個性『魔法少女』   作:Assassss

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高評価、誤字報告、ここすき、感想ありがとうございます。

二話同時投稿です。ご注意ください。


現実と向き合わないと……(その2)

次の日。

 

緑谷は家を出る。朝は少しルーティンとは外れたことがあり、SNSでさやかにメッセージで安全確認をした。少しすると、「私は大丈夫!ありがとね!」というコピペ臭のする返信が返ってきた。

 

これなら大丈夫かと普段通り登校し、正門のところに来て、異変に気が付いた。

 

(なんだろう……怒鳴り声?)

 

最初、緑谷はマスコミか何かかと思った。注目度が基本的に高い雄英には取材申請なども多く、こういったもめ事は時々見かけるものだった。

 

しかし今見えるやり取りは、取材交渉にしては怒りのボルテージが異様に高まっているように感じられた。

 

そして少し近付き、応対している人間が誰なのかを悟り、緑谷は一気に興味が湧き駆け寄る。

 

「あの、相澤先生?大丈夫ですか?」

「緑谷……すまん、今見ての通り立て込んでいてな。先に校内に入ってくれ。HRの時間までには戻る。」

 

相澤はすこしうんざりした感情を隠しもしなかった。

相対しているのは普通のスーツ姿の男。特に武装している様子は見受けられないので(ヴィラン)扱いはできないが、しかし少々厄介ごとを持ち込んでいるようだった。

 

「だ、誰だ君?……いや、ここの生徒か。なあ君、『雄英施設一般開放プログラム』って知ってるかい?」

 

男は緑谷に話しかける。(ヴィラン)のような粗暴な話し方ではないことから、ひとまず緑谷は一般人を相手にするつもりで対応することにした。

 

「え?あ、ええ……少しは。」

 

体育祭直後に説明された単語を思い出すのに、緑谷は少しだけ時間を要した。

しかし何故目の前の男がそんな事を言い出すのか、全く心当たりがない。

 

「おいあんた、さっきからその話はまだだって言ってるでしょう、いい加減に」

「な、ならさ!私が校内に入れないっておかしいと思わないか!?」

 

相澤の話を遮り、男は緑谷にまくしたてる。相澤は捕縛布に軽く手をかけた。

緑谷は男の意図が全く把握できず、困惑するばかりだった。

 

「ど、どういうことですか……?あれが始まったなんて話聞いたことが無いんですけど……?」

「私には今、雄英の広い施設がどうしても必要なんだ!そういうプログラムがあるなら、私が使ってもいいだろう!?手続きが必要だって言うならするし、お金も狂った額じゃなければ払うから!」

「雄英の施設が必要?一体……」

「こ、個性の関係だよ個性の!そうしなきゃ、俺はとんでもないことになってしまう!ここじゃないとダメなんだ!とにかく中に入れてくれないか!」

「……???」

 

緑谷は目の前の男をつぶさに観察し、一体何が起っているかの把握を試みる。

 

(えーっと、とりあえず無理矢理入ろうとしてないから(ヴィラン)じゃない、のかな。雄英の広い施設が欲しいって言っているけど、その辺の公園みたいな開けた場所じゃなくて、ここじゃないといけないっていうのか?話を聞く限り、個性の関係で雄英の敷地に入りたがっているみたいだけれど……雄英じゃないとダメって、一体どういうことなんだ?いや、もしかしてこの人は勘違いしていて、それが根本的な問題じゃないんじゃないか?)

 

本人の考える「解決策」が、実は全く解決策となっていない場合などよくあることだ。

緑谷は、この男の状況把握が先だと結論付ける。

 

「あの、あなたの個性は何ですか?」

「え?なんでいきなりそんなことを……」

「えーっと、僕はあなたの身に何が起っているのかまだよく分かっていないんですけれど、開けた場所が必要……なんですよね?でも、僕が思うにあなたが思いもよらない解決方法があると思うんですよ。だから、どう困っているのか教えてください。ここにはイレイザーヘッドもいますし、きっと力になれますよ。」

 

大抵の人間ならば納得できる説明。見ず知らずの人間に対するものとしては非常に親切な部類だろう。

しかし男は、なぜか喚き散らすのを止めない。

 

「私の個性は……ぼ、『暴発』なんだ。えっと、不定期に体が爆発してしまう、まるで病気の発作みたいに。た、多分ここで一番近い開けた場所はここの校庭だろう?だから、そこに連れて行ってくれ!このままじゃ……」

「あ、そういうことならもう大丈夫ですよ、多分。」

「へ?」

 

緑谷は、既にこの状況が殆ど解決したようなものだとホッとする。

そして、相澤を指して安心させるように言った。

 

「この人は、プロヒーロー・イレイザーヘッドです。」

「イレイザーヘッド……?俺の知らないヒーローだが……」

「個性は『抹消』。見た人の個性の発動を封じることが出来る個性です。イレイザーヘッドに見てもらえれば、少なくともその間は大丈夫です!」

 

これで安心するだろうと思った緑谷だが、男は逆に焦りだす。

 

