本小説には
・篠澤広親愛度コミュ
・SSR コントラスト 篠澤広コミュ
のネタバレを含みます。
また、独自解釈して文章化している部分も多々ありますので、それが大丈夫な方は読んでください。
短めの小説なのであらすじとかはありません。
本小説には
・篠澤広親愛度コミュ
・SSR コントラスト 篠澤広コミュ
のネタバレを含みます。
大丈夫な方は先へと進んでください。
あぁ……上手くいくのってどうしてこうも、もどかしいんだろう。
褒められるのってどうしてこうも、心に響かないんだろう。
「わたしは、何をすれば……満たされるの?」
虚空へと消えていく疑問に答える声なんてなくて、虚無感だけがわたしを満たしていく。
つまらない。
上手くいき続ける人生なんて、つまらなくて、退屈。
そんなわたしの目に飛び込んできたのは……
テレビで煌びやかなステージの上で、華やかな衣装を身に纏い、歌い踊る……歌姫たちだった。
「アイドル、か」
勉強、勉強の日々を過ごしてきたわたしにとっては縁もゆかりもない、今まで見向きもしなかった世界。
「わたしでも……なれるのかな、光り輝く……アイドルに」
そう思った時には既に行動を移し始めていた。
そして……わたしは初星学園へと入学した。
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「さん…… のさわさん…… 篠澤さん」
「んぇ……?」
聞き馴染んだ声でわたしはまどろみから覚める。
どうやらレッスンの疲れが出ていたらしく少し眠っていたらしい。
ぼやけた視界の先に、見知ったわたしのプロデューサーが立っている。
ぐしぐしと目を擦りながら時計を確認すると5分程度眠っていたようだ。
「貴方が居眠りだなんて珍しいですね、レッスンで倒れはしても、居眠りするなんてことはなかったのに」
「ごめん、プロデューサー……ちょっと、疲れてた……みたい。少し寝たら、ちょっとだけ……回復、した」
「そうですか。では、明日の日程の確認をしますので、こちらをどうぞ」
この人にプロデュースされ始めてもう半年が経った。
相変わらず辛辣で、褒めてくれることはほとんどない。
酷い罵倒なんかはないけど、事実を列挙してわたしを追い詰めることの方が多い。
そんなプロデューサーだからこそ、信頼が出来るし好きだなと思えていた。
「と、言った感じで、今週はプロデュースの一環としてアイドルのお仕事を体験するレッスンになります」
「へぇ……アイドルの仕事、結構色々あるんだね」
わたしの手元の資料にはいくつかの仕事が列挙されていた。
写真撮影や、テレビ出演、ラジオに野外ステージでのライブやトークショー、着ぐるみでの接客に、一日署長のようなちょっと変わったものまで、本当に多岐に渡っている。
「篠澤さんの体力を考えて、月曜日と金曜日の2日のみに絞って実施しようと考えていますが、仕事の希望はありますか?」
「そう、だね……この中なら……」
アイドルとしてのよくある仕事ならこの中ならライブなどを選ぶのが普通だが、これでも何度かライブのステージには既に立っている。
今まで経験したことのない事の方が、自分にとっては向いてないこと、になりそうだなと考える。
「ん、これと、これで」
「やはり、それを選ぶんですね、何となく分かってはいましたが……」
「ふふ、流石はプロデューサー……わたしのこと、よく分かってる」
「わかってしまう自分が少し嫌になりますが、まぁ、短くはない付き合いですので」
軽く溜息をつくプロデューサー。
とは言っても多少演技がかってるので本気で言っていないのはよくわかる。
これでもわたしの担当プロデューサー。
わたしを適当にあしらったりはするけど、それもきっとなにか理由が……理由あるのかな、不安になってきた。
いや、でも、プロデューサーはわたしの喜びそうな言葉を選んで言ってるだけだと思う。
きっとそう。 わざわざパートナーを傷つけるようなことを言う訳がない。
そんなことを思ってにやにやしていたらプロデューサーにすごく怪訝な目で見られた。
担当アイドルにそんな目を向けるのはよくないと思う。
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そんなこんなでまずは月曜日のお仕事の日になった。
わたしが選んだのは着ぐるみでの接客。
早速指示された着ぐるみを装着してみたが……
「プロデューサー」
「はい、なんでしょう」
「暑い」
「でしょうね、当たり前です」
「動きづらい、もう疲れた、脱いでいい?」
「まだ始まってすらないんですが……」
わたしの予想を超えた重労働だった。
まさか、ここまでだとは思ってなかった。
着て脱ぐだけで既に倒れちゃいそうな疲労感。
うん、これでいい。
「さて、ダメそうならお店の方に言ってきますが……」
「ううん、やる。やらせて」
わたしは着ぐるみをつけたまま、力強く頷く。
それを見たプロデューサーは小さく溜息をつき、やれやれと言った感じで首を振る。
「まぁ、篠澤さんならそう言うと思ってました。一度、頭の部分、外しますよ」
「え? あ、うん」
プロデューサーに着ぐるみの頭を外された。
既に多少汗が滲んでいるわたしの顔がプロデューサーに晒される。
「それでは……これと、あとこれを」
そう言ってプロデューサーはわたしに冷感タオルを掛けて、熱さまシートを貼ってくれる。
「これで多少はマシだと思います。まぁ、これでも不安は残りますが……」
「んふ……ふふ、ありがと、頑張る」
プロデューサーにお礼を言って頭をつけてもらう。
やっぱりプロデューサーは優しい……好き。
