個性『魔法少女』   作:Assassss

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高評価、誤字報告、感想ありがとうございます。

ういちゃんは30連で来ました。やったぜ。

追記

本話にAFOは出出てきません。


もう嫌ッ!

さやかの日常は、少しずつ悪化していった。

 

異能解放軍の件以降、どこかに情報がばら撒かれたらしい。彼女を狙う人間は日増しに増えていった。

まず、彼女の個人情報が割れた可能性が高い。さやかの電話に非通知電話が大量にかかってくることとなり、電話番号の変更を余儀なくされた。

インターネットでさやかのことを検索すると、大手マスコミでは強力な圧が掛けられているためか、ほとんどヒットしない。しかしアンダーグラウンドな掲示板、ゴシップサイトでは、さやかについてあること無いことの書き込みが増えてしまっている。

 

電話の件では、さやかに心労がますますかかる事件も起きた。電話番号の変更は知り合いに謝りながらも対応してもらっていたが、翌日には再び不審通知が掛かってきてしまったのだ。

雄英や警察が調べたところ、なんとさやかと同クラスの女子が情報を流していたことが判明。彼女の親の友人が治癒を必要としていたらしく、あの手この手でつながりを作ろうとしていたのだった。

 

次いで、さやかの家にすら突撃する輩が現れた。すぐに護衛のヒーローが対処したが、問題なのは情報の流出元。調査の結果、なんと公安の保持するデータが大元だったことが判明した。

これには雄英の教師たちも怒りを覚え、その失敗を問いただそうとした。

当初、あの公安のことだから簡単には失敗を認めないだろうと予想されていたが、意外にもあっさりと失敗を認め、後日補償金を支払うことが伝えられる。お金で解決できるならばさっさと支払いたいという意図だったのだろう。

 

その際、対応に出た目良がある程度内部の情報を教えてくれた。いわく、公安としても業務がパンク状態にあり、細かい事故が多発しているらしい。今回の件も、期日優先で仕事を片付けたことによる確認漏れに起因するそうだ。

そのような細かい仕事を拒望が一任していたらしく、抜けてしまったためにカバーが難しいらしい。

 

しかしそもそも組織という者はチームワークを前提としたもの。そちらの属人化した業務体制も問題であろうと問い詰めると、

 

「ハハ……仰る通り。まあ……ガッツで乗り切る所存です。あいつは700連勤頑張ったのだから、私だって400連勤で音をあげるわけにはいかないということですね……ああ睡眠、睡眠が恋しい……今なら100万払って6時間の睡眠時間を買いたい……」

 

という発言が電話口から出、どう足掻いてもしばらく改善は望めないだろうと判断せざるを得なかった。公安という組織はこの国の頂点に近い地位に居るがゆえに、彼らが機能不全になった際にカバーできる存在はいないのだ。

 

しかしこの悪い状況でも、さやかは笑顔を絶やさずにいられた。彼女がよりどころにしているのは、雄英高校という場所だった。

幸いなことに、普通科のクラスメイトも元々はヒーロー志望が多い。困った友達を助けるというのは、元々彼らがヒーローとしてやりたかったことだ。

クラスメイトの彼らは、自分にできることならと積極的にさやかに声をかけ、なるべく長い時間彼女と話をした。そんな日常の空間がさやかに活力を与え、今ではもはや家に帰りたくないとすら零すほどに雄英という場所に依存を始めている。

 

教室という場でも治癒に起因する細かいトラブルはあるのだが、それでも何とか高校生の日常という体は保たれていた。

 

そんな状況下で、侵入事件から数日後。

 

普通科の授業が終わり、部活動に行く生徒や帰宅する生徒が教室を出る。さやかがそんな彼らを名残惜しそうに見送っていると。

 

「ええと……ああ、いた。」

「あれ、相澤先生?」

「二人とも、少しいいか。」

 

鹿目まどかと美樹さやかに向かって、相澤消太が声をかけた。

 

「私も付いて行っても?」

 

そこに暁美ほむらがぬるりと声をかけた。まどか関係の口出しの速さに、周囲にいたクラスメイトは毎度軽く引いている。

 

「君は……まあ、直接的に関係ある話じゃないが、親しいようだからな、いいだろう。ついてこい。」

 

いつぞやのように説明もなく二人を連れ出す相澤。

 

しかし今回、彼は道すがら時間を惜しんで説明し始めるということは無く、無言だった。正確には、相澤が電話で誰かと話してはいたが、二人に話しかけることは無かった。もともと不愛想な彼が無言であることで、3人は必要以上に圧を感じてしまう。

 

連れてこられたのは校長室だった。緊張しつつ3人が入室すると、そこには根津校長が自慢の体毛をブラッシングしていた。

3人に気が付くと、彼はブラシを机に置く。

 

「おお、来たね。まあお座り。緊張することは無いよ。」

「し、失礼します。」

 

客人用の高級椅子にそっと腰を下ろす3人。その向かいに根津と相澤が腰を下ろす。

 

「さて、わざわざ校長室に呼び出して悪かったね。」

「い、いえ。全然大丈夫です。ええと、一体何でしょう?またさやかちゃんのことで問題が……?」

「安心したまえ、今回は悪い話じゃない。早速本題だけれど。鹿目まどか君に美樹さやか君。合宿に興味はないかい?8月の―――の期間だ。」

 

さやかとまどかは顔を見合わせる。

 