「……そ、それじゃ、た、多分、ダメなんだ!ま、前にも似た個性にやってもらったことがあるんだけれど、ダメだったんだ!」

 

しどろもどろな言葉だった。その様子に、お人よしの緑谷は流石に何か様子がおかしいと感じ始める。

 

「うーん……それなら、その時はどうしてたんですか?」

「えー、えーっと……?」

 

男は、自身の問題の解決策よりも、どうやって整合性のある説明を付けようかということに頭を使っているようだった。

 

「それに、不定期に爆発するなんて大変な個性だったら、とっくに有名になっていると思うし、例えばサポートアイテムで爆発の対策をするのが普通だと思うんですけど……そういうのはどうなんでしょう?」

「う、う、うるさい!ちょっと俺をここの校庭に入れてくれれば終わる話じゃないか!ゴチャゴチャ言ってないで早く入れてくれ!!!」

 

逆ギレのように叫びだす男に、緑谷はどうすればよいか分からなくなってしまう。ただ、この男をそのまま中に入れることに対しては大きな抵抗が出来ていた。

 

「……まあ、こういうことだよ緑谷。」

「先生?一体……」

 

丁寧に対応する緑谷を相澤はしばらく見守っていたが、潮時かとネタバラシのような説明を始めた。

 

「こいつは何が何でも雄英の敷地に入りたいらしい。最初は「雄英施設一般開放プログラム」の申請に来たとか言っていてな。あれは、そもそもそれはまだ始まってすらいない代物だ。そしてまだ発表すらされていない。」

「あー……なるほど、内部情報を知っているのを怪しんで話を聞いているって感じなんですね。」

 

先ほどから薄々感じとっていたことではあったが、緑谷は(やっぱり嘘をついてるんだな……)と男の言動に納得する。

 

「ああ。何故お前がそのことを知っているのかと問いただしたら、今度は個性がどうとか言い出して、とにかく雄英の中に入れろとゴネ始めた。個性が『暴発』ってのもおそらく虚偽だろう。何せこいつが入ろうとしたときは偽名を使って来たからな。」

「だ、だ、だからそれは名刺を間違えたんだって!」

「なら今から役所にお前の個性を確認させて貰おうか。『暴発』なんて個性、俺は聞いたこともないから全く信じていないが、もしお前の言う通り本当に『暴発』なら中に入れてやるよ。」

「や、役所には違う個性で登録されている!つい最近まで別の個性だと思っていたんだ!その、怠慢なのは認めるが、個性の変更届はまだ出していない。」

「じゃあ前回暴発したのはいつだ?そういう個性事故は必ず記録を取られているもんだ。そいつと照合させてもらおう。」

「…………わ、忘れた!多分数年前だ!」

「ハァ……緑谷、この通りだよ。全く、なんて時間の無駄だ……ああ、もう警察には通報しておいた。」

「なるほど……」

 

言動が矛盾だらけであることに緑谷は納得し、これは警察の到着を待つしかないと判断する。

男の方はますます狼狽え、「いいから入れろ!」と連呼する。よく見ると、じりじりと移動して校門への距離を縮められないかと姑息に動いているのが見て取れるだろう。そのような小細工をイレイザーヘッドは一切許さず、男は強行突破という選択肢をずっと封じられていた。

 

緑谷は、何故この男がそれほどまでに雄英の中に入りたいのかを疑問に感じた。

 

「あのー……なんでそこまでこの中に入りたいんですか?」

「だ、だから私の個性が……!」

「仮に入れたとしても、もうここまで騒いじゃったからにはヒーローの監視の目がつくと思いますよ?入っても何も出来ないと思います。これ以上騒いだら罪も重くなりますし、潔く諦めた方が身のためだと思うんですけど……」

「くっ……」

 

思いっきり悔しそうにする男に(何か悪いこと企んでいるんだな……)と苦笑いしつつ、緑谷は純粋な興味と僅かな心配から男の返答を待った。

 

「と、とにかく、それでも私にはやんなきゃいけないことがあるんだよ!とにかく入れてくれ!授業の邪魔をするつもりはない!」

「えっと、何か困りごとがあるなら話を聞きますよ?それとも、何か話せない事情が……?もしかして、誰かに脅されていたり?」

「……そ、そういうわけではないんだ。ただ、その……申請に来たってのはそういうのが必要だって聞いたからで、別に俺がここのネットワークをハッキングして情報を抜いたとかじゃない!」

「ん?聞いた?どこの誰にだ?」

「なんかスーツ着ていた二人組?が話して来て……あ、いや、しま、こうなったら……!」

 

自己申告していた目的が虚偽と確定させてしまい、男はさらに焦り出す。

 

無謀にも強行突破をしようとしたのか、二人を避けて走り出す。個性で脚部に大きなバネを生み出し加速しようとするが、飛び出す直前で転倒してしまう。『抹消』により発動を封じられたためだ。

そして息つく暇もなく、男に捕縛布が巻かれる。

 

