GW終わってまう……(絶望)
で、でもここから3日頑張ればまた休日だから……(鼓舞)
ブラックホールの使用時、空気を吸引するために相応の音が響く。加えて彼女の宇宙服のようなコスチュームには、微妙に音をくぐもらせる欠点があった。勿論災害救助の際には防具のような役割を果たすためにこのコスチュームが役立たずというわけではないが、今回の試験には少々不向きなコスチュームだった。
そして今回、13号はまどかが叫んだ言葉を正確に聞き取れなかった。
(こ……と?うーん……なんでしょう?さっきからくっついているのは、どうも彼女の矢を僕の個性から解放させることが目的のようですね。まあさっきの矢は吸い込めましたし、流石にそこまで上手く事が運ぶことはありませんでしたが。……おや、また撃つ気ですか。)
再び構えるまどか。それを支える麗日を見た13号は、先ほどと同じようにブラックホールで矢を吸引しようとした。
「何度同じことをしたって無駄ですよ!僕の個性は何でも吸いこんじゃうぞ……ん?」
矢は13号の顔あたりを狙い放たれた。13号は注意深く飛来する矢を見ていた。
異変に気が付いたのは、およそ両者の中間の地点に差し掛かったころだった。
(……なんだか、軌道がさっきと違う?あと色が濃くなっているような?)
以前までならそのあたりで軌道が不自然に指先の方へ曲がりだす。
だが今回はそれが無く、13号の顔あたりに接近していた。もともと重りのせいで鈍重になっている13号は、このままではただの案山子と変わらなくなってしまう。
(ま、まさか僕の個性の影響を受けていない?なぜ今になって!?と、とにかく避け……無理だ、ガード!)
彼女は矢が飛来するまでにその矢について様々な考察をしていたが、そもそも発射から着弾までの時間は、常人にはほぼ一瞬程度の時間だ。その間に「ガードする」という判断が出来たのは彼女の経験や訓練の賜物である。
しかし、流石に「回避する」猶予までは無かった。そもそもが飛来途中に気が付いたのだから、なおさらだ。
(う、腕が重くてなかなか……うわっ!!)
重りのせいで鈍い腕を、ヒーローとしての矜持で何とか矢と自分の間に割り込ませることに成功した13号。
矢は美しく爆発し、彼女の体を防護服越しに揺らす。吹っ飛ぶ、とまではいかなかったがその場に尻もちをついた。
(イ、イテテ……まったく、この期に及んで新技を開発するなんて。しかし、あの色の矢は僕の個性で吸えない。そして最初から撃たなかったあたり、アレは奥の手なのでしょう。ならば、いくらでもやりようはあるはずです。)
未知の手段の攻撃は、まず観察するのが鉄則。13号は立ち上がり、二人を見ようとした。
「え」
しかし、視線を上げた彼女の視界に飛び込んできたのは、二本目の矢だった。無慈悲にも、色は濃かった。
◇
根津は、この試験を一種のゲームステージだと考えていた。
根津の武器は「ハイスペック」、つまり高い知能だ。それは思考能力や記憶能力など幅広い範囲に渡っており、工業地帯を模した今回の演習場の構造は当然頭に全て入っている。それならばこの試験場の設計に携わった普通の人間にも可能かもしれないが、この演習場が模しているのはただの工業地帯ではない。爆発、倒壊、そしてその連鎖が意図して起こるように製作された「壊れる」演習場だ。「どこを壊れやすくするか」はまだ覚えられるだろうが、「どのように壊れ得るか」を頭に入れることはもはや専属の人間でもない限りはとても覚えきれない。それを頭に入れた根津にとっては、自分しか知らないピタゴラスイッチで構成されている演習場なのだ。
つまりこの戦いにおいて、根津の武器はこの演習場の知識なのである。その点、受験する生徒とフェアではない。彼らはこの複雑怪奇な演習場の構造を覚えろなど一言も言われていないのだから。ここで培うべきは工業地帯の戦闘における初見での対応能力。ここの構造を覚えたところで、役に立つのはここで事件が起きたときだけである。
根津がこの試験が他の試験と毛色が異なると考えるのはそれが理由だ。だからこそ、彼はこの試験を理不尽なものにしないように注意を払っていた。例えば上鳴と芦戸の試験。はっきり言って彼らの個性で正面突破は無理だった。二人とも質量攻撃に対してはかなり弱いのだから、建物のがれきに対してできることはせいぜいが芦戸の個性で対処することだけ。しかし当然降りかかる瓦礫全てを溶かし尽くすことなどできない。
それよりも、根津は彼らに状況の観察をして欲しかった。どんな瓦礫が破壊され、そしてどれが破壊されないのか。よく観察すれば、とあるエリアの建物は破壊されないことに気が付けるはずだった。根津が見えない位置なのだから。それを割り出して、脱出ゲートへの道を見つけるなり、根津の元へ向かうなりすることが期待の行動だった。それさえできれば、試験を突破できなくても赤点を回避させてやることさえ考えていた。残念ながら二人は達成できなかったが。
演習場を使っての「倒壊にはどんな法則があるでしょうか?」ゲーム。これがこの試験だ。
第二の試合でも、この方針を変えるつもりはなかった。美樹さやかがどのような戦いをするのかをある程度記録して、それが終わったら「ほらもっと頭を使って!」とヒントでも出そうかというのが根津の思い描いていた試験の運びだ。
