そんなのもう書くしかないじゃんね。ヒロインは…どうしよ…
「ふぅ……今日はここまでにするか」
ある中学校の道場で、一人の少年が竹刀を振るっていた。少年は時計を見ると稽古を終え、手早く着替えてから道場を出た。冬の時期ともあり外は既に暗く、白い息を吐きながら少年は学校の寮に向かう。
「ん?」
荷物を自分の部屋に置き、他の生徒達より少し遅れた形で食堂に入ると、何やら食堂が騒ついていた。
「どうした?」
「あ、シュラ。お帰り〜」
「また後輩達を扱いた後に一人で稽古か?毎日凄いな…」
「これくらいは当然だ。で、何があった?」
シュラと呼ばれた少年が他の生徒達に何があったか訊くと、一人の生徒が「これ見ろよ」と言ってスマホの画面を見せる。
「………世界初の男性IS操縦者?それも日本で、だと?」
「そ、そのせいで今世界がてんやわんやしてんの」
「だろうな、コレを機に他の男性IS操縦者が見つかれば、世界の情勢は一気に揺れ動く。しかし今になってそのような存在が見つかるとは…」
「その男でISを動かせる奴って誰なんだ?」
「俺たちと同じ中3の受験生で、なんか受験会場で迷ってうっかりISを触って起動したんだって」
「え、何それ…」
「名前は?」
「名前は確か…織斑、一夏…?だったかな」
「織斑だと?」
「ん?どうしたシュラ?」
「……いや、何でもない」
織斑という苗字を聞き、ある人物が頭に浮かんだシュラだったが、そう言うと食事を始めるのであった…
「それで、一斉に行われたISの適正検査でISを起動させ、世界で二人目の男性IS操縦者になってしまった訳かい、シュラ?」
「ああ…このような騒ぎになるとは…すまん、オルフェ」
時が少し流れ、シュラは今日本から故郷であるファウンデーションに帰国していた。現在は友人であるオルフェと共に車で移動していた。
「アウラ女帝陛下にも面倒をかけてしまった。プライベートジェット機で本国まで送ってくれるとは…」
「今の君の状況を考えれば当然の事さ。あまり気にしないでくれ」
「…そうだな、それより今はこれからについて考えなくては…」
「ああ…この後、宮殿で母上と今後について話し合ってもらう。と言っても、大体の方向はもう固まっているが…」
「IS学園か…高校生活はオルフェと共に過ごす計画が全て無駄になってしまった。全く面倒だ…」
「それに関しては本当に残念だな…しかし、本心では実は結構嬉しいんだろう?」
「分かるか?」
「ああ、君は分かりやすいからね」
顔を見合わせてふふっと笑い合い、そうしてお互いの近況を話している内に宮殿へとたどり着いたのだった…
「では、シュラは今年の春よりIS学園で過ごす。という事でよいな」
そして宮殿に着いた後は、謁見の間でアウラ女帝と対面していた。
(相変わらず50代には見えん…)
シュラは玉座に座る一見すると幼い少女に見える女性を見てそう思うと、アウラは「すまんな、シュラ」と言う。
「出来る事なら本国の育成機関に入れたかったのじゃが、急速に発展を遂げておるとはいえ、ファウンデーションは独立してまだ数年しか経っておらん。まだ様々な問題を抱えた上でお主を守り切れる保証が出来ぬ…はぁ、せめて10年後であれば…」
「!謝る必要はありません陛下!寧ろ、これまで様々な施しを受けたにも関わらず、このような問題を引き起こしてしまい申し訳ありません…!」
「気にするでない。お主はいずれオルフェと共にこの国を導く存在の一人じゃ、この国の方針を考えればこれくらいは当然の事じゃ…さて、そろそろ次の話に入るとするかの」
「次、ですか?」
「ああ、お主の
「!?そんな、流石にそこまでして頂く訳には…!」
「シュラ、今の君はISの適正がある事が分かった事で君の重要性は更に高まった。言ってしまえば、君のこれからで国が大きく左右される可能性もある。そんな君が他国で3年間過ごす事を考えれば、出来る限りの自衛手段を持たせるのは当然だろう?」
「ぬぅ…」
「そう言う事じゃ、既に開発チームを結成しておるし、お主のISの操縦訓練の為に色々準備しておる。時間ギリギリまでISに慣れてもらうからの、シュラ」
「……はっ!このシュラ・サーペンタイン、与えられた恩寵と期待には必ず応えてみせます!!」
シュラの強い宣言にアウラは満足そうに頷きオルフェもその様子見て笑みを浮かべる。こうして、シュラのファウンデーションでのIS訓練が始まったのであった…
最初は、ISの知識を学びながら実際に動かす訓練。シュラはファウンデーションの量産型ISであるジンに乗り込み、ISに慣れていった。
基本的な動きが出来るようになった次は、武器の使い方を学んでいく。的となるドローンの動きを段々と複雑にさせていき、レーザーポイントの光を飛ばす事で、回避の訓練なども行った。