「個性使用を確認したから遠慮なく拘束させてもらった。ったく、誤魔化すのもいい加減にしろ。とっくに嘘とバレている、時間の無駄だ。」

 

相澤の捕縛布が生き物のように男に絡みつき、ギリギリと布とは到底思えない音を立て拘束する。

 

「ヒッ……」

 

個性で赤くなった眼光に睨みつけられた男は完全に委縮してしまい、勢いを失ってしまった。

緑谷は(うわあ、教室の時と同じくらい怖いなあ……)と感じた。

 

「大人しく情報を吐くならこれ以上手荒な真似はしない。」

「わ、わ、私が悪かった!もう降参する!止めてくれ!」

「ならここに入ろうとした理由を正直に言え。それと、その二人組の情報もだ。」

「な、名前は知らない……けど、顔写真は持ってる、個性でコッソリ撮影したんだ。金を受け取るときに顔を忘れるかもって思ったからな。」

 

男はスマホを相澤に手伝わせつつ操作し、遠目から顔が判別出来る写真を取り出す。

当然ながら全く知らない人物であった。ただ確かにスーツを着ており、男が嘘をついていないことは判明する。

 

「で、こいつらになんて言われたんだ?」

「なんかポケットに入っている物を持って雄英の中に入ったら100万くれるって言われたんだ!前金でも10万受け取ったから信用した。」

 

男が胸のあたりを視線で指す。相澤が個性を封じつつそれを取り出す。

それは小型の機械のような何かだった。

 

「先生、これは一体……?」

「……詳しいことはパワーローダー先生に聞いてみるが、おそらく小型の発信器、または盗聴器のようなものだろう。」

「なるほど、これを持って雄英の中の情報を盗み出そうとした……ということなのでしょうか?」

「いや、見たところそこまで高性能には見えん。これを持って学内に入ったところでせいぜい生徒の雑談が判別不能な精度で録音される程度だ。雄英の重要情報はそんな簡単に盗聴される場所でやりとりされるわけじゃない。……ただし個性が絡まなければな。おい、他にはその二人から何を聞いてんだ?」

「何も……あ、そう言えば一年生の教室に出来るだけ近付けとは言われたな。特に美樹さやかとかいう生徒を見かけたら近付けって。理由は知らない。」

「な、なんだって……!?」

 

相澤、緑谷は凍り付く。ここ数日は非常に神経質になってしまう人名。二人は警戒レベルを数段引き上げた。

 

「な、なあ、俺一体どうなるんだよ!?警察とか勘弁してくれ!」

「……ひとまず、お前は不法侵入未遂だな。」

「そ、そんな、私は札付きになっちまうってことかよ!?止めてくれ、私はまだ」

 

男の発言は、車両が到着する音に遮られた。パトカーだった。停車後、中から警察官が一人出る。

 

「イレイザーヘッド、不審者が現れたとの通報を受けました!」

「ああ、よろしくお願いします。この男です。」

「や、止めてくれ!ちょっと中に入ろうとしただけじゃないかああぁぁ~……」

 

男の情けない断末魔を聞きながら、相澤と緑谷は男が連行されるのを見届けた。

 

しばらくの間二人は黙っていたが、緑谷が耐え切れずに話し出す。

 

「せ、先生、美樹さんが……狙われたってことですよね?」

「……ああ。今回は未然に防げたが……」

 

相澤はこめかみに深い皺を作り、呼応してため息をつく。

 

そして緑谷に向き直り、真剣な表情で話し出す。

 

「緑谷。これから言うことは本人にはまだ言うな。余計な心労を掛けたくない。」

「は、はい。」

「ハッキリ言うが、美樹の置かれている状況は悪化の一途だ。」

 

薄々感じていたこと、しかし見なければならない現実。緑谷はごくりと唾をのむ。どうか自分の想定以上に悪いことにならならないで欲しいと願いながら。

 

「……どういうことですか?」

「情報が漏れるスピードが速すぎる。表立ってなされる話じゃないが、一昨日の件のように美樹さやかに正規の手続きを踏まないやつは公安から直接処罰が下されることになっている。ハッキリ言ってかなり越権寄りの処罰が、警察が黙認する形で行われる。これは美樹の事を知った全員に通達されている話だ。だから俺たちヒーローや警察は、情報漏洩があるにしても流石にもう少し時間があると思っていた。本質的な解決策にはならないだろうが、そのわずかな時間を使って「美樹の治癒は一定回数以上使うと死亡し得る。無理矢理治させると殺人罪が適用され得る。」という偽情報を流せないか、なんて法律違反スレスレの話がまとまりかけている状況だった。」

 

相澤は卑怯な嘘でしか生徒を守れない状況を残念に思っている。しかし実際、現段階ではこれ以上の対抗策は彼の頭からは出てこなかった。

 

