シュタゲやってて予定より二日位遅れた感があります。
明確に外伝要素が出てきます。
実技試験当日。
ヒーローコスチュームに身を包んだA組生徒は外に出て、またヒーローの教員たちも集結していた。生徒たちは、試験対策の出来ない試験を前にただひたすら普段通りの努力を積み重ねる日々を送ってきた。
「それじゃ、演習試験を始めていく。この試験でも、勿論赤点はある。林間合宿にいきたけりゃ、みっともねえヘマはするなよ?」
「……って、鹿目いるじゃん!」
耳郎がそう声をあげると、A組の生徒たちは彼女の視線の方向を見る。そこには、邪魔にならないように隅に立っていたまどかがすこし遠慮がちにしていた。
各々が口々に歓迎気味に感想を言う。
「え、えへへ……来ちゃった。」
「なんかもうヌルっといるよな、鹿目って。」
「マジで!?まどかちゃんA組入るの?」
「ついにまどかちゃんがA組かー……歓迎パーティだね!」
「違う、そういう話じゃない。」
勝手な解釈で盛り上がるA組の女子たちを、相澤は個性と眼力を使って黙らせる。
もはやおなじみの場の収め方だった。傍から見れば軍隊のようである。
「今回の試験では、二人一組になって戦闘訓練を行う。」
「……え?ロボは?入試の時のロボはどうなったんすか?」
「残念!今回から、試験内容を変更させてもらうのさ!」
二人は緑谷から去年の試験の情報を聞いていた。
ロボ相手なら個性を全力で放つだけでクリアできるとタカを括っていた芦戸、上鳴は石になってしまったが、構わず根津は相澤の捕縛布にくるまれつつそのことを宣言した。
「変更って……?」
「これからは、対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!」
彼が説明した試験内容はこうだ。
事前に決められた二人一組のペアで、事前に決められた教師と戦闘をする。生徒の勝利条件はクリアゲートを最低片方がくぐるか、事前配布されるカフスを先生につけること。ただしこの条件だけだと生徒側は逃げの一択になってしまうので、ハンデとして教師側は体重の半分の重さを持つ「超圧縮重り」を装着して戦う。
これが「勝利条件」だ。ただし、「赤点回避条件」ではない。
「……以上がお前たちA組向けの説明だ。」
「先生!では鹿目君は何をしにここへ来たのでしょうか?」
「これから話す、落ち着け飯田。」
A組の視線が一斉に彼女へ向き、まどかは苦笑いする。未だに彼女はこのような特別な立ち位置にいることに慣れない。
「最初に言っておくが、鹿目がA組に入るとか、そういう話じゃないぞ。で、何をするかだが……確かに鹿目は試験を受けに来た。ただしやるのはお前たちの試験が一通り終わった後だ。」
「終わった後……?」
「ああ。お前たちの中で、試験で実力を測れなかったと感じた者、体力が余っていると感じた者に立候補してもらい、同じルールで俺達教師の誰かと同じルールで戦う。」
「はいはーい!私まどかちゃんと一緒に戦いたいでーす!」
もはや友人と一緒に何かをすることが目的であるようにしか見えない葉隠や芦戸が反射的に立候補した。
「ただしこの二回目の戦いも採点対象だ。一戦目が良くても、二戦目で看過できない点があったら容赦なく赤点にする。そのつもりでな。」
「うっ……そ、そう言われると……」
「受けるだけ得、って話じゃなさそうね。」
「しかし先生、鹿目さんは何のために試験を受けるんですか?試験というからには、一定以上の実力があることを確認したい、という意図だと思われるのですが……?」
「ああ。お前たちに直接関係ある話じゃないが、仲の良い奴が多そうだからな。説明しておこう。鹿目には、仮免試験を受ける誘いが来ている。」
「おおおーーーー!!!ついにヒーロー志望になるんだねまどかちゃん!」
麗日と葉隠がまどかに抱き着いて嬉しそうにもみくちゃにする。まどかは小動物のようにされるがままだ。
「あ、あはは……みんなみたいに強い志がある訳じゃないんだけれどね。」
「しかし、誘いというのはどこからの誘いなんですか?ヒーロー科の先輩からもそんな話は聞いたことが無いのですが……」
「まあそりゃそうだろう。ヒーロー科生が仮免試験を「受けたがる」ものだからな。今回はいろいろ事情が特殊なんだ。まず、試験の誘いを出したのはヒーロー公安委員会だ。」
「なっ!?ヒ、ヒーロー公安委員会……!?」
「いきなりビッグネームが出てきたぜ……」
将来自分の上位組織となる名前が出てきて、俄に空気が引き締まる。
「……んでピンク髪にそんな誘いがきてンだよ。また個性がつええから、ってか?」
「それも無くはない。だがそれだけじゃヒーロー公安は動かんよ。それとは別の理由がある。さて。」
相澤は一歩前に出、周囲を今一度見回す。
「耳郎、障子。個性で周囲に人の気配がないか探れ。口田ももし周囲に操れる動物がいたら確認を頼む。ああ、俺達の背後の建物出口に一人いるが、そいつは除いてくれ。」
「えっ?あ、はい。」
「な、何?なんなの?てか誰がいるの?」
言われた通り探知を試みる三人。結果不審人物はおらず、その一人以外は気配が感じられなかった。
「……問題ないか。よし。じゃあ、入ってきていいぞ。」
彼の合図で、後ろの建物の扉が開かれる。
そこから、一人の少女が姿を表した。
「……えっ?美樹さん!?」
「その恰好は……!?」
「じゃじゃーん!魔法少女・美樹さやかちゃんだよ!」
ピースの決めポーズをしつつ、満を持してという形で登場した美樹さやか。
A組の彼らは、知ってはいるが予想していなかった人物の登場に驚愕する。
「おおおおお!魔法少女二人目かよ!?」
「弓じゃなくて剣で戦うのか!?」
「ピンクじゃなくて青カラーか……」
