トレセン学園新聞部「蹄鉄の裏側 第138号」ライバル決戦!宿命の天皇賞(秋) 作:ゴケット
彼女がウマ娘の新人賞というべき阪神3歳ステークスに快勝したとき、アナウンサーはこう叫んだ。
「見てくれこの足!!これが栗東の期待、〇〇〇〇〇〇だ。〇〇〇〇〇〇だ。強いぞ、強いぞ!〇〇〇〇〇〇!」
栗東のウマ娘と、栗東寮贔屓のウマ娘ファンたちは、見事な勝ちっぷりと颯爽とした姿に期待をこめそのウマ娘をこう呼んだ。
『流星の貴公子、テンポイント』
そのウマ娘の血統からは多くの一流ウマ娘が輩出されていた。他を圧倒するような壮大な体、キリリとした端正な顔には底知れぬ魅力を湛えた瞳があった。
クラシック級になって彼女はその雄姿をファンの前に見せた。
「他の十人は置かれました。他の十人は大きく置かれた。これは強い!これは強い!〇〇〇〇〇〇〇〇他を寄せ付けません!〇〇〇〇〇〇〇〇圧勝です」
美穂寮贔屓のウマ娘ファン達は、その桁違いのスピードとスケールの大きさに叫んだ。
『天駆けるウマ娘、トウショウボーイ』
毎年、新しい世代のウマ娘達が素晴らしい栄光を夢見てトレセン学園の門をくぐる。
そしてその願いが叶えられることはめったにない。オープンまで勝ち上がることのできるウマ娘は全体の3%ほどでしかない。そして、URAでデビューしたウマ娘の三人に一人が未勝利のまま引退していく。筆者もレースを諦め、スタッフ研修生として編入をした口である。
しかし、この二人は違った。栗東ではテンポイントが、美穂ではトウショウボーイが圧倒的な強さで勝ち進んでいた。私たちはその強さに驚嘆し、憧れとそれ以外の何かを感じ始めていた。
この二人が初めて激突したのは、クラシック初戦。皐月賞である。
『クラシックロード第1戦延長!!』
URAの労働組合とトレーナー会が激しく対立し、その影響を受け皐月賞の開催が危ぶまれた。当時、生徒会に参加していたテンポイントもその対応に追われ、結果、トレーニングの調整に狂いが生じた。
ゲートが開き、スーッと鼻を奪うように飛び出したトウショウボーイに対して、
「体が重い。足が前に…」
テンポイントはレース延期が響いたのか、走りにいつもの冴えが見られなかった。
結果はトウショウボーイが後続を5バ身以上離した圧勝。その強さに観衆は呆気にとられていた。
一方テンポイントは、
『テンポイント完敗(2着)』
2着に入ったとはいえ、初めての屈辱を味わった。
次走は当然ながらウマ娘最高の栄誉、日本ダービーに出走したが、レース中に落鉄。第3コーナーから思うように加速することができず7着と惨敗した。しかも、骨折の憂き目にあう。
このころの彼女の体調は、競技生活の中で最も悪いころであり、骨折が治り復帰戦としたシニア級との対決になる京都大賞典に出走する際には、トレーナーが「やっと出走にこぎつけた」とコメントした程であった。が、3着と健闘した。
そして、クラシック最終戦、菊花賞。テンポイントは雪辱を晴らそうとトウショウボーイをマークする形でレースを進め2周目の4コーナー。良馬場をもとめてウマ娘たちが外に広がる。トウショウボーイは競走前夜の雨により濡れた馬場に溺れている。
馬場のいい大外を抜けてテンポイントが先頭に立つ。
『道悪承知!!内ラチいっぱいを突く奇襲策』
テンポイントが雪辱を晴らしたか!?地元期待ウマ娘のタイトル奪取を願う声は悲鳴に変わった。
(内をぴったりと回ってくれば、かならずインコースが開く。そこを回って勝負だ)
ノーマークの緑のウマ娘がただ一人、内ラチいっぱいからより力強い脚色で伸び切った。
「グリーングラス大殊勲!大輪の花はグリーングラス!遅れてきた第三のウマ娘」
『緑の刺客、グリーングラス』
トウショウボーイへの雪辱戦に闘志を燃やしていたのはテンポイントだけではなかった。
グリーングラスもまたメイクデビューにてトウショウボーイと対決、後塵を拝する結果となった。しかし、スタミナ勝負の菊花賞にて、グリーングラスはその才能を開花させ、クラシック最後の栄冠を手にした。
