと思います。

この子たちが先生の言うことを聞かなくなるのもわかります。こんなに色々できるんじゃあ、立場上個性を使わない、使えないであろう大人を舐めてしまう、ということなのでしょう。改めて、本当にこの世界の小学校の先生って大変です。

 

「ウ……嘘だろ!?全部撃ち落されたぞ!俺の『サイコカッター』は木の板すら切り飛ばせるってのに!」

「私の音の圧はどんな防御も貫通するのに……!」

「僕の竜の手、前に(ヴィラン)にぶっぱなした時は普通に通用したってのに……」

「あの数の星をなんで撃ち落せるんだよ!?というかさっき何本同時に矢を打ってた!?数え切れなかったぞ……!?」

 

子供たちがすごく動揺しています。そ、そんなに落ち込むことかな?うーん、まともに個性を使って迎撃されたことが初めてだったのかもしれません。まあ、この程度なら普通のヒーローでも大体できるとは思いますけれど……。

 

ともかく、こんなことは二度としないようにこの子たちに言い聞かせないといけませんね。私はステージから降りて、この子たちの前に座って目線を合わせて話し始めます。

 

「ねえ君たち、今のは本当に二度とやっちゃだめだよ?もし怪我でもさせたら大変なことになっちゃう。場合によっては警察のお世話になるかもしれないし……」

「……いや、その、なんで俺の個性が通じないんだよ」

「通じないとかじゃなくて、今は個性を人に向けちゃだめだよってお話をしているの。パパやママ、友達を傷つけて、もし死なせちゃったり、そうでなくても一生残る怪我をさせちゃったらどうするの?一生後悔するでしょ?そうでなくても、怪我を治すためのお金を沢山請求されるかもしれないし……」

「…………」

 

……黙っちゃいました。私のお話、聞いてくれているのかな?ここまでやんちゃな子と正面から接したことなんてないので、説得の仕方もわからないのです。今日は分からないこと尽くしで本当に不安になってしまいます。

 

ちらりとウォッシュさんと担任の先生を見てみると、なにやら私のことをすごい真剣な表情で見守っています。ど、どういう気持ちなんでしょう?ウォッシュさん、なんでこの状況で私に何も言わないの?正直、勝手に事を進めていいのかなって不安に思いながら、私はこの子たちとお話しているのだけれど……

 

「な、なんで僕たちが弱い大人の言うことを聞かなきゃいけないんだよぉ!」

 

目の前の男の子が叫びました。なんだか怯えています。個性を構えているけれど、発動する様子はありません。うーん、まだ私の言いたいことが伝わっていないみたい……

 

「なんでって……」

「僕は前に、逃げてる(ヴィラン)に偶然出会ったことがあった。その時、僕の強い個性でそいつを叩きのめせたんだ!ヒーローにも褒められたんだぞ!『俺ですら手間取った相手を一撃で!君すごいね!』って!だ、だから僕は将来強いヒーローになるために個性を練習しようとしたら、あの先生は『危ないからそんなことしちゃダメ』とか言いやがったんだ!なんでだよ!僕より絶対個性弱いだろ!なんで言うこと聞かなきゃいけないんだよ!」

 

この子の場合は運よく(ヴィラン)を個性で撃退できちゃったから、それで個性を使うことはなんでもいいこと!みたいに考えるようになっちゃったのかな?ヒーローが褒めたのが逆効果になっちゃってるみたい……

 

「ええと、その時は倒せたかもしれないけど、もし運悪く強い(ヴィラン)に当たっちゃってたら大変だよ?何されるかわかんないし……」

「しょ、将来なら、頑張ればお前くらい強くなれるだろ!そうすれば僕に敵う(ヴィラン)なんて」

「えー?私でも敵わないまj、あいや(てき)、ええとつまり(ヴィラン)だっているし……」

「……へ?お前でも勝てない?」

 