途中まではそれはうまくいっていた。美樹さやかは美しい剣を用いて降り注ぐ瓦礫を瞬く間にバラバラにしてしまう。筋力も強化されているようで、時々パンチで瓦礫を粉砕することもあった。ステインと戦ったという報告通りの素晴らしい戦いぶりだった。戦闘面だけ見れば、仮免試験の突破の可能性は十分にある。
しかし、芦戸の方はほぼ何もできていない。根津は重機に持ち込んだディスプレイをすこし残念そうな表情で見ていた。彼女は、傍で「すごい!」だの「かっこいい!」だのとキャッキャしさやかの鼻を高くするだけ。これではペアで戦う意味がない。このままでは彼女の赤点は変わらないのだが、本人の頭からそのことが抜けているのではと根津は疑い出した。
だから、根津は発破をかけるつもりで演習場全体に設置されている大型スピーカーで問いかける。
「あー……聞こえるかな?今は頭脳派
「あれ、校長先生?」
「芦戸三奈君!君、ヒーローとしてやる気あるのかい!?」
「え、え?」
「君は傍で飛び跳ねているだけじゃないか!そんなヒーローが来ても賑やかしにしかならないのさ!このままだと赤点は間違いなしだよ!」
「あ、あー……見たくも無い現実があ!!!これは
現実に引き戻され、途端に頭を抱え苦しみだす芦戸。自分の力で打開しようにもどうにもできず、現実逃避をしてしまったのだった。
しかし根津は、これも彼女のためと構わず続ける。
「現実に立ち向かわないで頭を抱えるだけの生徒なんて、雄英ヒーロー科にふさわしくないのさ!そうだろ?相澤君。」
「校長の言うとおりだな。個性把握テストの時に今みたいな態度だったら間違いなく除籍している。」
「ぎえええええ相澤せんせえええぇ!?!?」
ムンクの叫びと化した芦戸は、その絵のようにこの世の終わりのような悲鳴をあげる。さやかは横で表情の急変ぶりに少し引いていた。
「というか、お前このまま美樹に任せっきりだったら赤点どころか除籍にするぞ。」
「うぎゃああああああ!!!!!」
「除籍されたくなければ、君の価値を見せるしかないのさ!この世に自分の上位互換なんていくらでもいる。その中で、いかに自らの存在価値をアピールするのかは社会で重要な力さ!」
「ぐ、ぐうの音も出ないいいいぃ……!」
「さあ!ヒーローとしての存在価値を示すんだ!もっと頭を使って!知恵を絞って!」
そこでスピーカーの接続は切れる。喋り終えた根津は紅茶をすすって一服し、再び二人を映すモニターに目を戻した。
「……さて二人の様子は、と。」
モニターに映っているのは、必死に相談する芦戸。それに真剣に応じる美樹さやかだった。ここで二人の作戦を盗み聞きするのは流石に無粋だろうとマイクを切っているので、会話内容は聞こえない。
「試験は残り10分といったところかな。流石に彼女が何もせずにここで終わるとは思わないけれど……ん?」
根津の目に入ったのは、二人がかりで剣を持つ姿だった。ただ手が重なっている部分が発光しており、何か特殊なことをしていることがうかがえた。
「あれは……?もしかして、美樹君の新しい力かな?何をするつもりかわからないけれど、結局個性を発揮しているのが美樹君である以上は評価は……」
そこで、根津の独り言は途絶えた。手を離したのは、美樹さやかの方。芦戸は受け取った剣を、恐る恐る振っている。
そしてその剣の様子も変わっていた。浮遊状態の液体がまとわりついていた。出所は芦戸の掌。おそらく、彼女の個性の酸性液体だろう。
根津は、その現象がまたもや現代個性社会で殆ど見られない現象であることに気が付き、モニターに釘付けになる。
「え……も、もしかしてそれは、力の譲渡かい?」
彼女が目を閉じ集中する。すると、元の剣を芯として、まとわりついていた液体が何倍もの大きさの透明な刀身を構成した。リーチが伸びたというレベルではなく、長さ数mという大きさ。しかも重さは変化していないらしく、普通の剣と同じようにその長大で透明な剣を彼女は振り回す。そしてその構成物は酸なので、触れた先から物を溶かす。結局、建物をたやすく切断ができることには変わりない様子だった。
素晴らしい破壊力だが、根津にとっては想定外の、それも良くない行動だった。
「……ちょ、ちょっとまって。確かに協力しているけれど、それは想定解法と違うのさ。」
しかし、芦戸のテンションはうなぎのぼりだ。これが自らの役割だと認識した彼女は、使命感に満ちた目でそこらじゅうの建物を破壊し始める。数倍もの長さの、触れたものすべてを溶かす剣を振り回すのだから、周辺の建物は瞬く間に粉々になっていく。そうして周囲の障害物を片づけ、無理やり道を作ろうというのが彼女の行動のようだった。
これは根津が用意したゲームのルールに反する。30分かけて解かれると想定して作った問題が、自分のミスで1分で解かれてしまう様を見ている気分だった。
「き、君、いったんそれ振り回すのやめようか。僕にも想定外なのさ。」
根津は慌ててスピーカーで待ったをかけようとするが、彼女たちの周辺のスピーカーは全て破壊されているらしく止まる気配がない。重機を操作して妨害しようにも、破壊の速度が圧倒的なために対処しきれない。
そうして手をこまねいている間にも、芦戸は周辺の物体を粉々にしつつ一定の方向へ歩んでいる。美樹さやかは、横で面白そうに芦戸を眺めるだけで止める気配がない。
ごり押しで突き進む二人。根津の位置は知らないはずだが、偶然にもその進行方向上に根津の鎮座する建築物があった。
「ちょ、まっ、え。いや、もっと有意義な方法で試験を突破して欲しいのさ!ええい、こうなったら非常時用の大型スピーカーで」
ヒャッハアアアァァァ!!!