「……今までそんなこと一言も言ってなかったけど、隠してたの?」
「あ、あはは、隠しててゴメンね。色々あって……」
「……言いたいことは多いだろうが、まずは俺の説明を聞け。」
空気がさやかとの談笑になりそうだったので、相澤は再び威圧感により空気を戻す。
さやかは少しだけ緊張しつつも相澤の隣に立った。魔法少女の姿を初めて見る生徒は、相澤よりも彼女に視線がくぎ付けだ。
「紆余曲折あって、彼女、美樹さやかは鹿目と似たような個性を持っていることが判明した。とある
「
「俺の口からは言えん、と言いたいところなんだが、隠してもあまり意味がない。そして、ここからは軽々しく言えない内密の話が続く。くれぐれも、この話を外に漏らすなよ。お前たちの親、友人にもだ。必要な時にはヒーロー科の教員に許可を取ること。いいな?」
一部がごくりと唾を呑む。彼の目が常時威圧感を放つようになったために、生徒の誰も(ただし爆豪はほぼ普段通り)が「気を付け」状態となった。
「……でも先生、どうして僕たちに美樹さんの個性のことを明かしたんですか?」
「理由の50%はお前たちが彼女の話をどうせうっかりバラすだろうと判断したからだ。」
「うっ……すいません。」
緑谷がしゅんとなる姿を見て、事情を知らない生徒の一部は、「ああ、前の事件が絡んでいるのか」と察し、その他は緑谷の態度を疑問に感じた。
「まあ、いい。こういう腹芸はゆくゆくは必要となる能力だが、俺も学校も、大人を欺ける腹芸を教えてきたわけじゃないからな。今は仕方がない。それにお前たちが上手く隠したにせよ、どうせ遅かれ早かれ彼女の個性の話は広まるだろう。それなら、先んじてお前たちに言っておいた方がまだ混乱が少ない。だから、彼女が『鹿目に似た個性を持っている』ことは開示しておく。」
「もしや……先月の保須事件が絡んでいるのですか?彼女の戦った
「あ、思い出した!ネットニュースに出てた画像に美樹さんっぽい人が映ってたんだよ!服装がアレだったし流石に人違いかなって思ってたんだけど……」
「……まあ、そういうことだ。だから隠しても意味がない。」
ネットに画像が上がっているとなれば、確かに隠し通すのは難しい。相澤の「隠してもあまり意味がない」の意味を理解した。
それと同時に、彼女も個性が強力なのかと興味が湧いた。相手がステインにせよ、脳無にせよ、並のヒーローでは倒せないことは想像がつく。
彼女もまた、まどかのように不思議なそして強力な個性なのかと一部の生徒は羨んだ。
そしてまた一部は、相澤の「……ことは開示しておく。」という語尾に引っかかりを覚える。
「先生。さやかちゃんの個性は、他に……まだ何かあるのかしら?その言い方だと。」
「ある。それが重要だ。そしてそれが何かは、今の段階では俺からは言えない。そしてこっちは隠すことに意味がある。具体性が無くて悪いな。」
「えー、なんですかそれ!?気になるー!」
「どうしても聞きたければヒーロー公安委員会に問い合わせてみるんだな。まあ99.9%拒否されるだろうが。」
「また公安……さっきからスケールデカくないか?これドラマ撮影のためのドッキリとかじゃないよな?」
峰田がいつものようにビビる。他の生徒も多かれ少なかれそう感じた。ヒーロー社会においても、公安は大きな陰謀に巻き込まれるというのがフィクションのテンプレートである。
そんな相手に「隠していることを教えてください!」と正面切って言える度胸と意志がある人間はここにはおそらくいない。
「ドッキリなどという非合理的なことに授業の時間を割くわけがないだろう。ただ、説明の為に一つだけ言えることがある。とても需要の高い力であることだ。その力を、最低でも緊急時くらいには使う許可がないと不便。そのためのヒーロー仮免許を与えたい。そういう意図だと俺は解釈している。」
「まあ……なんか分かったような?」
大抵の生徒は相澤の言いたいことをひとまず理解したが、釈然としていない。
がしかしこれ以上説明できることは本当にないので、相澤としては無理にでも納得してもらうしかなく、すこし申しわけなく感じた。
「これ以上質問されても守秘義務があるからおそらく俺は答えられない。悪いな。」
「でも、その『需要の高い力』もいずれ広まってしまうのでは……?」
「そのとおり。がしかし、それが知られても大丈夫なよう、準備をする時間が欲しい。今は彼女の個性の為にバタバタしている状況でな。この状況下でその『力』の件が知られてしまったら、『鹿目のようなことができる個性』とバレることよりも遥かに大きな騒ぎになってしまう。だから部分的な情報開示となった。」
「……難儀なものだな。」
具体的なことは分からないが、ひとまず美樹さやかが思っていたよりもややこしい状況下に置かれていることが生徒たちには感じ取れ、同情の目が少し向いた。
なお当の本人は、相澤の話をかなり大仰に言っていると感じている。
「……美樹さんが実技試験を受ける理由は分かりました。仮免の戦闘試験を突破できるかを見るためですね。しかし、鹿目さんの方は?」
「まあ、ハッキリ言ってついでだ。二人の希望を聞いたんだが、どうせなら二人で受けたいって話でな。俺達教師としても、仮免に受かる可能性は0じゃないと見込んでいる。ならばここで経験値を積ませることは悪くない。そういうことだ。」
「なるほど……。」
これは相澤自身の意志も混ざった決断なのだが、まどかがここに交じることに違和感を覚える生徒は居なかった。もうなんとなく彼女が将来ヒーローに近い職業に就くことが既定路線となってしまっている。
質問が一通り出そろったところで、相澤はしなければならない説教を始める。
