ハッピーエンドに導く方法   作:ギリギリニート

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特製お風呂

 

 

 

 

立香達が教室を出て行ったあと俺はあるものを作っていた

 

えーと、ここがこうで、これをこうして

 

 

『491:転生系名無し なぁ、お前ら...これって』

 

 

『492:転生系名無し キャンプの動画でよく見ていた...』

 

 

そう、俺が今完成させようとしていたのはドラム缶の風呂である

 

立香達は乙女だ

 

どうせ今頃お風呂に入りたいと思っているに違いない

 

汚いままだとストレスがたまりやすくなる

 

それは避けたいのだ

 

 

「おっ! 坊主。 何やらおもしれーことしてるなぁ」

 

 

キャス二キが興味深そうにドラム缶を見る

 

 

「お風呂を作ろうとしているんですよ、見ての通り血まみれですから」

 

 

「フロ? なんだそりゃ?」

 

 

「温かい水に入って、体の汚れを落とすんです」

 

 

「へぇー、そりゃいいな!」

 

 

そう言ってドラム缶の中を見る

 

 

「こん中に水を入れるのか? にしては汚ねぇ気がするが」

 

 

ドラム缶の中は酷く汚れており、このままでは温かい泥水を作るだけだろう

 

そこらへんで拾ってきたドラム缶なので当たり前と言えば当たり前なのだが

 

 

「安心してください、僕に考えがあるんです」

 

 

俺はビルドドライバーを腰に巻く

 

 

「何をする気だ? 坊主」

 

 

キャスニキは首をかしげる

 

 

フェニックス 消防車

 

 

レバーを回しスナップライドビルダーを展開

 

 

Are you ready?

 

 

「変身」

 

 

俺は『フェニックスボトル』と『消防車ボトル』のトライアルフォームに変身する

 

左肩の『BLDエマージェンシーショルダー』から小型の放水銃を取り出す

 

ドラム缶のなかに放水銃の洗浄液をかける

 

そして左腕の『マルチデリュージガン』から水を高圧で放出する

 

汚れがあっという間に落ち、ピカピカになった

 

 

「そんな使い方もできんのかよ⁉」

 

 

キャスニキはビルドの性能に驚いているようだ

 

綺麗になったドラム缶を予め組んでいた木材の上に置き、中に水を入れる

 

右手の人差し指に拳ぐらいの火の玉を作り、水を張ったドラム缶の中に入れる

 

するとボコボコと水が沸き立ち、湯気が立ち込める

 

水温は42℃少し、熱いくらいだろうか

 

これでドラム缶お風呂の完成である

 

 

『502:転生系名無し なにを食ったらビルドで風呂沸かそうと思うんだよwwww』

 

 

『503:転生系名無し やばいw 腹よじれるwwwww』

 

 

『504:転生系名無し うーんこれはラブ&ピースwwwwww』

 

 

実験感覚で作ってみたのだが予想以上の出来だ

 

後は体育祭などで使われるテントとブルーシートで中が見えないようにする

 

辺りを見回すとキャスニキの姿が消えていた

 

おそらく立香達を呼びに行ったのだろう

 

俺はそこで一つの問題に気づいた

 

このままでは何人も同じ風呂に入ることになる

 

それではお湯がどうしても汚れてしまうだろう

 

水、大量、かけ流し...

 

ある方法を思いついた、かなりぶっ飛んでいるが理論上可能だろう

 

俺はすぐに取り掛かることにした

 

 

 

俺が仕掛けが完成し、運動場に設置した特製お風呂へと向かう

 

 

「す、すごい!マシュ!お風呂だよ!お風呂!」

 

 

「先輩!虚空からお湯が出ています!」

 

 

「ありえない!ありえないわ!」

 

 

どうやら間に合ったようだ

 

 

「おやおや、皆さん お揃いで...」

 

 

わざとらしくニヤニヤとしながら歩み寄る

 

 

「か、カナくん...」

 

 