およそヒーローとは思えない太い声が根津の耳に届く。スピーカー越しではなかった。
聞こえた方向におそるおそる目を向けようとする。が、その瞬間根津の頭上を何かが横切った。ジュワ!と、今まで聞いたこともない大音量の化学反応の音が響いた。
上を向くと、重機の天井がまるまる消えていた。残っていた壁部分の上部はただれている。直後、切断されたパーツが地に落ちたのであろう重い音が響く。
そして、改めて声のした方向を向くと、そこにいたのは。
「せんせえ!赤点回避、お願いしまあああああす!!!」
万能感に浸り獰猛に笑う、カフスを構えた芦戸の姿だった。
その時の根津は何も言えなかったが、もし口を開いたならばこういっただろうと彼は後に思い返している。
「いや、どう考えても赤点なのさ」
◇
「とりあえず。お前ら、コネクトってなんだよ。」
4人の試験が終わり、再び教師たちと生徒たちが集められた。相澤以外の教員は既に他の仕事をするべく戻っている。
そして開口一番、相澤はそう言い放った。
「えーっと……心と力を合わせての……技?みたいなものです!」
さやかは罪悪感のない笑顔でそう言い放ったが、相澤は頭が痛くなるばかりだった。またしても彼女たちの個性に関して検証しなければならないことが増えたからだ。そして今までの経験からして、彼女たちからその力に対する詳しい話が期待できないことも分かってしまった。
しかし同時に、合体技というものに多少の興味も湧いていた。彼女たちが見せたのは、個性を組み合わせるものではなく、混ぜる技。この個性社会でもほとんど見られない現象なのだ。A組の生徒たちは、純粋に興味深そうに彼女たちを見ている。
「…………芦戸、麗日。体に異常はないか?」
「はい、大丈夫です!」
「全然!とゆーかもっとさやかちゃんとコネクトしたかったですよぉ……ぐへへ♪」
「三奈ちゃん、顔がアブナイよ?」
葉隠の突っ込みを聞いても変わらず、どこか恍惚とした表情を芦戸は崩さない。麗日も、コネクトは悪い体験ではなかったらしくどこか悟ったような表情をしていた。
「ええと、鹿目さん達は、その「コネクト」ができることを前から知っていたの?」
「そうだね。まあその……いろいろやってくうちに、合体技ができることを……とある人の話を聞いて思いついて、やってみたらできちゃった!みたいな感じだよ。」
「い、一体どんな原理で個性を混ぜ合わせているの?」
「原理……?いや、やってみたら出来たってだけで……」
「なるほど、『コネクト出来ちゃった♡』か。なるほどな……」
「峰田やめとけ。生モノは取り扱い要注意なんだろ?」
「うわ……キモ……」
「……さやかちゃんのこんな表情私初めて見たよ。」
「まあ……『魔法少女』らしいね!」
その言葉にここにいるおおよその生徒が頷く。つまり彼らも、詳細な説明を諦めたのだ。どうせ「まほうのちから!」程度の情報しか出てこないだろうと。
しばらく各々が議論を交わしていたが、やがて相澤が「そろそろ話を進めさせてもらうぞ。」と言い、やがてその場は静かになった。
「…………ひとまず、体に異常が無いようで何よりだ。ただ念のため、後で婆さんに見てもらえ。……さて、個性の話は一区切りさせてもらう。ここからは試験の講評だ。」
4人は真面目な話が始まると察し、居住まいを正した。特に芦戸はものすごく活躍できたという自負があるのか期待を込めた目で相澤を見る。
「まず鹿目と美樹についてだが、チームアップするうえで特段のコミュニケーション問題は見られなかった。」
「や、やった!」
「おお!ありがとうございます!」
二人は素直に喜びを表す。
「お前たち、コソ練なんてレベルじゃない程度に戦闘訓練していただろ。どう見てもチームで戦うことに慣れていた。不合理な行動は一部見られたが、行動を決定するまでの手際の良さ、そして行動するスピードは明らかに戦闘初心者のそれじゃなかった。」
「あ、あはは……」
まどかは誤魔化しの笑いを浮かべた。事実であり、そして最近まどかは以前から魔法少女の力を使えていたことを隠すことを諦め始めている。
実際、そのことはもはや隠す方が逆に不自然だというのが彼女たちの今の共通認識だ。世界が大きく変わったことや、ソウルジェムや魔女の件だけ隠していればいいのである。
「ちなみに、その不合理な行動っていうのは何ですか?」