「合宿……ですか?ええと、担任の先生から修学旅行の話なんて聞いてないんですけど……」

「普通科の修学旅行ではないよ。ヒーロー科の生徒たちの林間合宿が予定されているんだ。」

「あー……たしかA組の、三奈たちが言っていたような。試験の結果が悪いと補習地獄で合宿いけないー!って。」

「ああ、一応言っておくと、合宿にはヒーロー科全員で行く。その話はやる気を引き出す合理的虚偽だから気にするな。」

「うん……?ん?え、虚偽?」

 

相澤は軽く流したが、それは冗談で済ませてよい話なのかと違和感を彼女たちは持った。

 

「それで、君たちを招待する理由なのだけれどね。」

「なんかさらっと流されたような……」

「一番の目的は、美樹さやか。君のためだ。」

「私の……?」

「端的に言えば、君の精神的疲労を心配している。俺たちとしても可能な限り手を尽くしているが、それでも限界が来てしまっている。」

「あれで……?あ、すみません、私が守ってもらっている立場なのに……」

 

時々、以上の頻度で来るいたずら電話や不審者のことを頭に浮かべ、失礼な感想が口に出てしまうさやか。慌てて口を押さえる。

それを見た相澤は、特に表情を変えることなく続けた。

 

「いや、気にするな。君はよくやっている方だと思っている。プライベートも無く周囲に色々言われてしまっているだろう?普通の高校生ならばもう少し感情を表に出してしまうだろうと予想していたが……君は俺たちの都合も考慮して動いてくれている。ありがたい話だよ。」

「……は、はい。」

「相澤君の言う通りさ。そもそも害意のある存在から子供たちを守るのは我々ヒーローの、大人の役割さ。それが果たせず、申し訳ない限りなのさ。」

「えっと……どうも。」

 

煮え切らない返答。鹿目まどかもそれとなくすっきりしないという表情だった。やはり実際に被害を受けているという現実から、ヒーローに対する信用が無いのだろうと、相澤と根津は気を引き締める思いになる。

 

「それでなんだけれどね。君にはリフレッシュが必要なのではないかと思ったんだ。一度治癒の件を忘れて、友達同士と話す機会を設けた方が君のためじゃないかと思ってね。」

「おお……おおお!いいですね!合宿、私めっちゃ行きたいです!」

 

さやかは目を輝かせる。彼女にとって、A組の生徒はクラスメイトと同等以上に付き合いが多くなっている。心理的な距離はもはやほぼ全員が親友と言って差し支えない程だ。

 

「遊びに行くような催しじゃないぞ。もともと、ヒーロー科生徒の能力向上のための行事だ。一緒に来るからには、君にも訓練に付き合ってもらうことになる。個性のことも、もう一度調べ直したい。」

「それでも全然いいです!やった、私高校で修学旅行二回も行ける!あ、そうだ。まどかも連れて行っていいですか?」

「ああ。交流があるとはいえ、周りがヒーロー科生だけというのも肩身が狭いかもしれん。君の個性に関しても、今一度調査が必要だと思っていた。構わんぞ。」

「いいんですか?私も行きたいです。ぜひお願いします!あ、そう言えばほむらちゃんは……」

 

まどかは、ほむらを恐る恐る横目で見た。

ほむらは平静を保っているように見えるが、膝の上に置いている手の指が少し白くなっていることにまどかは気が付いた。

 

「すまんな。流石に君たちのような特異な個性を持っている人間に限らせてくれ。こっちにもキャパシティというものがある。そういう訳で、暁美ほむら。悪いが君の参加は断らせて欲しい。君たちの仲の良さは知っている。心苦しい話だが」

「仕方がありません。私は合宿に行かない、ということでいいです。」

「……そうか。理解してくれて助かる。」

 

意外にもあっさり引き下がったほむらを、相澤と根津は妙に思った。

行き過ぎともいえるほどに鹿目まどかにくっつきたがる暁美ほむらのことは把握しており、だからこそ説得に骨を折るのではと予想していた。

返答するほむらの声は少しだけ震えているように感じられたが、確たる意志での返答であることは間違いなかった。

 

山場と予想していた話が簡単に終わり、根津と相澤は安心して話を進めることができた。

 

「それともう一つ、了承してほしいことがあるんだ。合宿場所なんだけれど、当日まで教えられないのさ。」

「えーと……どうしてですか?」

「近年の(ヴィラン)活性化の恐れが原因さ。君たちは、ヒーロー殺しステインと(ヴィラン)連合が繋がっていたことは知っているよね。」

「あー、なんかテレビで言っていたような気がします。」

 

相澤は彼女の社会への無関心さに少しだけ眉をひそめた。ヒーロー科生徒相手ならば反省文を提出させているところだ。

 

「……君は当事者だったのだから、もうちょっと関心を持って欲しかったというのが本音だけれど、まあいったん置いておこう。そのせいで(ヴィラン)の動きが活発化しているのさ。未来のヒーローである雄英ヒーロー科の生徒たちを襲って、ヒーローの評判を底に堕としてやろうと考えている連中がいることも、十分考えられる。最近は、さらに異能解放軍なんて(ヴィラン)組織も活動を始めたという噂もある。というわけで、安全のために合宿場所は秘密にさせて欲しいのさ。それに……美樹さやか君。君のことをつけ狙う人間だっているかもしれないだろう?」

「まあそういうことなら……分かりました。」

 

スムーズに話がまとまり、その後は細かい注意事項の説明、質疑応答の時間となった。

 