「さて、ここで釘を刺させてもらう。如何に自分の個性が強力で有用だろうと、許可なく勝手に使用することは許されない。細かく状況を分ければ正当防衛などの例外はあるが、原則はこれだ。だから俺は、お前たちが許可なく個性を使った場合、結果がどれだけ良くても、その行動を褒めない。さっき言った例外はともかくな。なぜ現代社会がここまでうるさく個性使用を制限しているか、雄英に入ったお前たちの学力なら分かるだろう?個性はまだまだ人類の手に余る危険な力だ。決して悪意があって押さえつけてるわけじゃない。そしてそのやり方に不満があろうが、
「う……すいません。」
さやかは、ごく一般的な「先生に叱られた生徒」の反応を示した。反抗は示さない。緑谷なども耳が痛い話であり、小さくなって「すみませんでした……」と呟いた。
一通り反省が済んだと判断し、相澤は声から威圧感を消した。
「というわけで、お前たちはこれから各々試験会場へ行ってもらう。鹿目と美樹は、後で案内する場所に来てくれ。そこで全員の試験が終わるまで見学してもらう。」
◇
「あっ、お茶子ちゃん!」
「おお!さやかちゃんにまどかちゃん!……って、デク君も見学?」
麗日が入ってきた部屋は、試験のモニタールーム。壁一面の巨大液晶に複数の会場の映像が届けられ、各試験会場の様子は一目瞭然だ。まどかとさやかは前世界のSFのようだと思えるほどに凝った様式だと思った。それを見ているのはリカバリーガール。試験が終わったと同時にすぐに治癒に向かうためである。
麗日は、事前にまどかとさやかが来ていることは知っていたが、緑谷がいることは想定していなかった。
「うん。みんなと先生の戦いを見れる機会なんてあまりないし。それに、ちゃんと作戦の話し合いをしようと思っても……」
「あはは……」
爆豪と緑谷の仲は良くない。幼馴染だというのに、A組の誰も二人が仲良く話しているところを見ていない。
緑谷の性格は人当たりが良いものだが、爆豪は非常に悪いために、爆豪のせいで良い関係を構築できていない、というのがおおよその見方ではある。
ただしこの話を緑谷本人にすると、「そうかもしれないけれど……」と曖昧な否定が返ってくるが。
「私は……話が通じない感じ。」
「んん゛……青山君。」
麗日のペアである青山の性格は、悪ではないが奇天烈だ。常に自らの美を気にするマイペースな男。麗日が作戦の話を持ちかけても、まず自身の美について語りたがる為に、麗日は話し合いを諦めてここへ来たのだ。
「いや~、ヒーロー科ってホント個性的。あれってわざとなの?」
「あはは……なんだかお恥ずかしい。多分わざとじゃないんだと思う……。」
「ウチのかっちゃんがいつもご迷惑をおかけします……」
麗日が眉を斜め下にして笑う。緑谷は、最近ロクに喋っていない相手にも関わらず身内の恥を晒している感覚になった。
「恥ずかしいのはこっちだよ。なんかノリで仮免試験受けよ~ってなっちゃってるし。努力量とか見ると恥ずかしくなる……」
「……その、さやかちゃんもまどかちゃんみたいに戦えるの?武器とか使うん?」
「まあ、それなりにはね。麗しの剣士イメージだよ!」
当然のようにさやかはサーベルを生成し手に持つ。
そしてさやかはそれを軽く振る。常人には目が追いつかない速度であり、そこには青い軌跡が残った。そして一拍遅れて風が頬に触れる。
一瞬ドヤ顔を浮かべたが、すぐに消えることとなった。
「ちょっと!室内で危ないものを振り回すんじゃないよ!」
「す、すみません……」
リカバリーガールに叱責され、また小さくなるさやか。
しかし今の剣筋は、確かにまどかと同等と言われても違和感がないと感じられるものだった。
こっちも綺麗だと感心しつつも、麗日が疑問を投げかける。
「へー……。……あのさ、その、聞いても良いかな?」
「あ、ごめんお茶子。先生とかに言っちゃダメって言われてることがあって……」
「もちろん言えればでいいんやけど。えっと、その個性、というかその力、本当に努力しないで手に入れたものなん?」
「え?」
さやかも何故個性を使っての動きに慣れているかに関しては「個性のお陰!」の一点張りで通していたが、周囲にはほぼ信じられていない。
「疑ってごめんなんやけど……まどかちゃんもすごく個性使って動くのになれてたし。さやかちゃんも見た感じ慣れてそうに見えた。」
「あ、え、そう、かな……?」
さやかは目を逸らした。魔法少女関係の事は突っ込まれずに流したいと考えている。
だが、さやかは突然思いついたように説明を始めた。
「その、実はね!隠れて練習してたの!個性使っての動きに!」
「コソ練……てこと?」
「それ一応法律的にダメなんだけどね?法定速度をちょっとオーバーするくらいの悪さだよ。」
「そ、それはその……すみません。」
さやかがこう説明した理由は、このまま誤魔化し続けるより理由をでっちあげる方が不自然に見えないと思ったからだ。
しかし残念ながら、この場面では「言えません」の一点張りの方が良いのだった。
「……なんでコソ練なんてしようと思ったん?」
こてんと首を傾げ、唇に指を当てつつ質問する麗日。追い詰めたいのではなく、純粋に気になるのだ。
「へ?なんでって……?」
「ええとね。他人に個性のことを知られたくなかったんだよね。美樹さんや鹿目さんの個性って見た目に派手なところがあるでしょ?だったら、そもそも使わない方がいいよね?でも、そのリスクを負ってでも個性を使った戦いに慣れたいと思ったのはどうしてなんだろう?っていうことだよ。」
緑谷が解説役をすると、さやかは「あれ?もしかして私の発言余計だった?」と後悔をし始めた。
かつて魔法少女の敵であった魔女の事を言わずに、戦いの経験があることを説明しなければならないのだから。今までの人生経験でそんな複雑な制限で言い訳をしたことなどさやかにもまどかにもない。
「え、ええと……ほら!
