完全自己満足リメイクです。
話の流れに変化はありませんのでぶっちゃけ目を通して頂く必要はない気がします。
会話とか地の文が変化してる感じです。
体育祭は無事恙無く終わった。
いや嘘じゃなくて。
久しぶりに嘘も陰謀もない、実に学生らしいイベントだったと言えるだろう。
青い空。
ほとばしる汗。
きらめく笑顔。
飛び交う声援。
飛び散る鼻血。
周りがドン引きするほど見てくれからして高い超高感度カメラを構えて雪ノ下先輩を激写する若作りお母さん。
なぜか娘の体操着で来たせいで多くの男子生徒を前屈みにした誰かの
…うん。
まぁ、うん。
ある意味総武高校らしい体育祭だったんじゃないかな。
『我々生徒一同は、正々堂々期待に応え、その
なんて宣言を、体育祭実行委員長の葉山先輩がしたときは、奉仕部の先輩方が目を見開いていたが。
僕?
僕は鼻くそほじってた前のやつの頭をしばいて、鼻血出させて遊んでいた。
だって葉山先輩の宣誓とか練習に付き合って何回も見てたし。
興味ないね。
とりあえず自ら立候補して委員長を買って出た葉山先輩の奮闘もあって、目立つトラブルはまったくなかったと言えるだろう。
応援合戦が紅組総長の葉山先輩と白組総長の僕のフリースタイルラップバトルになったことなんて、実に些細な話だった。
平塚先生は頭を抱えていたけど、校長が笑ってたから良し。
いい校長だよね。
BLに出演させられても許してくれてたし、学祭のとき校長ミルクティーって名前のタピオカが売られても許してくれてたし。
聖人かよ。
「おら!なにが『ドキッ♡俺にだけ優しいクラスの人気者を催眠で落とした件について』だ!ガハマ先輩になにするつもりだてめー!僕の目が黒いうちは変なことさせないからな!」
「ひぃ、許してくれ!」
「許してくれじゃないんだよ!お天道様が許しても僕が許すか!」
そして、いよいよ2年生は修学旅行ということで学校全体が浮ついて来ており、ひいてはガハマ先輩へのワンチャン狙いの非モテ共が増え、そいつらを駆逐する作業に僕は勤しんでいた、という話も脇においておこう。
───奉仕部に来た一つの依頼。
これが、今後の奉仕部を大きく変えることになる。
いや、ここは明言してしまおうか。
修学旅行をきっかけに、奉仕部という部活は終わることになる。
◆
「そういや、もうすぐ修学旅行だねー。ゆきのんはどこ行くとかってもう決めた?」
「誘ってくれた子たち次第じゃないかしら」
「……は?なに、お前誘われんの?友達いないのに?」
「ちなみに僕は誘われませんよ。いつもひりついたじゃんけんの末に声かけに来るクラスメートを僕は愛してます」
「お前イカれてるよ」
ヒキガヤ先輩がチャドの霊圧が消えたみたいな反応をしているが、ことこういうイベントにおいて雪ノ下先輩とヒキガヤ先輩の間には圧倒的な格差があるというのをわかっていないようだった。
最後の月牙一護くらいの戦闘力があるのだ、雪ノ下先輩には。
圧倒的顔面偏差値は、それだけで一定の人望を集められる。
雪ノ下先輩がどれだけコミュ障で触れるもの全て傷つける冷徹女だったとしてもそれは変わらない。
ましてや、最近の雪ノ下先輩はかなり柔らかくなったのだから、その人望もまた一押しと言えるだろう。
一応僕も持ち合わせてるはずなんだけど、それを打ち消して余りあるキャラの濃さのせいなのか、それともシンプルに文化祭の時みたいな感じで定期的に発生する特大の悪評のせいなのか、人望があった試しはない。
悲しいね、バナージ。
「ヒキガヤ先輩、雪ノ下先輩は百合の女王様なんですよ」
「…その言い方、そこはかとなく気持ち悪いわね」