私は、元の世界の魔女のことを思い出していました。5人でチームを組んでいたころのことを思い出していました。チームだったから安定していたけれど、一人だととても足がすくんでしまうような相手ばっかりでした。私は、決して無敵の存在じゃありません。

この世界に魔女は多分いないのでこの話はちょっと嘘になっちゃうけれど、脚色ということで、このくらいはいいですよね?探せば魔女くらい強い(ヴィラン)だって普通にいるはずです。

 

「い、いや、流石にそんなに強い奴多分いても日本に一人とか」

「うーん、ヒーローをやっていれば一生に一度くらいは出会うんじゃないかなあ……そういう相手。」

「へ、へえ?会ったことあるのかよ?」

「私が知っているのは……地面から触手を出してくるま……(ヴィラン)とか?」

「し、知ってるよ、異形型(ヴィラン)って奴だろ?そのくらいなら僕でも」

「いや、それだけじゃないよ。なんかこのくらいの大きさの蝶々、いや蛾かも?みたいなのを沢山生み出していて、それがまとわりついてくるの。」

 

私がその大きさを手で示すと、目の前の男の子は少しひるみました。私も初めて見たときはすごく怖かったです。

 

「む、虫なら俺の炎の個性で焼き払ってやるよ!」

「後、その蝶々って触手に変化してたっけ?そうしてマ、あいや、ヒーローを拘束してたっけかな。それにそのま、(ヴィラン)自身も羽が生えてて空を飛んでたよ。大きさも、確か10m以上あるから見た目がすごい威圧感があるし……。あっそうだ、見た目も人間離れしていて、どんなふうに動くかのかすごく分かりづらかったなあ。そんなのに、君一人で本当に相手にできる?」

 

かなり前に見た魔女ですが、私が初めて出会った相手なので比較的鮮明にその時のことを覚えています。

 

子供たちはすっかり怯えて何も言わなくなってしまいました。子供は想像力が豊かだと聞きますけれど、私が表現した存在をすごくリアルに想像しちゃったのでしょうか?

 

「……」

「もし君がヒーローになるのだとしても、そういう相手と戦うならチームを組みたいでしょ?そんな時に、喧嘩になったら大変だよ。でも、今の君達みたいに先生に反抗ばっかりしたままだったら、きっとそういう時に困っちゃうと思うの。チームって、頑張って仲良くしようって思ってもトラブルになっちゃうこともあるし……でも、先生ならそういうことに詳しいんじゃないかな?ですよね、先生!」

 

ちょっと無理やりな流れですけど、私がそんな感じで担任の先生にバトンを渡すと「は、はい!」ってすごい感激しながら答えてくれました。す、すごく泣いているよ、この先生。

 

「だから、これからは先生の言うことに耳を傾けていこうね?魔法少女・鹿目まどかとの約束だよ?」

「わ、分かった……」

 

すこししょんぼりしながらも、子供たちは頷いてくれました。魔法少女なんて名乗ってみたけれど、すこしだけ怯えが取れた風になりました。よかった、この場は上手く収まったみたいです。

 

「ね、ねえ……」

「うん?」

「そんな怖いのが出たら、まどかちゃん、守ってくれる?」

 

この世界には多分もういないと思いますけれど、もし万が一魔女が現れたらその時は私たち魔法少女が倒します。ヒーローに対してすら譲れない、私たちの使命みたいなものですね。

 

「うん、もちろん!でもそういう悪いま、悪い人は悪い子のところに来るものだから、いい子にしないとダメだよ?」

「本当?ねえその、ええと、そうなら、手を握って……」

「握手してほしいの?なら、その前に君たちがやるべきことは何かわかるかな?」

「え?えーっと……」

「ウォッシュ!手をウォッシュすることだッシュ!」

 

あ、ここでウォッシュさんがついに口を開きました。

 

ステージに上がるウォッシュさん。コスチュームの洗濯機の蓋を開くと沢山の泡が現れて、子供たちの手にくっつきます。イベント用の特別性なのか、思わず私が目を奪われるほどキラキラしたもので、子供たちの視線も釘付けとなっていました。