「……もしかして、過去に
「そ、そ、そうそう!それ以来、私達も力を付けなきゃなーって!いやー、あれは怖かったなあ!!!」
「……あれはやっぱり怖かったのかい?やけに冷静にしていたからわたしゃてっきり危機感が欠如しているもんだと思っちゃったよ、特に鹿目のことは。」
「えっ、私そんな評価受けてたんですか?」
「ま、まあ……私もあの動画は見たけど、確かに怖がっているようには見えなかったなあ。で、でも見かけで判断しちゃだめだよね!人質に取られたら、そりゃ怖いもんね!」
「心配してくれてありがとうお茶子ちゃん。……その、嘘ついてまで心配させたくないから言うけれど、実際あんまり怖くなかったよ。個性的に流石に大丈夫だし……」
「……ん?個性的に?」
「どうしたの?」
「はぁ……まあそんなことだろうと思っていたけれどさ。鹿目。あんた体育祭の時に偶然発現したんじゃないのかい?」
「……あっ。」
口を滑らせたことに気が付き、慌てて手で口を覆うまどか。相澤先生の「いずれ個性の件はバレる」という主張にますます説得力が出てしまった。
「……ま、まあまあ!私他の人に絶対言わないから!」
「それを教員である私の前で言うのかい?一応知ったからには報告義務があるんだけどね。」
「う゛っ」
「うう……私のせいで……ごめんなさい……」
秘密を守れなかったことに加え、その内容が法律的に褒められるものではない。様々な罪悪感のせいで、まどかの目に涙が浮かんでしまう。
それを見た二人は、慌てて疑問を挟むことを止めた。
「鹿目さんにも事情があるんだよね!……ほ、ほら!切島くんと砂藤くんの試験が始まるよ!一緒に見よう、ね!」
「うん……」
泣き出しそうなまどかを見かね、緑谷は慌てて話を逸らす。画面には、重りをつけたセメントスに相対する切島と砂藤が映っていた。
◇
「さて諸君、お疲れさん。」
試験が全て終わり、再び集められたA組生徒とさやかとまどか。ただし、試験で大けがを負った緑谷と爆豪は保健室に連れていかれた。
まどかとさやかは、たかだか期末試験であるにもかかわらず彼らのひたむきさと生まれるドラマにかなり心が動かされていた。特に緑谷・爆豪とオールマイトの戦いは、流石に治癒した方が良いのではとリカバリーガールにそれとなく言って止められた一幕がある。まどかはオールマイトが敵として現れた際の迫力に、すこしだけ泣きそうになってしまった。
「今日の授業はこれにて終いだ。HRは無しでいい。これから二人の為にエキシビジョンを始めるが、もう一度やりたい奴はいるか?もちろん強制じゃない。」
全員が当然のように手を上げる。特にいい成績が残せなかった切島、砂藤、芦戸、上鳴、試験は突破したがほぼ寝ていただけの瀬呂は「ハイハイハイ!!!」と詰め寄らんばかりに手を挙げていた。
相澤もこの反応を予期しており、そのまま話を進めだす。
「ま、だろうと思ったよ。どうせ全員立候補するんだろう?というわけで、組む相手はこちらで決めさせてもらった。まずは麗日。鹿目と組んで欲しいんだが、いいか?」
「あ、はい!分かりました。」
「次に芦戸。お前は美樹とだ。」
「っしゃー!!!!よろしくさやかちゃん!!!!!!」
「おふっ……よろしく三奈。」
「女子の中でも特に二人と仲いい人が集められたって感じか。まあ一緒に放課後訓練してたって言っても、オプショナルな形でやってただけだからその辺は優しさなのかな?」
「せんせーーーー!俺は!?なんで俺じゃなくて芦戸なんスか不公平っス!!!俺だって林間合宿行きたいっスよ!!!」
「言っただろう、これはあくまでボーナスステージ。元々予定されていないものだ。選ばれなかったお前たちにはまた別の機会にチャンスをやるつもりだ。社会の理不尽だと思って諦めてくれ。」
「そんなぁーー!!!」
「大丈夫だよ上鳴!私はしっかりここで挽回して、上鳴の分まで合宿楽しむから!」
「芦戸お前さあ!?」
上鳴は芦戸の肩をガクガク揺らし抗議するが、芦戸は逆に煽る。
「……浮かれている場合じゃない。戦う相手は1戦目と同じく13号と校長だ。芦戸、同じ相手に手の内を知ったうえで再戦するんだぞ?当然、一戦目より厳しく採点させてもらう。校長にギリギリ勝っただけじゃ赤点のままだからな。」
「うっ……はい……。どうしよう……」
途端に彼女はうなだれた。実際のところ、芦戸にもさやかにも対校長戦はどうすればいいのか、アイデアを持っていない。
ついでに、今の発言で二人の対校長戦が赤点評価であったことも確定してしまった。
「まあまあ、このさやかちゃんがいれば落ちてくる瓦礫なんてなんとかできるから!」
