原作キャラに対して辛辣な評価があります。ご注意ください。
まどか視点は小説版っぽくしてみました。
4月になった。特に波乱もなく、私、まどか、さやかは中学3年生だ。
桜が満開の中、私は待ち合わせ場所に向かう。春の陽気に当てられてか、皆浮ついた様子だった。個性が存在するこの世界では、いわゆる無個性の人間から少しズレたような容姿を持つ人々がいるが、大体人間だ。
初めて彼らを見たときは正直馴染めるかと少し不安だったが、実際のところ、ものの考え方、感じ方は殆ど人間と同じだった。この世界では個性の見た目による差別、特に通称異形型と呼ばれる人々への扱いが問題になることもある。人間の認識能力は、個性がかかわらなければ元の世界のままなのだからそういった問題が起きるのは頭では分かるのだが……正直、私には彼らへの扱いを悪くすることに共感できない。魔法少女歴が長いせいだろう。魔女や使い魔、その振りまいていた絶望、悪意を見れば、人々は真のバケモノが何たるかを知ることができるのではないだろうか、とたまに思う。
そんな彼らも、私たちと同じように春の陽気に当てられ、幸せそうに歩いている。それを見て、私は同じ人間としか思えないのだ。
「あ、ほむらちゃーん!おっはよー!」
「おーっす、ほむら!」
まどかとさやかは先に来ていて、私に手を振っていた。私は軽く手を振り返しながら、合流した。まどかは相変わらずかわいらしいリボンをつけ、さやかは相変わらず元気が有り余っているようだ。
「……おはよう、まどか、さやか。」
まどかが中心となって、私達3人は満開の桜で彩られた校門を潜り抜けた。
「いやー私達もついに中学3年生ですなあ!」
「そうだね……進路どうしよう……」
「まどかぁ、こんないい日に受験のことを思い出させるなんてなんて残酷な……!」
美樹さやかは、かなりオーバーに落ち込みつつまどかの肩に手を置いていた。この3人の中で一番成績が悪いさやかには頭の痛い問題なのだろう。
「あ、ご、ごめんさやかちゃん!もっと明るいお話が良いよね!」
「そうだそうだ、こんなに桜が綺麗なのに!もっとテンション上げてけよ!」
そういうと、さやかは私とまどかの肩に腕を載せ、抱き寄せた。
「特にほむらー!今日ぐらいはクールぶらないでもっと明るくなりなよー!」
「そうかしら。これでも気分はいい方なのだけれど。天気が良くて、桜も咲いているわ。」
「それを、もっとこう、パーッて言えないのさ?」
「……パーッて、どういうことかしら?」
「うーん、そうだなあ……桜の花を手に持ちながら、『ほむほむパワー、100倍!』って言ってみるとかって痛あ!」
私は無言でさやかをひっぱたいた。……ほむほむパワーって何よ。
「あ、あはは……ほむらちゃんはクール系だから、そういうのは明るい通り越して変じゃないかなあ?」
「今日から中学3年生。クラス替えでしょ?イメチェンだよイメチェン!」
「お断りするわ。」
「えー……じゃあ清楚系とか?思い切ってパリピ系……もイケるか!?」
「なんでイメチェン前提なのよ。」
「親心だよ!このさやかちゃんのアドバイスを無下にするとは罰当たりだー!」
「……願望の押しつけじゃないかしら?」
「ムー!!!やっぱりほむらは生意気だ!そんなやつはこうしてやる!!!」
「ちょっ……」
さやかが私をくすぐりにかかってきた。……いや、別に、くすぐられて何かある訳じゃないけれど……なんというか、ここでさやか相手には笑いたくない。
「ほーれコチョコチョコチョ……ってあれ?反応が……あー!魔法で感覚切ったな!ずるーい!」
「どうしてそうなるのよ……」
この美樹さやかのノリは……正直よく分からない。別に不愉快ではないのだが……乗せられたら負けな気がするのだ。
「……でも、ほむらちゃん。このままだとやっぱり良くないよ。クラスの人も変わったし、もっとお友達作ろうよ?」
……またこの話か。私はまどかに悟られないようにため息をついた。