その間、根津と相澤は少しの罪悪感を覚えていた。

二人は嘘は言っていないのだが、一部明確には伝えていない事実があるからだ。

 

(今回世話になる予定のワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ。そのメンバー、ラグドールの個性は「サーチ」。彼女の個性ならば、彼女たちの個性に関して分かるかもしれない。個人の秘密を暴くような真似かもしれないが……彼女たちに『何か』をして個性を与えた存在が想定される以上、もはや彼女たちだけの問題ではないからな。他にも彼女たちのような存在がいるかもしれん。)

 

体育祭やステイン事件以降、まどか達はたびたび個性についてきちんと調べるように何度も言われている。

 

だが、彼女たちは積極的ではなかった。法律で義務付けられている検査などはするのだが、それ以上はしない。相澤は信頼できる相手を紹介すると言っているのだが、彼女たちが頼りたいと言い出したことは無い。大抵の人間ならば、自分の個性のコトなのだから喜んでお願いする機会だ。

面倒だから自費で受けてくれと言いたくなることもあった。しかし、個性を用いた検査などは大抵有料サービスであり、かつ緊急性の高い者が優先される。個性単体で見れば困っているように見えない彼女たちに「もっと検査をちゃんとしろ」とは微妙に言いにくい事情があった。

 

相澤の直感では彼女たちの個性に関してはコストをかけてでもするべきと判断している。ラグドールに会うことができる合宿は都合の良い機会だと考え、ヒーロー科の生徒と行くことを推奨したのだった。

 

「……説明するべきことは大体以上かな。もう質問は無いかい?」

「えっと、はい。大丈夫です。」

「何かあったら雄英の先生方に連絡するんだよ。」

「わかりました。」

「それと……なんだけれどね。」

 

根津は一杯の茶を啜って、息を整えた。

 

「君たち、個性に関しては……私たちに喋ってくれるつもりは無いのかい?」

 

真っすぐに見つめる根津の視線に、彼女たちの表情が少し引き締まった。

 

「えっと……どういうこと、ですか?」

「本音を言ってしまうとね。私達雄英のヒーローは、君たちの個性が普通の起源を持っているとは考えていない。普通の起源というのは、親から受け継いだか、突発的に発現したという意味さ。個性はもともと後者が起源だけれど、遺伝することから現代人で圧倒的多数なのは前者だね。」

「……偶然、すなわち後者では何かおかしいのですか?」

 

ほむらがどこか不満そうにそう訊き返す。

 

表には出さないが、根津と相澤は個性のことが明らかになっても、少しもほむらと二人の距離感に変化が無いことを察していた。普通ならば、彼女たちのような強力な個性が発覚すれば、大なり小なり人間関係は変化してしまう。しかし暁美ほむらはそうではなかった。

あらかじめ2人の真の実力を把握していたともみえるしやはり彼女もなにか能力を隠しているのではという疑いは持っているのだが、証拠がない以上は突っ込めない。治癒の件で忙しい彼らは、他のことにコストを割ける状況ではないのだ。

 

「まあ確かに、偶然だということを否定できる証拠は何もない。がしかし、昔からの友人同士だという君たちが似たような強力な個性を持っている。客観的に見て、怪しまれることは当然。それくらいは分かってくれるか?」

「そう……ですね。私が先生の立場だったら何かありそうだとは思います。」

 

まどかは、仕方のないことだと同意した。

 

「理解してくれて助かるよ。……ところで、暁美ほむら。君はどうなんだ?君は中学からの付き合いだそうだが、君はこの二人のように何か個性を隠していたりしないのか?」

「していません。ただし隠していないという証拠は出せません。」

「まあその辺は悪魔の証明だ。深く突っ込むつもりはない。ただ、俺たちが言いたいことはな。厄介ごとは君たちの中で抱え込まず、周りに相談してほしいということだ。」

 

これは本心だった。

相澤をはじめとする雄英の教員たちは、彼女たちの意思決定にヒーローの意見が取り入れられなさすぎ、という心配をしていた。

 

この年頃になれば、大人に対して反抗的になることは珍しいことではない。だがしかし、さやかの治癒関係の問題も、彼女は最初にまどかやほむらに相談する傾向があるのだ。

治癒の問題は、どう考えても彼女たちの手に負えない大きすぎる問題。しかし、それでもさやかはまず二人、次いで周囲のクラスメイトに相談し、そこで解決せず「ヒーローたちに相談してみたらどう?」という助言を受け、そうして初めて大人に頼る、というプロセスを毎回踏んでいた。

彼女たちの仲の良さの表れと受け取ることもできるだろう。しかし、何度もこのような光景を目にすると、自分たちが信用を無くしてしまう行動をとったのかと流石に心配になってしまう。

本人にそれとなく聞いてみても「い、いえ!ヒーローの皆さんは頑張ってくれていると思います!」という答えが返ってくるのだが。

 

いったいなぜ、彼女たちはヒーローに頼らないのか。無理に聞き出すようなことではないが、どうしても興味が惹かれるのだ。

 

「……必要になったら考えさせてもらいます。」

 

今回答えたのは暁美ほむら。彼女たちと同じ目線に立つであろう彼女からの回答は、二人への信用度を測ることが困難なものだった。

おそらくは、信用度を教えたくない、という回答なのだろうと相澤と根津は感じた。

 

 

私の家で、まどかとマミさんが一緒に、四苦八苦しながら書いていた。机にある手紙の下書きを3人で覗き込んでいるので、空間的に狭苦しい。

 