胸にドンと手を置くさやか。芦戸は頼りになると目を輝かせる。
「あと、美樹に頼りっぱなしと判断した場合も評価は上げないからな。」
直後、再びうなだれてしまう。そして半ば泣きながらさやかに詰め寄った。
「さやかちゃん!個性で落ちてくる瓦礫を排除しつつ私に見せ場を譲って!後で何でもするから!林間合宿が懸かってるのおおおおお!!!」
「そ、そんな無茶な……」
そうして、試験に臨む4人は訓練場に、その他の生徒はモニタールームに移動することとなった。特に美樹さやかの方はどう戦うのか興味津々で、A組生徒の会話内容はおおよそさやかの戦闘スタイルの予想や考察だった。
◇
麗日としては本日二度目となるバス移動。中には運転手、13号、麗日とまどかが乗っている。
容量に対して4人なので当然ガラガラであり、その中で沈黙に二人が耐えきれる訳でなくお喋りが始まる。その内容はこれから始まる試験のこと、ではなかった。
「へ~……お茶子ちゃん、家族の為に?」
「うん。私の家、素寒貧でさ……」
麗日のヒーローの志望理由についてだ。端的に言えば、家が貧乏だからお金を稼ぐためである。
一通り事情を話し終え、麗日は恥ずかしそうに言い訳を始める。
「なんかごめんね、不純で!」
「そんなことないよ!わ、私家のために働くとかあんまり考えたこと無かったし。立派な理由だよ!」
「デ、デク君と飯田君にも同じこと言われたな、えへへ……」
頬に手を当てて下を向く麗日だが、まどかとしては十分尊敬に値する事だった。
彼女の家が比較的裕福なこともあるが、他人の役に立てることの憧れも含まれているのだろう。
「じゃあ、この試験頑張らないとだね。お金稼ぐために!」
「あはは……ま、まあお金稼ぐためにこの試験はパスするのが最低限なんやと思う。赤点だと学校で補習地獄っていうのも、多分『まあみんななんだかんだいけるでしょ』って思われているからやろうし……」
「ひ、ひえええええ……」
まどかからすると、全体的に試験を突破するだけでもかなり高難易度に感じていた。あれを乗り越えるのが求められるレベルと聞き、まどかは戦慄してしまう。
実際のところ、林間合宿は強化合宿であるために全員行くことは確定事項である。補習地獄の話は相澤の合理的虚偽なのだが。
「本当に大変だね……で、でも多分ここが一年の中で一番大変なところだと思うから、頑張って乗り越えようね!私、出来る限りお茶子ちゃんが良い点取れるように頑張るから!」
「ありがとうまどかちゃん。……でも多分、ここより大変な場面ってヒーロー科のカリキュラムでもっとあると思うんよ。」
「え、ええ?」
「だって……これ期末だよ?2学期も3学期もあるだろうし、特に3学期のは一年の総ざらいとかで厳しいんやないかなあ……。もっと言えば、遅くとも二年以降は仮免試験もあるし、そこでもっと厳しくなると思う。」
「…………この緊張感がずっと続くの?」
麗日の、ヒーロー科生の普段の生活は、入試直前の努力量と緊張感を常に続けていくようなものだ。魔女退治と比べると緊張感や重要性は薄れるが、その緊張感がいつまでもついて回る感覚。まどかとしては二度とやりたくない時間だった。
麗日は特に話をしやすい相手だとまどかは思っている。そんな彼女が、そのような苦境の中で平然と暮らしていることを改めて尊敬した。
「まあキツイって感じるときもあるけど、ヒーロー科やからね!頑張らないと!」
「……お茶子ちゃん、なんでそんなに頑張れるの?私、ヒーロー科に入ったら音をあげちゃうよ……」
「なんで?うーん……そういえば……」
麗日は日常を顧みる。雄英に入る以前は受験勉強や実技対策などで毎日努力していた。流石に受かったらもう少し落ち着くだろうと思う程度には。
だが実際、努力量は全く落ちなかった。学力、基礎体力、個性慣れなどのための時間が全く苦ではない。自分でもちょっと不思議だと麗日は感じた。
「まあ、毎日やってれば意外と慣れるもんなのかもしれんね。」
「……やっぱりすごいなあ、想像つかないよ。」
「あー、でも、そうだなあ……」
麗日は自らが今さっき出した答えに違和感を覚え、再び思考を巡らせた。
そしてしばらくして、バスを降りる直前になったころ、納得できる答えを出した。
「デク君とか、頑張ってるみんなを見てると、私も頑張ろう!って思える!」
グッと拳を握り、太陽のような麗らかさで笑う彼女をまどかは見た。
降りるために会話はそこで途切れた。その後13号が説明を始めた為に二人の会話は再開しなかったが、まどかは心の中にその笑顔が長く残る。
(私も、頑張るお茶子ちゃんを見て頑張りたいって、お茶子ちゃんが評価されて欲しいって思う!)