最近、まどかやさやか、時々マミさんも「もうちょっと人付き合いを見直して、友達作ろう?」という趣旨のことを言ってくるのだ。……けれど、私はまどかをはじめとした友達はいるし、人付き合いも普通にできていると思うのだけれど。それ以外の同級生の子も、まあ普通に接してくれているはず。
すくなくとも、大概のループ中でのさやかやマミさんのような態度は取られない。
私は、この世界を気に入っている。……もちろん、個性が存在することで発生するさまざまな問題はある。日本ではオールマイトのお陰で犯罪率が6%(改変前と同じぐらい)だけれど、海外だと20%ほどあるのが普通らしい。個性という能力を持て余していることが多く、それで犯罪が多くなるらしい。加えて、個性に起因する差別問題も多い。私もまどかも、将来それに起因する嫌な思いをするのだとは思う。
でも、この世界には魔女が、使い魔がいない。私達魔法少女は、戦いから解放され、普通の中学生として暮らしていけている。この前は、マミさんの合格祝いでみんなで旅行に行ったりも出来た。ループ中の私が聞いたら、あまりのお気楽具合に顔をしかめる話だ。戦いばかりの魔法少女時代には考えられなかったこと。もう私たちは、元の世界に戻そうなんて全く考えていない。
それに何より……まどかが隣に居て、ずっと見守れる。ループ中に嫌というほど見せられた、まどかの死や、魔女化は、おそらく起こらないだろうと思う。これだけで私はもう十分なのだけれど。
「またその話なのね、まどか。」
「あ、ご、ごめん、ほむらちゃん!気を悪くしたら」
「別に、怒っていないわ。」
「ほーらー!ほむら、そういうところだよ!」
「……どういうところよ?」
「ま、マジで分からないの……?本当に重症だなこりゃあ。ええい、こうなったら、このさやかちゃんが手取り足取り教えてあげるんだからね!」
「わ、私も、ほむらちゃんが友達出来るように頑張るから!」
しかし、他の2人にとってはそうではないらしい。まどかとさやかは私にどうなってほしいというのだろうか。まあ、まどかがせっかくしてくれることだし、私も付き合おう。
「……まあ、前向きに検討するわ。」
「「そういうところよ!(だよ!)」」
……二人して私を否定した。いったい何が問題だというのだろう。
◇
世界が変わって数ヵ月が経ちました。私たちは、個性というちょっと変わったものがある世界で楽しく暮らしています。慣れないことも多いけれど、元の世界とほとんどおんなじです。ママは相変わらずバリバリのキャリアウーマンで、パパのご飯はおいしくて、弟のタツヤは元気いっぱい。そうそう、最近タツヤにも「ライト・マテリアル」という……私の水色バージョンのような個性が発現しました。そのうち、家族でお祝いパーティをするそうです。
私は、一見するとごく普通の中学生に見えることでしょう。でも実は……少し前まで、魔法少女として、魔女や使い魔と呼ばれる存在を退治する活動をしていました。このことは、私達魔法少女5人の仲だけの秘密。もうこの世界にそんなものは存在していないらしくて、それに成り代わった
ほむらちゃん……最近私がとても心配しているお友達です。ほむらちゃんは、時間停止と時間遡行という、魔法少女としてのとても強力な力を持っています。その力で、なんどもなんども同じ時間を繰り返し、ワルプルギスの夜を倒し私を救うために頑張ってきたというのです。正直、今でも信じられない話です。ほむらちゃんが言うには、魔法少女として私がほむらちゃんを助けたことがあって、でもワルプルギスの夜と戦って死んでしまって、それから私を救うために時間を繰り返し始めたそうなんです。でも、私っていつもおどおどしてるし、どんくさいし……そんな私が、ほむらちゃんをそこまで頑張らせるなんて、とても信じられませんでした。
