「九裂!起きてくれ!」
「ん・・・?どうした?」
太陽に激しく体を前後に動かされて起こされる。にしても太陽が僕を起こすなんて珍しいな・・・
「俺たち、どこかに拉致監禁されたみたいなんだ!一体どうすれば・・・」
拉致か、ということは相手の目的は恐らく・・・・・・まぁすぐにわかるだろう。
「とりあえずここから出ないことには始まらないだろうな。出口はわかるか?」
「ちょっと待ってくれ・・・こっちから空気が流れてる」
太陽の声がする方へついていく。それにしても僕まで一緒になった理由がわからないな。人質としての価値なら太陽だけで十分なはずだし、もしもの保険なのか別の理由があるのか・・・こればかりは問いただしてみないとわからないな。
「部屋に戻れ」
扉を出てすぐ後頭部に銃口が突きつけられ、太陽も同じ状況になっている。普通に考えればそうなるよな。こういう時は確か━━━━
背後の銃対応は瞬発力が命だ。あえて押し返すことでセミオート銃の点火装置を無力化できる。
仕組みは知っていても実際にやることになるとは思わなかった。知識はどれだけ貯めても困らないしこれからは色々と聞いていくことにするかな。そのまま背後のやつの顎に一撃を与えて撃退したはいいものの想像以上に大きい音を出してしまい他の連中に気づかれてしまった。
「太陽、流石に全員を相手してる余裕はないぞ。ここは一旦逃げるしかない」
「逃げるって言ったってどこに・・・」
「上だ」
僕が示したのは排気口。人が通るには多少狭いが何とかなるだろう。
「ためらってる時間もないしさっさと行くぞ」
「あぁ・・・」
排気口に入り追手に気づかれることはなかった。それよりもさっきから太陽の顔がなんかヤバい
「そんな痛そうな顔してどうした?」
「ここに入るために間接外して超痛いんだけど・・・何で九裂は余裕そうな顔なんだ」
「余裕も何も、僕は間接を外さなくてもこのくらいなら普通に通れる。体が柔らかければ通れるところも多くなるし、何より、毎回関節を外してたら依頼をこなすにも時間がかかる。関節を外すのが最善ならそうするがそうじゃないのにやってたら非効率だ。あと、普通に痛いは嫌だろ」
「それはそうだけど・・・」
「っと、出口だ。電気がついてるし誰かいるだろう、注意しておけよ」
排気口から出て太陽はすぐに関節を嵌め直した。その際に非常に痛そうな顔をしていたが声を出さなかっただけましだろう。それよりも・・・・・・いるな。
「関節外しができる一般人とはさすが夜桜の教育だな」
声がした方に太陽がすぐさま銃口を向けた。少し前の太陽ならここまで早い反応はできなかっただろう、裏社会に慣れてきたということか。
「だが強すぎる肥料はかえって根をダメにしてしまう」
「まるで太陽は夜桜にふさわしくないみたいなことを言うんだな、『運び屋』花輪」
『運び屋』人も物も運ぶ誘拐のプロ。こいつなら夜桜屋敷のセキュリティを突破できる可能性も0じゃない、問題はどうやって屋敷のセキュリティを知ったか・・・
「俺に何のようだ⁉︎」
花輪に銃口を向けたまま太陽が話しかける、が
「下手なおどしはやめた方がいい。
「死ね」
花輪に向かって腰から銃を取り出し発砲する。
「こっちは一瞬の躊躇いもなく撃つか。その判断は間違ってないが実力が追いついてない。その甘さ、弱さが家族を危険に晒すんだ」
「六美に何かしたのか・・・?」
「応える義理はない。悪いことは言わないから大人しく部屋に・・・」
花輪が言い終わる前に太陽が動き出す。だが冷静さを欠いた今の太陽は動きが単純、首を狙ったはいいものの簡単に防がれ、組み伏せられてしまう。
「多少大きく育ったつもりだろうがタンポポはタンポポだ。ヒマワリほど大きくは慣れないしユリのように香り高くも慣れない。たとえ最良の土と肥料を与えられたとしても」
「スパイがそんな目立ったら致命的だろ。僕からしたらタンポポくらいがちょうどいい」
花輪に向かって走り出し太陽と全く同じ軌道で攻撃を仕掛ける。今のこいつは両手が塞がってる、さっきみたいに防がれることはない。単調な攻撃だとしても何とか体制を崩して太陽を解放すれば数的有利は得られる。
「遅い」
「ガァッ!」
そんな甘い考えは通用することはなく腹部に強烈な蹴りを受け吹っ飛ばされた。
「片やすぐに冷静さを欠いて単調な攻撃をし、片や自分の力量を見誤った動きをする。今の君たちは夜桜にふさわしい花を咲かせることができるか?申し訳ないがこれ以上手間が増えないように四肢を・・・」
「待って」
誰かが部屋に入ってきた。いや、この場面で来るのは一人しかいないか。
「約束通り参りました。太陽たちを解放してください」
やはり最初から花輪の狙いは六美だったか。
「お初に夜桜当主殿」
「どういうことだ・・・⁉︎」
「少しは自分で考えることを学習しろ。僕ら自体に誘拐するほどの価値はない。強いて言えば夜桜の関係者ってことくらいだ。そして当主の六美を守るのは凶一郎、プロなら勝てないことを知っているから直接狙うことはない。あとは簡単な話だ」
「危ない目に合わせてごめんね太陽。九裂くんのいう通り彼らの目的は最初から私よ。たとえ誘拐のプロでも私の守りを掻い潜るのは不可能。だから人質交換のカードとして太陽たちを狙ったの。屋敷の指輪認証のセキュリティ情報が事前に盗まれてたの。堅井先生を赴任させたのも指輪を一時的に孤立させるため。もちろん堅井先生は一般人だし何も知らない。業界の人間だと警戒させるし必ず足もつくからね」
六美の言っていることにはある程度納得できる。けどなんで僕と太陽が夜桜の人間だとバレてるんだ?
「僕らが結婚したなんてどこにも言っていないはずなんだがそういう情報も指輪に入っていたのか?」
「それは多分、凶一郎兄ちゃんが原因かな・・・」
「・・・・・・・・・・・・はい?」
何でここで凶一郎が出てくるんだ?
「SNSで私たちの結婚について発信してたみたいで・・・」
スパイのくせにSNSすんな!自分から情報発信してたら本末転倒じゃねぇか。
「結構この業界、SNSしてる人多いんだよ」
色々とスパイとして終わってねぇか?
「話が済んだなら終わりにしてくれ。水やりの時間だ」
花輪の部下に体を縛られ、頭に袋を被せられた。暗い・・・。
「屋敷に送り返せ」
「グフっ‼︎」
鳩尾に強い衝撃が走り、そこで意識は途絶えた・・・・・・
目を覚ますと屋敷の天井が目に入った。
「目が覚めたかい」
「そうか・・・・・・太陽と六美は?」
「太陽は凶一郎のところにいる。六美に関しては依頼人への受け渡しが3日後とわかった。それまでに六美を取り返しにいくよ。とはいえ、九裂は今のままだとまた返り討ちに合うのが目に見えてる」
「・・・・・・別に戦えなくてもいいだろ。戦うだけが全てじゃないし」
「私たちみたいになれとは言わないけど最低限戦えるようにはなりな」
「でも・・・」
「つべこべ言わない、さっさと準備しな」
死なないようにがんばろ・・・・・・
次回はオリジナル回を予定しています