「だが、前の事件からたったの二日経過したところで事件が起きてしまった。俺達の想定の10倍くらいの頻度だ。」

「じゅ、10倍?そんなに美樹さんの元に不審者が?」

「不審者だけをカウントしているわけじゃない。緑谷は当然知らんだろうが、雄英や警察にも彼女に対する連絡や質問が来ている。増加量は尋常じゃなくてな、日増しに倍になっていくレベルだ。こうなっては、一昨日の事件で二人に情報を吹聴していた奴は、他にも手あたり次第様々な所でやっていると考えるべきだろう。このまま行けばどうなるか……」

「………………ど、どうなるんですか?」

 

相澤は言いたくないことを言うために少しの間を要した。

 

「美樹のプライベートというものがほぼなくなる。」

 

緑谷は一瞬息ができなくなる。目は見開いたまま相澤に固定されていた。しかしどこかで逸らしたいとも感じていた。

 

「オールマイトが町中に現れた場合にどうなるかを想像すればおおよそ事足りる。流石にあれほどじゃあないだろうが、例えば彼女の家から雄英までの通学路は危険だ。加えて、寄ってくる連中はファンじゃない。とにかく彼女に個性を使わせようとする連中だ。一昨日のようになりふり構わない連中が多いだろう。」

 

緑谷は、想像以上に暗い未来予想が、とても近い現実だと感じられてしまった。

 

「つまり……美樹さんは」「私はもう普通の生活を送れないってことですか……?」

 

声が割り込む。最近聞きなれた声だった。声の方を慌てて見ると、内部の方から美樹さやかが歩いてきていた。

表情は強い不安に苛まれ、目元に影が出ているように見えた。相澤は、このような不安にさせる話を聞かせてしまったミスを悟る。

 

「美樹さん!?どうしてここに……」

「朝送ったメッセージに返信が返って来なくて変だなって思って、A組のみんなに聞いたらまだクラスにも来てないって言うからなんかあったのかなってちょっと探してたんだけど……」

「あっ本当だ、もうこんな時間だ……」

 

緑谷はスマホを取り出す。未読メッセージの存在を知らせるバッジ通知が来ていた。時刻は、まだ遅刻ではないが緑谷ならとっくに教室に入っている時だった。

 

「……あの、今の話ホントなんですか?私、もうちょっとで普通の生活出来なくなっちゃうんですか?」

 

どこまで聞いていたのかは不明瞭だが、少なくとも彼女の将来が暗いという話は聞いているようだった。

2人は慌てて、どうやって彼女を安心させるかということに頭をフル回転させ始める。

 

「待て早まるな。そうならないために、ヒーローや警察が色々対策を練っている。」

「でも、さっき悪化の一途とか……」

「確かに想定外の状況だが、俺達にもプライドというものはある。警察やヒーロー、雄英の教師が動いているのは知っているだろう。美樹、今はお前を守る経験を積んでいる時期なんだ。最近はお前に被害を与えてしまった。すまないと思っている。だが俺達は、過去の経験を絶対に無駄にはしない。事実昨日の今日で、お前を守ることに成功しているだろう?」

「…………」

 

彼女の不安を取り除こうと言葉を重ねるが、彼女の表情は好転しない。

しばらく沈黙が続く。その間、美樹さやかは何かを言いたそうにひたすら口をもごもごさせていた。何かを決心したように相澤にきつい視線をむけ、しかし直後に何かを諦めその怒りが消失する。

 

説得力が足りない自覚はあった。しかし事実として、彼女の状況を好転させるアイデアは、雄英の教師も、ヒーローも、警察も、誰一人として持っていない。何もできないわけではないが、まるで彼女に絡まる蔦を駆除するためにひたすら葉だけをちぎり取っている気分だった。根元から除去する方法を全く打ち出せていない。

 

相澤はこの状況に対する責任感から彼女の言葉をどんなものでも受け止めようと静かに待っていた。ヒーロー飽和社会において、ヒーロー相手に理不尽な罵詈雑言が飛んでくるのはよくあること。しかしそれで彼女の気が晴れるなら、と相澤は構えていた。

 

しかし、最終的に彼は何も受け止めなかった。

 

「………………守ってくれてありがとうございます。もう時間なので戻りますね。」

「美樹……」

 

トボトボと、彼女は校内に戻ってしまう。

 

2人は彼女を引き留める言葉が見つからなかった。そもそももうすぐHRが始まる時間なので引き留める理由などないのだが、しかし心なしか丸くなった彼女の背中を見て、何か言わなければと感じたのはヒーローの本能のようなものだろう。

 

さやかを見届けた相澤は、緑谷に本音を漏らしてしまう。

 

「悪いな、こんなところを見せて。」

「いえ、そんな……」

「…………緑谷、お前は美樹とそれなりに仲が良いらしいな。」

「え、はい、まあ普通の友達程度には……」

 

結論を先に言わない、相澤らしくない話の組み立て。緑谷は、彼も同じく落ち込んでしまっていることを感じ取った。

 

友達と言っても、A組の生徒程ではない。少なくとも人間関係の関心のトップにはならない、いわばサブ友人としてお互いに認知している。それが現在の緑谷とさやかの関係だ。

 