◇
「麗日、鹿目。演習試験、開始。」
運動場γに来た二人。ゴールから離れた位置についた二人だが、運動場についてすぐに試験開始となったためにあまり作戦を練れていなかった。バスの中では麗日の過去話よりも今回の演習のことを喋っておけばと少しの後悔が生まれている。
そのため、開始のブザーが鳴り響いてもしばらくは開始位置から動かず話し合いが続いた。
「……も、もう始まるなんて。せめて少し作戦とか練りたかったなあ。」
「私、モニタールームから状況見ていただけなんだけど、青山君と一緒にいたときはどんな作戦だったの?」
「個性が目立つ青山君が囮になってその隙に私がゴールする、みたいな感じ。でも結局見破られて、吸い込まれそうになっちゃったんだ。」
「そうなんだ……。」
麗日自身、これを良い作戦だと思っていない。13号の気を引くという行為は、青山のネビルレーザーでなくとも可能だろう。初戦の二人の作戦は個性をほとんど生かせていなかった。
「私、ここで指名されたのやっぱり評価低いからなんやと思う。赤点回避できたか自信ない。そもそも勝てたのって、私が不注意で手を放して吸い込まれそうになったのを13号先生が慌てて止めて、その隙をついたからやもん。相手が本物の
「勝っただけじゃダメなんだ……き、厳しいなあ。うーん……どうすればいいんだろう。やっぱり囮作戦?」
「……それもダメやと思う。」
「どうして?」
「そこの隙間から顔を出してみて。バレないように気をつけてね。」
麗日が指さした場所から顔を覗かせたまどか。そこは大広間が見えるところで、ゴールポストも見える。
そしてその場所に13号が陣取り、ただひたすら周囲を見渡していた。
「先生がゴールのところにいる……じゃあ、先生をあそこからどかさないといけないんだね。でもそれって……」
「……厳しいと思う。」
「そうだよね……。」
「一戦目と同じ作戦だからね。そもそも向こうは重りをつけてるんだから、わざわざ動いて相手を追いかけるなんて、ますますしないやろうし。」
「…………うーん……」
話が詰まったところで、二人はまた顔を覗かせる。
特に意図はない、何とはなしの行動。ただ、自分たちから向こうの姿が見えるということは、その逆も然りだということが、二人からは抜けてしまっていた。
「……あ!なんか来ないと思っていたら、スタート地点から動いてなかったんですか!?」
運悪く、覗いた場所に目をやっていた場所に二人が見つかってしまった。13号はそのまま手のキャップを外し、二人に向ける。
(あっ、このままじゃダメ!)
特に何か策があったわけではない。しかし、使命感のようなものに身を任せ、まどかは飛び出した。
「…………お茶子ちゃん!やっぱり私が前に出るね!」
「え!?ちょ、ちょっと!?」
麗日は止めようとするが、その手は間に合わずまどかは前に出た。
広間の中心に変身しながら走っていき、桃色のエネルギーを纏った矢をつがえ13号に向けた。
双方ともに即座にアクションを起こさず、にらみ合いとなる。
「……意外にも、こうしてまともに顔を合わせたことはありませんでしたね。改めまして、僕は13号。災害救助を専門とするヒーローです。」
宇宙服のようなコスチュームなので感情が分かりづらい。
よって声色からの判断しかできない。彼女は、普通科相手に威圧感を出すのは気が引けたのか優しめの声で語り掛けた。
「あ、えーと、鹿目まどかです。よろしくお願いします。」
「ええ……こちらこそ。」
13号はそこで言葉を切り、しばらくずっとまどかを見つめていた。
個性『ブラックホール』の強力さをモニタリングルームで知っているまどかは、油断せずに13号を警戒していた。時折周囲をチラリと窺い、麗日がどこにいるかを確認しようとしているが、姿は見えない。
そうしていると、13号が感心したように口を開いた。
「ふむ……改めてお尋ねしたいのですが、君は、ヒーローになりたいですか?」
「……えっと、どういうことですか?」
「正直、僕は君が惰性でここに来たのではと思っていました。事前に聞いた限り、鹿目さんはA組の皆さんほどヒーローになりたがっているわけではない。そう聞き及んでいます。」
「うーん、その、確かにA組のみんなと比べられると……」
未だにまどかはヒーローという職業に対し微妙に思っている。
最近でも、その志望度を下げることになった出来事がある。保須で脳無と相対したときのことだ。その時はプロヒーローウォッシュが対応した。が、その時彼がしたことは脳無の無力化だけではない。脳無の命を奪わず、サイドキックに住民救助の指示を出し、さらに他ヒーローへの連絡等々。彼も社会人の一人。やらなければならない面倒な仕事は当然ある。
まどかは魔女との戦闘経験から、脳無との戦闘なら何とかなる気がしていた。不殺という縛りは面倒だが、あのレベル相手ならば頑張ればどうにかなるかもしれない。がしかし、そのような頭を使う仕事と並行してなどと言われるととてもできる気がしないのだ。
この所感を13号にまどかは伝えた。13号は、さもありなんというそぶりを見せる。
「……だから、私にはヒーローはちょっと大変すぎかなあって。」
「なるほど。確かに事実です。まあウォッシュさんは多くのサイドキックを抱えている身ですから、並のヒーローより仕事が多い方ではあるのですが……。そのような華々しい姿の裏で、地道な仕事をしていかなければいけない。ヒーローは、単に