でも、ワルプルギスの夜と戦う時に、そのことが本当だと確信しました。私の持つ『因果』を矢に込めて、ワルプルギスの夜に放とうとしたとき、なんとなく感じたのです。たくさんの、数えきれない程の、私を救おうとして失敗してしまったほむらちゃんの意思を、その無念を。実際に何が起こったのかは分からないけれど、ほむらちゃんの想いは本物だって胸を張って言えます。だから、ほむらちゃんは私の大切な友達。ほむらちゃんは私を魔法少女にしてしまったことをとても悔やんでいるけれど、私にとっては破滅の運命から救ってくれた人。だから、私は今まで頑張ってくれたほむらちゃんに頑張って恩返しをしようと思っています。
……そのほむらちゃんですが、今のほむらちゃんは見ていてとても心配になります。ほむらちゃんは私の大切な友達だって胸を張って言えるけれど……ほむらちゃん、私と、魔法少女以外に友達を作るつもりが全くないみたいなのです。それに加えて、私達以外の子から、うっすら避けれらているというか、近寄りがたいイメージができてしまっているようなのです。さらに私に対する言動がちょっとその、特殊で。私に向かって「まどか、協力してほしいことがあったら何でも言いなさい。」とか、「まどか、あなたが私にとって一番大切なの。」って、素で言ってくるんです。ほむらちゃんが私のことをそんなに想ってくれているのはとっても嬉しいんだけど、他の人からは変な子に見られてしまってます。ほむらちゃんは全然気にしていないみたいですが……ちょっと心配してしまいます。
それにほむらちゃんは、その……人付き合いがちょっと下手です。初めて会ったときは、口数少ないクールな子だなって思ったけれど……どうも、口数が少ないというより、自分の考えを人に伝えたり、傷つけないようにするというのがとても苦手みたいなのです。しかも、話を聞く限りループ中は他の魔法少女と敵同士になることが多かったみたいで、嫌われることに慣れていると言っていました。そんな悲しい事情もあって、ほむらちゃんはこの状況を全く疑問に感じていないみたいなのです。でも友達が私達だけってとても寂しいと思うし……ほむらちゃんには、もっと友達がいる未来の方が、絶対幸せだと思うのです。
そこで、私には一つの考えがあります。それは、高校です。この見滝原中学では、ほむらちゃんに近寄りがたいイメージを持つ子が多くなってしまいました。ほむらちゃん、見た目はとてもきれいだから、すぐに彼女のうわさは広まってしまったみたいで……。でも、高校に入るときは、ほとんどがほむらちゃんと初対面のはず。その時がチャンスです。ほむらちゃんに人との付き合い方を改善してもらう……。これが、今私にできる恩返しの一つだと思っています。
……高校と言えば。
「えー、皆さんも3年ということで、本格的に将来を考えていく時期です。今から進路希望のプリントを配りますが……」
新しく担任となった先生が、プリントを片手に言います。
「みんな、大体ヒーロー科志望ですよねぇ~~~!」
「「「はぁ~い!」」」
そう、今年は私は高校受験。進路を決めないといけません。元の世界だったら将来何になろうかな……と悩む子が沢山いるのだと思いますが、この世界だと第一に「ヒーローになりたい」が来るみたい。
クラスのみんなは、当然のようにヒーローになりたがっています。個性を使って首を伸ばしたり体を光らせたりしながら、ノリノリで先生に対してそう返しました。
「うんうん、皆さんいい個性ですね!でも、校内では個性の発動は、原則禁止ですよ。」
……と言われつつも、みんなあんまりやめません。どうもテンションが上がっているみたいです。
ヒーロー……この世界であこがれの的になっている職業。個性を公共の場で使う許可を得て、悪い人を退治したり災害から人々を救い出す職業です。でも、それだけではありません。ヒーローは人々に安心を与えることが役割だそうです。そのために、コスチュームを着てアニメのキャラみたいな恰好をしたり、ファンサービスをして人々を喜ばせるヒーローが沢山います。本当に、改変前の世界におけるフィクションの『ヒーロー』がそのまま職業になった……そんな感じです。もちろん、ヒーローが生まれたのには歴史的な経緯があるみたいですけれど、私からすると奇異に見えます。