「そうだな。例えば鹿目と麗日の戦闘。麗日の個性で無重力状態の物体による攻撃はもっと早く思いついて欲しかった。たとえ鹿目の矢に個性の効果が無くても、その辺の石を無重力にして筋力に優れる鹿目に投げてもらえばいいわけだからな。芦戸と美樹の試験でいえば……まあ、君の力をこちらもまだ十全に把握しているわけじゃないからあまり言えることはないが、少なくとも二人で事前に個性の情報交換をもっとやってほしかった。その、『コネクト』を最初からしていれば試験がより迅速に終わっただろう?」
「な、なるほど……」
「……確かにそういうのなんもしてなかった。ごめんね三奈。」
「ぜーんぜん気にしないでいいよさやか!むしろサプライズになったし!」
芦戸はニヤニヤしつつさやかと肩を組む。すっかり上機嫌の彼女に他の生徒も少し呆れていた。
「ま、今回の試験はいわばネガティブチェック。チームアップ下での戦闘も相応にこなせそうだと判断した。今言った問題点は、今後訓練していけば十分カバーできる話だ。」
「おおお!じゃあ、二人はついに仮免試験を!?」
「ああ。受けてもいいだろう。校長からもそう聞いている。」
「おおお!やったねすごいよ二人とも!」
「も、もし9月の仮免試験を合格すれば、二人は普通科にして仮免取得者!すごい、雄英初の」
「いや、無理だ。」
「え。」
前代未聞の事態に沸き上がるA組達に冷や水をかける発言が飛び出し、彼らはおよそ全てが疑問の視線を送った。
「ど、どういう事ですか……?」
「まずそもそも、俺たち教師は鹿目と美樹が9月の試験を突破できるかは五分だと思っている。」
「な、なんでですか?もうあんなに戦えるのに!」
「仮免試験で測られるのは戦闘能力だけじゃない。ヒーローの仕事を、お前たちのヒーロー科カリキュラムを思い返してみろ。」
「……あ!救助!」
その一言に、他の生徒も一拍遅れて理由に思い至る。
「そう。二人は災害救助に関する訓練を何も受けていない。というわけで、これから二人には放課後特別講義を受けてもらう。これまでの、放課後の鹿目の戦闘訓練は終わりだ。全て正式なカリキュラムとして時間を取る。」
「おおお、本格的に始まるんだね……!」
さやかやまどかは純粋に楽しみだという感情を出したが、相澤の表情を見てすぐに止めた。
「ああ。みっちりやるから覚悟しとけ。」
相澤は獰猛に笑う。彼がこの表情を二人に向けるのは初めてで、彼女たちはなぜそんな表情をするのか分からずたじろいだ。
そしてその変化に、A組生徒達も疑問を感じる。
「せ、先生。『みっちり』……ですか?」
「ああ。今までは普通科からのお客様扱いだったが、もうやめだ。やるからには全力で指導する。それについてこれる能力が二人にはあると俺は判断した。少なくとも肉体面はな。当面は仮免の取得を第一目標として、お前たちに苦難を全力で与え続ける。」
「……え、マジですかそれ?」
さやかとまどかは、今まで油断していた。流石にA組ではない生徒相手にキツい課題など与えないだろうと。
実際相澤は二人に対して特に指導らしい指導をしてこなかった。普通科相手に指導権は無いのだから。だが、これからはある。そう決まった途端彼は「どんな苦難が彼女達を最も良く成長させられるか」を考え始めていた。
ひとまずの目標は仮免試験の突破だが、この様子だと本当にその程度で済むのかと二人は怯えた。
「マジだ。成長のためには、それが最も合理的。安心しろ、俺たちは『乗り越える意義のある苦難』しか用意しない。だから、全力で越えてみせろ。ひよっこども。」
「…………」
「お、お手やわらかに、はは、お願いします……?」
二人の怯えは深まった。鬼教官と形容できる様相だったからだ。これから何をされるのかと震えるしかない。
そしてA組生徒達は「多分、恐れている通りのことになるよ……」と憐みの目を向けた。
「……と、そうだ。今は講評の時間だったな。麗日、芦戸についても軽く伝えておく。」
相澤はその鬼教官のオーラを戻して、芦戸と麗日に向き合う。二人は姿勢をただした。
「まず麗日。初戦に比べて一応知恵を出した事は評価する。ただやはり、個性を生かした戦いをしていない時間がほとんどだったのは痛いな。初戦の後に反省する時間は沢山あっただろう。その時間に誰かと話す時間もあったはずだ。自分で思いつけなくても、もう少し改善案を模索する行動も欲しい。」
「はい……すみません。」
初戦とあまり変わらなさそうな評価に、麗日は肩を落とす。まどかは頭を撫でて慰めた。
「次に芦戸。赤点だ。」
「…………ウソだろおおおおおおお?!?!?」
試験時以上の絶叫が響いた。さやかも何故、という表情をする。がしかし、他の生徒はさもありなんという感想だった。
「当たり前だ。はっきり言ってお前はこの実技試験の意図を汲んだ行動をしていない。」
