--------- 本当に、立派に育ってくれた。
小さな微笑みを浮かべる少年と、耐え難い感情に耐えながら親愛を向ける愛する生徒たちの姿に思わず笑みがこぼれてしまう。
余計な言葉はなくとも、その刃には全ての気持ちがこもっていると分かった。
まるで授業終わりの“礼”のように、彼はナイフを突き立てた。
痛みとともに、こんなにもあたたかい気持ちが湧き上がってくるのはなぜなのだろう。
欲を言うのであれば、もっと彼らの“先生”でいたかった。晴々しい卒業式を見送りたかった。
それでも、決して不安はない。彼らはもう大丈夫。信頼する仲間と、培ってきた数多のスキルがあるのだから。
......あぁ、それでも、最後の悔いがあるとするのなら。
私からの『卒業おめでとう』は、愛する彼らにちゃんと届いたのだろうか。
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目を覚ました世界は、海のにおいと血のにおいが立ち込める場所だった。まるでかつての故郷を思わせる、そんな場所だ。
この世界が、愛読していたあの本(断じて叡智なる書ではない)の中であると気付いたのは、颯爽と大海を渡っていくニュースクーの姿を目にうつしたときだった。場所や人を選ばずに、ただ求める者に情報を届ける彼らはかつての世界ではお目にかかれないものだ。心躍る冒険と仲間たちとの絆に胸を熱くさせたものだが、いざ実際にその世界を生きるとなれば血なまぐさいことこの上ない。
いわゆる「世界政府非加盟国」に生まれ落ちた私は、齢十五のころに、かつての「殺せんせー」としての自我がよみがえった。当時、らしくもなく海をぼーっと眺めているときに突然頭に記憶が流れ込んできたのだ。
すべての記憶を取り戻して最初に思ったのは、死んだはずなのに生きていることでも、人の姿で、しかも若返っていることでもなく、相も変わらず殺しを生業にしていることへの納得だった。バカは死んでも治らないとは言うが、どうやら私も筋金入りのバカらしい。
とはいったもののだ、教師のすばらしさを知った今でも、アサシンとして過ごした過去を忌避するつもりはない。それらのスキルがあってこその「殺せんせー」なのだから。
・・・悔いなく逝けたと思ったんですがね…。不思議なものです。こんな私に、二度もチャンスがあるだなんて。
頭の片隅に、もしかしたら彼女たちも。なんて願望がよぎってしまう。妙な期待など抱くべきではないだろうに。
・・・あぐり。そしてわが弟子よ。ごめんなさい。もう少しだけ、もう少しだけ待っていてください。
欠けることなく輝く月の下、二年目教師は立ち上がる。