そう、魔法少女として戦っていた私達からの印象は、たぶんこの世界の人たち程よくありません。さやかちゃんとマミさんは、「いい年した大人が、わざわざあんなことやってて変なの。」程度ですけれど、ほむらちゃんと杏子ちゃんはあんまり……というか、結構「嫌い」寄りみたいです。杏子ちゃんは「命をかけた戦いの場にあんなふざけた格好をしたり、人のために力を使っているのがチョーうぜえ!」って言っていました。ほむらちゃんは……あんまり口に出さないけれど、ヒーローがいるとちょっと睨んだりします。
私は……どうでしょう。ヒーローのことは嫌いじゃないけれど、好きかと言われると、よく分かりません。前に、個性を使った強盗犯を捕まえようとするヒーローを見ましたけれど……なんというか、捕まえるより、周りの人に対してのアピールを重要視しているような感じでした。強盗を捕まえるときに、「いいか!?貴様がしていることは人々が汗水たらして働いた結晶を……」みたいなことを演説し、なかなか拘束しなかったのです。実際は、捕まえようとすればすぐ捕まえられたのかもしれませんが……夢が無い感じ方だとは思うけれど、その時は「そんなのどうでもいいから早く捕まえて!」って思っていました。……多分、こういう感じ方はこの世界では、普通じゃないんだと思います。その場にいる人たち……はっきり言って野次馬みたいな人たちでしたけれど、そのヒーローの言葉に湧きながらコールみたいなことをしていました。……魔女との戦いの経験のせいで、ちょっと面白味のない捉え方をするようになってしまったのかもしれません。
……でも、ヒーローは、今のところは私の憧れじゃないけれど、私の憧れに近いというか……上手く言えないけれど、そういうものを感じたのです。例えば、どんくさい私とは違って、決断や行動の速いまま。魔法を使っても、あんまり機敏に動けない私とは違って、踊るように戦えるマミさん。そして……強い意志で、何度も時間を繰り返したほむらちゃん。私が「ヒーロー」と言ったら、彼女たちが思い浮かびます。この世界のヒーローを見ていると……この人たちも、そんなダメな自分が嫌だったからヒーローになったんじゃないかと、ちょっと思います。
……そんなことを考えていると。
(まどか……やっぱり雄英志望に……するの?)
さやかちゃんがテレパシーで私に恐る恐る話しかけて来ました。
(うん……ここから一番近所だし、マミさんがいるから。)
と、私は返しました。……ここで、私は進路希望調査の紙を配られていたことを思い出し、急いで「雄英高校 普通科」と書いておきました。
(はぁ……そうか、まあそうだよねえ……ううぅ……)
さやかちゃんは結構嫌そうにしていますが、同時に結局は雄英高校にするしかないと思っているようでした。
雄英高校なのですが……よりにもよって、この世界のヒーローのトップの育成高校なのです。それはもう、私なんかがどんなに頑張っても入れないほどに入試は難しいです。偏差値79というとんでもない数字です。ただ、それはヒーロー科の話。雄英には普通に大学受験を目指す普通科もあって、マミさんはそこに行きました。ただ……その普通科も、ヒーロー科に落ちた人が併願して入ってくることも多いらしく、かなり難しくなっています。私は……このまま順調ならなんとかなるって担任の先生に言われてます。でもさやかちゃんは、ちょっと厳しいみたい。
(まどか。あなたがそこに行くなら、私もそこに行くわ。)
ほむらちゃん……もうちょっと自分の意思を持ってほしいなあ。私に何でもかんでも合わせる必要なんてないのに。もともと行きたい高校なんて無いのかもしれないけれど……。
(ほむらもか……腹をくくるしかないのかなあ。)
(さ、さやかちゃん!一緒に頑張ろうね!)