気まずそうに立香は俺を見る

 

俺の顔を見るまで俺をビンタしたことを忘れていたのだろう

 

余程、風呂に入りたかったのだろうか

 

 

「これは僕が汚れを落とすために作ったもの何ですが?」

 

 

「「「え?」」」

 

 

三人の顔が絶望の表情に早変わりする

 

なんで悪役ムーブするときにその顔をしないんだよ

 

おかしいだろ

 

 

「そんな!私たちもお風呂に入れてよ!」

 

 

「断る、気に食わないからと言って暴力を振るう女なんか嫌だね」

 

 

「くっ! それは...」

 

 

立香は言い淀む

 

彼女の様子を見るにかなり負い目を感じていたらしい

 

強引に風呂に突撃するくらいしてほしかったのだが…

 

まいったな

 

 

「おいおい、流石にそれはひでぇぜ?坊主、お嬢ちゃん達はお前との戦いに勝ったんだ」

 

「敗者が勝者の言う事を聞くのが道理ってもんだぜ?」

 

 

キャスニキが俺を睨む

 

 

「はいはい、分かりました。どうぞご自由にお使いください勝者様」

 

 

そういって俺は、特製お風呂から離れていく

 

助かった、これで立香達を風呂に入れる口実ができた

 

悪役ムーブって難しいなぁ

 

 

「カナくん...」

 

 

「藤丸、あんな奴ほっといて早く汚れを落とすわよ!」

 

 

「って! 所長、まさか三人で入るんですか⁉」

 

 

「こんなときは一緒に入るのよ!」

 

 

オルガマリーは立香とマシュの手を引き、お風呂の中へと消えていった

 

心配なのはキャスニキが覗き見をしないかだが

 

 

「なんか失礼なこと考えてねぇか?」

 

 

コツンと後ろから頭を叩かれる

 

 

「あれ?覗き見しないんですか?」

 

 

「ハッ!そんなことしねぇよ 痛い目に遭った奴らを多く見てきたからな」

 

 

女神の水浴びを目撃して、大変な目に遭うという神話も多く存在する

 

というかやっぱり中身オーディンだろ

 

クー・フーリンだったらノリノリで見に行って、ぶっ飛ばされるはずだ

 

 

「それで?俺の演技はどうだったよ?」

 

 

「はい?」

 

 

「お前さんも難儀な性格だよな、素直に入れてやりゃいいのによ」

 

 

だからなんでバレるんだ

 

つーかあれ演技かよ、うめぇよ

 

 

「さぁ、なんのことやら」

 

 

「またしらばっくれやがって、俺もアレに入らせてもらうからな」

 

 

そういってキャスニキは霊体化した

 

見回りにいったのだろう

 

呑気に風呂に入れるのはキャスニキが学校に結界を貼ってくれているからだ

 

 

 

「ちょっと、彼方。聞きたいことがあるのだけれど」

 

 

特製お風呂から出てきたかと思えば、ツカツカと俺に近づいてきた

 

 

「どうかしましたか?アニムスフィアさん」

 

 

「どうもこうもないわよ!なんなのアレは!」

 

 

彼女は特製お風呂の方を指さす

 

丁度、立香とマシュが出てきたところだった

 

心なしか顔が穏やかになっている気がする

 

 

「あんた、()()()()でお湯を出しているわよね?」

 

 

「えぇ、そうですが」

 

 

そう、俺は虚数魔術でお湯を引っ張ってきたのだ

 

ではお湯はどこで用意したのか...

