薄暗い待機エリアでの10分間で、それぞれのキャラクター達が、武器や装備を実体化していきます。
レンは、フカ次郎とクローバーにサテライト・スキャン端末の使い方を教えました。
この、スマートフォンのような端末が、SJ2の命綱です。《破壊不可能オブジェクト》ではなく、あらゆる攻撃がすり抜けるので、壊れる心配はありませんが、無くすかもしれないので、大切に持っておかなければなりません。
レンは、フル装備を終え、ピンクの戦士となっていました。
服はもちろん、ブーツ、手袋、頭のニット帽、全てピンク。首には、ピンクの迷彩柄のバンダナ。
武装は、P90。SJで破損した初代の代わりに、二代目をスリングで肩に提げています。
予備マガジンは、腿のポーチに左右それぞれ計六本。ストレージには、九本。合計800発。
腰の後ろに、右逆手で抜けるように装備した、全長30cmはある、黒塗りのコンバットナイフ。
運営から三本配られる回復アイテム、《救急治療キット》を、体の前、取り出しやすい位置にポーチで提げ、距離計付き単眼鏡を、腰の後ろのポーチに装備。
ストレージ内には、地形に応じた偽装用迷彩ポンチョ数枚を入れ、準備万端。
フカ次郎もまた、フル装備で待機時間を暇そうに待っていました。
金髪を結い上げた頭には大きなヘルメット。体にはマルチカム迷彩のウェアを着て、その上に防弾プレート入りの緑色ベスト。
武器は、《右太》と《左子》と名付けた二丁のMGL-140を右肩と左肩に。
背負った大きなバックパックの中には、全てグレネード弾。中に仕切りを設けて、右脇でも左脇でも、後ろに手を伸ばせば1発ずつ抜き取れる仕様です。
ストレージにも、移動ペナルティを食らわないギリギリまでグレネード弾を詰め込んであります。
右腿にはM&P拳銃。予備マガジンは三つ、合計四本×17発。《救急医療キット》ももちろん装備しています。
そして、最後の一人──クローバーも、戦闘用意を終えていました。
いつもの灰色のポンチョは脱ぎ、解放された白金の長い髪を後ろに流します。
着ている服は、迷彩服ではなく黒いスーツ。防刃仕様となっています。
ベルトには、光剣──《フォトンソード》と言われる、GGO内唯一と言っていい、剣のカテゴリの武器が、後ろに2本ぶら下げられています。
腰の横側──両腿の上には、刃渡り40cm以上という、先ほどのレンのものよりさらに大きな大型のナイフが2本。もはやナイフというよりも短剣と言った方が正しい大きさです。
その上に、クローバーの足元まで隠せるほど大きな黒いコート。こちらはスーツと違い防弾仕様で、さらに内側に小型の投擲用ナイフを14本も仕込んであります。こんなに多くのナイフをコートに仕込んでいる理由は、隠し武器であるのと同時に、スナイパーによる胴体の致命的な箇所への狙撃を防弾素材とナイフで防ぐため。
コートの胸部分に4本、お腹部分に6本、背中側に心臓を守るように4本隠されています。
これらの大小2種類のナイフは、宇宙船から剥ぎ取った特殊合金を使って作られています。
流石にエムの盾ほどの強度はないですが、その代わりにこれらはかなり軽く、大きいナイフは700g、小さいナイフは100gで済んでいます。
光剣と、大小16本のナイフ、合計で4.4kgの軽装です。
もう一つ、秘密兵器がストレージに隠されていますが、今は装備しません。
このGGOという、銃と硝煙の世界で、銃を装備しないスーツの少女というのは、違和感しか感じません。実際、見慣れたレンはともかく、先ほどからフカ次郎がチラチラとそれでいいのかという視線を送っています。
「なぁクローバー?銃無しでいいのかい?これは弾が飛び交う戦争だぜ?」
やはり我慢できず聞きました。クローバーは、
「ん。問題ない。銃など不要。真のGGOプレイヤーは眼で殺す」
「ヒュー!かっこいいぜクローバーちゃん!フカおじさん惚れちゃう!」
そんなやりとりをして、レンの緊張をほぐします。
「ええい!」
残り1分、レンが頬を叩き、気合を入れます。
(もう迷うな!闘え!そして──、殺せ!)
レンは、P90の装填ハンドルを操作して、乾いた金属音と共に、1発目を薬室に送り込みました。
13時ちょうどに白い光に包まれて、視界を取り戻した時、
「ここは……。街か……」
レン達は、市街地の道の上にいました。
「ん、家に囲まれてる。狙撃はひとまず問題ない。」
状況を把握した三人は、通信アイテムで報告しあいます。
レン達がいるのは、外国の街でした。
ほとんどが平屋、たまに二階建ての、簡素な低層住宅がならんでいます。家々の庭は広くなく、びっしりと建物が詰まっています。
GGOは最終戦争後の地球が舞台なので、当然ゴーストタウン。壁は痛み、窓は割れ、電柱は傾き、道の舗装は割れ、草木は生い茂っています。
レンが空を見上げると、GGO世界特有の赤い空が曇って、鼠色混じりになっています。
レンのピンクは、よく晴れて大気組成の狂った、赤みがかった夕日のような空で有効なので、ここでは迷彩効果は薄いでしょう。
そして、今回は風が吹いています。地上では頬に軽く、時折強く感じるほどですが、上空の雲は結構な速度で流れています。大会中に晴れてくれればいいのにと、レンは思いました。
寒々しい空気と、枯れた草木を見るに、今の設定季節は冬らしいということがわかりました。
「レン、こっち来て見てみ!」
フカ次郎に誘われて家の脇を出ると、
「お?おお……」
自分のいる場所から数百m先、家々の屋根の隙間から、垂直にそびえ立つ城壁が見えるのです。
それは、高さ60mはあるだろう高い壁で、おそらく素材はコンクリート、素っ気ない灰色をしていました。ずっと続いている高い壁は、かなりの威圧感を醸し出しています。一箇所、90度で曲がり、その先にまた壁がずっと続いています。
「ダムみたいだね」
そうレンが言うと、
「ん。あの向こうは水の代わりに巨人がいっぱい。」
そうクローバーが某巨人を駆逐する漫画で茶化し、
「おお、どちらにしろ決壊したら私たちはエンドだわ」
フカ次郎が締めました。
「アレは、フィールドの境界だと思う。私たちはかなり端の方からスタートみたい」
クローバーがそう言いました。
BoBも、SJも、フィールドは10km四方の特設会場です。
「城壁は正方形で、あの角がその一つかな」
レンも、そう気がつきました。
「現在位置がどこかを、今から確かめるよ」
レンはそう言って、胸からサテライト・スキャン端末を取り出し、立体地図を浮かび上がらせました。
オリ主、クローバーちゃんの見た目の姿は、Fateのイリヤが衛宮切嗣の格好をしてるイメージです。
地の文は
-
です、ます等の敬体のままでも良い
-
〜である、〜だった等の常体にして欲しい