(うう……まどかにそう言われたらやるしかないのかなあ。)
そんなこんなで、私たちは雄英高校の普通科を一緒に志望することになりました。でも、私自身勉強が得意って程でもないし、魔法少女の力で頭が良くなったりしないかな……って、ちょっと思います。でも、そういうのはないみたい。ざんねん。
(……まどか。試験当日に私の時間停止が欲しくなったら)
さ、流石にそれは無いよほむらちゃん!?
◇
下校時刻になった。今日もいつも通り、私、まどか、さやかの3人で一緒に帰路に就く。
「あ゛ああ~~~……受験かあ。やだなあ……」
「ま、まあでも先生に頑張れば行けるかもって言われてたから。大丈夫だよ、きっと!」
「ほむら……お願いっ!」
さやかが私に向かって拝んできた。……まあ、時間停止だろう。
「マミさんの時みたいに、毎日時間止めて勉強時間作って!」
「……まあ、言うと思ったわ。でもあなた、止めた時間の中でもちゃんと勉強するのかしら?」
「ひ、ひどいー!?流石に受験生なんだからちゃんと勉強するさ!」
「……普段はちゃんと勉強しないのかしら?」
「あ、あはは……私もちょっとお願いしようかな。人生かかってるし……」
「わかったわ。さやか、まどかの時間に合わせることが、協力の条件よ。」
「あんた……まどかの頼みだとホントになんでも聞くね。」
「当然よ。それが私の人生だもの。」
「ほむら……それ聞く方は心にズシって、もうズシってくるのよ!せめて人前では止めなよ?」
最近経験したことだが、こういったストレートに考えていることを伝える言動はあまり良くないらしい。私に変な噂が立っているようだ。私は、長いループのうちに、学校社会での過ごし方を忘れてしまっているのでは、とよく指摘される。……私自身の評判はどうでもいいけれど、それでまどかなどに影響があるのは良くないと思う。最近はこういった言動は控えようとしている。……ちょっと不服だけれど、美樹さやかのこういったアドバイスは役に立つことが多い。
でも、ここにはまどかと、私の事情を知っているさやかと赤の他人である通行人しかいない。だから別にいいのではないのだろうか。
「その忠告は聞き入れておくわ。でもここには他の人はいないから問題ないのではないの?」
「……いや、そーだけどさ、それでももーちょっと、何とかならないの?」
「どういうことよ。」
「だからそういうとこ……はー、なんかもうツッコミは疲れた。今日はもう心の内がダダ洩れオブラート無しのほむらを眺めることにしまーす。」
「あ、あはは……でも、前よりは成長しているよ、ほむらちゃん!」
……そうなのだろうか。正直実感は全くない。でも、まどかがそう言ってくれるのだから嬉しい。
その時。
ドオォン!
