クローバーは、山荘の屋根に座って、ひとりぽつんと空を見ていました。
その横には、上がってくるのに使われた大型ナイフと、天井に穴を開けるために使ったフォトンソード。
そして、ぽっかりとひと一人分の穴が、屋根に開いていました。
「〜♪」
インベントリから出した棒付きのアメをコロコロと口の中で転がしながら、鼻歌を歌い、じっとしていたクローバー。
その視界に、突然花火があがり、空に
『CONGRATULATIONS!! WINNER LFC!』
と、浮かびました。
「ん……」
静かに微笑んだクローバーは、その数十秒後、静かにポリゴンを散らせてフィールドから消えていきました。
試合時間、1時間32分。
第二回スクワッド・ジャム、終了。
優勝チーム・『LFC』
大会総発砲数・78,102発。
2026年4月19日。日曜日。
香蓮と美優は、友達の黎葉と、迎えにくるはずの豪志を待っていました。
「申し訳ありません。渋滞で遅くなりました」
先に来たのは、エムの中の人、阿僧祇豪志。
「豪志さん、こちらが篠原美優。私の親友で、VRゲームの師匠の片割れで、フカ次郎」
「や、お世話になったね!口に貼られたテープ、忘れてないぜ?責任とってちょーっと結婚してくれるだけでいいんだけどさ、この後ヒマ?」
「申し訳ありません。ですが、僕には心に決めた人がいるので」
「あちゃー!それって、ピトさんのリアル?」
「ええ」
「じゃあしゃーねーかー」
そんな一連のやり取りを美優とフカ次郎がしていると、こちらに近づいてくる黒髪の女の子が1人。
身長は145センチほど、艶やかな黒髪をショートカットにした女の子が、こちらに歩いてきました。
「ん、ごめん遅れた」
「やっときた!おそいぜ???」
「ん」
その姿を確認した香蓮は、豪志に向き直り、
「豪志さん、あちらが
「ん、あなたがエムの中の人?」
「ええ。あのクローバーさんと会えるとは……ピトフーイに『先にあったわね!』などと殴られそうですよ」
「ん、ご愁傷様」
香蓮と美優、そして黎葉を乗せたSUVが、豪志の運転で都内を進んでいきます
基本、喋るのは美優と香蓮。豪志はリアクションを取ったり質問に答えたりしていましたが、黎葉は沈黙を保ちました。
唯一、豪志のリアルの話を聞いた時だけは相槌を打っていましたが。
そんなこんなで目的の場所に着いた4人のうち3人は、着いた場所に瞠目することになりました。
「ん、これ……!!」
「神崎エルザの……」
「シークレットライブ……!?」
「ええ。ピトフーイのリアルは、ライブハウスのオーナー。神崎エルザにいち早く目をつけ、ここで歌わせて有名にした立役者です。さあ、いきましょう」
「ん、借りは返してもらった」
「そうだぜコヒー!最高だった!!」
「あ、あはは……お礼は豪志さんとピトさんにいうべきじゃないかな……」
神崎エルザのライブをたっぷりと堪能した3人は、豪志に連れられて、神崎エルザの楽屋まで来ていました。
「こちらが、当ライブハウス運営会社社長、佐藤麗です」
「はぁーい、はじめまして!さあて、だれがレンちゃんで、だれがグレネードっ子で、誰がっ……クローバーさんかしら?」
一瞬詰まったことに何事かと思ったレンたちですが、気にせず彼女を観察しました。
茶色に染めた長い髪を後ろでまとめ、しっかりと化粧を決めて、目に眩しいほど真っ赤なスーツスカート姿です。
「……」
「……」
「……」
3人は、一度顔を見合わせた後。
美優は、唸る麗を見て。
黎葉は、麗には興味がないとばかりに同室にいた神崎エルザを見つめ。
そして香蓮は、先ほどから放置されている神崎エルザへと近寄ると、拍手を送りました。
「とても素晴らしい歌声でした。ずっと、拍手がしたいと思っていたんです」
「こ、コヒー!?」
「素晴らしい、本当に素晴らしい──」
「──素晴らしい魔王でした!」