その下書きには、マミさんとまどかからの指摘がごちゃごちゃと重なっている。

 

「もう!これじゃだめよ暁美さん!」

「ほむらちゃん……もう一回一緒に考えよう?私も手伝うから。」

 

私は少しだけうなだれてしまう。二人とも励ましてはくれるけれど、私の文章がおかしくないとは言ってくれなかった。

 

何の文章を書いているのかというと、オールマイトを始めとするヒーローに協力してもらうための手紙だ。

 

不安、不満は色々とあるけれど、8月の指定した日の戦いには、ヒーローに協力してもらうことにした。

 

それで誰と協力するか、という話になったけれど、これはすぐに決まった。当然オールマイト。せっかく最強のヒーローが雄英にいるのだから協力してもらおう。

まどかとさやかの林間合宿の話に同席できたのは幸運だった。林間合宿の予定も、これまたAFOが指定した期間に被っている。つまり、指定期間のオールマイトの行動予定がある程度知ることができたのだ。

いわく、オールマイトは林間合宿に来ないそうだ。なんでもあの人は目立つから……ということらしい。分かるような分からないような理屈だけれど、ともかく本人はフリーである可能性が高いといえる。

 

そこまではよかったのだけど、次のステップが問題だった。オールマイトにどうやって協力してもらうのか、だ。こちらのことを話して協力するのは正直怖いので、正体を隠した形で共闘するのが理想。だけれどそうすると、向こうも怪しんで正体を暴きに来るのではとマミさんは言った。

 

いろいろ話し合った結果、学校にいる間に時間停止で手紙を胸ポケットにでも入れればいい、ということになった。電子メールなら発信元を辿られてしまうだろうけれど、アナログな手紙の形ならこちらのことはバレないだろうと。

 

「手紙一枚で呼びかけるなんて向こうに失礼じゃないかしら……」と心配するマミさんだったけれど、後でいくらでも謝ればいいと私は反論。ともかく大筋はその方向になった。

 

ここまでの話を昨日までにして、今日は細かい部分を詰めようという会を私の部屋ですることになっている。

というわけで、マミさんとまどかが来る前に、私はさっとその手紙をPCで書いて、印刷して、封筒に入れておいた。

 

別にこれ以上何もないだろうと考えていたら、何かを察知したマミさんに「……念のために、暁美さんの書いたお手紙を見せてくれないかしら?」と言われたので、見せた。

 

 

 

「一緒にAFOと戦って欲しいです。8月の―――の期間に奴が居る場所を知っています。

了承してもらえるなら、3日後の―――の時間に、オールマイト事務所正面玄関の机にお返事を置いてください。」

 

 

 

了承してもらえるなら、なんて書いたけどAFOはこの国最大の(ヴィラン)。オールマイトが断るだなんてありえないと正直思っている。

 

しかしこれを読み終えた直後、マミさんは「……確認してよかったわ!暁美さん、一から書き直しましょう!」と叫んだ。まどかもなぜか残念そうな顔をしながらマミさんに同意しているようだった。

そして今は、3人で一緒に文章を考えている。というよりも、二人からの一方的なダメ出しの時間だった。

 

「暁美さん、もっと、もっとちゃんと書かないとダメよ。ほら、まずは「私はヒーローの味方です」って書かないと。」

「……内容からわかるでしょう、そのくらい。敵だったら『AFOを一緒に倒しましょう。』だなんて言いません。」

「そうかもしれないけれど、それ以前にイタズラだと思われるわ。こんな紙一枚じゃ全然心がこもっていないもの。私だったらちょっと疑ってかかっちゃうわよ。」

「……まどかはどう思うの?」

「ごめんほむらちゃん……流石にパソコンで印刷した2行のお手紙じゃ分かってくれないと思うよ。せめてもうちょっとちゃんとした封筒を使おうよ。」

 

使っているのはその辺のコンビニで買った封筒。……他に何を使えと言うのだろう。こういう時に使える高級な封筒でもあるのだろうか。

 

……ともかく、まどかにまで残念がられたのは私にとってもショックだった。

 

「そんな……まどかまで……」

「暁美さんは言葉足らずなのよ!一応知らない相手に説明するのだから、もっと詳しく説明しないといけないわ。」

「必要な情報は全部入れていますよ。他に何かありますか?」

「うーん……何といえばいいのか……あなたのことを信じてもらうための情報が何もないのよ。」

「そんなこと言われても……」

 

正体を隠す時点で、信用も何もないと思っていたけれど、どうにも違うらしい。

 

「あ……そうだマミさん!確か、相手にものを伝えるには5W1Hが大切、って聞いたことがあります!」

「そうね、それがいいわ。さすが鹿目さんね。ええと、いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どうやって……だったかしら。」

「このままだと……「誰が」、「どうして」、「どうやって」……が、無いんですね。」

 

なるほどと思いつつ、私はまどかの説明を聞く。

 

「どうして……そうね。AFOをどうして倒したいのかはちゃんと書かないといけないわ。どうやって、も……もうちょっとこっちの個性、というか能力のことを書いた方が信用されるわね。このままじゃ単なる一般人がお願いしているだけに見えてしまうもの。」

 

私の時間停止のことをどうやって伝えればいいんだという不安はあるけれど、聞いてみるとマミさんの言う通りだと思ってしまった。

 

「残りは、ええと……「誰が」かな。」

「……暁美さん、元の文章だと名乗りすら書いていないじゃない!もう、とっても失礼よ?」

「すみません……」

 

