失踪しないように頑張ります!
ポケットモンスター縮めてポケモン。
世界的に爆発的な人気を誇るゲームのジャンルであり、大人も子供も大きくハマっているといっても過言ではない。
とか言っている俺もかなりハマっていたゲームではある。
廃人というほどでもないがそこそこやっていたと言えるぐらいにはやりこんでいたぐらいだ。
大学生の俺は休みの日にはいつもポケモンをやっていた、楽しいから寝る時間も惜しんでやっていたもんで、危なく大学の講習に遅れそうになったこともある。
今日も大学が終わり、バイトも終わって家へと帰る。
夜は何を進めようかと考えながら道を歩く。
「今日も疲れた…けど家に帰れば楽しいポケモンが待っているからな。飯は…肉野菜炒めでいっか」
冷蔵庫の中身を思い出しながら晩飯を考える、そんなことを思いながら帰路についていたんだが……
「どこだよここッ!!!」
拝啓、お母さん、お父さん。
俺はどうやら、面倒ごとに巻き込まれたらしいです……
「マジでここどこなんだよ…」
辺りを見渡せば道ではあるが、いつもの見慣れた道ではなく所々で塗装が剥げている少し廃れた様子の道路であるのが見て分かる。
更に上を見上げれば空は黄色、少し遠くを見渡してみれば森が生い茂り、山もあるが谷もある。しかし谷からは光の柱が立ち上り、ここが普通の世界でないことは見て取れるようだ。
「明らかに俺がいた世界じゃないな、見たことねぇよ谷から光が立ち上ってるの。マイ〇ラのビ〇コンじゃねぇんだぞ」
言ってる場合か?
「てか冗談言ってる場合じゃないんだよな、マジでどうしよう。今バッグに何が入ってたかな…」
開けてみればバイトの賄いで貰ったおにぎり、連絡を取るための携帯、財布と勉強のための教材が入っており、持ち物自体はちゃんと持っているようだ。
「よし、無くなってるもんはないな。とにかく人を探さないと…こんだけ家が建ってるんだ、1人や2人ぐらいいるだろ」
そう思いながら道なりに進む、あたりを見ながら進んでいくが人の気配はしない。進むにつれて段々と足取りが重くなってくる。
「くっそ、バイト終わりで疲れたし急に不安になってきた…俺家に帰れるのかな…」
(嫌な匂いもしてきたし凄く獣くさい……信じたくなかったけど本当に異世界に転移したっぽいな)
不安になってきたが頭は冷静である、慌てても疲れるし余計に焦るだけだ。こういうときほど冷静にならなければならないと考える。
そう思いながら歩き続けて30分、遠くに見えていたひと際大きな建物にあと少しで到着するといったタイミングだろうか。
自分と同じくらいの大きさの草むらがガサガサと揺れ、更に獣臭が強くなったのを感じる。
「ッ…!」
(嘘だろ…?!こんなデカい草むらから出てくる獣って冗談きついぞ…!)
早く逃げなければと思うが足がすくんで動かない。もたもたしてる間にも音は大きく、今にも音を出している主が飛び出てきそうな気配すらしてきた。
草むらの中から2つの眼光がこちらを睨んでくる。影になっており、全貌はよく見えないが涎を垂らしながら鼻をヒクヒクさせこちらに顔を出してきた。
「グルルルルゥ…!」
「嘘だろ…?
ありえない…!ポチエナは…ポケモンは現実世界にいないはずだ!!!
てことはもしかして…!
(俺がポケモンの世界に来ちまったってことか…!!!)
「グルウルルゥウウウウ…ッ!ガァッ!!!」
「くっそ!あぶねぇな!」
すんでのところで”かみつく”をかわす。ガチンッ!と鳴るその音は容易に腕と胴体がおさらばするには十分だと分かる迫力だ。
「冗談じゃねぇぞ!こんなところで死んでたまるか!!!」
「ガウルラァッ!!!」
ガチンガチンと容易に命を刈り取る攻撃をかわしまくる。
かなりキツイが避けられない訳じゃない…!だがこのまんまだとこっちが殺されるのは明白!どうにかしてこの状況を乗り切らないと!
