ちょっと短いですが、多分次が長いのと、キリが良いのでここまで投稿します。
あとヒロアカ要素薄め注意、そして曇り回です。
しばらくは杏子の話が続きます。
スマホで調べてみて、私は軽く頭を抱えた。
「……もうネットに戦闘の動画が沢山上げられているわ。一応削除はされているけれどイタチごっこね。」
「あー……もう隠し通せない感じか?」
杏子はポリポリとポッキーを口に含みながらそう尋ねた。マズい事態なことは分かっているようだが、あまり悲壮感は感じられない。
「無理ね。」
「はぁー……そうかあ……」
マスキュラーという
「プロヒーローを多数虐殺した
「マスキュラーを圧倒した謎の少女はヴィジランテか!?」
「『血狂いマスキュラー殺し』の個性は武器生成か、それとも増強系か?」
「大物
……なんて感じのニュースが、先ほどからネット上に大量に出ていた。
私は、それを杏子に見せながら話す。
「ほら見て……あなたのニュースが一杯あるわ。」
「ほーん……?」
「いや、杏子、『ほーん』じゃなくて、これめっちゃまずいんだよ!」
「そんなことアタシに言われてもなあ……」
佐倉杏子は、どうもこれがどうして彼女にとって悪い事態なのかを理解していない。おそらく、彼女がインターネットに疎いせいだろう。佐倉杏子は、パソコンはもちろんスマホも持っていない。彼女の生活では携帯のキャリアの契約など出来ないのだ。それにそもそも彼女はネットに興味が無いので、インターネットの世界は知識の中だけの存在なのだろう。デジタルタトゥーの概念など持ち合わせていないはず。
「佐倉さん……これからどうするつもり?」
巴マミが、とても心配そうに尋ねる。
「いやー、別にやることは変わんないでしょ。」
「その……もうちょっと、落ち着いた生活はできないのかしら。」
「えー?私に
「そ、そうよ!佐倉さん、このまま暴れてたら絶対ヒーローに捕まっちゃうわ!」
巴マミは、杏子の肩を掴んで叫ぶ。
「もうこの世界に魔女なんて居ないのよ!ソウルジェムの心配もほぼなくなって、せっかく平和に過ごせる世界になったのに、どうしてそんな乱暴な……」
「う、うるせえ!じゃあどうやって生きろってんだよ!」
杏子はマミさんを乱暴に振り払った。彼女は怒っているというより、少し怯えているようだった。
「なんか知らねーけど……ネットに載っちまって、私はもうまともな生活できねーんだろ?」
「そ、そんなことないわ!そうよね、みんな!」
「「「……」」」
そう私達に振るが、反応は芳しくない。
マミさんは杏子の為に否定するが……正直、これからの彼女はとても厳しい立場だ。ネットに顔が割れたのが致命的だ。今後遅かれ早かれ、名前が特定されることだろう。ネットの暇人にか、はたまた動画を見た警察にか。そうしたら彼女の出自も当然バレる。
杏子の父親が持っていた教会だが……この世界にて改めて調べてみると、
そして、素直に自首することもできない。正当防衛かもしれないが、少なくとも個性の無断使用などで
そんな未来を予感しているのか、杏子はマミさんに背を向けて言った。
「ほらな。マミ、誤魔化す必要はねーよ。ま、いつかこんな時が来るとは思ってたさ。」
「で……でも、このままじゃいつか捕まってしまうわ!」
「……正直、あのオールマイトとかいう奴が来たら勝てる気がしないけどよ、まあやるだけやってみるさ。そんでもってダメだったら、まあまたそん時に考える。」
そう話している佐倉杏子は、声は暗くはなかったが、決してこちらに顔を見せなかった。
「い、嫌っ!」
マミさんは、リボンで杏子を拘束し、後ろから抱きしめた。
「嫌よ!行かないで、佐倉さん!警察に捕まったらもうほとんど会えなくなってしまうのよ。そんなの私は嫌!ねえ佐倉さん。私の家で一緒に暮らしましょう!」
「えっ?!いや、一緒に暮らすって」
「お金は私が何とかするわ。だから佐倉さん、もうどこにもいかないで。私、あなたと一緒に過ごせた時間が本当にうれしかったの。昔、あんな別れ方をしてしまって、ずっとそのまま独りぼっちのままなんじゃって、ずっとずっと後悔してた。でも、あなたがここに戻ってきてくれて、それで時々でも一緒に居られて、私ずっと楽しかった。もう私、お友達と離れ離れになったりしないって。なのに、また佐倉さんが私から離れようとしてる……嫌よ、逃がせるわけない!」