 

ここは学園である

 

俺はプールにお湯を貯めたのだ

 

もちろん、ドラム缶と同じように清掃して同じようにお湯を沸かした

 

水道管が壊れている可能性を考慮した結果である

 

あとは、虚数魔術でプールとお風呂を繋ぐワームホールを生成

 

かけ流しのドラム缶風呂の完成である

 

水は下水道につながるワームホールに流れるので一面が水浸しになる可能性もない

 

 

「底辺魔術師にこんな芸当できるはずないじゃない!」

 

「あんた、実力隠してたでしょ!!!」

 

 

...やらかした

 

そうだ、俺は『最底辺の悪徳魔術師』を演じていたはずだ

 

こんなワームホールを長時間維持しているのは最底辺と言えるのだろうか

 

髪を洗うための疑似シャワーも作ってしまった

 

もともと最底辺を演じるには遅すぎた

 

ベリルの件でロマニとダヴィンチ、Aチームには拘束の魔術を見せてしまい

 

立香やマシュ、オルガマリーには虚数魔術の応用を見せてしまった

 

もう言い逃れはできない

 

 

「えぇ、僕の実力は記録されたデータとは異なっています」

 

 

「____っ! …どうして偽ったのかしら?」

 

 

「マスター候補になるつもりがなかったからですよ」

 

 

「なっ!」

 

 

「おかげで爆発を回避することができました、結果オーライではないですか?」

 

「僕が死んでいればマスター候補はあの一般人だけになっていたのですから」

 

 

「それは!…そうね」

 

 

彼女は立香の方を見る、立香はきょとんと首を傾げていた...可愛い

 

 

「まぁ、僕がレイシフトできたのは予想外でしたが...」

 

 

『確かに、彼方君がレイシフトしたのはおかしい』

 

『登録をしなければレイシフトはできないはずだ』

 

 

ロマニの無線が入る

 

 

「おそらく、マリスビリーさんが仕組んだのでしょう」

 

 

「お、お父様が…」

 

 

「えぇ、とある事情で採血をする機会がありましたから、マスター適性等も調べたのでしょう」

 

 

「ということは彼方さんはAチームになる可能性があったということですか」

 

 

立香と共に近づいてきたマシュが問う

 

 

『そういうことになるね、調べたところマスター候補に設定されたのは彼の生前だし、彼が設定したんだろうね』

 

 

「では、僕の、僕のために、僕が用意したお風呂にでも入りましょうか」

 

 

スタスタと俺はお風呂の方に歩いて行った

 

 

「ちょっと話はまだ終わってないわよ!」

 

 

後ろで何かワイワイ騒いでいるが気にしない

 

お風呂に着いた俺は、汚れた服を虚数空間にぶち込み髪を洗う

 

しっかりとシャンプー、リンス、ボディソープを用意していた

 

彼女たちの髪質を見ていたが使ってくれたのだろう

 

女性に人気の品を揃えておいてよかった

 

体を綺麗にした後は、念願のドラム缶風呂である

 

 

「ふいー」

 

 

声が漏れる、景色が見れないのは残念だが満足だ

 

この体になっても風呂は最高である

 

 

「フォウ!」

 

 

モコモコの小生物がお風呂に侵入してきた

 

 

「ちゃんと体洗えよ~」

 

 

「フォウ!」(了解!)

 

 

そう言うとフォウは器用に体を洗いだした

 

モコモコが泡でモコモコモコモコになっている

 

泡を流し終えた後、彼は俺の入っているドラム缶にダイブしてきた

 

 

「フォーーーーーーーーウ」(あーーーーーーーー)

 

 

どうやらこの獣もドラム缶風呂にご満悦らしい

 

 

「上がるぞ、白モップ」

 

 

「フォウ」

 

 

俺たちは風呂を上がり、キャスニキと交代した

 

彼も風呂を大層気に入ったようだ

 

その後、テントやブルーシート、ドラム缶を片付け、教室の方へと戻った

 

 

「よう、坊主」

 

 

教室には何故かキャスニキが待っていた

 

 

「お前のフロってヤツ?最高だったぜ!」

 

 

「それを伝えるためにここに来たのではないのでしょう?」

 

 

「…あぁ」

 

 

キャスニキの雰囲気がガラリと変わる

 

 

「お前、何を隠してる」

 

 

彼は片目をフードで隠し、俺の目をジッと見る

 

 

「その考えに至った根拠は?」

 

