トレセン学園新聞部「蹄鉄の裏側 第138号」ライバル決戦!宿命の天皇賞(秋) 作:ゴケット
7枠から真っ先に飛び出したのはダイワスカーレット。
「よし、このままぁ~」
いきなりトップスピードで飛び出し、ダイワスカーレットは30バ身ほど抜け出してコーナーを回って向正面にはいる。
この時点でカストルトレーナーは頭を抱えた。
「ひどいレースだ」
ハナに立つにしても、それまでのダイワスカーレットはスタートを他のウマ娘と併走。そこからスムーズにスピードに乗る走りをしていた。が、この天皇賞はスタートから、とにかく力んだ走りだった。
「スカーレット!もっと気楽に行け!」
カストルトレーナーが指示を出すが、聞こえていないのか久しぶりのレースに興奮したダイワスカーレットのスピードは落ちない。
一方、ウオッカは、
「付き合うな!ウオッカ!」
「ああ、分かってるよ!」
同じぐらい速いスタートを切ったが、毎日王冠のように逃げを打たず、中団外目につける。目の前には今年のダービーウマ娘。
「我慢だ!ウオッカ!」
「ッ__!」
正直、位置取りとしては今年のダービーウマ娘を内に閉じ込めるのが正しい。ウオッカは体一つ分外を回されることになっているが、位置取り争いに必要な細かい動きはウオッカは苦手にしている。今は苦手分野で消耗せず足をためることに集中するべきだ。
「いいぜ、後輩。そのまま、そこにいろよ」
ウオッカは一旦ダイワスカーレットのことは忘れて、今年のダービーウマ娘をマークする位置取りで自分のペースを作った。
安田記念のようなに前に出る競バや、マイル戦の速いペースを経験したウオッカが抑え切れるか?そう思っていたポルックストレーナーの不安は薄れた。
「おほう、新旧ダービーウマ娘ちゃん対決ですか~。ウオッカさんとスカーレットさんの同室対決もいいですが、これはこれで、うひひ」
ポルックストレーナーの隣で、アグネスデジタルが気味の悪い笑い声を上げたかと思えば、突然真顔になってポルックストレーナーに向き直る。
「偶然かもしれませんが、いい位置につけましたね。ウオッカさん」
「…っ、ああ、ちょうどいい」
今年のダービーウマ娘ならば途中で下がってくる心配もない。 レースのしやすい位置にウオッカは着けている。レースの流れがゆっくりとウオッカに傾いていくのが分かった。
向う正面でウマ娘たちは縦長になり、先頭が2番手集団に2~3バ身差をつけて単身逃げとなったダイワスカーレット。ウオッカはそこから7~8バ身遅れた中団につけたまま3コーナーに。と、思ったところで、同期のウマ娘がダイワスカーレットに競りかけるような形で並びかけた。このウマ娘はウオッカと共にクラシック戦線に名乗りを挙げていたが、調整途上で右脚を骨折してしまい、クラシック戦線から離脱を余儀なくされた。経験の差からウオッカと同じ位置では勝てないと焦ったのかもしれない。
しかし、焦ったのはカストルトレーナーも同じだった。
(あれはスカーレットを潰すための動きなのか?)
「誰にも、1番は譲らない!」
ダイワスカーレットが4コーナーを回りながら、そのウマ娘を振り切ったが、道中でも、勝負どころの3~4コーナーでも、ペースを落として息を入れるタイミングを失ってしまい、イイと思える局面がない。
(このままだと、バ郡に沈む)
いくらダイワスカーレットといえども、ずっとかかりっぱなしで飛ばしてきてしまっては、最後は失速してしまうだろう。ダイワスカーレットを信じたい気持ちはもちろんあったが、さすがにこの展開ではカストルトレーナーでも負けが頭にちらつき始めた。
4コーナーを回りながらウオッカはチラリとダイワスカーレットの位置を確認しただけで、目の前の今年のダービーウマ娘に視線を戻した。
(たぶん、外に振ってくるぞ。これ)
外目に着けていたウオッカの予想通り、今年のダービーウマ娘とウオッカは馬場の真ん中から併せウマのような形で加速していった。ダイワスカーレットとの差が一歩ごとに縮まっていく。
残り200m。内ラチぞいを逃げるダイワスカーレットだったが、誰もが新旧ダービーウマ娘対決の様相になった。と、見ていた。ウオッカが半バ身、今年のダービーウマ娘をかわしてそのまま突き抜けるかと思ったが、三つ巴の叩き合いになった。
ウオッカがまた首ほど抜け出す。ゴールまで100mもないところで、ダイワスカーレットと今年のダービーウマ娘の間から、猛然と16番のウマ娘が追い上げてきた。
後続が迫ってくると内ラチぞいの芝生が跳ね上げられる。
「あんたにだけは!」
ダイワスカーレットがゴール前で再び伸びた。
普通、ここまでのハイペースで逃げた場合、外から伸びてくる追い込みウマ娘にあっさりかわされてしまうものだ。しかし、ダイワスカーレットは違った。
「「「こらえろ、スカーレット!!」」」
チーム:カストルの面々は考えられないところから差し返そうとするダイワスカーレットの能力の高さを改めて感じながら、声を張り上げた。
4人の大接戦に歓声が上がる中、ダイワスカーレットのとてつもない粘りにポルックストレーナーの顔が青ざめた。この速い流れを追いかけてきたウオッカも限界のはずだ。
「「「ウオッカ!差し切れ!」」」
内のダイワスカーレット、間に二人のウマ娘を挟んでウオッカはほぼ同時にゴール板を駆け抜けた。
タイムはレコードを0.8秒更新する1分57秒2。
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何卒よろしくお願い申し上げます。3/4