「……ん?爆発?事故かな?」
音のする方を見ると、煙が上がっていた。……結構近い、というかすぐそこだ。直後、火災も発生した。
「えー、なんだろ?」
「ちょ、ちょっとさやかちゃん?危ないよ。」
さやかが能天気に、その方へ歩いていった。まどかもさやかについていく。……魔女の居ない世界とはいえ、もう少し危機感を持つべきだと思うけれど。私も好奇心が少し湧いたので、たまには平和特権で野次馬にでもなってみるかと付いて行くことにした。
「……なにあれ?ヘドロ人間?」
先に状況を確認したであろうさやかはそう言った。集まっていた野次馬の先には……
「……飲まれてたまるかあああああ!!!!!!」
ドロドロの姿の異形型?が、爆発をまき散らし火災を起こしていた。
……いや、よく見ると、2人いる。一人は流動的な体を持っていて、それがもう一人の男の子を覆っている。爆発は、その男の子が個性で抵抗して起こしているもののようだ。……関係ないが、その男の子、なかなかすごい形相である。
「えれぇ力!こりゃ大当たりだぜえ!この個性と力ならば、奴に報復できる!」
……発言内容から察するに、流動体の身体を持つ方は
まあ、ここは比較的都心部で、ヒーローが沢山いるから、待っていればすぐ解決するだろう。
「私、二車線以上じゃないとムリー!」
「爆炎系は我の苦手とするところ……」
「消火で手いっぱいだよ!」
「ベトベトでつかめねえし、いい"個性"の人質が抵抗してもがいてる!」
……しばらく解決しなさそうだ。近くにいるヒーローらしき人々がそんな風に喚いていた。どうも、運悪く対抗できる個性のヒーローが近辺にいないらしい。
………………イラッ。
「ほ、ほむらちゃん?顔が怖いよ?」
「え?ええ、何でもないわ。」
……必要以上にイライラしてしまったようだ。何故だろう……ヒーローを見ていると、妙に心がざわざわするというか、不愉快になるのだ。私の敵ではないのに。
「……まどか、さやか。ここにいたら邪魔になるわ。もう帰りましょう。」
あんまり、ここにいても良いことは無い気がする。なので、この場を去ろうとまどかとさやかを促した。
「……で、でもあの男の子、苦しそうだよ?私達の力で何とかできないかな。」
「その必要はないわ。見ず知らずの他人の為に、魔法少女の力を見せびらかすなんてデメリットが大きすぎるもの。」
……まどかは優しいから、魔法少女の力を使ってあげたいと思うのだろう。見ず知らずの相手であっても。……だけれど、どう考えてもここで魔法少女に変身してまで助ける理由なんてない。特にこんな人の目があるところでは。ヒーローが集まっているからと言って、のんきに動画を撮っている馬鹿までいる。まどかの魔法少女姿がネットに載ってしまったら目も当てられないだろう。
「ほーむーらー、いくら何でも冷たすぎない?」
「た、確かにそれは怖いけれど……例えばバレないようにとか、できないかな?」
……だが、他2人は異なる考えのようだ。まあ、この中で一番冷たいのが私だろうというの何となく自覚がある。でも……これ以上、私に、守るものを増やさせないで欲しいのだ。私は結局、まどかとの約束を守れなかった人間だ。だからせめて、今のまどかは、守り通してみせたいのだ。だから、他人を守る余裕なんてない。
私は、無言の拒否というものをしてみた。
「……」
「……じ、じゃあ、ほむらちゃんの時間停止で何とかならない?」
「え、ええ……」
まどかは諦めなかった。……確かに、一番バレにくい方法ではあると思う。けれど、ここは個性社会。どんなルートで私がやったことがバレるか分かったものでは……
「お、お願いほむらちゃん!助けてあげてよ!」
「ほむら……力があるのになんもしないなんて幻滅だぞ?」
まどかは懇願するような目をしていて、さやかは少し睨んできた。
……仕方ない。グリーフストーン稼ぎとして考えれば、リスクよりリターンがはるかに勝る、そういうことにしておこう。
私は時間停止して、そのあと銃で流動体
その時。
「馬鹿ヤローーー!止まれ!止まれ!」
突然の大声。見ると、緑色の髪をした男の子が
彼は何か話しているようなので、集中して聞いてみると。
「なんで、てめえが!」
「足が勝手に!なんでって、わかんないけど!君が、救けを求める顔してた!」
…………イライライラ。
彼は、魔法少女になったら特に早死にするタイプだろう。彼の個性は不明だが……見る限り、戦闘において有効なものは持っていなさそうだ。なのに、身の丈に合わず、『救けたい』という自分勝手な感情に従って飛び出した。それがどんな結果を生むのか、彼には分かっていないのだ。魔法少女でそれをやっていたら……いつかの美樹さやかのようにソウルジェムが濁りきるか、他の魔法少女に騙されるか、身の丈以上の魔女に『救けたい』という理由だけで挑んで自滅するか。ともかく、ろくな死に方をしないに違いない。現に……彼が飛び出して
そんなことを考えていると。
「君を諭しておいて……己が実践しないなんて!」
……いつの間にか、そこには大男がいた。……まさか、あれはオールマイト?実物で見ると、やはり迫力が違う。……発言内容的に、あの緑の男の子とは面識があるのだろうか?