「ああ、なるほど。お姉さま〜みたいなやつか」
いや、実際本当にお姉様って言ってる女子高生はいないと思うけれど、潜在的百合生徒みたいなのがいるのだ。
たまにカースト命な女子とか誰かに寄りかかりたい女子とかが雪ノ下先輩を利用しようと寄ってきているのを見たことあるけれど、絶対零度の目線と苛烈な口撃でぶちのめしていたし、それが余計に人気に火をつけてる可能性もある。
「確かにゆきのんってかっこいい雰囲気あるから、ほとんど女子のJ組だとモテそう!」
たしかに、とか言いながら何処か不満げなガハマ先輩の表情が、雪ノ下先輩のモテ具合を裏付けていた。
この二人定期的に百合百合してんな…。
「そんなもんか…」
「俺の雪ノ下なのにな…」
「悪質な副音声は今すぐやめてくれ?」
「私のゆきのんなのに…」
「おい副音声…あれ、声真似…じゃない!?」
僕らの反応を見ていよいよ納得したらしいヒキガヤ先輩は、素直に視線を本へと戻した。
手元にはいつぞや僕がプレゼントしたマグカップがあり、最近の少し冷えてきた空気の中に湯気が溶けていっている。
寒くなってきたなぁ。
そろそろ冬布団を出してもいいかもしれない。
「つーか由比ヶ浜はどっか行きたいとことかねーの?」
「うーん…お寺とか神社とかあんまり興味ないし…。庭とか見てもよくわかんないし…スイーツ巡り?」
「千葉でもできんだろそれ」
「もうヒッキー!最近の京都はすごいんだよ!賞味期限が5秒のやつとかあるんだから!」
「なんだよそれ、腐ってんのか?」
「ヒキガヤ先輩の目が京都で売られてる…ってコト!?」
「あら、たしかにそれは面白そうね。でも、千葉でもそのお店は見れそうだわ」
「目をえぐれって?」
「ヒッキー…気持ち悪い…」
「いや俺は悪くないだろ!誘導した今泉と雪ノ下に文句言えよ!…なんなのお前ら?文化祭終わりから妙に息ぴったりなのやめてくんない?」
「そんなこと言われても…」
僕と雪ノ下先輩がM.A.V.なのは、向こうがニュータイプ並みにこっちの心を読んでくるからなので、僕にはどうしようもない。
文句は今も僕の方に向かってドヤ顔をしている(可愛い)雪ノ下先輩に言って欲しい。
アイコンタクトでヒキガヤ先輩に伝えたら、無理だろ…って感じで目線逸らされた。
心が通じたようで何より。
いやどうだろ。
単に人と目線を合わせるのになれてないだけの可能性もある。
「あ、あと金閣寺も行くよ。優美子が見たがってたから」
「さすが姉御。成金趣味なの解釈一致ですね」
「今泉くん、あんまり度が過ぎたら優美子に言いつけるからね」
「むしろばっちこいですけど」
実に平和。
あるいは、壊れないでほしいとすら思えるほど穏やかな一幕。
だが、その静謐を破るように扉が叩かれた。
「どうぞ」
「邪魔するよ」
「ちーす」
雪ノ下先輩の返事に促されるように部屋へと入ってきたのは葉山隼人先輩と戸部…戸部…戸部…かずなり?
あれ、戸部先輩って名前なんだっけ。
まぁいいか。
要はわりかし縁のあるサッカー部二人だった。
どうやら取り巻きはいないらしい。
やけに襟足を触ってキメ顔をしている戸部先輩がうざいが、おそらくきっと
「何かご用かしら?」
「いや、依頼の成果物を受け取りに来ただけだから。すぐ帰るよ」
「…依頼?…………今泉くん?」
葉山先輩の言葉に、雪ノ下先輩の顔が僕の方へと向く。
その視線はとても鋭い。
まるで約束を破ったクソ野郎を見るような目だが、残念ながら、僕が葉山先輩の依頼を受けたのは文化祭の始まる前なのでルール違反は犯してない。
だがらセーフ。
セーフです!