最後に教官との実戦訓練。一対一、同じジンを扱う教官と模擬戦を繰り返す。
この三段階の訓練を、シュラは入学までの短い期間で、一度実技試験でIS学園に赴くのを挟みつつ、こなしていった…
「どうじゃ、シュラの様子は?」
「想定より上手くいっているようです。ああは言っていましたが、ISを使える事がシュラは相当嬉しいようです。元々非常にストイックな性格ですので、モチベーションの向上も相まって恐ろしい速度で成長していると教官が申しておりました」
シュラの成長を執務室でアウラがオルフェから報告されると、アウラは「そうか」と返して手元の資料を見る。
「IS適正はAランクじゃし、これは、任命した方が良いかもしれんの…シュラをファウンデーションの国家代表候補生に」
「というか、このままいけばほぼ確実にファウンデーションで最初の国家代表はシュラになるかと」
「じゃろうな…明日でシュラはファウンデーションを発つ。その前に正式に国家代表候補生として任命するとしよう。後は専用機か…」
「既に専用機は完成しており、今日の最後の訓練が初の搭乗になります」
「予想通り、近接特化型か…シュラらしいの」
「全くです」
シュラの最後の訓練、何時もはジンで向かい合っていたシュラと教官は、それぞれ別のISを身に纏っていた。
「どう?初めての専用機の感覚は」
「ジンとはまるで別物だ…!自分の身体のように動かしやすい…!」
「でしょうね、これまでの訓練で得た君のデータを元に調整を重ね、ファウンデーションの最新技術をふんだんに盛り込んだ機体よ。ジンとは比べ物にならないでしょう。
シュラは自身の専用機…シヴァと自分の一体感に感動していた。そして相対する教官のISは…
「ファウンデーションの最新鋭機、ルドラ…!相手にとって不足無し…!今日こそ勝たせてもらい!」
「悪いけど、この機体を背負っている以上、そう簡単に負ける訳にはいかないのよ。全力で叩き潰すわよ!」
「そうでなくてはなっ!!」
そして試合開始のアラームと同時に2機は舞い上がり、最後の実戦訓練を開始した。
「では、行ってくる」
「ああ、向こうでも元気でな」
そうして翌日、シュラは再びプライベートジェット機で日本に向かう前に、オルフェとお別れの挨拶をしていた。
「憶えているか?私が初めて日本に向かう時もこのような会話をした事を」
「そうだな。だが今は、あの時よりは心配していないよ」
「ああ、私もあの時より強くなった。新たな剣も手に入れた」
そう言ってシュラは黒い剣のアクセサリーが着いたネックレスを手に取り、嬉しそうに笑う。
「…シュラは、どこまで強くなるつもりなんだ?」
「無論、最強になるまで…それこそ、あのブリュンヒルデを超えるその時までな」
「織斑千冬か…IS学園では彼女が教鞭を執っている。憧れの人物の元で強くなれるなんて、君からしてみればかなり嬉しいだろうね」
「ああ、皆に迷惑をかけた事は申し訳無いとは思っているが、それと同時に私は歓喜している。ISを駆る事が出来る事を、更なる高みへ至れる事を…!」
「シュラ…」
「オルフェ、私は陛下に助けられ、そしてヤマト夫妻の元で暮らし、お前の友になれた事が本当に幸福だったのだ。この恩は、いつか必ずファウンデーションに貢献することで返してみせる!」
「…ああ、期待して待っているよ。我が国の、未来の代表さん」
「ははは!気が早いな!無論、国家代表にはなるがな!ではな、ヤマト夫妻とキラさん、後イングリッド達をよろしく頼むぞ」
「ああ、任せてくれ」
そうして二人は笑いながら別れていったのであった……
「…そういえば、IS学園は女性ばかりだが、シュラは大丈夫だろうか…?流石にハニートラップはあの能力があるから大丈夫だろうが…」
オルフェは飛び去っていくプライベートジェット機を眺めながら、そう呟いたのであった…
そうして迎えたIS学園の入学式当日…
(き、気まずい…)
ある教室で周囲の女子生徒達から視線が集中し、顔面が蒼白になっている男子が居た。そう世界発の男性IS操縦者こと織斑一夏である。一夏は幼馴染である篠ノ之箒に目を向けるが無視され、次にもう一人の男子生徒であるシュラに目を向けるが、シュラは周囲からの視線を気にする様子は無く、前をジッと見ていた。
(何でこの状況で平然としていられるんだよ…!)
(落ち着かん…!)
一見落ち着いている様に見えたシュラ、実際はそんな事は全然無かった。それもその筈。今まで自分の人生を強くなる為に使い、中学も男子校だったシュラは…女性に対する免疫が圧倒的に不足していた…!
(失念していた…!そもそもISは本来女性にしか扱えぬもの…!当然ISのパイロットを育てるこの学園は女子生徒ばかり…ブリュンヒルデに会えるという事ばかりに目が行ってその事を忘れていた…!)
