酒場では、開始早々に、かなりの盛り上がりが生まれていました。
中継映像を見ていた観客には、戦況が手に取るように分かります。
前回優勝のレンを含むチビ三人のチームが、簡単なブービートラップにまんまと引っ掛かり、狭い家の中に閉じ込められているのです。
中継では、一軒のボロい家を取り囲む六人の男達。
彼等の武装は、5.56mmの《M16A3》アサルト・ライフルがお揃いで4丁。
9mm拳銃弾のサブマシンガン、《UZI》。
そして、《イサカ M37》という、12ゲージ口径、ポンプアクション式ショットガン。
「おいおい、優勝候補がここで負けるのか?そりゃねーよ!」
誰かが、中継画面に向けて叫びました。
六人の男達が、それぞれ3mほどの間隔を開けて、家を扇状に囲みました。
「連中、バカじゃないな。今回が初出場の敗者復活チームだっけか?ここで勝ったら、大金星だな」
「勝負は非情だよ。三人じゃどだい限界があるんだ。六人チームなら、残り三人が今頃あいつらを撃てたし、あの白い子がまだ潜伏してりゃ不意をつけたのに」
「もうダメか……」
「いや、俺のレンちゃんがこんなところで負けるわけがないだろ?」
「うん、いつからお前のになったんだ?」
緊張感があるのかないのか分からない観客の目の前で、大きなモニター画面の中の六人の男達が、銃を構えました。一斉射撃の準備完了。
リーダーらしきUZI使いの男が、左腕を上げて。振り下ろした瞬間に、六つの銃口が火を噴いて、発砲音がスピーカーから響いて、
「ああっ!」
観客の悲鳴にも似たようなどよめきが、それに被さりました。
彼等は見ました。
銃弾が家のガラスをぶち破る前に、それが中から弾けて、ピンク色の物体が飛び出してきたのを。
室内の奥行きを全て使って助走をとったレンは、そのままの速度で跳躍しながら、カーテンへとぶち当たりました。
ガラスを破りぼろぼろのカーテンを引き裂きながら、レンは明るい外の世界に出ました。
そのまま空中で、
「いた」
左下でUZIを撃ちまくる男を、撃ちました。
空中からの発砲は、UZIを腰に構えて撃っていた男の頭に幾つもの赤い被弾エフェクトを生みました。
倒れながらも撃っていましたが、やがて弾切れで射撃は止まって、その体の上に【Dead】のマーカーがピコン、と点灯しました。
(次!)
着地したと同時にレンはくるりと受け身をとり、その移動速度を一切落としませんでした。
三回転してから起き上がると、目の前にM16A3を持った男がいて、自分へと振り向こうとしていました。
レンは、P90を持った右腕をピンと伸ばし、振り向きつつあった男の横顔に被弾エフェクトを作りました。
「二人目!」
酒場では、カウントが始まっていました。
ピンクのチビ、前回優勝者レンが、人間がどうにか目で追えるギリギリの速度で暴れ回っています。
二人目を屠った後、すぐさまその向こうにいた男へと狙いを定め、なおかつ2人目の体を遮蔽物にして発砲。
0.5秒ほどの射撃で、男の胸から顔から、被弾エフェクトを煌めかせました。
「三人目!」
四人目のターゲットは、今殺した3人目のすぐ後ろでした。
背の高い男で、慌ててM16A3の長い銃身をこっちに向けようとしていました。
「ん。それもらう」
そんな声が聞こえたので、レンは3mの距離を一瞬で詰めました。
酒場のプレイヤー達には、
「あれ?」「えっ?」「おっ?」
レンが撃たなかった様子が見えていました。
ピンクのチビは神速とも言える早技で距離を詰めると、そのまま足からスライディングをしたのです。
男の銃口の下を、そして両足の間をすり抜けてその反対側に。
どうして撃たなかったのか?これから撃つのか?
そんな観客の疑念は、
背の高い男は、『ムンクの叫び』に描かれた人間のような顔をして、しかし両手は耳ではなく、股間と首元に当てたのです。
「えっ」「うっ」「げっ!」
酒場の観客は、ズームアップされた映像で、何が起きたか理解しました。
男の股間は真っ赤な被弾エフェクトが、縦に真っ二つに煌めいて。
首元には、真っ黒で大きなナイフが右から左に突き抜けていました。
そして、カメラが少し下がると、そこには左手でP90を支え、右手には黒いナイフを逆手に持ったレンの姿。レンが潜り抜けざまにナイフを振り抜いて、股間をざっくりと切り裂いたのです。
さらに、場面が切り替わり、家の窓から白いスーツの女の子が、何かを投擲したポーズで止まっています。クローバーが、レンがトドメを刺す時間を惜しみ、腰に刺していた42cmもある刃渡りのナイフを男の首に投げていたのです。
「よにん、め」
レンの、男にとってはトラウマものの行動と、仲間の白い女の子の正確な首元への巨大ナイフの投擲によって首に右から左にナイフが生えているという猟奇的でえげつない絵面に、
静まり返った酒場で、誰かがどうにか漏らしました。
(あと二人!)