私の出番はもう終わりかなと思って、ステージの裏に隠れようとウォッシュさんとすれ違うと。

 

「鹿目さん、ナイスです!子供たちの心を見事につかむ活躍、まさに魔法少女でしたね!」

 

と、サムズアップをしながら笑顔でそう言ってくれました。

 

この後はウォッシュさんが元の予定通り手を洗うことの大切さを子供たちに教えるショーが行われました。

終わり際に、手をきれいにした子供たちの手と一人ひとり握手しました。みんな穏やかにニコニコしていて、イベントが始まった時のギラギラした感じはなく、私は心を通わせられたかなって思えました。

帰るときには子供たちは比較的素直に担任の先生について行ったので、本当に安心しました。先生、みんな、これからもがんばってね!

 

 

イベントが終わり、私はウォッシュさんとそのサイドキックさんたちと一緒にお片づけを手伝っていました。

 

「いやあ、鹿目さん本日は大活躍でしたね!」

「あはは……あ、ありがとうございます。」

 

さっきのことを思い出すとちょっと恥ずかしくなりますけど、後悔はしていません。あのままだと大変な事故を起こしちゃいそうな子供たちでした。

あのまま、おとなしく先生のことを聞いてくれるようになってくれればいいのですけれど。

 

「その、すみません。なんか私が出しゃばっちゃって。」

「いえいえ。むしろあの場面は職場体験の子には荷が重いのではと不安になってましたよ。個性で攻撃を加えられたときは『あ、しまった!』って思っちゃったんですけれど、思った以上に上手く対応してくれたので、思わず見守ってしまいました。今思い返せば、あの場面は僕が個性を使って子供たちを止めるべきでしたね。判断が遅れ申し訳ないです。いくら鹿目さんが個性で頑丈とはいえやっぱり怪我の可能性はあったわけですし……。あ、そのことで鹿目さんの個性の不正使用なんてことにはならないのでご安心を。僕が許可を出していた扱いにしておきますから。」

「ありがとうございます。すみません何から何まで……。」

「槍で攻撃されたときは僕の介入が間に合わないんじゃないかって結構ヒヤってしたんですよ。でもあんなに冷静に対応するなんて、流石体育祭4位といったところでしょうか。多分僕より早く反応できていましたよ。基本的に僕は災害救助専門なんで戦闘能力はあんまり高くないんですけど、それでも人並み以上に鍛えているつもりだったのでちょっと悔しい気持ちもあります。耳にタコができるくらい言われているでしょうけれど、鹿目さんの個性は本当に万能なんですね。ヒーローになる気は本当にないんですか?」

「いやー、戦闘以外の部分が大変そうで……私にはちょっと荷が重いお仕事ですよ。」

「まあ……実際、華々しい活躍の裏には地道な努力が欠かせないですからね。僕もデビューしたての頃はヒーロー科で教えられていない書類仕事に戸惑い、すごく時間を取られたものです。鹿目さんはよく現実を見ていると思いますよ。」

 

ウォッシュさんが、ヒーローではなく仕事に疲れたおじさんに見えました。世知辛いお話ですね……地道なお仕事はヒーローであっても逃れられないなんて。

 

「……話は変わるんですが、鹿目さんよくあんな作り話思いつきましたねえ。」

「思いつく……ですか?」

「子供たちにしていた(ヴィラン)の話ですよ。なかなか独創的で、聞いていた僕も『うわあ、能力だけみても相手したくないなあ……』ってちょっと怖く感じられてしまうくらいでした。話し方もすごく実感がこもっていて、鹿目さんは話術も上手いんだなあって。元ネタとかモチーフとかあるんですか?」

「い、いやー、知っている(ヴィラン)の特徴をつなぎ合わせただけですよー……あ、あはは」

 

魔女の話、全然信じられていません……。個性という不思議な力があるこの世界でも、魔女は現実離れした相手なんですね。

 