そうこうしていると副担任の山田真耶が入って来て自己紹介が始まった。そうして一夏の番が回って来たのだが…
「織斑君?織斑一夏君!」
「はいっ!?」
極度の緊張により呼ばれているのに気付くのにも一瞬遅れ、立ち上がる。
「お、織斑一夏です、よろしくお願いします………以上です!!」
ズゴッー!!女子達がズッコケ、一夏が困惑していると…
パァン!!
一夏の頭に出席簿がとんでもない速さで突き刺さり音が響くと同時にシュラは教室に現れた存在に口角が上がる。
「いった〜…げっ、関羽!?」
パァン!!
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者」
二度目の出席簿が振るわれ、一夏が頭を抱えている内に千冬が真耶と少し話して教壇に立つ。
「諸君、私が一年一組の担任の織斑千冬だ。君たちを一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。私の言う事はよく聴き、よく理解しろ。出来ない者には出来るまで指導してやる私の仕事は弱冠15歳を16歳までに鍛え抜くことだ。逆らってもいいが私の言う事は聞け…以上」
『キャァァァァァァァァァァァ!!』
「!?」
千冬が現れた事によって発生した女子達の歓声に一夏はギョッとする。
「本物の千冬姉様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れてこの学園に来たんです!北九州から!」
「私は埼玉!」
「千冬様にご指導頂けるなんて嬉しいです!」
「私、お姉様のためなら死ねます!」
生徒達の様子に千冬は呆れてため息を吐く。
「毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ、感心させられる…それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?……で?挨拶も満足に出来んのか、お前は」
「いや、千冬姉、俺は……」
再び出席簿が振るわれ、一夏の頭に命中する。
「学校では織斑先生と呼べ」
「…はい、織斑先生…」
一夏が千冬を千冬姉と呼んだ事でクラスが少し騒つくが、自己紹介が進み、シュラの番が回って来る。
「シュラ・サーペンタインだ。ファウンデーションから留学という形で来ているが、中学も日本に留学していたのでこちらの文化にはある程度詳しいつもりだ。趣味はトレーニング、特技は剣技だ。三年間よろしく頼む」
パチパチと他の生徒が拍手し、これでシュラの自己紹介は終わり…
「それと、一つ言っておく事がある」
とはならなかった。
「私には目標…いや、使命がある。必ず果たさねばならぬ使命がな。それは…」
そう言ってシュラは千冬に目を向けると、不敵な笑みを浮かべて続けた。
「そこにいる織斑千冬…世界最強のブリュンヒルデを倒し、新たな最強となる事だ」
『!?』
「…ほう」
シュラの宣言によりクラスが一気に騒然とする。一夏は訳が分からずに周囲をキョロキョロと眺めていた。
「千冬姉様に勝つ…!?」
「何言ってるのあの人…?」
「もしかしてちょっとヤバい人…?」
生徒達がシュラを見てヒソヒソと話していると、千冬が挑発的な笑みを浮かべて口を開く。
「随分と大きく出たなサーペンタイン。世界最強はそう安くは無いぞ?本気で出来ると思っているのか?」
「言っただろう、コレは使命だと。祖国ファウンデーションの為、私は貴様を倒す。コレは確定事項だ、精々その時が来るまで首を洗って待っていろ、ブリュンヒルデ」
二人は笑いながら睨み合い、今にも戦いが始まりそうな雰囲気になっている。真耶があわあわと慌て始めると…
「そうか、なら精々頑張るといい」
そう言って千冬が圧を発するのを止めると、シュラも戦意を納める。真耶と生徒達がホッとすると…
ゾワッ…!
「っ!!」
パァン!!
破裂音が響き、一夏は自分が叩かれたと思い咄嗟に頭を抱えるが痛みがやって来ず、何だ何だと思いながら周りを見ると…
「くっ…!」
「ほう、コレを防ぐか」
そこには出席簿をシュラに向けて放った千冬と、それを白刃取りで防いだシュラの姿があった。
「どうやら本当に私を超えるつもりのようだな」
「初見なら見切れなかっただろうな…!先に餌食になった者がいた事に感謝しよう…!」
「…それって俺か!?」
一夏がツッコミを入れると同時に千冬が力を抜くとシュラも手を離す。
「言っておくが、年上には敬語を使え、後私の事は織斑先生と呼べ、サーペンタイン」
「ふっ、コレは失礼しました織斑先生。これからご指導のほど、よろしくお願い致します」
シュラがそう言うと千冬は教壇に戻って行き、シュラは席に座った。クラス全体が唖然としていたが、その後は何事も無くHRを終えたのだった…
(織斑千冬…アレほどとはな…技の速さを見切った上に
「やはり最強は、織斑千冬か…!」
パァン!!
「織斑先生と言っただろうが」
「………」
最後の最後で油断してしまったシュラの頭に、教壇から高速で投げられた出席簿がクリティカルヒットしたのであった…
ここのシュラ君はヤマト夫妻のとこで育ったので良い子です。ていうかファウンデーション組皆良い子になってるよ!やったね!