「俺達ヒーローの、いや、大人の言葉は、彼女に届きにくい。」

「そう……なんでしょうか?」

 

確かに多少壁があるだろうが、緑谷には彼女が(ヴィラン)のような反社会的な不信感を相澤などのヒーローに持っているとは感じられなかった。心理的距離が担任でもない教師相手ならば、そういうものは多かれ少なかれあるだろうと。

 

だが、相澤は満足できない。このような彼女にとっての苦難の時に「助けて!」と言ってもらえないことは一種の『失格』だった。

 

「今の美樹の態度を見ればわかるだろう。多少交流があるとはいえ、あいつは言いたいことを『飲み込んだ』。立場を弁えた行儀の良い態度かもしれんが、一方で不満が溜まっていることを意味する。普通ならもっとワガママだ。『なんでちゃんと守ってくれないのか』ってな。この不満がある限り俺達は、味方ではあっても友人とはなれない。」

「いや、先生やヒーローの皆さんはとても……」

 

なおもフォローしようとする緑谷だったが、言葉が途中で止まる。

相澤は彼の肩に手を置いて、目線を合わせて行った。

 

「だから、お前たちの力が必要だ。」

「僕たちの……?」

 

当然、自分にできることはする。一昨日はそのために轟と飯田と様々な話をした。

だが、その話し合いの中で「これは本当に僕たちが力になれる部分があるのか?警察や雄英などの大きな組織の領域の問題じゃないのか?」という疑念は、ずっと顔をのぞかせていた。

 

「美樹と話をしてくれ。今の美樹に必要な人間は、ワガママな不満を吐き出せる相手だ。」

「僕たちは勿論構いませんけど、美樹さんには鹿目さんたちみたいな友達がもういるみたいですよ?」

「ああ、その点はありがたいと思っている。彼女が社交的なタイプだったのは不幸中の幸いだ。不満を溜めこむタイプだったら間違いなく爆発していただろう。だが、個性の件を話せる人間はまだ少ない。その点、緑谷達は貴重な人材と言える。」

「なるほど……」

 

人材や人脈という観点から自身がどういう立場なのかということを緑谷は考えたことが無かった。

まるで人脈自慢の様だと少し恐縮に思いつつも、「自分にできること」を明確に語られ、使命感が湧き出てくる。

 

「ああ、昨日連絡があった麗日についてだが、おそらく情報開示の許可が下りるそうだ。麗日は美樹と仲がいいからな。協力して美樹のことを見てやって欲しい。俺達大人には出来ない仕事だ。頼んだよ、緑谷。」

「……わかりました。僕に、僕たちに出来ることなら全力で手伝います!」

 

彼女をどうやって元気づけるかを考えながら、緑谷は教室に戻る。入学当初のような「女子と喋っちゃった!」という控えめ(ナード)な思考はもはや一切生まれなかった。

 

 

下校の時。今日は私とまどかとマミさんで一緒に帰ることになった。昨日さやかは一人で下校しようなんて見栄を張ろうとしていたらしいけれど、もうそんな気も起きないようだった。

 

(あなたも丸くなったものね。正直「結局守れていないじゃん!」って言い出すのかと思ったわ。)

(うん…………ま、まあ、守ってくれているのは確かだし……文句ばっか言っても仕方ないよね。)

 

美樹さやかは笑顔を作っていた。だけれど、眉の角度や声のイントネーションに気を付けて見れば、私の知る普段のさやかと違うことが分かる。

 

(……ほむらちゃん、さやかちゃんに付き纏う人がいるって本当なのかな?私、いくら何でもあんなことは早々起きないって思っているんだけど……)

(今さっき、それらしい人がヒーローに連れ去られるのを確認したわ。)

(そ、そんな……)

 

さっきというのは数十分前だ。妙な音がしたので時間を止めて確認したところ、案の定私服姿で潜んでいたらしきヒーローの人が揉みあいになっていた。

以前の事があって、昨日までの私は「これだからヒーロー社会は……」などと呆れていた。しかし流石にマズいと思ったのか、警察は護衛の数を一人の少女に対するものとしては信じられないレベルで増やしたようだ。外で出会う人の半分くらいはヒーロー関係者ではと思えるレベルとなっている。

正直居心地が悪くてこれはこれでどうかとも思うけれど、とりあえず仕事はちゃんとしているみたいだった。

 

ちなみにこれはあくまで警察の推測の話だけれど、おそらく公式に発表がなされていないせいで「今が法律的に有耶無耶にしつつ治して貰えるチャンス!」とか考えている人がいるらしい。今はさやかのことをどうやって外に発表するかを検討中らしく、その後彼女に治してもらいたい場合の明確な手続きと罰則が決められるとのことだ。

しかし今の段階でさやかに突撃すると、その罰則を受けず単に「風のうわさに藁にもすがる思いで来た」となり、罪状が脅迫から迷惑行為扱いとなることから、罪が軽くなることが期待できる……ということを警察やヒーローは恐れているみたいだった。警察の人がそんな話をしていたのを聞いた。本当にそんな都合の良いことが起きるなんてちょっと思えないけれど。

 

(……いつまで続くのかな、こんなこと……)

 

美樹さやかが落ち込みながら言う。監視されながらの生活なのだから、ストレスは相当溜まっているのだろう。

 

(さやかちゃん、今日は私の家に泊まっていきなよ!)