なんだっけ、確か……「名前を出すのはリスクだからとりあえず何も書かないでおこう」としてしまった覚えがある。

確かに差出人の名前を書かなかったのは、手紙として不自然だったかもしれない。

 

……でも、そうすると問題が一つ。

 

「差出人の名前、なんて書けばいいんですか?」

「それは……ううん、確かにどうしましょう。」

「流石に私の名前をそのまま出すわけにはいきませんよ。」

 

この私の意見には二人とも同意してくれたみたいで、うーんと頭を悩ませている。

 

「名前……かあ。ほむらちゃんの第二の名前、ってことだよね。」

 

まどかは名前ということでかなり真剣に悩んでくれているようだった。

その気持ちはとっても嬉しいけれど、正直偽名なんて相当におかしなものでなければ何でもいい。

 

「まどか、気を遣う必要は無いわ。イニシャル取ってAHでいいじゃない。」

「え、え~?もう少しちゃんとした名前にした方が良いんじゃないかな?名前っぽくないよ。」

「……そうかしら?」

「暁美さん。戦いの途中で名前で呼び合うこともあるかもしれないわ。AHはちょっと発音が難しいし、略しにくいわよ。それにこれ、意地悪な読み方ができてしまうわ。」

「…………ああ、なるほど。止めておきましょうか。」

「……そうなんですか?」

 

私も言われるまで気が付かなかったけれど、「アホ」と読めてしまう。……というか、私の苗字と名前を繋げるとアホと読めてしまうのか。嫌な気付きを得てしまった。

まどかは首をかしげているようだけれど、これは気が付かなくていい類のものだろう。

 

「じゃあ英語圏に合わせてHAでいいわ。」

「そ、それも呼びにくいわ。それに略すと……『ハッ!』って感じなっちゃうわよ。」

「プ、フフ……!」

 

マミさんの言い方が結構感情がこもっていて、まどかが噴き出した。

 

「マ、マミさん結構元気な読み方するんですね。」

 

まどかの感想を聞いたマミさんは、少しだけ顔が赤くなった。

 

「茶化さないで頂戴……それで、結局どうしましょうか、暁美さんの偽名。」

「やっぱりちゃんと名前らしい名前にしましょうよ。ほら例えば……お花の名前をなぞってみるとか?ほむらちゃん。好きなお花はある?」

「ええと……彼岸花?」

 

何故彼岸花が出てきたのだろう。自分でもよく分からない。

……でも、彼岸花は上品な感じがするし、見ていて落ち着く気がする。

 

日本では生死を連想させる花だから、もしかしたらまどかは嫌がるかもと一瞬思ったけれど、実際は嫌悪感などは無いようだった。

 

「す、すごいチョイスね。ええと……彼岸花は学名Lycoris、英語だとSpider lilyね。……Homulillyなんてどうかしら。」

「おお……いいですね。なんか大人な感じがしてかっこいい気がします。」

「じゃあ、私の偽名はHomulillyということで。」

 

特にこだわりもないので、これで決まりとなった。

書いている手紙の末尾に「Homulilly」の単語が綴られた。

 

「ねえ暁美さん。話していて思ったのだけれど、あなたどういう格好で戦いに行くのかしら?」

「恰好、ですか。」

「ほら。暁美さんオールマイトと直接会ったことがあるのよね。顔を隠さないとバレると思うし、恰好も普段のものとは変える必要があるわ。」

「……そう考えると、声も変える必要がある、かもしれませんね。うーん、正体を隠すのって考えることがいっぱいあるなあ。」

 

顔と服装のことは頭にあったけれど、声を変えるのは思い至らなかった。さすがまどか、だと思う。

 

「服装は、フード付きのマントみたいなのを着ればいいと思っていました。髪を中に入れればバレないと思います。声は、魔法で変えます。……こんな風に。」

「!?……ちょっとびっくりしちゃった。」

「人間じゃないみたい……ま、まあ、暁美さんとは絶対にバレないだろうから、いいのかしら……?」

 

化け物のものともとれる不気味さを持った私の声に、まどかが少しだけ怖がってしまった。

でもこれで、私と同定されることは無いだろう。

 

「でもそれだと、無駄に魔力を消費してしまうわね。」

「必要以上に声を出さないようにするので大丈夫だと思います。」

「ちょ、ちょっと。それで連携に支障が出たら本末転倒よ。必要なことはちゃんと口に出して、相手に伝えないと。特に暁美さんの場合、ただでさえ言葉足らずなのに。」

「……善処します。」

「ね、ねえほむらちゃん……こんなこと聞くのは、ちょっと無責任かもしれないけれど。」

 

まどかがおずおずと口を開く。

 

「何かしら、まどか。」

「ほむらちゃん、やっぱりヒーローやオールマイトのこと、嫌い?」

「……」

「ご、ごめんね。私大して手伝えもしないのに、こんなこと聞いちゃって。でもね、自分が嫌いな人と一緒に居るとどうしてもギクシャクしちゃうと思うの。戦いの場だったら、連携とかに影響が出ちゃうかもしれない。だから、ほむらちゃんの気持ちを確かめたいなって。」

 

……確かに、相手への好感度で動きに支障が出るかどうか、というのは重要な問題だ。ここは、まどかの言う通りはっきりさせておくべきだろう。

私は目を閉じて、ヒーローのことをじっくり考えてみた。

 