マミさんは泣きながら、リボンをきつく縛ってそう言った。
佐倉杏子がマミさんと一緒に居る時間は、というか私達のところへ来るのは、2、3日に一度程度。フラフラしているのが性に合っているからなのか、毎日来るわけではない。でも、杏子が来ると、マミさんはそれは嬉しそうにするのだ。そして決まって「家に上がって頂戴!美味しいケーキと紅茶を仕入れたのよ!」と言う。マミさんはほぼ毎日ケーキを作っているのだ、杏子が来た時に備えて。魔法があることを考えても、負担は大きいだろうに。そして今、そこからさらに彼女の為に負担を増やそうとしているのだ。
マミさんに当てられてか、さやかとまどかも切り出す。
「あ……あのさ、杏子。パパとママに聞いたんだけど、なんか小学校とか中学校がいけなかった子が手に入れられる資格?があって、それを手に入れると、なんか仕事が受けられるようになるらしいよ?あんまいい仕事には就けないだろうけど、少なくともお先真っ暗ってわけじゃなくなるらしいんだって。その……私も協力するからさ、もう少し……平和的な?生き方、出来るよう私も協力するからさ。人襲ったりお金奪って生きる生活止めてみない?いくら悪い奴からばっかり奪ってるからって、そういうの、私あんまりよく思えないんだよね……私が言えることじゃないかもだけどさ。」
「わ、私も……ママにいろいろ聞いたんだけど、ママの会社が最近
……二人の出した案は、お世辞にも状況を改善できるか怪しいものだ。さやかの言っているのはおそらく中卒や高卒の認定試験のことだろうが、この国ではそれは就職の前提条件に近い。まどかの案も、会社から見ればヒーローを雇う場合に比べて報酬が安く済むという利点はあるかもしれないが、杏子の現在の評判を考えると、彼女を雇っていることがバレた場合の企業のリスクは非常に大きいと言わざるを得ない。
けれど、それでも。二人が自分なりに知恵を絞り、言葉をかけたということは分かる。杏子は二人に対し、
「……ありがとよ、いろいろ考えてくれて。」
と返した。彼女の基準なら、とても柔らかい返事だった。……でも、やっぱり
するとマミさんが、
「暁美さん!貴方からもなんとかお願いして頂戴!」
と私に言った。
……私か。私は彼女に対して……彼女の生き方にどうこう言うつもりはない。ループ中も、彼女との関係はずっと一時的な協力関係だった。ワルプルギスの夜を倒すためという共通の目的の。今この時に繋がる周回でも、特別何かあったわけじゃない。それに、彼女はさやかに入れ込んで、魔女化したさやかと心中してしまうことも多かったため、あまり彼女に入れ込む気にはなれなかった。
でも、その私に対する淡白さが、助けにもなった。あの長い時間遡行の旅の中、大体はキュゥべえを殺害する私の敵になった。かつて仲が良かった友達が、私を罵倒したりしてくるのは……どんなに控えめに表現しても、辛かったのだ。そんな中、佐倉杏子は相対的に一番仲良くなれる存在だった。……そういえば、私は彼女から渡されるお菓子、全部受け取っていた。
そんな彼女がずっと牢屋に入ってしまうことを考えてみると……心にずきりと痛みが走った。……やっぱり私、佐倉杏子とは……離れたくないみたい。まどかに対する感情とは、別ベクトルの感情がある。
だから、私はこう呼びかけた。
「私は……あなたがどんな道を歩もうとも、口出しするつもりはないわ。」
「あ、暁美さん、そんな!」
「でもあなたが望むなら、……公文書をうまく誤魔化して新しい戸籍を作るくらいはしてあげてもいいわよ?」
「……!」
そう言うと、マミさんは少し感激したように私を見た。
「ア、アンタまで堂々と犯罪宣言すんな!」
……このくらいダメだろうか。私の遵法意識もちょっとおかしいのかもしれない。兵器を盗みまくっていた私だからだろうか。
ともあれ、マミさんは改めて杏子に、嬉しさを期待を込めて語り掛ける。
「で、でも!暁美さんもこう言っているし!これからもみんなで過ごしましょう、佐倉さん!貴方の抱える問題は、私たちが何とかするから!」
勝手に私も協力することにされたけれど、不快感は無い。さやかとまどかも同じようだ。