 

優しいまどかはさやかを当然のように気遣う。そういう話なら私だって泊まりたい。どうやってこの話に割り込もうか。

 

(まどか?)

(今のさやかちゃん、見ていられないよ!今までに無いくらい落ち込んでいるんだもん……放っておけないよ。)

 

……ただ、これは言っても良いことが無いことだけれど。今のさやかの精神状態はそこまで心配するほどじゃない。あのループ中での魔女化寸前の時の、目に光を一切宿さないさやかに比べればまだ大丈夫な段階ではある。

 

…………自分で考えておいてなんだけれど、人が絶望して死ぬ瞬間のことをこんなに詳しく知っているのはちょっとどうかと思った。前うっかりマミさんを悲しませてしまった失敗を繰り返さないために、絶対口に出さないように心に刻まないと。

 

(うう、まどか……ありがとう。)

(美樹さん。ソウルジェムの穢れは大丈夫?こういう時は穢れの溜まるスピードが早まるから、気を付けないといけないわ。魔法を使うのも控えた方がいいわね。ほら、見せてみなさい。)

(マミさん……はい。)

 

さやかは、他の人に見えない角度で魂の宝石を見せた。私からはちらりとしか見なかったけれど、なんとなく黒っぽく見えた。

 

(も、もう!やっぱり濁っているじゃない!ほら、貸してちょうだい。)

(ありがとうマミさん……)

 

マミさんはさやかのソウルジェムを浄化する。今となっては骨董品にすら感じるグリーフシードを使って一気に浄化していた。

 

(美樹さん。今は人生の、谷の部分なのよ。)

(谷……?)

(うーん……ほら。希望と絶望は足し引きゼロだって言うでしょう?きっと、人生も良い時と悪い時があると思うのよ。今は悪い時。つまり、これ以上悪いことは起きないんじゃないかしら。実際、事件以降は悪いことは起きていないでしょう?)

(ま、まあ、一応……?)

 

監視されていることを「何も起きていない」と表現するのはちょっといかがなものかと思うけれど、ヒーローや警察がさやかに降りかかる火の粉を防いでいるのは事実だ。……まだ3日しか経過してないけれど。

 

(今は前の世界と……ワルプルギスの時と違って味方も多いし、きっと何とかなるわ。)

(……うん。)

 

マミさんとまどかは励ましているけれど、さやかは半分くらいしか勇気づけられていない感じだった。

まあそんなものかしら、と思っていると、さやかは不意に私に目を向けた。

 

(ほむらは……どう思う?)

(……えっと、どうしてそこで私に聞くのかしら。)

 

こういう時は見守るべきだって思っていたところに声をかけられたので、驚いてしまった。少なくともあのループ中のさやかなら私がいるだけで気分が悪くなっているイメージが私にはある。

経験上、こういう時の口出しは本当に気を付けないといけない。未だにこういう時の正解が何かなんて私には分からないけれど、強く言うとさやかと喧嘩になってしまう。もう何回も経験したことだ。

 

(いやほら……その、たまにはほむらの意見が聞きたいな……みたいな?)

(……どういう気持ちなのかしら、それ。)

(ぐ、偶然そういう気持ちになったの!ほら、とにかく、ほむらは私の状況どう思う?)

 

言い方的に何か隠しているのだとは思うけれど、よく分からない。

とりあえず、私はさやかの未来予想図をそのまま言うことにした。私が言うことはさやかを怒らせることが多いけれど、だからと言って耳触りが良いことを言うのも何か違う気がした。喧嘩になったら……まあ、自分で聞いておいて勝手に落ち込むさやかが悪いということにしよう。マミさんもまどかも納得してくれるはず。

 

(まあ、そうね。少なくとも今後あなたは普通の女子高生としては生きていけないと思うわ。)

(……っ。やっぱり?)

 

これを言うと、マミさんとまどかの表情が少し険しくなった。

別に悪口を言ったつもりじゃないのにこの反応。やっぱり私は口下手なんだと思い知らされる。

 

(ほ、ほむらちゃん、そんな風に言わなくても……)

(まどか、ありがとう、気遣ってくれて。でも、ごめん。私は今、ほむらの意見が必要なの。)

 

…………どういうことなのだろう、それ。私は頭の良いタイプじゃないし、さやかの状況を何とかするアイデアなんて持っていないのだけれど。

 

(……続けていいのかしら。)

(うん。お願い。)

 

怒っているようには見えなかった。本当に話を続けて欲しいらしい。

 

(まず、この状況自体はあと数日で終わると思うわ。こんな状態はコストがかかりすぎるもの。そう長くは続けられない。警察から連絡が来たでしょう?あなたの能力のこと、その力の恩恵を受けたい場合はどうやって手続きを取るかを、正式に公表するって。あなたに直接お願いすることは明確な強要罪、さらに個性不正使用の幇助罪にも問われることになるらしいわ。無理矢理治させる事のデメリットを、治癒のメリットよりも大きくするのでしょうね。)

(じゃ、じゃあその公表の日を過ぎればこの状況も終わるってこと?)