例えば普段街をパトロールしているヒーロー。トップを張る訳ではないが、まじめに仕事はしている、いわばボリューム層のヒーロー達。

彼らのことは……いまだに苦手だ。

彼らヒーローは、確かに一般市民にとって必要な存在だと思う。その在り方に多少疑義はあるけれど、治安維持などには確かに役立っている。個性犯罪、個性災害に対処する意味で、彼らの力は必要だ。税金泥棒と呼べるような存在ではない。

でも、どうやっても好ましく思えない部分がある。まるでフィクションのように、仰々しく振る舞う。表現が難しいけれど、子供相手にショーをしながら仕事をしているような感じなのだ。芸人を兼任している……と言えばいいのだろうか。そして、それを当然のものとして人々は称賛し、熱狂する。そんな人々の態度を、ヒーローも当然だと思っている。

 

小さい子供ならともかく、いい年した大人が何をやっているのだろう。そういう行為を見るたびに、「いいからさっさと仕事を進めて頂戴。」とでも言いたくなってしまう。……いや、彼らはああ見えてテキパキ仕事を進めているらしいから、そういう文句も言えない。けれどとにかく、ああいうおふざけを伴ったような態度を見ていると、私の中で暗い怒りが出てきてしまう。

 

そんなつもりは無いと分かっていても、どうしても「ヘラヘラ」しているように見えてしまうのだ。自分が直面した問題は全部自分の力で解決した、かのように。

 

しかし、今回一緒に戦うのはオールマイト、そして日本でトップレベルのヒーロー達。上澄みの彼らはボリューム層のヒーロー達とは確かに違うものを感じる。個々人によってその性質は色々ある。けれど、なんというか、本物度合いというか、おふざけではない真のヒーローらしさ、的なものを感じる。

 

けれどそんな彼らを好ましく思えるかというと……別の方向で違和感を覚える。

 

例えば、その象徴たるオールマイト。私の彼に対する印象は、「得体が知れない」だ。

 

時間停止を使って、オールマイトの授業風景を盗み見たり、ヒーロー活動をしている様子を観察したことがある。あれほどの功績を持つ伝説の人物。そんな人物なのだから、裏では金や権力に物を言わせて何か汚いことをしているに違いない……と思って私の方で調べてみたのだけれど、まったくそういう様子が無い。誇張抜きで、本当に汚職をしていない。

 

そしてもう一つ、近くで観察していて感じたことがある。オールマイトは、他人を助けることに一切の躊躇が無い。ヒーローなんだから当然かもしれないけれど、どうも何を優先してでもヒーロー活動を優先したがる。前のUSJの時だって、制限時間ギリギリまで活動していたせいで到着が遅れた、という事情があったらしい。その原因は、当然の如く人助け。制限時間が切れて、人前で真の姿をさらすリスクを承知していても、我慢できずに行ってしまった、という感じらしい。

 

その他、まるで人助けをするために生まれてきたかのようなエピソードがゴロゴロ出て来る。本人はそれを一切苦に思っていないようだった。

 

まるで私達人間と異なる思考回路を持つような得体の知れない人。それが私の持つオールマイトへの印象だ。味方であることは間違いないけれど、深く付き合うと何か致命的なところで間違いが起きてしまうような気がする。すべてを肯定できる相手には思えない。

 

……まあ、そうは言ってもあの害獣(キュゥべえ)などと比べれば、理解し合えない相手としては雲泥の差の好感度。過去の功績も合わせて考えれば、嫌いになりきることもできなかった。

 

だから、私は嘘ではないと自信をもって、心配してくれるまどかに答えられた。

 

「オールマイトのことは嫌いじゃないわ。」

「……本当?」

「もちろんヒーローには色々あると思うわ。正直大抵のヒーローはヘラヘラしているように見えるのだけれど……」

「そ、そうなの?私が職場体験に行ったときは、みんな真剣にお仕事しているように見えたよ。」

「……ともかく、オールマイトという個人に限ってみれば、別に嫌いじゃないわ。」

 

まどかはしばらく私の顔を見つめていた。

 

すると、何かを悟ったのか、安心した顔になった。

 

「わかったよ、ほむらちゃん。ほむらちゃんが心の底からそうだって言ってくれているんだって思えたよ。」

「ありがとう、まどか。」

「……私も安心したわ。背中を預ける相手に、信用は必要不可欠よ。私からはちょっと言い出しにくいって思っていたのだけれど、暁美さんの本心が知れてよかったわ。」

「……それは良かったです。」

「ええとそれで、私達一体何の話を……ああ、そうだったわ。手紙よ。」

「あ、そうでした。ええと……あれ、足音?」

 

耳を澄ますと、ドタドタという乱暴な足音が聞こえてきた。

 

かなりの速度でこちらに近付いてきている。誰だろうと考える間もなく、バタンと勢いよく家の扉は開かれた。

 

現れたのは、美樹さやか。肩を上下させ、額には大粒の汗が浮かんでいる。

そしてその顔は真っ赤で、表情は険しいものだった。

 

「……ゴメン、しばらくここに居させてもらってもいい?ほむら。」

 

追い詰められた声。また治癒関連でトラブルがあったのだろうか。

 

「いいけれど……何があったのかしら?」

 

さやかは、今日も治癒の依頼でどこかの病院に行っているはずだった。今日の朝、銀行口座の預金が8桁になって、目指せ9桁だなんて宣っているのを聞いた。

あんなに元気だったのに、一体どうしたのだろう。

 

「治癒……あああもう、あんな連中やだ!」

 

さやかは頭を掻きむしる。尋常ではない様子に、まどかとマミさんも心配して駆け寄った。

 

「ど、どうしたの?美樹さん。とりあえず、お水を飲んで落ち着いたらどうかしら……?」

 

さやかは水を受け取ると、グビッと飲み干し。

 

「マミさん……みんな。」

 

そして、大声で宣言してしまった。

 

私、もう治癒の依頼受けるのやめる!!!