今泉洸平は無罪です!
「おっとまるで僕の信用がねぇ!でも正解です!言い訳はCMの後で…ってわけでどうぞ、戸部先輩。『Eファイル』とその他諸々です」
「しゃす!あざーす!今っち流石だわ〜マジリスペクト!お守りにします!」
「まぁ、それほどでもありますよね。京都のお土産期待してます」
「っべー、何がいい?やっぱちんすこう?」
「あー生ちんこすうとかあったら嬉しいですね」
「今ちんこって言った?」
「やだなぁヒキガヤ先輩。そんなふざけたこと僕がいうわけないじゃないですか。言ったのは戸部先輩ですよ」
僕がアホな会話をしながら分厚い封筒を渡すと、戸部先輩は中の紙類を確認してすぐに、DVDと真っ黒な見た目だけはお守りの形をしたナニカを取り出して拝み始める。
その黒いナニカには真っ赤な糸で『恋愛成就』の刺繍があるが、その袋の中から指のミイラみたいな物が飛び出していて明らかに呪物のそれだった。
制作者はもちろん僕。
魔女の指っていうクッキーだ。
「特級呪物じゃん」
「違いますよ、あれはただのクッキーです!」
「嘘だろ?どっからどう見ても両面宿儺の指じゃん。百葉箱に封印されてるやつじゃねーか」
「ヒキガヤ先輩もいります?」
「いやいい。やめとく。やめ、やめろ…やめろつってんだろ!口に突っ込もうとするな!」
「ヒキガヤ先輩が虎杖なら僕は真人にしようかなぁ」
「ちょちょ、今泉くんストップストップ!そんな十本も同時に詰め込んだらヒッキー死んじゃうって!」
「何してるの今泉くん───もう2本くらいいけるでしょう?」
「…ゴホッ、おご…っ、ふざけんな!」
さて、そんな風にふざけてるうちにサッカー部のマネージャーからのメールに呼び出された戸部先輩は、葉山先輩を残して部活へと旅立っていった。
ということで、流石にそろそろふざけるのはやめておこう。
これ以上はいくらリメイク版と言っても怒られる文字数になってきたことだし。
「…どういうことか、聞かせてもらえるのよね?」
「話すさ」
残った葉山先輩が僕のとなりにパイプ椅子を広げ、腰を落ち着けるのを見ながら、思う。
なんで僕の隣に来るんだろう。
まるで共犯みたいな感じになるからやめて欲しいんだけど。
◆
簡単にまとめると、だ。
僕は文化祭前に葉山先輩から頼まれ事をしていたのだ。
内容は戸部先輩について。
なんでも僕と海老名先輩が林間学校のときに一瞬で意気投合したのを見て焦った戸部先輩が、文化祭で告白しようとしているから説得してほしいというものだった。
だから僕は、海老名先輩にBL劇場を開催させたのだ。
「わかりました?」
「いやイコールで繋がらねえよ。順接の使い方下手くそか?文脈が複雑骨折してんだけど」
「なるほど…つまり、好きなものに打ち込んでる状況に持っていって、海老名さんの邪魔をするのはやめときましょう、むしろ心の内を見るチャンスですよと彼をだまくらかしたわけね」
だまくらかしたというか、『戸部先輩戸部先輩、今忙しそうですし待ちません?待てば僕が、必勝法授けてあげますけど』って言っただけではある。
「ゆきのん、なんでわかったの?」
「簡単な推理よ」
「メタ推理だろそれ」
「正解ならそれでいいのよ。ついでに言うなら、葉山君と私達で話し合いの場を設けるために今のタイミングにしたわけね。渡すだけなら体育祭前でもよかったわけなのだし」
「あー、隼人くん実行委員長で忙しそうだったもんね」
どうかしらとこちらを見る雪ノ下先輩に、僕から言えることはなにもない。
「見通しすぎて怖いんですけど雪ノ下先輩」
「ふっ、私に隠し事できると思わないことね」