「ですよね……。A組のみんな、この話をしても『なるほど、現場ではそんな仕事もあるのか。頑張って覚えて行かなきゃな!』ってすごく前向きなままなんですよ。そういうところ、本当にすごいなって思います。」
「ヒーロー科のやる気は例年そんな感じですね。国内最高峰のヒーロー科は伊達じゃないということです。しかし鹿目さん。君にも、彼らのように何かやりたいことがあるのではないですか?」
「え?私に?」
「僕も新人の教師ではありませんから。なんとなくですが、見込みのある生徒というのは見分けられます。鹿目さん、君の目には、いえ、先ほど飛び出して僕の前に来た時の君には、確固たる意志……のようなものが感じられました。」
「それは……」
まどかはこの言葉を受け、飛び出したときの事を思い返した。確かに、何か使命感のようなものに押された気がする。
ただ、どうしてこの場でそれを感じたのかは分からない。よく思い返してみれば本当に当時自分が意志を持っていたのかも曖昧で、自分が個性の強さだけにかまけて飛び出しただけにも感じられた。
「……正直、個性で何とかしようということしか……」
「そうでしょうか?僕には、個性だけではない何かを感じ取れましたけどね。」
「………………」
半ば納得が行かないような表情でまどかは13号を見続けた。
13号がここまでまどかと会話をしていたのは、彼女の個人的興味が理由だ。
相澤のまどかに対する態度である。
(あのイレイザーヘッドが、わざわざヒーロー科でもない生徒を免許を取れるように支援したがるなんて、初めて見ました。普段の彼なら、見込みのない生徒は容赦なく除籍処分にするのに。確かに鹿目さんの個性は強力ですが、その程度の理由で彼が手をかける筈がない。表向き、イレイザーは「あの個性の強さなら仮免許くらいは取らせた方が社会のためだ」って言っていますけれど、正直僕は本免許まで見据えているのではと疑っています。
現代のヒーロー業は競争が激しい。本人にやる気がないならば、「やめておいたほうがいい」と言うのが賢明です。一体彼女の何が彼の興味を引くのか……。)
そこまで考え、再び13号はまどかの顔を見る。先ほどの言葉を受けすこし迷っていたような表情だったが、視線に気が付き再び引き締まったものになった。
(僕は先ほどまで、僕が彼女の事を理解できていないのか、それとも彼が見誤ったのか迷っていましたが。そんな目をされたなら、まずは生徒に期待してみるのが教師というものですね!)
13号は指を構える。
「ずっとこうしてにらみ合っていても埒があきませんね。そろそろ……そういえば、麗日さんはどうしたんですか?」
「お茶子ちゃんは……きっと来るよ!ヒーローになるために毎日頑張っていて、今日も力になるにはどうすればってずっと考えていたもん!」
「さて……一戦目とどう変化をつけてくるのか楽しみですね。では行きますよ。『ブラックホール』!!!」
13号の指の先のキャップがすべて開き、吸引が始まる。途端に前方にある空気が吸われはじめ、次いで固定されていない物体が引きずられ、そして固定が甘いものが引き抜かれ始めた。
「ごめんなさい先生!えーいっ!」
まどかは、13号との問答の間に溜めていた矢を放つ。人など容易く包み込んでしまうほどの大きさ。まどかは正直やりすぎてしまうのではと思った威力だった。
まどかの考えていた作戦は、ハッキリ言ってゴリ押し。魔法少女の力は、この世界の個性の力に中途半端に効いたり効かなかったりする。例えばこれは彼女が佐倉杏子から聞いた話だが、イレイザーの「抹消」を受けても完全には力が失われなかったらしい。
だから、十分威力を高めれば通用する。まどかはそう見積もっていた。
「ぬおおおぉぉぉ!!!僕には捕り物に一家言あるんだあああぁぁぁ!!!」
だが、まどかは相手がプロヒーローだと言うことを忘れていた。
ヒーローならば個性の出力を鍛えるのは当然。「抹消」は鍛える部分がほぼ無いが、「ブラックホール」に関しては十分鍛える余地がある。引力の大きさ、持続時間などだ。
「えっ!?うそ、これ吸われるの!?う、うわわわわわ!!!」
まどかの放った矢は13号に接触する直前で突如として歪に変形し、指先に光が収束する。13号もこれを吸い取ることは楽ではないようで、膝を突き、左手で右腕を押さえ必死に姿勢を保っていた。
しかし結果として、まどかの矢は全て指先の黒い穴に向かい、消失した。
それを見たまどかは、自身の体がズリズリと13号の方に引き寄せられているのを自覚し、慌てて近くの手すりに掴まった。
本来ならばその程度では抵抗できない吸引力なのだが、まどかはそれにプラスして脚などの接地面に魔力を用いることで引きずられないようにしている。13号は(そんなことも出来るんですか……)と少し驚いていた。
「えっと、ど、どうしようこれ!矢が吸われるんじゃ、攻撃が通らないよ!」
「僕にだってプライドがありますからね!そう簡単にはやられませんよ!そして、バレてますよ麗日さん!」
「うぎっ!?」
まどかから見て、13号がそっぽを向く。そしてその方向には、身を隠し顔だけ出して様子を窺っている麗日の姿があった。
「大方、鹿目さんと僕がやりあっている間にどさくさに紛れて脱出するつもりだったのでしょうが、そうはいきませんよ!」