 

 

その日も治癒の依頼をこなしたさやかは、帰路についていた。

 

「はぁ~……お金につられて3人連続でやってみたけど、なんかすごい疲れた……流石にこれ以上は止めといた方がいいかな。でもあの人、結局何だったんだろう。」

 

本日の治癒の3人目は異質だった。部屋の中で明らかに訓練を受けたSPのような強面の人物が二人、その真ん中で椅子に座っている人物が対象だった。

その人物はマスクをかぶり、微動だにしない。

 

流石に気味悪くなったさやかは、声をかける。

 

「あのー……えと、今回の治癒の依頼者は、あなたですか?」

「縺吶∪縺ェ縺??√?繧ク繝?け繝溘Λ繝シ繧峨@縺?°繧臥ァ√↓縺ッ蜷帙?蟋ソ縺ッ隕九∴縺ェ縺?s縺?縲ゅ〒繧ら「コ縺九↓遘√′萓晞?シ閠?□繧医?」

「は……?」

 

日本語ではない別の言語だった。授業で習っている英語でもないために、さやかは欠片も聞き取ることができない。

 

「縺励°縺励?∝」ー繧定?縺城剞繧翫?闍・縺?・ウ諤ァ縺ョ繧医≧縺?縲よ悽蠖薙↓莉サ縺帙※螟ァ荳亥、ォ縺具シ」

「……そ、そーりー、あいあむじゃぱにーず……」

「すみません美樹さん。こちらの方は予定が詰まっているので、手早くお願いします。」

「あ、はい……」

 

後ろにいた公安の職員に急かされ、さやかは話を打ち切る。どうにもその人から、余計なことは喋らないで欲しいという意図が感じられた。

 

そうして彼女は治癒の仕事をこなす。その間、SPらしき二人は微動だにせず、たださやかの動向を注視するだけ。

その様子に軽く恐怖を感じたさやかは、剣を出さずに治癒を終えた。

 

「……お、終わりました。」

「縺翫♀縲∵悽蠖薙↓逶ョ縺瑚ヲ九∴繧具シ∵─隰昴☆繧九h?」

「隕九∴繧九h縺?↓縺ェ繧翫∪縺励◆縺九?ゅ♀逾昴>逕ウ縺嶺ク翫£縺セ縺吶?」

縺ァ縺ッ莠句燕縺ョ邏?據騾壹j縲よ?縺悟嵜縺ョ蝗ス螳カ螳牙?菫晞囿荳頑怙驥崎ヲ∝?区?ァ縺ョ菫晄戟閠?r豐サ逋偵@縺ヲ縺?◆縺?縺代◆遉シ縺ィ縺励※縲∽サ雁セ?0蟷エ蛻??遏ウ豐ケ萓帷オヲ菫晞囿蜊泌ョ壹?蛻カ螳壹?∽クヲ縺ウ縺ォ蜿句・ス蜊泌ョ壹↓髢「縺吶k莠、貂峨?蝣エ繧貞セ梧律繧ょ女縺代&縺帙※縺?◆縺?縺阪◆縺では事前の約束通り。我が国の国家安全保障上最重要個性の保持者を治癒していただけた礼として、今後20年分の石油供給保障協定の制定、並びに友好協定に関する交渉の場を後日も受けさせていただきたい

 

公安の人間と、SPらしき人物が知らない言語で会話をするのをさやかは何もできずに見ていた。完全に置物状態だった。

そんな状態に気が付いたのだろう、公安の人間がさやかに声をかける。

 

「……今日はもう帰りなさい。ここにいる理由は無いでしょう。」

「え、でも報酬のお話とか」

「我々の方で良しなにやっておく。だから、と・に・か・く。今日はもう帰りなさい。」

「は、はあ……」

 

さやかは追い出されるように部屋を出た。

 

これまでささやかな楽しみだった、依頼者の喜ぶ顔が見れなかった。さやかは不完全燃焼という様子で帰路についたのだった。

 

「疲れたぁ……今日は寄り道せずに帰ろ。まあ、私より大変な人なんて沢山いるんだから、私が頑張らないとね。魔法少女さやかちゃんはみんなの為に頑張るのだ!って感じ、忘れないようにしなきゃ!」

 

さやかはむん!と大げさに拳を空に突き出す。夕日に照らされ、心なしか拳は輝いて見えた。

 

「あ、そうだ。ほむらの家でなんか話し合いをしてるんだっけ。でも護衛ヒーローが付いてきているなぁ……あー、もうホント煩わしい。なんで見られながら生活しなきゃいけないのよ。まあ、必要なのはわかるけどさぁ……

……ん?」

 

さやかの眼前に、こちらに向かって走ってくる女性が見えた。片手には何やらレンズの付いた機器を持っている。

誰だと考える間もなく、この女性はさやかの前に立って口火を切る。

 

「あなたが、治癒の個性を持っているという美樹さやかさんですか!?」

 

ああまたか、と美樹さやかは感じる。先ほどの決意のような気持ちは霧散してしまった。

 