「ちょっと何やってるの!早くこっちに来て!」
目指していた建物の扉がバタンッ!と勢いよく開かれる。
出てきたのは優しそうな雰囲気の眼鏡をかけた白衣の男性。慌てたような顔でこっちに来いと助け船を出してくれるようだ。
「うぉおおおおああああ!!!」
俺はそこに勢いよく滑り込む。ドアは閉じられ外からはバウバウッ!と鳴き声が聞こえるがやがてそれは聞こえなくなっていき、俺はこの世界に来てからやっと一息をつくことが出来た。
「よぉしおっけい!ふぅ……危なかったね…!」
「はぁ……はぁ……!す、すいません…マジ助かりました…!」
「いいっていいって、けど君ここらへんじゃ見ない顔だね。どこから来たんだい?」
「えーっと、なんていえばいいかな…転移してきた…?」
俺の話を聞いて目を見開く男性、むしろこの風貌なら博士じゃね?なんとなくジニア先生っぽいな…雰囲気だけだけど…
「
「まぁそうですね…歩いていたらいきなり知らない景色になって、この建物が見えたんでここまで歩いてきたんです」
「なるほどね…君が転移してきたのももしかして
「霊脈?」
会話をしてる中で出てきた単語、霊脈……もしかしてあの谷から出ている光の柱のことをいっているのかな?
俺のことを見てくるジニア先生(仮)、けど実際に転移してきたと言われればマジマジとみるのも無理はないのかもしれない。
「そ、霊脈。あの谷から出ている光の柱のことさ。あの霊脈は別の次元に繋がっているって言われていてね、最近霊脈の様子がおかしくなってしまって野生のポケモンが狂暴化してきた。そんな中君が転移してきた、果たしてこれは偶然かな…?」
(偶然じゃないだろうな、明らかにタイミングを見計らってるし……俺のことを連れてきているし……)
俺のことを見るのをやめて手に顎を置く、そうだ!と思い出したようにこっちに詰め寄ってくる。かなりグイグイ来るなこのジニア(仮)
「って近い近い!!近いって!そんな近寄らんくても顔は見えるだろ!」
「ごめんごめん!ついついはしゃいじゃってね♪それはそうと、君の名前を教えてもらえるかい?僕の名前はウィアド。みんなからはウィアド博士って言われているよ」
そういえば名乗ってなかったな、この機会だしちゃんと答えておこう。
「俺はカケルと言います、そして改めて助けていただいてありがとうございました…」
「いいよ気にしないで、転移ってことは自分のポケモンすら持ってないだろうからね。むしろよくポチエナのかみつきを捌き切ったね?」
(マジで無我夢中だったからなあれ、もう一回やれって言われてやれる自信はない)
「まぁなんとかですけどね……そうだ、ここって何地方なんですか?俺が知っている地方とは何処も特徴が似ていなくて」
「ここはトラウム地方だよ、谷から溢れ出る霊脈によって成り立っている地方さ」
「トラウム地方…?」
全く知らん地方なんだが……
そもそも流したけど霊脈ってなんだ?どこの地方にもないけど似たようなのガラル粒子みたいなもんかね?
「なんだって顔をしているね、そりゃそうだよね。僕の知っている中も霊脈だったり龍脈だったりがあんなに噴気している地方はトラウム以外知らないし」
「なるほど……さらっと流したけど龍脈ってのもあるんですね」
「そうだね、けど基本的にはどこの地方にも霊脈龍脈ってのはあるんだ。カントーにもあるしジョウトにもある。分かりやすいのはガラル地方のガラル粒子じゃないかな、あれはムゲンダイナが元になっている一種の龍脈みたいなものだからね」
確かにそれならば納得がいく、だとしてもなんで俺が呼ばれたのか分からないけど……
「ともかく、今のカケルくんはパートナーポケモンがいない。野生のポケモンから自衛する手段がないのはこの地方だと非常に不味いからね……せっかくだ、僕からポケモンをプレゼントしよう!」
「え?!いいんですか?!けどポケモンってそんな人にあげていいようなもんなんです?」
「大丈夫だよ、僕博士だし」
(何が大丈夫なんだそれ……?)