佐倉杏子は、拘束されたまま黙っていた。私なら時間停止で表情を盗み見れるが、さすがにそんな無遠慮なことをする気にはなれなかった。
……数十秒か、数分かした後。
「みんな、ありがとな。……アンタたち、私の、最高の友達だよ。」
その声は、少し泣いていた、杏子の心が確実にあった。
「だからなおのこと一緒に居れねえ!」
突然、佐倉杏子は魔法を発動し、多節棍でマミさんを弾き飛ばしてしまった。さすがベテランと言うべきなのか、私たちは全く前兆をとらえられなかった。マミさんもそのようで、かなりの衝撃を受けたらしく、起き上がる様子が無い。
いつの間にか拘束を解いた彼女は、やっぱり私たちに顔を見せることはなかった。そしてそのまま魔法少女の姿になる。……私には鎖が巻き付いている。身動きが取れない。
「杏子ちゃん、どうして……!?」
まどかが、とても悲しそうに叫んだ。
「アンタたち、確かヒーローが沢山いる雄英高校に行くんだろ?……それなのに、アタシみたいなのとつるんでちゃどう考えても迷惑だろ?」
「そ、そんなことないよ!」
「そうでなくても、聞いた限りじゃ私は世間の爪弾きものになっちまったんだってな。多分、一緒に居ると、アンタたちが考えてるより遥かに迷惑掛かっちまうと思う。」
杏子がこちらに振り向いた。涙がポロポロとこぼれつつも、顔は笑っていた。本当に柔らかい笑みだった。この笑みは、ループ中に杏子がさやかと心中しようとしていた時に見せる顔にそっくりだった。
そんな顔を向けられて、さやかとまどかは涙を流したまま立ち尽くしている。
「アンタたちと過ごした時間、本当に楽しかったよ。まどかはもうちょっと強気になれば絶対強い魔法少女になれると思うからな。さやか、アンタ私と違って誰とでも仲良くなれるんだから、あんまりアタシに固執するんじゃねえぞ。ほむら、アンタ心強かったよ。一緒に戦えてよかった。ありがとな。」
佐倉杏子は、私たちの顔を一人ずつ見ながらそう言った。
「マミ……あ、ごめん、気絶させちまったか。悪いけど伝えといてくれないか?その……『マミと食うケーキは世界で一番美味かった。』って。」
「やだよそんなの!勝手に決めんな!」
さやかは怒りながらそう言うが、彼女を止めることは出来ない。物理的にも、言葉でも。
「お、お願いだよ杏子ちゃん……いかないでよ!こんなお別れ、私嫌だよ!」
まどかはそう言って、おずおずと彼女に近付く。が、杏子は鎖で壁を作り、進路を妨害してしまった。
「……アンタが、アンタたちが言っていたこと、どれも大変そうなものばっかりだった。アタシを本気で助けようとしてくれたこと、本当に嬉しかった。だから、そんな友達に、アタシは迷惑かけたくないんだ。……今まで、アンタたちに借りを散々作っちまったって思ってる。だから、もうこれ以上借りは作りたくねえんだ。」
「ま、まっ、て佐倉、さ……」
マミさんが意識を取り戻したようだが、杏子が何か仕込んだのか動けないらしい。それでも、彼女に懸命に手を伸ばしていた。
「あ、あなた、これか、ら、独り、ぼっちで……そん、なの、ダメ……!」
マミさんの言葉は細いものだったが、杏子の耳には届いたようだ。彼女はそれを聞いて、すこし顔をくしゃっとさせた後、ギュッと目をつぶった。
そして私たちに背を向けた。
「……アンタたちのこと、一生忘れない。じゃあな。」
そういって、佐倉杏子は魔法少女の身体能力をフルに使い、遠くへ行ってしまった。
巴マミの嗚咽は、やけに大きく響いていた。
◇
アタシの行動が間違ってることくらいわかってる。
まどかは泣いていた。アタシにはない他人へのやさしさってやつを、人一倍持ってるヤツだ。そして友達の不幸を見ると、まるで自分がそれを経験したかのように泣いちまう。アタシの行動が、誰がどう見ても、まどかを苦しめている。だから、もうアタシがまどかの近くにいることなんてできない。
さやかも泣いていた。昔のアタシにそっくりで、魔法少女の力を使って正義とか、人助けをしようとしてたヤツ。そして、自分の醜い心を自覚して、危うく死にかけたヤツだ。アタシがいないと本当に危なかったな。でもそれを乗り越えて、さやかは多分強くなったと思うんだ。だから、さやかはこれからの人生も多分大丈夫、アタシがいなくても。