一方、テンポイントはトウショウボーイに先着したものの、2馬身半差の2着に終わった。
そして、年末のビックレース有馬記念。
『実力日本一”天駆けるウマ娘”』
シニア級を相手にレコード勝ちまさに、天駆けるウマ娘の名を不動のものにしたトウショウボーイ。テンポイントは2着と無冠のままクラシックシーズンを終えた。
『悲運の貴公子』
クラシック級で出場した有馬記念の1、2着独占で2人が抜きんでた力を持っていたことが誰の目にもはっきりわかった。そして、G1を2勝したトウショウボーイは歴史的名ウマ娘であった。
だが、テンポイントには何の冠も与えられなかった。
G1タイトルを続けて2着で敗れたテンポイントは一部から「悲運の貴公子」と呼ばれるようになった。あの胸をときめかしたような予感は外れたのか?一抹の寂しさを抱えながら、筆者も心の片隅でそう思い始めていた。
担当トレーナーは、「なにかひとつ、テンポイントに大きなレースを勝たせてやりたかった。それが心残りだ。しかし、来年になれば、きっと…」とコメントを残した。
この言葉は現実のものとなる…。
『強者の風格テンポイント』
シニア級になりテンポイントは大きく変身していく、デビューより身長が伸び全身に筋肉がついた。美しいが繊細で華奢というイメージが消え、ウマ娘としての力強さが備わっていた。
テンポイントは年が開けたレースを2連勝し、シニア級最高の重賞レース天皇賞(春)に挑んだ。このレースにはグリーングラスも出場していたが、第4コーナーで先頭に立つと後続の猛追を退け初のG1制覇。無冠の帝王の名を返上しシニアの勲章を勝ち取った。
テンポイントはたくましい体になって私たちの前に帰ってきた。美しい栗毛は変わらなかったが、もう華奢な美少女ではなかった。学園でも彼女のことを眩しいものを見るように見ていた者は少なくなかった。
『天駆けるウマ娘との対決準備はOKだ!』
ウマ娘レースファンの待ち望んだ日がやってきた。テンポイントとトウショウボーイが久々に対決する宝塚記念。
シニアになって負け知らずのテンポイントに対して、トウショウボーイは有馬記念以来の休養明け、栗東ファンは今度こそと固唾をのんでレースを待った。
前半は超スローペースで進んだ。テンポイントは後ろのウマ娘たちを気にしてトウショウボーイを悠々と逃がしてしまう。テンポイントは2番手から追走したものの最後まで交わすことができず、2着に敗れた。
トウショウボーイの担当トレーナーは「『出走頭数が少なくハイレベルの馬が2、3頭に絞られたレースでは先に行った方が有利』という鉄則にしたがってレースをするように指示しました」とコメント。対してテンポイント担当トレーナーは、「相手をトウショウボーイだけに絞りきれなかった。ぼくの采配ミスです」としており、テンポイント本人も後に「出走したレースの中で唯一トレーナーに対して失礼なレースをしてもうた」と語っている。
この敗戦により「テンポイントは永久にトウショウボーイには勝てないだろう」 という声が一部で上がるようになったが、しかし、2人に力の差はないように思われた。2人によるマッチレースがウマ娘レースの原点とするなら、この2人こそ、それにふさわしいウマ娘だ。
それでもまだなにかが足りないと筆者とファン達は思っていた。だから、私たちはその瞬間を待っていた。
宝塚記念後、テンポイントはアメリカのレースに招待を受けていたが、トウショウボーイを倒して日本一の競走馬になるべく招待を辞退。年末の有馬記念を打倒トウショウボーイの最後のチャンスとした。
テンポイントは悩んだ末、トウショウボーイに打ち勝つため一つの作戦を考えたが、その作戦が功を奏するのか不安であった。担当トレーナーに相談すると、トレーナーは「お前がどんなレース運びをしても、このまま勝つのだから心配するな」と、一種の勝利のマインドセットを行い彼女を送り出した。