(この状況、『は』、終わるわ。)

(……なにそれ。『は』って。)

(違法に治癒をするデメリットが大きくなるのだから、次は合法的にあなたに治させに来るわ。お金持ちなら警察に圧力をかけたりもするでしょうね。)

(け、警察やヒーローも信用できないってこと?)

(ヴィラン)のようなことはしないでしょうけれど、ヒーローの治癒依頼は来ると思うわよ?例えばオールマイトの治癒依頼とか、そのうち来るのではないかしら?あなたに断る権利はあるけれど、ただでさえ警察やヒーローがあなたの護衛の為にこんなにコストをかけているのに、その上で断ったら心象は悪くはなると思うわ。)

(私……雄英を卒業したらもう一生そんな……監視される生活になるの?)

 

やっぱり、話していて少し冷静さを欠いているように感じられる。『監視』という言葉にひどく怯えているようだった。

監視と言ってもいろいろあると思う。さやかの場合は、一挙手一投足に目を光らされるのではなく、誘拐などされないか見張られるという感じ。そこまで負の感情で見られるわけじゃない。

無理矢理見守られる、という表現の方が近いかもしれない。それでも息苦しいのは確かだけれど。

 

(確かに監視されるけれど、悪いことばかりじゃないわ。あなたが前に言っていたように治癒をした報酬は相応に支払われるはずよ。お金の面では心配無用の人生を送れるはず。公権力の言うことに従うならね。)

 

とまあこんなとことか、と最後に友達らしく心配を取り除けるようなことを言ってみた。

……つもりなのだけれど、やっぱり私の言葉にそういう明るい力はあまりないらしく、さやかは顔を下に向けたままだった。

 

(……私さ、この数日間、学校終わったら帰るだけになってたんだよ。)

(どういうことかしら?)

(寄り道してないの。いつもだったら友達とCD屋に寄ったりカフェで夜ご飯の時間まで話してさ。そういうのが全然ないの。数日くらいだったらこんな生活は耐えられるよ。でも、この先一生こうなの?友達とどこかに一緒に行くのにもこうだなんて、正直冗談じゃない。私がその友達の立場だったら関わるのめんどくさいって思っちゃうし、私が原因で誘拐とかされたらもう一生顔向けできないかもしれない、って思う。お金沢山もらっても、使い道が通販かサブスクの課金くらいしかないよ。旅行とかもってのほかだろうし。みんなでめちゃくちゃ高いお店に行って夜まで騒ぎたかったのに……)

(さやかちゃん……そんなこと……)

 

まどかがネガティブな予想を否定しようとしたところを、さやかが手で制した。

 

(ごめん、まどか。流石に分かるよ、私を元気づけようと耳当たりの良いこと言おうとしてくれていること。マミさんもそんな感じだよね。でも私、現実から目を背けるばっかりじゃいけないんだって思う。ヒーローとか警察の人とか、先生たちはずっと現実と戦っているのに、私だけ都合の良いことばっかり見るのもいけないかなって。だから、ほむらに聞いたんだ。)

(……どうして私なのかしら?)

(ほむらってさ。その、耳に痛いことばっかり言うよね。)

 

私は目つきがきつくなってしまうのを感じた。私だって別に好きでそうしているわけじゃない。ただ、言う必要がある事実を言っているだけのつもりなのだ。

 

(今のあなたみたいに?)

(あ、ちょ、睨まないでって!別に悪口のつもりじゃなかったんだけど……。その、えーっとさ。こう言っちゃ悪いけど、ほむらは友達だと思っていたけれどそういうところは正直苦手だった。なんでそんな嫌なこと言うんだろうって、さ。(ヴィラン)の脅威がって言ってきたときも、なんでそんな話ばっかりするんだろうって思ってた。)

(そんな風に思われていたのかしら、私。)

(まあ、その……口下手って言うのもあるけれど、確かに暁美さんは未来予想に容赦が全くないわよね。でも、暁美さん、これは決して悪いことじゃないわ。私でも現実から目を背けてしまうことはあるもの。)

(……むしろ現実を見ない方がいいことってあるんですか?マミさん。)

(あ、あはは、ずっとそういうお話を聞いていると正直ちょっと疲れちゃうなあって。)

(その、大体まどかが言ったとおりの感じ。でも今はちょっとだけほむらの気持ちが分かった気がする。現実を見ないなんてカッコ悪い、よね。今の私たちの中で、一番現実を見ることができるのはほむらだよ。だから、ほむらに聞いたの。)

 

正直、私がそんな評価を受けているなんて驚きだった。私は特にさやかに「もっと肩の力を抜いた方が良い」ってずっと言われてて、自分でもそういうところは直した方がいいのか、でもAFOは怖い……と少し悩んでいた。しかしさやかから見ると、逆に映っていたらしい。夢ばっかり見るさやかと違って、現実ばっかり見る私……なんてのはちょっと言い過ぎだろうけれど、そんなところを頼られるなんて思ってもみなかった。

 

(正直聞きたくない話ばっかりだけれど、でも私に必要なことだったって思えてる。初対面の時は印象悪かったら、あんなこと言われても絶対受け入れられなかっただろうなあ……)

(でも私は、あなたの状況をいい方向にするアイデアは出していないわよ?)

