ガンゲイル・クローバー   作:めろんムーン

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第16話

 

 ピトフーイによって騙し討ちされ、やられてしまったKKHC。

 その、最後の一人である女プレイヤーが、一心不乱に走っていました。

 

 彼女はリアルの北海道で狩猟をしている人物であり、プレイヤー名をシャーリーといいました。

 

「くそっ!くそっ!くそっ!」

 

 同じく狩猟を生業としていた仲間の4人の男たちに誘われて、銃の練習としてGGOを始めて。

 すっかり上手くなったと思った男たちが、自分たちがどこまで対人で通用するのかに興味を持ってしまったせいで、SJ2に付き合わされたのでした。

 

「あの女!あの女!あの女!」

 

 彼女は人を撃ちたくなかったので、予選でも本戦でも、出来るだけ無能を演じて、戦いは男たちに任せていました。

 そして、リーダーが優勝候補と手を組もうと言い出して、接触し、断られ──

 

「あの女!あの女!あのオンナァ!!」

 

 ピトフーイと名乗ったあの女は、容赦なくチームの背中を撃ってきて。

 音速を超えた弾丸が自分の耳を掠める音を、シャーリーは初めて聞きました。

 撃たれるかもしれない恐怖に駆られ、無我夢中で走って、走って、走って──

 

 

 

 どれくらい走ったか、もう分かりません。

 気づいたら、シャーリーは先には雪山しかないような場所まで走ってきていました。

 

 助けようと背負っていたはずの仲間は、いつどこで落としたのか、居なくなっていました。

 

 振り向いて確認していたシャーリーの視界の右側には大きなドームが。

 左側には森と岩の山が見え、その間の平原には、自分の足跡が伸びていました。

 

 左上の、チームのヒットポイントは、自分以外全損。

 

「…………」

 

 精神的な疲れで、シャーリーは腰を下ろしました。雪解け水によってぬかるんだ地面の泥だらけになりながら、

 

「あの女!」

 

 近くに人がいたら聞こえるほど、歯を軋ませました。

 それから、

 

「…………はぁ…………」

 

 力が抜け、彼女は天を仰ぎました。

 

「……もういいや……リーダーになったんだから降参して、とっととこんな大会からおさらばするか……」

 

 汚れた左腕を持ち上げ、空中で振り、ウィンドウ画面を出しました。

 

 降参コマンドを出そうとしたシャーリーの目に、ウィンドウ画面に表示された一つのグラフィックと、文字が映りました。

 

 大きなスコープと、途中で折れてしまったかのようなストックを持つ、不気味な形のライフル。文字には、《ブレイザー・R93タクティカル2》とありました。

 

 7.62×51mmの弾を使う、ドイツ製高性能狙撃銃。リアルで使っている愛銃の、カスタムモデル。

 

 そしてそれは、どんな強力な動物でも、急所に命中させれば一撃で倒せる力でした。

 

「…………」

 

 降参コマンドを呼び出して、YESを押すだけなのに、シャーリーは動けませんでした。

 

「アイツは……あの女は……」

 

 空中で指を止めたまま、怨嗟を吐き出すようなドロドロとした声を漏らして。

 

「あんなやつは……人間じゃ……ない……人に害をなす……害獣だ……!!」

 

 彼女の指は気が付けば愛銃を呼び出していました。

 

「はっ!」

 

 シャーリーは鋭く息を吐くと、両手で己の頬をぶっ叩きました。

 

 手についた泥が白い顔につき、それをシャーリーは横一文字に拭いました。

 

 空中に浮かんだライフルへ両手を伸ばし、それを愛おしげに抱き留めると、

 

「害獣は──」

 

 銃に弾を装填し、

 

「駆逐してやる」

 

 顔に泥の横縞をつけて迷彩にした女が、野獣のような険しい目と、微笑んだ口元と白い歯を見せながら、

 

「獲物は、1発で仕留めてやる」

 

 そう宣言しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は遡り、13時53分。スキャンを身終えて、作戦を立てたレンとフカ次郎、ボスとSHINCの面々は、追撃戦に赴くクローバーを見送っていました。