「えー!?三奈は頑張ってたじゃないですか!なんでですか!?」
さやかが抗議するが、相澤はまだまだヒーローとしての行動は難しいかと思いつつ、説明する。
「あー、『コネクト』で校長までの障害物や妨害を破壊したことを言ってるのか?その『頑張った』ってのは。」
「そうです!私が三奈の見せ場を作る為にわざわざやったんですよ!あれじゃダメなんですか!?」
「ダメに決まっている。まず、不要な破壊が多すぎる。ヒーローは
「……ま、まあ確かにしないですけど、これ本番じゃなくて試験ですよ?」
「事前に言ってなかったのかもしれないが、そりゃ暗黙の了解ってやつだ。ヒーロー科の試験なんだから、ヒーローとして正しい行動をするべきだ。確か入学直後の戦闘訓練でも……ああ、美樹は受けていないな。だが、芦戸は聞いているはずだ。聞いた本人がその『コネクト』に浮かれて暴れてしまったんだから低評価なのは当然だ。」
「ズ、ズビバゼン……もう刺さないで先生……正論で刺さないで、わたじがわるがっだでずがらあ……」
鼻水まで垂らして泣く彼女だが、そもそも問題点を指摘することを愛の一種だと思っている相澤は止まらない。
「ダメだ。最後まで聞け。もう一つ言っておかなきゃならないことがある。仮に建築物を破壊することが正解行動だったとしても、それはお前のプラス評価にはほぼつながらない。美樹はそもそも戦闘能力があるから、美樹がやればいい。どうやらその『コネクト』で、剣の長大化と攻撃が酸によるものになったという変化はあったが、その剣をお前が振る必要が無いんだ。個性柄美樹の方が剣を振るのは上手くて、それでいて筋力もあるからな。つまり、お前の行動の問題点は単に手に入れた『手段』を振りかざしているだけになってしまっていて『目標』がなく」
「もうダメだぁ……私、酸になるぅ……一生地面を溶かし続けるちょっとネバネバするしか能の無い酸ですぅ……」
芦戸は地面に顔をうずめ、全身も地に付けうごめくだけになってしまった。目から流れる涙が水たまりになってしまっている。
その様子を見かねた八百万が相澤を止める。
「せ、先生もうそれくらいで……もう十分芦戸さんは反省してますから……」
「……はぁ、仕方ない。後でお前の状況下における行動の参考になる実戦記録を渡してやるから、それを踏まえお前が試験で取るべきだった行動を考え、後日レポートを提出するように。」
「追い打ちだあああああ!!!」
もはや今日は立ち上がれなくなってしまった彼女に、他の女子たちが慌てて慰める。しかし残念ながら芦戸はこの後しばらく落ち込んでしまい起き上がれなかった。
予想以上に落ち込んでしまった芦戸に少しだけ申しわけなく感じた相澤は、この場を切り上げることにした。
「……というわけで、もう時間も遅いためにこの場は解散とする。各自、気を付けて帰るように。」
そう言って相澤は去っていった。
まどかとさやかは、期待と不安の入り混じった表情で何も言わずに立ちすくむ。
「……厳しくなる……ってことだよね?」
「さ、流石にA組のみんなが受けているようなレベルじゃあ無いでしょ。流石に……多分?」
そんな会話をしていた二人の元に、葉隠が歩み寄る。そして意を決して言った。
「まどかちゃん!さやかちゃん!私ともコネクトして!」
「えっ!?」
戦闘場面でもないのにコネクトをせがまれる理由がわからず、二人は困惑する。
「三奈ちゃんとお茶子ちゃんばっかりズルい!私だって合体技やってみたいもん!」
「そ、そうなんだ……。私は全然いいよ。でも、今日はもう遅いからまた今度でいいかな?」
「ほんと!?ねえ約束だよ!私だって二人とお友達だもんね!ね、二人とも!」
「ち、近い近い!」
鼻がくっつくレベルで顔を近づけられたことを葉隠の体温で感じ取り、二人はたじろぐ。なぜそこまでコネクトしたがるのだろうかと。
その疑問に答えるためか、八百万が質問を投げかける。
「麗日さん、芦戸さん。その……コネクトって、どのような感じだったんですの?」
「どんな感じ?」
「なんというか……モニター越しではありましたけど、とてもいい笑みを浮かべていましたので。」
泣いている芦戸は答えられそうになかったので、麗日にA組の生徒の視線が向く。コネクトがどんな感覚なのかはA組の生徒たち全員が気になることだった。
彼女は照れ隠しで頭を隠しながら答えた。
「……正直、すごく良かった。」
「よ、よかったって何!?」
「なんかこう……二人の力が一つになって……すごく勇気をもらえたっていうか。もう私、何も怖くあらへん!って感じになったんよ。」