ほむら、アンタと一緒で本当に心強かったよ。アタシが強いとは言っても、やっぱりアタシ、一人で戦うのは心細く感じてたみたいだ。魔女と一緒に戦う時、時間停止だけじゃなくて、アンタ自身が強かったから、安心して背中を預けられた。それに、いつもそっけないから分かんなかったけど、アンタも私のこと友達だって思ってくれてたんだな。でなきゃ危ない橋渡ってまで協力するなんて、アタシに言わないから。今までありがとな、ほむら。
そして……巴マミ。
マミには、今までさんざん迷惑かけちまってた。初めて出会ったときもそうだったし、再会してからもそうだ。アタシは結局、自分のことしか考えられない悪い娘で、だから手を差し伸べて一緒に居てくれたマミの優しさを直視できなかった。今でも覚えてる。私の為に、魔法少女としての訓練を一緒にしたこと、変なネーミングセンスの技名を考えてくれたこと、ケーキを作ってくれたこと。どれも一生忘れられない、アタシの宝物だ。それにマミ、アンタ独りぼっちが嫌なんだっけ。……本当にごめん、またこんな思いさせて。
……どうして、素直に「悪いことは止めておとなしく暮らす」だけで全部解決するのに、こんなに抵抗を感じるのか、自分でも不思議だ。
でもアタシ、今までやってきたことに今更目を背けるつもりなんてないんだ。アタシだって、さんざん悪いことやってたヤツが突然心を入れ替えますって言って、それでお咎めなしってなったらふざけんなって思う。
魔法少女時代は……今と比べるとそりゃもう、盗みやらなんやら、悪いことを沢山してきた。辛い魔法少女生活のストレス発散っていう理由もあった。でも、最初の頃はそういうのなんか嫌だった記憶がある。悪いことだからな、当たり前だ。
……そうだ、思い出した。父さんに「お前は人の心を惑わす魔女だ」って言われて、「じゃあ魔女らしく悪いことたくさんしてやるよ!」って八つ当たりを始めたのがきっかけだった。あの時から、私は悪い子になっちゃったんだな。心のどこかが痛むけど、もうそうして生きていくしかないって思ったんだ。
そんな生活をしてきて、もうそれにアタシは慣れちまった。必要性が薄れたから数は減ったけど、結局この世界でもやってることは一緒。それに、一時期死活問題のグリーフシードを手に入れるために、
……それで、突然悪い子を止めよう、ってったって、アタシどうすればいいのか分かんないよ。アタシが使ってるお金、全部盗んだものだ。他にどうやってお金を手に入れて生きていけばいいのか、全然イメージできない。マミはその分のお金を出してくれるって言ってたけど、多分やせ我慢だ。なぎさもいるんだから、いつかきっと限界が来る。で、アタシは……ネットに載ったとか何とかで、お金稼ぐためのバイトとかも難しいんだろ?迷惑かけるばっかりになっちまう。
そうでなくても、アタシは多分もうこれ以外の生活、できないんだろうな。だって、これ以外どうやって生活していけばいいのか、全然イメージできないんだ。イメージできない生き方に切り替える勇気なんてアタシにはない。……
……本音を言うと、これからのことは、怖い。あのオールマイトとかいうバケモノに目を付けられたら逃げられる気がしないし、No2のエンデヴァーというヤツもとても強そうだった。正直、牢屋にぶち込まれる未来しか見えない。そうなったら、アタシの持っているグリーフシードやストーンはいつか尽きて終わりだな。それに、この世界ではアタシみたいなのを
まあ、悪いことしたバチが当たる番、ってことなんだ。今までさんざん悪いことをしてきたんだ、仕方ないさ。
……つらい時も、アイツらとの楽しい思い出があれば、アタシは多分耐えられる。だから、ありがとう。じゃあな。アタシがいなくても、幸せになってくれよ。アタシの最高の友達。
・佐倉杏子
魔法少女という過酷な状況に適応した生活をしたせいで、平和に暮らせる社会になったらどう振る舞えばいいのか分からなくなっている。
特に(ヒロアカの)現代社会で学校に行っていない、ネットもやっていない、などといった理由で社会的つながりが魔法少女の(杏子入れて)5人しかない。
そして、他4人に迷惑をかけないために彼女たちから離れたために、佐倉杏子は本当に独りぼっちになってしまった。