 

「ん、レン。頑張ってね」

 

「うん、クロも頑張って!」

 

「ん。MMTMはしっかり殺すから」

 

 そんなレンとクロのやり取り。

 

「ふふふ……あやつらは怒らせてはいけないものを怒らせたのじゃ……犬の尾を踏んだな……」

 

「それをいうなら、トラの尾じゃないかい?」

 

 ボケるフカ次郎、ツッコミのボス。

 

「じゃ、行ってくる」

 

 そうして、クローバーはレンたちから離れ、北側に駆け出しました。

 

 

 

 

 

 14時ちょうど、6回目のスキャンを、

 

「うほっ!1時間生き残ったぜーっ!」

「やったああああ!」

「ブラボオオウ!」

「うっしゃ!うっしゃあ!」

「やればできるオレ達!」

 

 全日本マシンガンラバーズの5人は、歓喜の声で迎えました。

 

 スタートした地点は丘陵地帯で、見晴らしのいい丘の上でした。

 彼らは、ベッタリと丘に伏せ、周囲を見渡しては、接近してくるチームを誘き寄せてからマシンガンで蜂の巣にして、三チームも倒していました。

 

 

 

 スキャンを眺めていた5人は、一番近いチームを確認しようとして、

 

「あれ?なにこれ……間違ってないか?」

 

 自分たちより北に、T-Sの文字を見つけました。

 

 彼らより北は、ここから下り斜面になっている見晴らしのいい丘の下。敵がいるはずがないのです。

 しかも、このT-Sというチーム、前回は地図の北西の外れ、町中にいました。今表示されている丘陵地隊とは最短でも5km以上離れていて、辿り着くには平均時速30kmほどで移動できなければいけないのです。生身の人間には不可能。

 

「まっ、サーバー・コンピューターだって機械だし、こんなこともあるだろ。俺たちの愛するマシンガンだって、愛してやらなきゃ故障はするだろ?だから俺は、リアルでもこの《M60E3》のエアガンを抱いて寝ている。食事の時は椅子に置いて話しているし、ソファーで映画も一緒に見る」

 

 かなりおかしなことを言っていますが、周りの男達は同意とばかり頷きます。それが当たり前なのが、この全日本マシンガンラバーズ。

 

「他の生き残りは──、MMTMがドーム北側か。ここから2kmほど。他は遠いな」

 

「前回三位の強豪か……勝てるかな?」

 

「大丈夫だ!前回の映像を見て研究しただろ?一丁だけあったHK21マシンガンは怖いが、他はみんな5.56mmのアサルトライフル。開けたこの地形では、俺たちの火力が圧倒的に上だ!」

 

 そう仲間を鼓舞した男に、感動が集まります。

 

「俺たちはこの場所を死守して、勝利者になるぞ!矢でも鉄砲でも持って来い!」

 

 そう叫んだ瞬間に、彼は全身に赤い被弾エフェクトを煌めかせて、死亡しました。

 

 

 

「はぁ?マシンガン野郎共、あっさり消えちゃったよ」

 

 その20秒後。14時のスキャンを見ていた、全日本マシンガンラバーズから2kmほど離れた位置にいたMMTMの一人が、呆れた声を出しました。

 

「すぐ後ろに敵がいるのに気が付かないなんて、どんなボンクラだ……せっかくここまで生き残ったから、俺たちが相手してやろうと思ったのに」

 

「まぁ、俺たちもメンバーは削れている。油断はできない。この距離ならスキャン前に戦闘になってたかもしれないな。いま、決着がついたんじ──」

 

 そう話していたMMTMの4人のチームメンバーの一人の上半身が、弾けてなくなりました。

 

 

 

「──はっ?」





 MMTM好きな人には申し訳ないんですが……彼らには死んでもらいます。

 やっと大幅に原作から外れる…

地の文は

  • です、ます等の敬体のままでも良い
  • 〜である、〜だった等の常体にして欲しい
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