また少し恍惚の笑みが麗日の顔に浮かぶ。他の生徒たちは、何か精神に影響を受けているのではと疑った。
「よくわかんねーけど、アドレナリンやドーパミンがドバドバ!みたいな感じ?」
「どうやろ……でも初めての体験だったのは間違いないんよ。まどかちゃん、いつもこんな感じで個性使ってたんやな!って。とにかくすごく楽しかった。」
「……芦戸が試験中にあんなふうになった理由がちょっと分かったぜ。」
彼女の豹変ぶりは試合中でも観戦していた生徒の間で話題になった。モニター越しでだが、この世の全てが希望に満ちているとでも言うような表情だったからだ。
「でもいいなあ。合体技なんてロマンの塊だろ。どんな相手でもできるのか?それ。」
切島は純粋に羨ましいと思っていた。個性の合体技は現実だと高度なコミュニケーションと連携が必要不可欠となるもので、それが彼女たちのように手軽にできるとなれば羨ましくもなるのだった。
「誰でも、じゃあないかな。仲のいい子とじゃないと無理だと思う。」
「仲のいい子、かあ……。」
その言葉を聞いた彼女たちは、しばらくは「そんなものかなあ。」と特に感情を動かさなかった。
がしかし、葉隠が突然焦ったように二人に問いただす。
「……ね、ねえ!私は二人とコネクトできるよね!?」
「え、ええ?多分……?」
「どうしたの透?」
「…………も、もし、コネクト出来なかったら私たちは仲良しじゃないってことじゃ……?」
「えっ?」
予想だにしていなかった指摘であり、まどかとさやかは言葉に詰まる。
今までコネクトの相手は魔法少女仲間の5人であり、当然仲良し同士だった。
「だ、だってそうでしょ!?仲良しならコネクトできるってことは、コネクト出来なかったら私たち友達じゃないってことなんじゃ……?ふ、二人とも今すぐ私とコネクトして!お願い!」
「……そんなこと考えたこともなかったなあ。うーん、でもまあ心だけじゃなくて、体や個性の相性もあるだろうし。コネクトできなかったとしてもそんなに落ち込むことじゃ無いと思うよ。」
「体の相性を……コネクトして確かめる、だって!?」
「ええい黙ってろエロ葡萄!」
「ぶべらっ!?」
セクハラ発言に思わずさやかは魔力強化した腕力で思いっきり、峰田の顔をグーで殴ってしまう。彼はそのまま数十mも吹っ飛ばされ鼻血を出しつつ気絶してしまった。
直後、流石にやりすぎたかとさやかは後悔する。
「……あ、や、やっちゃった。大丈夫かな……?」
「まあ、大丈夫じゃないかな?峰田だし。」
「うん、峰田相手だし、平気でしょ。峰田が悪いし。」
「まー峰田はな。美樹は気にしなくていいだろ。どうせ明日には復活するだろうし。というか、すごい流れるような突っ込みだったな。お前もA組になじんできたのかもな!」
「な、なんか嬉しくないなあ……」
切島や上鳴は純粋に歓迎のつもりでさやかにそう言った。A組に歓迎されること自体はさやかにとっても悪くない気分だったが、そのきっかけがあのセクハラの塊かと思うとあまり喜べない。
「それより!私とコネクトしてよ!まどかちゃんも!」
「え、えええ!?」
私も、ウチも、と。A組女子が集まりだす。彼女たちは単純にコネクトへの興味と、ある不安を持っていた。
もしコネクト出来なかったら、実は心の奥底で嫌われている部分があるということではないのか?
彼女たちは全ての人間と仲良くなれるとは思っていないが、しかしいざ「好かれていない」事実が突きつけられるかもと思うと、これまで大抵の人間に好かれながら生きてきたヒーロー科女子達にとっては大きな不安をもたらすものだった。
それかき消すために、この日はA組女子と二人の間で「コネクトチャレンジ」が始まったのだった。
◇
「私が先にコネクトしたのよ!」
実技試験があった日の翌日の帰り道。実技試験の状況を聞いた私は思わずそう叫んでしまった。
まどかとさやかとマミさんしかいない帰り道だったが、多分遠くでさやかの見張りのヒーローがいるし、他にも通行人がいるから、私の叫びを聞かれたかもしれない。頬の温度がみるみる上昇するのを感じた。で、でも、まさかまどかが私たち以外とコネクトに成功するなんて……!
と、ともかく今は落ち着かないと。あわててテレパスでの会話に切り替える。流石に盗聴まではされていない……と信じたい。あくまでも遠くで見ているだけという説明を受けている。
(……わ、悪かったわ、大声を出したりして。)
(ビックリしたぁ~……)
(暁美さん……前から思っていたのだけれど、結構嫉妬するタイプなのかしら?)