「プロはいつだって、命懸け!!!」
オールマイトは拳を振りかぶった。とてつもないエネルギーが集まっているのを感じ、私は反射的に顔を腕でガードした。
「DETROIT SMASH!!!!!!」
オールマイトは、そんな掛け声とともに
「右手一本で、天気が変わっちまった!」
「すげええええ!これが……オールマイト!」
周囲の野次馬は、オールマイトを称賛していた。……これを見せられると、確かにその気持ちもわかる。本当に、その名に違わぬ万能ぶりだ。「平和の象徴」と呼ばれるのも納得してしまう。
でも……なぜだろう。心がざわざわする。ここで起きたことは、私には関係ないはずだけれど……。
「ほ、ほむらちゃん?その、また怖い顔をしてるよ?」
……いけない。何をボーっとしているのかしら、私。
「……なんでもないわ、まどか。事件は解決したみたいだし、帰りましょう。」
「う、うん……。」
微妙に納得していないようなまどかを、私は帰るよう促した。時間停止でグリーフストーンを回収することも忘れない。
「ね、ねえほむらちゃん。あの男の子、すごかったね。」
「なんで?」
……思わずまどかに対して、ちょっと怖い声を出してしまった。でも、本当にどうしてすごいという評価になるのか分からない。
「へ!?え、ええと。だって魔法も個性もないみたいだったのに、怖い
「蛮勇の間違いよ。彼が飛び出して、なにか状況は好転したかしら。むしろ逆よ。それにヒーローは、彼を守る負担が増えてしまっていたわ。まどか、魔法少女になったときのことを想像してみて。きっとすぐ死ぬわよ。そう思わない?」
「え、ええと、その……そうだけれど……」
「ほ、ほむら。そこまで言わなくても……」
「美樹さやか。あなたは、彼の行動が何かいい結果をもたらしたと思う?」
「いや、まあ、よくはないけれど。ほら、勇気とか、気持ちの面で……いや、その……」
「……ごめんなさい。少し、罵倒が多くなったわ。」
美樹さやかは、恭介を『救けたい』以上のことを考えずに行動した結果、どんな目に遭ったかを思い出したのだろう。
それ以上、まどかとさやかは何も言わなかった。
そして、私達3人は再び帰路に就いた。
帰り道、まどかとさやかは、先ほどの件について何も言わなかった。おそらく、私が無性に苛ついているのを感じたからだろう。先ほどはつい言いすぎてしまったが、あんまりまどかにこういった汚い気持ちは伝えたくないので、私も黙っていた。
……振り返ってみれば、私は心の中で、ずっとヒーローや、あの緑色の髪の男の子を、必要以上に罵倒してしまった。どうしてだろう?あの緑色の髪の男の子の行動は決して褒められたものではないが、飛びだす勇気はなかなか持てるものじゃない……という擁護もできるかもしれない。それにヒーローも、奇天烈な格好をしているとはいえ、私たちの生活を
なのに、私は何故だか彼らのことを素直に肯定できない。心の中で『何も出来ていないじゃないか、ふざけるな!』……というような感想を抱いてしまった、気がする。理由は分からない。八つ当たりに近い気がする。けれども、自分をどう納得させようとしても、どうしても嫌悪感を抑えきれなかった。
・ほむら
まどかの為になる以外の人生を全く考えていない。(誇張抜き)
・飛び出した出久
物語的には重要だけれど、何も知らない人間が見るとあんまり評価できないよねえ……
早く原作キャラとの会話を出したい……