レンは、クローバーが投げたナイフが当たったかどうかを確認せずに、家の壁の脇を駆け出しました。
視界の隅を、ぼろぼろの壁が恐ろしい速度で流れていきます。
もう、見える範囲に敵はいません。すると、この先の角を曲がった向こう側に敵はいるはず。
すると、
(あ、嬉しい)
向こうから来てくれました。
レンが角を飛び出そうとした直前に、家の角からM16A3の銃口が見え始めて、
「どんな場所からも、銃口だけを出しちゃダメよ、レンちゃん」
ピトフーイの声が脳内でフラッシュバックして。
レンは、勢いそのまま、P90を握っていない左手でM16A3の銃身を掴みました。
観客は、その一部始終を見ていました。
わざわざ左肩に構え直して家の角から出ようとした男は。
まるで地獄に引き摺り込まれるかのように、銃身を引かれて、体勢を崩されながら家の角に座れながら、
「五人目か……」
「えげつねぇ…」
その頭に走っていたレンの速度で膝蹴りをくらい、そのまま取りつかれて首を捻られました。
顔が変な向きになり、【Dead】マーカーをつけた男を突き押して、ピンクの殺戮マシーンが飛び出してきました。
次の瞬間、重い発砲音が響き、家の前の舗装道路に幾つもの弾痕を生みました。
最後の一人の武器は、M37ショットガン。
使用弾は《ダブルオーバック》と言われる鹿猟用の散弾で、直径8mmほどの鉛玉を9発いっぺんに広くばら撒きます。
男はレンを狙いましたが、全て後ろに外れてしまいました。
M37を持った男は、じゃこん!とポンプアクションをして撃ち殻を弾き出し、次弾を装填。
ピンクのチビに狙いを定めようとして━━
━━撃った時にはすでにレンは5メートルほどの広さの道を渡り、向こうの家の影に隠れてしまっていました。
じゃこん!
再びのポンプ音。
こん、ころころろ。
そして、撃ち殻が地面に落ちて転がる、乾いた音。
「あの散弾銃男……、なかなかやるじゃんか」
酒場で、観客の誰かが言いました。
散弾銃は射程が短い分、1発の威力が凄まじい銃です。男のM37は、フル装填8発のタイプのもの。撃った数を考えると、残り5発。
しかもこのM37、『引き金を引いたままポンプアクションを繰り返す』ことによって連射ができます。レンとの相性は抜群。
「これは……、面白い」
「どっちだ?どっちが勝つ?」
酒場の男達が固唾を飲んで見守っていると……
ぽごん。
変な音が聞こえると共に、男の首から上は変な角度になり、空に向けてM37をぶっ放しました。M37はその反動で手からすっ飛んで行きました。
男が蹈鞴を踏んで、その場に倒れると同時に、家の陰からレンが現れて、小走りで男に近寄って──、
ぶすり。
首筋にナイフを突き立てて、その男を死体に変えました。
ナイフを腰の後ろにしまいながら、レンが振り返った先には──、
フカ次郎の笑顔と、40mmの凶悪な銃口。
クローバーのやれやれとした仕草。
「さっきのと同じか……」
先ほどクローバーがやった、援護射撃のようなものを、今度はフカ次郎がやったのです。ただし、クローバーのようにナイフではなく、40mmのグレネード弾を撃ち込むという方法で。
「二人ともえげつねえ……」
誰かが独り、呟きました。酒場の周りの男達がみんな頷きました。
レンが家のなかに入ったので中継が切り替わると、酒場の興奮は思い出したかのように盛り返しました。
「すっげぇ!やっぱり優勝候補だな!トトカルチョがあったら絶対賭けてたぜ!」
「あの金髪女……足を持ってかれたのにナイスガッツだな!痺れたぜ!」
「あの白髪スーツの子やばくね?なんであんなに正確にあのサイズの馬鹿でかいナイフ投げれるんだよ……」
「レンの無造作に首を刺すあの動き、こえーよ。見た目が女の子だからなおさらだ!」
「お前ら見たか!アレが俺のレンちゃんと、その仲間たちの力だ!」
「ああ、すげーな────でも、三人ともお前のじゃねえよ」
地の文は
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です、ます等の敬体のままでも良い
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〜である、〜だった等の常体にして欲しい