ファンファーレがなりスタンドには10万人のファン。
この時、筆者は栗東寮の談話室にいた。スタッフ研修生としての初の年末を実家で過ごそうと荷造りしていたが、レースの時間にセットしたスマホのアラームがなり、談話室の大型テレビの前に陣取った。もちろん、スマホでレース視聴をすることも可能だったが、どうしても二人の雄姿を大画面で見たかった。そうすることで二人に対する感謝の気持ちを表したかったのかもしれない。
ゲートが開いてレースが始まった。談話室からざわめきが、不意に消え、静寂の中を2人のウマ娘が疾走する。
「トウショウボーイとテンポイント、並んだ並んだ。体が並びました」
テンポイントの取った作戦とは、前半から積極的にトウショウボーイに仕掛け足を使わせ、つぶしてしまうことだった。一人に的を絞るのにも危険が伴う、他のウマ娘、例えば静かに3番手まで上がってきたグリーングラスなどに、やられてしまう可能性もあるからだ。
内から並びかけるテンポイントに対してトウショウボーイは並ばせまいとして内に体を寄せた。するとテンポイントはスルリと後ろに下がった。トウショウボーイが単独で先頭に立つ。テンポイントは力尽きたかとスタンドは騒然とした。
「あなたの、そして私の夢が走っています!」
これはテンポイントの作戦だった。一旦は下げ、外からの追い込み策を取ったが、あくまでトウショウボーイに的を絞りせりかける捨て身の戦法だった。
「さあ、さあ一騎打ちか!?さあ、これは世紀の一戦!!」
二人が体を合わせたまま直線へ。まさに一騎打ち。
「テンポイント、かわしたか!?トウショウボーイか!?」
一歩ごとにテンポイントが前に出る。
「外から!怖い!怖い!グリーングラス!!」
その直線で、過去も未来も消え去った。2分35秒のデッドヒート。
「中山の直線を!中山の直線を流星が走りました!!」
『戯れか死闘か、勝者テンポイント』
筆者は夢から覚めたように周りを見回した。それは初めて見る光景だった。栗東の談話室にいたウマ娘たちが一斉に私と同じように周りを見回していた。
筆者も他のウマ娘たちも同じ気持だった。
「あなたも確かに見たよね」
私たちは今見たものに圧倒されながら、その喜びを分かち合っていた。
テンポイント
栗東寮に所属していたウマ娘。同期のトウショウボーイ、グリーングラスと共に「TTG」と呼ばれた三強を築いた。シニア級での有馬記念での激闘のあと、目標をアメリカ遠征とし、その壮行レースとして出走したレースで左足を骨折。レースから引退することとなった。レース引退後、叶わなかった海外遠征の夢を後輩たちに託し、そのサポートをするため遠征コーディネーターとして活動。ウマ娘レースの実況を担当していたアナウンサーと結婚した際に、名前を清本ミキに改名。現在ではトレセン学園の遠征後援会としても活躍している。
PS:プロポーズの言葉は「テンポイントと私は赤い糸で結ばれている」
初期解放
自己紹介
うちはテンポイントと申します。
大きゅう紙面を飾るような活躍を・・・。
皆様の心に、うちの名を刻んでいただいたら幸いですぅ。
学年 高等部
所属寮 栗東寮
親愛度ランク 1
身長 165cm
体重 苦労しているがきっちり管理
誕生日 4月19日
親愛度ランク 2
得意なこと 卓球やシューティングゲーム
苦手なこと バッチリメイク(肌が薄くメンコはNG)
親愛度ランク 3
耳のこと 音が外れた歌でも気にしない
尻尾のこと 真っ赤に燃え上がって見えるほどツヤツヤ
親愛度ランク 4
靴のサイズ 左右ともに26.0cm
親愛度ランク 5
家族のこと 妹はフリーレーサー
テンポイントのヒミツ①
体調が悪いときは医者に任せることにしている
テンポイントのヒミツ②
文字を書くときは、大きく書きがち
マイルール 寝る前はホットミルク
スマホ壁紙 一文字習字
出走前は… 自室にいるかのように落ち着いている