(そ、そんなことないですよマミさん。)
嫉妬深いなんて言わると……普通に嬉しくない。
(だいじょーぶだってほむら。いつも守護霊みたいにずーーーっとまどかにくっついてるんだから変な虫なんか付かないって。)
(うるさいわね美樹さやか!)
(テレパスでかっ!?)
テレパスに音量という概念は無いのだけれど、強い気持ちで言葉を発すると相手にも大きな衝撃で言葉が届く。さやかは、私が叫んだせいで目の前に虫が飛んできたみたいなリアクションをしてしまった。
(ほ、ほむらちゃんコネクトにそんなにこだわらなくても……。私、ほむらちゃんはずっと大切なお友達だから!)
(まどか……でも……)
まどかはそう言ってくれるけれど、不安は拭えない。
コネクトは、心がつながった魔法少女同士ができるもの、という認識だった。今回、この世界だと相手が魔法少女じゃなくてもできるというのは初めて知った。
それは、別にいい。問題なのは、まどかに私たちのように大事な仲間が出来たということだ。まさか私たち以外にそんな……
(まさか、私たち以外にまどかに大事な人ができるなんて……)
(大事な人って大げさだよ……高校生になって新しくできたお友達、かな。)
改めて聞くと、ショックだ。いつか来る現実ではあるけれど、私は今までそれを見て見ぬふりをしてきたのかも、と思ってしまう。
(はあ……そうなのね……。)
(ねえ、暁美さん。)
(マミさん、何ですか?)
(どうしてそんなにショックを受けているのかしら?)
(ど、どうしてって、まどかが私たち以外にコネクトできるくらい仲のいい友達ができるなんて。)
(……それが、どうしてまずいのかしら?)
マミさんが心底理解できないという表情で問いかけた。
それはもちろん……
………………
…………どうしてだろう。
改めて言われると、分からない。考えてみれば何もおかしいことじゃなかった。高校生になったんだから、まどかは普通科の子たちと友達を作ったし、今回そこにヒーロー科A組の人が加わった。
……それは何もおかしいことじゃない。まどかはかわいくて優しい女子高生なんだから、友達を作るのなんて当たり前。
あれ、私、なんでショックを受けていたんだろう?
自分でもよくわからなくなってしまった。でも今の考えをそのまま伝えるのは恥ずかしいから、とりあえずマミさんへの回答は適当に誤魔化しておこう。
(……ごめんなさい。ちょっと混乱してしまっていたわ。別に何もおかしくなかったですね。)
(大丈夫?暁美さん。)
(最近忙しかったので、その疲れが出ているのかもしれません。)
(素直に言っちゃいなよ。「私のまどかが盗られちゃう~!」って!)
(うるさいわよ美樹さやか。)
(でも、多分鹿目さんは今後も友達を増やすわよ?暁美さん、本当にそのことを受け入れているのかしら。)
(それは……)
私は何か言おうとして、何も言葉が出てこなかった。
そしてこれからもまどかが友達を作っていくであろうことを考えると、胸が締め付けられる。
……認めるしかない。認めたくないけれど。
今回のコネクトの件でハッキリした。私はまどかにずっと平穏に暮らしてほしいだけじゃなくて、まどかの視線が、心が欲しかった。彼女の優しくて、すこし自信なさげで、でも私を導いてくれた、この美しい目。
改めてまどかの顔を見てみると、少し困ったような表情を私に向けていた。もうあのループ時代から一年半経過した。すこし背が伸びたけれど、まどかの本質は全く変わらない。他者に手を差し伸べることを全く躊躇しない目が、変わらずそこにある。
でも高校に入って、特に最近は、その目を私に向ける時間が確実に減った。この前は別にまどかが私をどう思おうとかまわないと思っていたけれど、私の精神は思っていたよりも醜く、独占欲のあるものだったらしい。
……私が、まどかが何を思うかをどうこうしようとするなんて、烏滸がましい。でも、私は結局のところ人間の心を持った生き物だった。度重なるループで精神が変質しているかと思ったけれど、とりあえずこういうロクでもない部分は残っている事が分かってしまった。
(……はぁ。認めるわ。さやか、あなたの言うとおりだったわね。)
(み、認めたアァーー!よーし、これからはほむほむのことを「絶賛嫉妬中のほむほむ」って)
(美樹さやか。これから時間停止してあなたを病院に連れて行って、再生能力がどれだけ高いかを実演して見せてもいいのよ?)
(はいすいませんでしたほむらさん。)
さやかはビクッとなりあっさり謝罪した。思っていたよりも大げさな反応だった。
(ほむらちゃん……ご、ごめんね。最近はほむらちゃんと一緒にいる時間が少なくなっちゃって。)
まどかも、いつもより私を気づかわしげにしている。それを見て、とても申しわけない気分になってしまった。
(まどかは気にしなくていいわ。私の方が勝手に悩んでいるだけだから。)
(そんな言い方……私だってほむらちゃんの悩みをどうにかしたいよ!)