静まり返った楽屋の中で、一つの笑い声が上がりました。
「ぶっ!あははははっ!あははっ!あはははははははは!」
神崎エルザが大爆笑を始めたのです。
その光景に、
「えっ?」
美優は固まり、
「てへっ?」
麗は舌を出して肩をすくめ、
「…………」
豪志は無言で天井を見上げ、
「……………………」
そして黎葉は目を瞑り、続きを待っていました。
「あはははっ!あはっ!あはははははははははは!!!あははっ!はぁ……ふぅーー……理由!」
座ったまま、エルザはビシッとレンに問いかけました。
「一つ目は、豪志さんが開演ギリギリにここに来たこと。早めに着いて、ボロを出したくなかったんじゃないのかなって。そして、ライブ後にこうして楽屋で会うことにして、麗さんをダミーとして紹介させた。ピトさん……エルザさんが、それを見て楽しむために」
「ふうーん?二つ目は?」
「豪志さんが私の住所と氏名、容姿まで知っていたこと。そして、それを知っているのは、1人しかいないこと」
「ふんふん」
「それは、神崎エルザさん、あなただけなんです」
「私が書いたファンレターは、それが全て書いてあった。あなたが読んでいなくても、豪志さんなら読める。麗さんが、ライブハウスではなく所属事務所の社長といえば信じたかもしれません」
「あっちゃー!ちょいと詰めが甘かったかなー!」
そこに麗も、
「私も気合いれて望んだんだけどなぁ!2人にはすぐバレちゃった!」
「うーん、片方は仕方ないし、もう片方はゴリ押しでしょ?ごめんねー!この借りはそのうち精神的に〜」
「必ずね!」
麗はそう言って邪魔にならないよう退散していきました。
「って、2人?」
美優が聞きました。
「ん?そこの黒髪の子、麗が自己紹介したときに殺気をぶつけてきてさぁ!あれはずるいと思うよ!」
神崎エルザが答えました。
「え、ええ!?何してんだクロ!?」
「ん、あなたなら喜ぶ」
「まぁね!でも、あんなドス黒い殺意向けられちゃった麗には後で謝らなきゃなあ……」
「ん、ごめんなさい」
「いいのいいの!」
「さて、最後の抵抗のつもりだったんだけど……バレちゃったら仕方ないね!約束は果たしたよ、香蓮!……っと!?」
香蓮に抱きつかれる神崎エルザ。
「よかったああああああああ!!ピトさんが死なないでよかったあああああああ!!」
「ほら、おちついて?しゃがんでよ、顔が見えない」
「あ、はい……」
手放して、神崎エルザと同じ目線になる香蓮。
エルザは、香蓮の顔に手を添えて、
「うん、リアルでも可愛いね。気に入った!」
そう言って、唇へと口付けをしました。
「…………!?!?!?」
「香蓮さん、言い忘れていましたがそいつは男も女もホイホイ食べてしまう酷いやつです」
「豪志さん、おそいわそれー」
「ん、うちの子はもうお嫁に行けない」
その言葉に、黎葉と美優の方を向いた神崎エルザは、
「あら、私がもらってあげようか?2人も可愛いし、一緒にどう?」
「ん、ごめん。わたしは彼氏いる」
「なにっ!?」
知らなかった美優。
「あら残念。まぁそれは置いといて……ねえ香蓮ちゃん?今度、お部屋に遊びに行ってもいいかしら?なんならお泊まりでも……」
「ダメです!」
香蓮は真っ赤に赤面したまま叫びました。
「もう、GGO以外では会いませーん!」
これにてSJ2はおしまいです。
そして、リアルが忙しいのと他作品の更新のために休載に入ります。
SJ3はアニメ後に。打ち切る予定はないのでご安心ください。
地の文は
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です、ます等の敬体のままでも良い
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〜である、〜だった等の常体にして欲しい