ウィアド博士に連れられて研究所の奥へと連れていかれる。
先ほど外は黄色い空が広がっていたが研究所の中は青い空、転移する前の見慣れた世界の空が広がっていた。
「凄い…!外の空は黄色だったのにこの中は青い空だ!」
「ホログラムだけどね、空が黄色くなる前はみんな青い空の下で生きていたから。せめてこの中でぐらいは青い空の下で過ごしてほしくて頑張ったよ~」
カケルはあたりを見渡すが明らかに頑張ったというレベルのスケールではない。
研究所の見た目よりもずっと広い空間、明らかに外で見た民家や建物からは考えられない程のオーバースペック。どれをとっても人間の力で出来るものでは到底ない。
「どうやってこれを……」
「これが霊脈の力さ。霊脈にお供え物をして、差し出したお供え物に対する恩恵を貰える。僕たちトラウム地方のトレーナーはこうやって生きてきたのさ」
「なるほど……」
(そのお供え物って何だろう……まぁ取り合えずはいいか、今考えて分かるものでもないし)
明らかに広い草原を見渡せばいろんなポケモンがいる。
ムックル、ビッパ、キャタピーにホーホーと序盤に会うであろうポケモンが悠々自適に歩いており、ストレスもなくのんびり暮らしているのが見て取れた。
「好きなポケモンを選ぶといいよ、いろんなポケモンがいるからね。選ぶ時間はたくさんあるよ!」
「けどこれだけ居たら迷うな……ん?」
近くの森の奥、ふと目が合った。
あのポケモンは確か……
「ッ……」
「リオル……か」
「あれ、珍しいね。あのリオル凄く臆病者でさ、めったに僕の前に姿を見せることはないんだよね」
「けどリオルがあそこまで怯える事って……」
ちらりとウィアド博士の方を見る、少ししか会話をしてないが明らかな胡散臭さを醸し出しているこの男、助けてくれたことは感謝しているが正直信用に値するかと言われれば……
(まぁしないよな、リオルは確か波動で相手の気持ちを知ると言われている。もしウィアドがリオルに対して何かしらよくないことを思っているとしたらその行動も頷けるか…)
よし、決めた───
「決まったかい?カケル君」
「はい、俺はこの子にします」
「けど本当にいいのかい?いっちゃあれだけど……この子は本当に憶病だからバトルができないかもよ?」
「それでもです、それに───」
リオルの方に顔を向ける。
本当に怯え切っている。今にも泣きだしそうで、震えて……俺はこんな子を見たら放っておけない。それに見て分かった。
「お前、声が出せないんだろ?」
「ッ……!」
「まさか…!けど確かに…僕はこの子の声を聞いたことがないな。リオル、君本当に…?」
「……」こくっ
「そうか…辛いよな、悲しいよな……」
俺はこのリオルがどんな目にあったのか分からない、共感してあげることも出来ない。
けど助け合えることは出来る、手を刺し伸ばすことは誰にだって出来るはずだ。
「リオル、喋れないだろうけど波動で俺の心の中は分かっているんだろ?」
「っ!」こくこくっ
「俺は今困っているんだ、正直猫の手も借りたいぐらいにはな。だから俺としないか?」
「っ?」
「俺がお前を喋れるようにしてやる、憶病も治してやる。だから俺に力を貸してくれないか?今の俺にはお前が必要なんだ」
リオルは考える素振りを見せる、首もかしげて相当に考え込んでいるのだろう。
もしかしたらこのリオルは本来憶病じゃないのかもしれないな、何かしらの外的要因でこの性格になったと思うのが正しいんだろう……
そんなことを思いながらしばらくリオルを見つめている、ふとした瞬間に目が合った。
きれいな目だな…けど力強いいい眼をしている。こいつは強くなる、絶対に。
うちで飼っていたのは猫だがポケモンを育てるのもおそらく変わらない…と思う。
「……っ!」
「そうか…!お前は来てくれるんだな、ありがとうな、リオル」
それが考え抜いたお前の答えなんだな、なら俺はそれを尊重しよう。
俺のことは後回しでいい、先にリオルを──
「いてっ」
そんなことを思っていたらリオルに小突かれた、まぁまぁいてぇ…
「カケル君、どうやらリオルは頼れって言ってるみたいだよ?」
「ッ……そうか、助けてくれって言ったのは俺だもんな。ごめんなリオル、さっそく気を使わせちゃったみたいだな」
「♪」ふるふるっ
必死に首を振ってかわいいなこいつ。
「はい、カケル君。モンスターボールだよ」
「ありがとうございます博士、ほら。頼むよリオル」
「~♪」
ウキウキした表情でリオルはモンスターボールに吸い込まれていった。
これが俺とリオルの初めての出会い。この日を境に俺の、俺たちの冒険が始まった。
長い長い、それこそ、いつ終わるかも分からない。
永遠と言えるほどの冒険に出る事となるのを、この時の俺らは知る由もない。
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