(ありがとう……まどか。でもごめんなさい。多分どうしようもないわ。)
(ええと、暁美さん。)
(なんですか?)
(A組の人たちのこと、どう思っているのかしら?ほら、最近とても気にかけてくれているじゃない、あなたのこと。彼らのことは、友達じゃないのかしら?)
(……どう思っている、って?)
(自分から遊びに誘ったり、一緒に食事に行ったり、したくならないの?)
(いえ、別に。)
本心を飾らずに私がそう言うと、3人とも表情が暗くなった。
(ど、どうしよう、思っていたより好感度が低いよ!)
(暁美さん、もしかして人付き合いについてはもっと根源的な問題があるのかしら……?)
一瞬バカにされているのかと思ったが、私以外の3人の表情を見るとどうも真剣に悩んでいるらしい。
……なんだか急に申し訳なくなってきた。というより、今後が不安になってきた。自分では普通にしていたつもりなのに、どうもとても困った子扱いされているらしい。
A組の人たちが私に興味を持っていたことは自覚していた。でもそれは、私がすこしだけ人と違った振る舞いをしていたせいで、いわば珍獣を見る動機に近いのだと思っていた。でも……そうではない、らしい。3人の反応を見るに、彼らは私に対してとてもポジティブな事をしていて、私もポジティブな反応を返していないことがとても不自然、のようだった。
なんだかとても恥ずかしい気持ちになってしまい、この話題を続けることに多大な負荷を感じた私は、別の話題に逃げることにした。
(そ、そういえば!マミさん、例の件の準備はできたかしら?)
(え、例の件?)
(蛇腔総合病院の地下施設を爆破してついでにAFOを殺す件よ。)
(えっ!?)
さやかとまどかが驚いた表情を見せた。そういえば、二人にはこの件の詳細を話していない。
(ああ、言っていなかったわね。最近の調査の結果、どうもあの地下施設にAFOが高頻度で来ているようなの。それで、今週の土曜か日曜日にいよいよ決行するのよ。)
(え、ええーーー!?もうやるの!?危ないよ、強大な
正直に言うと、まどかは絶対私のことを心配するだろうから、直前の今まで言わなかった。ズルいことは分かっている。申しわけないと思うけれど、まどかにはなるべく心配を掛けさせたくなかった。
(鹿目さん……ごめんなさい。どうしても説得できなくて。事前に何するかは聞いているけれど、病院の人たちに被害がいかないように最低限配慮するみたいだし、それに私もついていくから。)
マミさんを説得するのは本当に骨が折れた。なるべく早い段階でAFOはこの世から消しておかないと後に響くこと、もうすでにあそこには出入りできた実績があることを持ち出してもなかなか納得してくれなかった。特に病院に入院している人たちが巻き込まれて死んでしまうことを恐れていた。その辺を防ぐ計画を提示して、昨日ようやく納得してくれたのだ。
(じゃ、じゃあ私も手伝う!)
(ダメ。家か学校にいて。)
さやかは……まだしも、まどかは絶対行かせられない。
けれどまどかは、そう簡単に引き下がる訳もなかった。
(そ、そんな、また私だけ何もできないなんて。)
(あなたはもう魔法少女の姿が表に割れているわ。計画上どうしても病院にある程度近づく必要がある。それに事が済んだらあたりは大騒ぎになるだろうし、そうするとまどかは絶対疑われる。あと、さやかもね。そもそも監視されているようなものだし。)
(……そ、そうか私許可がいるなんて話になってるんだった。あーもう、すごく面倒くさい……。)
さやかは同行を諦めてくれたようだけれど、まどかはまだ不満だった。
(でも……)
(それに、こんな場所にまどかを連れて行けるわけないでしょう?そんなの私は許せない。)
硬い意思を込めてまどかを見る。まどかの目を見ると、いつもその秘められたやさしさに負けてしまいそうになるけれど、それに甘えて万が一死んだりしてしまった場合にはもう私は死んだも同然。だから、たとえ死んでも認めないという想いでまどかを見た。
まどかはしばらく私のことを見つめ返していたけれど、しばらくするとため息ひとつ。最終的には折れてくれた。
(マミさん……ほむらちゃんのこと、よろしくお願いします。絶対、ぜーったい無茶しないように!)
(ええ、任せて。後輩の面倒を見るのは、先輩の役目だもの。)
(……具体的にはどうするの?ほむら。)
私は計画の詳細を話した。いろいろ言いたいことはあったようだけれど、二人とも最終的には実行することを納得してくれた。しぶしぶのようだけれど。
私の話で大きな不安を抱えさせてしまったこと、ついでに話題そらしのスケープゴートにしてしまったことを、申し訳なく思う。
でも、AFOを殺せれば、全部なるようになるだろう。
さあ、頑張りどころよ。気を引き締めて行きましょう、私。
WSC(私が先にコネクトしたのよ!)
というわけで次回、カチコミです。