「何そのドヤ顔?…あー…それで、葉山。俺達にしておきたい話ってなんだ」
ヒキガヤ先輩が、どんどんズレていく話を軌道修正するように葉山先輩に水を向ける。
たぶん僕を野放しにすると話合いにならないと判断したのだろう。
ガハマ先輩も僕の口をいつでも塞げるようににじり寄ってきてるし、最近先輩方からの信頼が分厚くて泣けてくるぜ。
「ああ、その、なんというか…」
葉山先輩は適切な言葉を探そうとして、少し逡巡するように視線を彷徨わせると曖昧な笑顔で言った。
「何もしないでほしいんだ。戸部に何か頼まれても、優美子に何か頼まれても」
「えっ、私たち手伝えることあるなら何でもするよ?」
「ありがとう。…でも、これは戸部の問題で、俺の問題だから。もちろん個人的に手伝いたいって言うなら俺は止めれないけど……そうだな。その上で、一つ依頼をしたい」
葉山先輩は、今度は迷わなかった。
「俺達の結末を見届けてほしい」
そして、その言葉には覚悟がこもっていた。
雪ノ下先輩はその言葉を受け止め、しばし固まった。
それもそうだろう。
雪ノ下先輩は過去、葉山先輩の介入によって事態が悪化したという経験がある。
そんな雪ノ下先輩からすれば、それは過去の葉山隼人の否定に他ならず、少なからずわだかまりがある彼女にだけは、それを問いただす資格があった。
「…最近らしくないわね。何も選ばない、期待には応えるだけ、現状維持があなたの方針ではなかったかしら」
「そうだな…否定はしない。俺は相変わらずなにも選べない。それでも信じることにした。壊れたくない関係で、変わらないほうが俺にとって都合が良くて…でも、それでも残るものはあるって信じることにしたんだ」
どうやら、相模先輩の一件は随分葉山先輩に影響を与えたらしい。
なにやら心当たりのありそうなヒキガヤ先輩が、唖然とした表情のまま口を開く。
「お前…」
───でも、本当にするべきは…信じることだったんだな
あるいは、ヒキガヤ先輩がまるで裏切られたかのような顔をして見えたのは、気のせいだろうか。
「今泉を美化しすぎだろ。目ぇ覚ませ、な?こいつの場合光り輝いてるように見えてるかも知れないけどデーモンコアの類だから。放射線だから」
「偉大な清涼剤は輝いて見えるもんですヨ」
「とりあえずほら、隼人くん。熱測りに保健室行こう?」
「ガハマ先輩まで言いますか!いいのかなぁー!僕にそんな態度でいいのかなぁー!修学旅行で覚えとけよあんたら!1年生だから参加できないと思ったら大間違いだって教えてあげますよ!」
「あ、落ち着いてごめんって!でもちょっと第二の今泉くんの出現は阻止したくって!」
「うわぁん、ガハマ先輩がいじめてくるよ雪えもーん!」
「そう。私は先に未来に帰るからあなたは自分で解決しなさいね」
「このポンコツロボット全然役に立たないじゃん不良品か?」
「いい度胸ね。私の地球破壊拳で粉砕してあげる」
「雪ノ下先輩のへなちょこパンチがなんですって?」
修学旅行が始まる。
様々な思惑を乗せて、新幹線は京都へ走る。
定められた結末に、レールに沿って吸い込まれるように。
「…おい今泉が気絶したんだけどこれどうすんの?というかお前は何なのマンガのキャラなの?首トンでなんで人が気絶するんだよ…」
「ふっ、それほどでもあるわ」
「ゆ、ゆきのん…そこでドヤ顔するのはちょっと違うと思う…」
「はは、頼む相手間違えたかな…」
とりあえずこの作者による作者のためだけの自己満リメイクは3日連続投稿します。
ちなみに最新作の履歴が下ネタだらけになったのをどうにかしようみたいな意図はちょっとしかありません。