「うぐぐ……やっぱりダメかぁ……」
「お茶子ちゃん!と、とりあえず合流!」
ブラックホールの引力に抗いながらも、ものにしがみつきつつえっちらおっちら二人は近付く。そして1mくらいになったところでまどかが麗日をキャッチし、腰を抱える形で固定した。
「え、なにこれあったかい……あ、ご、ごめんまどかちゃん!せっかくまどかちゃんがチャンスを作ってくれたのに、私いいアイデアが思い浮かばなくて……」
「私も……ま、まさかあの矢が吸い取られちゃうなんて思ってなかった。ちょっと見くびっていたかも……」
「矢……あー!!!」
麗日が何かを思い付き叫ぶ。
「どうしたの?もしかして、何か思いついた!?」
「うん!まどかちゃんの矢、私の個性で『無重力』にすれば!」
「あ……なるほど!」
麗日お茶子の個性「
そして13号の個性は「ブラックホール」であり、引き寄せる力の源はこちらも重力。よって打消しが期待できるのだ。
そうと決まれば早速試そうと、まどかは魔力で踏ん張りつつ弓を取り出し、光る矢を生み出す。
それにお茶子は触れようとするが……
「あ、あれ?」
「大丈夫?」
「個性が……うまく働かない?」
「え、本当!?」
「なんやろ、なんか触れている感じはあるんやけど、手ごたえが微妙って言うか……」
「……とりあえずこれで撃ってみようかな?」
ものは試しで、13号に向け再び矢を放ってみる。片手が塞がっているので、弦の方を麗日に支えてもらう形となった。
「……ん?なんだか上手く吸えない?でも、出力を上げれば問題ありませんね!」
結果は予想通り満足のいくものではなかった。放たれた矢は、先ほどよりも引力に多少対抗できていたが、矢の様子がおかしいことに気がついた13号が出力を上げてしまう。それにより、無理矢理な形だが今回の矢も吸い取られてしまった。
「……くっそー、今回の作戦なら上手くいくと思ったんやけど……」
「ごめん、私の個性って他の個性の干渉がいまいちなことが多くて……」
「まどかちゃんが謝ることじゃないよ!でもどうしよう、私たちこのまま時間いっぱいまで踏ん張るだけになっちゃう。せっかく与えられたチャンスなのに、何もできずに終わってまう……!」
思いつく作戦が悉く上手くいかず、麗日は下を向く。
それを見たまどかは、焦燥に駆られた。
まどかは必死に頭を回転させるが、アイデアは自分の個性でゴリ押しというあまり評価されなさそうなものしか出てこない。
(ま、毎日頑張ってるお茶子ちゃん……こんな形で終わっちゃうの!?時間も心もとないし、どうしよう……このままお茶子ちゃんが落ちるなんていやだよ、可哀そうだよ!いつも、私よりも何倍も頑張っているのに、報われないなんて……!)
その時、ふと片手に感触を覚えた。
麗日が手を握っていたのだ。なにか考えがあっての握手ではない。せいぜい吸引に対抗する補助だろう。
だがこの握手が、他の魔法少女同士で時々する行為を思い起こさせた。
「……お茶子ちゃん、諦めないで!出来ることは、あるんだよ!」
そしてまどかは、安心させるように麗日の手を握り返し、目を見た。
だがそれを慰めと捉えた麗日は、全く安心できない。
「まどかちゃん……でも多分、まどかちゃんが前に出るって感じなんやろ?それじゃあ、多分先生は認めてくれへん。私のことも、まどかちゃんのこともや!」
「私の事も?」
「デク君が言ってた。この試験は、チームで上手く戦えるかを試しているんだって。まどかちゃんの強さは、体育祭やいつもの訓練でもうみんな知ってる。先生が知りたいのは、まどかちゃんが他の人と一緒に戦えるかなんや。だから、なんとかして『協力』出来ることを先生に示さないと!」
仮に13号にまどかが一人で勝てたしても、それはこの試験の趣旨に反する。試験は突破できても、評価はされないのだ。また本来はまどかに関係ない話だが、麗日の評価は当然ゼロになる。そしてそれはまどか自身も受け入れがたいものだった。
しかしそれを聞いても、まどかの目は揺るがない。麗日はなにか考えがあることを感じ取り、まずはその考えを聞きたくなった。
「……大丈夫!それでも出来るよ!私を信じて!」
「信じるって……何を?」
「私の言う通りにして、きっとうまくいくから!お茶子ちゃんの個性の力を貸すイメージをして欲しいの。私、お茶子ちゃんなら多分……思いに、つながれるから!」
「え、えと……え?」
まどかが手を強く握る。そして手の周辺に魔法陣のような光が現れる。
麗日は、個性を発動するときに似たような感覚が感じられた。しかし自分の意思でしたときとは異なるもので、何が起きているのか分からない。
「な、何!?力が融合するような……いや、ちょっとマジで何する気なん!?」
しかし麗日の疑問に答えるより先に、麗日の手の片方に矢を握る手を重ねさせた。
「コネクト!」
・コネクト
一応解説すると、OP曲のことではありません。マギレコにあった合体技システムです。
困ったときには合体だ!やはり合体は全てを解決する……!
・麗日
「コネクトって……何?」
・根津
原作の期末試験、力押し以外にどうやってあんなん突破できるんじゃい!って思ってるのでここでエキシビジョンバトルを入れてみることにしました。
・超絶無敵天上天下天下無双ウルトラハイパーキオク暁美ほむら
裏で先生に自分も出れないかめちゃくちゃ抗議している。