だからこそ、プロデューサーの取ってきてくれたお仕事、ちゃんとこなしたい。
意を決してわたしは表に出ていき……
ものの数分で熱中症で倒れて病院へと緊急搬送されることになった。
あぁ、やっぱり……ままならないね。
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倒れたとは言え、ただの軽い熱中症だったので次の日には学園へと復帰した。
「入院されたと聞きましたが大丈夫だったのですか!?」
「うん、平気。 ただの熱中症」
「広ちゃん、また無理したんだね……」
「ううん、無理はしてない、着ぐるみを着ただけ」
千奈と佑芽がさっそくわたしに話しかけに来る。
「着ぐるみって、あの着ぐるみ、ですの?」
「うん、千奈が想像してるので、多分あってる」
「あー、着ぐるみ、確かに暑いもんね、広ちゃんには結構厳しかった、の、かな?」
うーんと腕を組む佑芽。
「対策、結構してたけどダメだったね」
「そ、そうなんだ……そういえば、もう1個お仕事やるんだっけ? 何やるの?」
「大食い」
「え?」
「大食い、だよ」
次の仕事はフードファイト。
全くもってわたしに向いてない仕事。
「お、お……大食い? 篠澤さんが、大食いをやるんですの……?」
「広ちゃんってそんなに沢山食べる人だっけ……?」
「ううん、全く。むしろ人並み以下」
自信満々の表情でそう答えると、二人は明らかに不安そうな顔になった。
「その、広ちゃん、お仕事はちゃんと選んだ方がいいよ」
「そ、そうですわ! こんな調子じゃ、いつか身体を壊してしまいますわ!」
「大丈夫、その前にプロデューサーが止めてくれる」
「そういう問題じゃないんじゃ……」
「篠澤さん、このままじゃ、辛そうだからって理由で紐なしバンジージャンプとかもやってしまいそうですわ……」
「千奈、流石にわたしもそんなことはしない」
「で、ですわよね」
「でも、バンジージャンプはやってみたい」
「どうしてそんな自分から苦行へと突き進むのですか!?」
千奈は驚いてるけど、元からわたしはこんな感じだからそんなこと言われても困る。
バンジージャンプ、今度プロデューサーに提案してみよ。
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金曜日。
今日はお仕事の日。
「フードファイト、向いてないどころか、篠澤さんに似合わなさ過ぎてびっくりしますね」
「でも、それがいい」
「そうですか」
ものすごく淡白に言い返された。
うん、わたしの扱い方がよくわかってる。
「ね、プロデューサー」
「はい、なんでしょうか」
「今度、バンジージャンプやってみたい」
「はぁ、バンジージャンプ。 一応、スカイダイビングなら話は来てますが……」
「やる」
スカイダイビング、すごく楽しそう。
千奈と佑芽と一緒ならもっと楽しそう。
「何となく考えてることがわかりますけど、あのお2人を巻き込むのはやめましょう」
「む、プロデューサー、よくわかったね」
「顔を見れば何となく分かります」
「前は分かりづらいって言ってたのに」
「半年もずっと一緒にいたら流石に分かるんですよ……」
はぁとため息をつくプロデューサー。
わたしの事分かってくれてるみたいですっごく嬉しい、好き。
「さて、そろそろ時間ですよ、篠澤さん」
「うん、行ってくる」
わたしは意気揚々とプロデューサーに笑顔を向けて立ち上がり、舞台へと向かう。
数分後、再びわたしは病院へと搬送された。
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「ぷろ、でゅーさー……」
「はい、なんですか」
「死ぬかと思った」
「ええ、そうでしょうね。なんせ、喉に餅詰まらせたんですから。おばあちゃんですか、あなたは」
今回のフードファイトには様々な料理があったのだが、わたしはお餅を選択。
一つ目で喉に詰まらせて救急車で緊急搬送された。
まさか、食べ過ぎではなくて喉に詰まらせて病院に搬送されるとは思ってもみなかった。
「まぁ、でも、篠澤さんらしいですね」
「わたし、らしい……か」
プロデューサーの言葉に暫し考える。
「ね、プロデューサー」
「はい、なんでしょう」
「わたしらしい、ってなんだろう」
「そう、ですね」
プロデューサーは腕を組んで少し考えるような素振りをする。
「まぁ、1つ言ってしまえば、危なっかしさという感じでしょうか。後は、貪欲なチャレンジ精神と言った感じです」
「ふむ……」
前、色んな人にわたしの魅力を聞いて回ったことがあった。
「プロデューサー、わたし、もっと色んなことに挑戦したい」
「今もたくさんの挑戦をしてます」
「うん、でも、もっと挑戦したい。この世の中にはわたしに向いてないこと、たくさんあるし、わたしの知らないのことも沢山ある」
「そうですね、あなたに向いていないことは沢山あるでしょう。今回だって初めての経験ばかりだったと思います」
「楽しかった、もっと色々やってみたいって、もっと思えた」
自分のやったことがないことをするのはすごく楽しかった、まだまだ向いてないことたくさんあるんだって、気づかせてくれた。
だから、もっと頑張りたい、アイドルとして、篠澤広として、わたしはたくさんの経験を積み重ねていきたい。
ガラス面に反射するようなキラキラと光るコントラストを、わたしは大事にしてもっと成長したい。
「プロデューサー、スカイダイビングね」
「はい」
「千奈と佑芽も一緒がいいな」
「……考えておきます」
ねぇ、あの頃のわたし。
今日も今日とて、わたしは元気にアイドルをやってるよ。
充実したままならない日々を過ごしてるよ。