(向き合えているっていうのが重要なの。言葉にしてくれるだけで……前に進める気がするんだ。私だけだったら現実から逃げるだけだと思う。)

(…………そう。良かったわね。)

 

初めて貰う評価に、私はどう返していいか分からなかった。素直にありがとうと言えばいいのだろうか?……いやでも、なんだかそれは恥ずかしい気がする。かといって「この期に及んでも現実逃避すると思っていたわ。」……というのは、あまりに否定的で止めた方がいいって流石に私でも分かる。

マミさんやまどかを見ると、大喜び、という感じではないけれど、穏やかな表情で私とさやかを見ていた。

 

……なんだか照れてきてしまう。私は話を進めることにした。

 

(けれど、結局あなたが複雑かつ良くない状況なのは変わらないわよ。)

(さやかさん……ごめんなさい、ハッキリ言うけれど、私も、多分鹿目さんも、美樹さんの状況をどうすればいいのか分からないの。魔女との戦いだったらアドバイスできるのだけれど、社会が相手となるとちょっとどうにも……)

(ごめんさやかちゃん。私なりに考えてみたんだけれどどうすればいいのか全然分かんないんだ……)

(ちょ、ちょっと待って!いきなりつらい現実をワッと浴びせないで!)

 

さやかは分かりやすく頭を抱えた。マミさんとまどかは、さやかからの『お許し』が出たせいで一気に本音を言ってしまったようだ。

ただ実際のところ、さやかはまだそんなに現実を受け入れる準備ができていなかったようだった。

 

(とにかく、単独行動は避けることね。一人ということはイコールあなた以外に証言する人がいないということ。人の目があるだけでも犯罪の抑止力になる、そういう話をよく聞くわ。)

(でも……あの事件の時は、私もいた。その時の私、あの人たちの必死さに押されちゃって、何も言えなくて……)

(私も……襲ってくるんじゃなくて「助けて!」って言われて迫られたら、あんまり強く出れないと思うわね……。ごめんなさい美樹さん、こんな頼りないことを言ってしまって。)

(マミさんが謝ることじゃ……)

 

マミさんが謝って、それをさやかが謙遜するやり取りを眺めつつ私も考える。

 

要は怖い顔のボディーガードが隣に居ればいいということだ。泣き落としにかかってくる相手に毅然と「帰ってください!」と言える人物。まどかとマミさんは明らかにそういうのに向いていなさそう。さやかの友達の普通科やヒーロー科の人たちは……ヒーローの養成学校に通っているというだけあって、そう強く出ることができる人は思いつかない。中には変わり者もいるけれど、少なくともさやかが人付き合いがある範囲ではそうだと思う。

 

私は……まあ、そういう役回りは嫌ではないけれど、正直さやかよりまどかの護衛の方が気になってしまう。客観的に見れば護衛が必要なのはまどかよりさやか、それは分かっているけれど、どうしても私はそう感じてしまう。力になれないこともないけれど、彼女に全力でエネルギーを割けるかというと、ちょっと怪しいという感じだ。

 

そこまで考えたとき、私は一人の該当者を思いついた。

 

(……杏子。)

(え、杏子ちゃん?)

(あ、そうだわ!ヤンキーみたいな佐倉さんなら、そういうの得意そうじゃない?)

(え、ど、どうなんだろう?杏子は……うーん、でも、四六時中私に付かせるのも悪いし……うーん……)

 

さやかは悩んでいるようだったが、性格的には合いそうだと思っているらしい。

大体のループ中で、彼女との初対面の印象は暴力的だ。仲良くなったとはいえ、その点は変わらないし、杏子自身もそれを変えるつもりがある様に感じられなかった。ただ、適性が一番ありそうなのは彼女の気がする。その暴力性で、私達を守ってきてくれたことは何度もある。

 

なんにせよ、本人の意思を確かめてみるのが大事だろう。

 

ここ最近はAFO関係で色々あって顔を出せていなかった。そういえば、彼女が釈放される時期って大体8月くらいだった気がする。杏子が今後どうするかも含めて、近いうちに色々話し合いに行こう。




正直雄英に不審者突撃する下り長ったらしいんじゃねえかなあ……って思って書いてたんですが、削ろうにもいややっぱこれ必要だわってなって最終的にはなったので投稿します。

読者の皆さんは興味なかったら飛ばしてください(丸投げ)
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