最近よく出会う手合いだ。規則を無視して、彼女に治癒を願う人間。身内に、現代医療ではどうにもならない傷を負ったか、高額の医療費が払う経済力が無いか。そのような切羽詰まった人間が、喚くとすら表現できるほどに彼女に懇願する。

初めのうちはさやかも感情を動かしかけ、危うく規則を破りそうになり護衛のヒーローに止められたことがある。がしかし最近は、面倒という気持ちが勝ち始めていた。公安に言われたとおりのことを言って、追い払う。第三者から見れば、共感性の無い人間に見えるだろう。

 

自分が助けを求める相手に対してこんな感情を抱くなんて、とさやかは自己嫌悪に陥る。しかし、面倒だという気持ちに嘘はつけなかった。

 

「……すみません。治癒関係は私勝手にやっちゃいけないことになってるんで、そういうのはヒーロー公安委員会に言ってください。」

「はぁ!?何を寝ぼけたことを言ってるんですか。私はあなたがその治癒の個性で多額の報酬を手にしていると聞いて、真実を確かめに来たのです!」

「え……?」

 

さやかには意図がさっぱり分からない。だがしかし、ひとまず目の前の女性がさやかに対し義憤を燃やしていることが感じ取れた。

 

「答えてください!数千万単位の報酬を治癒するだけで頂戴しているというのは、真実ですか!?」

「え?ま、まあものによってはそうですけど……あの、一体なんなんです?」

「私は配信者。世間にはびこる不公平を見出し、世に訴える正義の者です!美樹さん、あなたは死に物狂いで病と闘っている人々、医療関係者をどう思っているんですかぁ???」

「…………」

 

さやかは、目の前の女性が片手に持っている機器が撮影用だと気が付いた。

 

「日々彼らが、あの方々は死に物狂いで日々を戦っているというのに、そんな風に気楽に歩いていていい身分ですよね!医師の方々は小さいころから机に齧りついて努力しているというのに、その苦労でなせることをあなたは数秒で終わらせる。まさに、医療システムの敵であることに気が付いていますか?????」

「………………」

「答えないということはつまり認めるということですねぇ!何の苦労も無くその力を手にし、とんでもない報酬を受け取って今みたいにノンビリ暮らしている。雄英高校に通われているというのですから、どうせヒーロー科に落ちて普通科に入ったのでしょう?なぜヒーローとしての行動をしないのですか?学校なんかよりも病院に毎日行って苦しむ人々の為に身を粉にして働くべきなのでは?強い個性を持った人間として、弱者を救済するのは当然の義務

うるさい帰れ!!!

 

頭に来たさやかは、この人物の持っていた機器を殴って破壊してしまう。

後で判明したことだが、この女性は迷惑系動画投稿者だった。彼女の個性は透明の壁を作りだすもの。このように突撃した人物が怒って機器を破壊しようとすると、その壁で機器を守り、殴る様子をさらに撮影して後にネットに流して炎上させる、という悪質な行為を繰り返していた。

 

しかしさやかの個性は治癒であることを聞いた彼女は、増強系並の力を持っていることなど夢にも思っていなかった。

 

透明の壁ごと機器を破壊され、彼女は慌てている。その間に我に返ったさやかは、その場から逃げほむらの家に転がり込んだ。

これが、さやかがほむらの家に転がり込んだ事の顛末だ。

 

この日以降、さやかは治癒の依頼を一切断るようになってしまった。




というわけで、林間合宿のイベントは

・ほむら: VSAFO
・まどか、さやか: 林間合宿
・マミ: 杏子の迎え

というスケジュールです。

・クソ倫理観投稿者
この役ジェントルにしようかなぁ……って悩んだんですが、やめときました。原作見た感じみみっちい(推定本人基準)犯罪しかしなさそうで、さやかを襲った場合公安にバチ切れされて全力で潰されることは想定するかなあと言う感じです。あと、根はまあ悪い奴じゃない……と、多分、きっと、好意的に見れば原作から判断できるので、(表向き)悪いことしてない一般女子高生を襲ったりはしないだろうという感じです。
あと原作キャラに不必要にヘイト集めるのもアレだし、コイツここでしか出さないからなあということもあります。

・公安
治癒の個性に対して色々と思惑はあった。省略したシーン含めて大体こんな感じ。

公安「ファッ!?怪我をほぼすべて治せてしかもステインと戦えるJKだってぇ!?めっちゃ今日個性やん!接待しまくって何としても将来ヒーローになってもらうんや!できれば公安直属でオナシャス!」
異能解放軍「僕のところにおいでよぉ……お金いっぱいあげるよぉ……個性も使い放題だよぉ……!」
公安「うぐぐ、面倒な連中が。でもオールマイトが回復したから……これから(ヴィラン)を捕まえまくって信用を取り戻すんや!」
電話番号ばら撒きニキ「治癒を求める方はこの番号まで!(治癒を求める人のことしか考えていない、完全に善意)」
公安「おい馬鹿やめろ」
自宅突撃ニキ「ここが治癒の子の家かぁ~テンション上がるなぁ~」
公安「個性使ってなくてもマジで死刑にするぞコラ」
クラスメイトを使って情報引っこ抜きママ「さやかの情報を売らない子はうちの子じゃありません!娘を返して……」
公安「頭湧いてんのかこのクソ民衆」
クソ動画投稿者「よろしくさやかネキー!!!!wwwwwwww手始めに壊したカメラの賠償オナシャス!wwwwww」
さやか「もう嫌!治癒止める!!!」
公安「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!!ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!!)」
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