片づけを続けていると、黒くて鋭いモノが落ちていることに気が付きました。あ、これ、子供の一人が個性で攻撃してきたときに打ち出していたものです。思い返してみても危ないなあ、あの場面。今までよく人を傷つけずにすんでいたものです。

そう考えると、あの子たちのことが、そして担任の先生の事が心配になってきます。

 

「あの子たち、大丈夫かなあ……」

「ん?どうしました?」

伊喜利(イキり)小学校の子たち、今日はおとなしくしてくれたけれど、今後は大丈夫かなあって。また荒れたりしないかなあって。」

「……正直、あの子たちが再びそうならないとは断言できません。今日のは……はっきり言って、鹿目さんが力を示してくれたおかげでおさまったという側面は大きいです。でも、考えてみてください。そもそも、個性関係なく子供が大人を倒すこと自体は可能です。例えば銃を使う、毒を食べ物に混ぜる、といった事で人は簡単に死んでしまいます。個性がない時代もそうでした。でも、そんな時代にあっても子供の尊敬を集める大人はいたはずです。僕が思うに、そういった人々は子供に他の面で尊敬を得ていたのだと思います。鹿目さんが示してくれたように、例えば人間関係を築く能力がその一例でしょう。」

「うーん、それでも私、不安です……」

「ここから先は、あの先生の手腕に掛かっています。まずはあの方を信じて任せてみましょうよ。僕も今後あの子たちがどうなるかは気になりますからね、すこし様子を見るつもりです。」

 

とっても気になるけれど、多分今回のような状況は頻発しているのでしょうね……。

私は子供が嫌いでも好きでもありません。ただ、今日みたいに私の力があの子たちの成長に役立つとしたらとっても嬉しいです。そういった意味では、子供たちを相手にする進路も一考に値すると思えます。

 

「しかしすみません。初日からこんなことになっちゃって。僕らの業界へのリクルートも兼ねて、最初だったのでもっと楽しい感じにしようかと思っていたのですが……」

「い、いえ。全然大丈夫ですよ。」

「明日以降は、普通にヒーローらしくパトロールを予定しています。街を歩くだけで、今日みたいな個性を使っての対処が必要なことは無いはずです。保須市というところに現地集合です。詳細は後でまた詳しく説明しますね。」

 

……そういえば、前にほむらちゃんから「せめて土日は一緒にいられるように体験先のヒーローにお願いしてほしいわ。」って言われていたような。ちょっとお願いしてみようかな。

 

「わかりました。……あ、そうだ!明日は土曜日ですよね?」

「そうですね。あれ、もしかして事前に聞いていた日程と違います?」

「あ、いえ、そう言うわけではなくて。えっと、休日じゃないですか。学校の授業が無いからって、私の友達が3人、一緒に来たがっているんですよ。職場体験を一緒にさせていただいてもいいでしょうか?」

「なるほど。僕自身はあんまり目をかけられないと思いますが、それでもいいならかまいませんよ。普通はあまりそういう許可は出せないんですけど、今日はちょっと迷惑をかけてしまいましたからね。パトロールくらいなら、サイドキックにも負担にはならないでしょう。僕からのサービスということで。」

「ありがとうございます!」

 

あっさりOKが出てホッとします。断られたら、場所だけ伝えてこっそりついてきてもらうなんて話になっていたので、そんな面倒なことにならなくて良かったです。

 

というわけで、明日からはほむらちゃん、さやかちゃん、マミさんとのパトロール。みんなで一緒に職場体験ができそうで、今から楽しみです!




読者のうち何割がこのヒーロー先を的中させたのか気になるのでアンケートにさせてもらいました。

・スー君
スピアーのスーからきている。

・話に出てきた魔女
薔薇園の魔女。しょっぱなから出てきた奴だけど、冷静に敵として見てもデカいし空飛ぶしヒーローでもチャート入りくらいはしてないと倒せなさそう。

・市立伊喜利小学校
要するに間瀬垣小学校の亜種

まどかの職場体験先の予想は当たった?

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