 

「強いて言うなら勘だ」

 

 

「は?」

 

 

「嬢ちゃんと戦った時、途中であからさまに戦い方が変わった」

 

 

「...それが何の根拠に?」

 

 

「ここの親玉、セイバーの野郎と剣さばきが似てんだよ、いんや()()()()()()

 

 

「…」

 

 

「てめえがマスターや嬢ちゃんにあんな態度を取る理由もな」

 

「何か裏があるんじゃねぇかと思ったんだよ」

 

 

俺は周りを見回す

 

教室の外にはルーン文字の罠が仕掛けられている

 

俺がキャスニキの質問から逃げないようにするためだろう

 

事前に『ナビ』から警告はされていたのだが...

 

俺はカルデアからの通信を切った

 

 

「えぇ、隠していますよそれなりに」

 

 

「ほーん、思ったよりも素直じゃねぇか「ただし」」

 

 

「話すつもりはありません」

 

 

「へぇ…」

 

 

キャスニキの杖を持つ手がピクリと動く

 

一触即発と言ったところか

 

 

「しかし、これだけは言っておきましょう」

 

 

俺はキャスニキの目を見る

 

 

()()藤丸立香の味方です」

 

「少なくとも今は、俺が人類の敵になることはありません」

 

 

「...その話し方だといずれ人類の敵になるかもしれねぇって言ってるようだが?」

 

 

「可能性があるってことです」

 

 

「…」

 

 

「…」

 

 

俺とキャスニキの間に静寂が生まれる

 

 

「...ハァー、分かった分かった。疑って悪かったよ」

 

 

彼は降参を示すように両手を上げ、ヒラヒラと振る

 

 

「坊主が敵だとマスター達は全滅するからな、いやー安心したぜ」

 

 

()は底辺魔術師ですよ?そんなことできませんよ」

 

 

「お前さんそれはもう通用しねーぜ?」

 

 

「デスヨネー」

 

 

キャスニキは教室を出ようとする

 

 

「あ、その罠。ちゃんと消しておいてくださいねー」

 

 

「チッ、やっぱり気づいてやがったか」

 

 

彼は面白くなさそうな顔をしながら罠を解除していた

 

 

俺は今までの行動を振り返っていた

 

最底辺の魔術師を演じると決めていたクセになんやかんやで魔術を使ってしまっていた

 

この特異点でさえ、強化、治癒、虚数、と様々な魔術を見せてしまった

 

好感度を下げなければならないのに、傷を治したり、風呂を作ったり

 

自分の行動に矛盾が多すぎる

 

 

「ハァーー」

 

 

どうすればまた、無能な魔術師に戻ることができるのだろうか

 

 

『664:星喰いの転生者 なぁ、お前らここから無能に戻れる方法ってあるか?』

 

『665:転生系名無し うーん、難しくね?』

 

『666:転生系名無し 魔術を使えなくするとか?』

 

『667:転生系名無し いやいや、そんなことできるわけないやろ』

 

 

魔術を使えなくするなんて不可能だろう

 

急に魔術回路が消えたら、それこそまた怪しまれるし...

 

ん?

 

魔術回路、特異点F、宝具、焼き切れる...

 

 

『671:星喰いの転生者 みんな考えてくれてありがとな!なんとかなりそうやで!』

 

『672:転生系名無し マジか!イッチ何を思いついたんだ?』

 

『673:星喰いの転生者 それはセイバーと戦うときに見せるとするわ』

 

『674:転生系名無し えー、いけずやなぁ』

 

 

魔術が使えなくなるのが不自然であるなら、魔術が使えなくなる状況を作ればいい

 

ある作戦を胸に秘めながら、俺は明日の戦いに向けて準備を進めるのであった

 

 

 

 

 

 







彼方君はうっかり属性持ちです

立香のために快適なお風呂を作ろうとして、うっかり虚数魔術を使ってしまったのです

私は悪役ムーブとは何なのかが分からなくなってきました






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