「俺また倒れたんすね」
「またってことは前科あるんだね……」
目を覚ました時には病院のベッドの上だった。どうやら1日中眠り込んでいたらしくその間に手持ちのポケモン達もすっかりと体力を回復したらしい。
「まだ起きたばっかりで疲れてるよね?大丈夫?お腹減ってない?」
「大丈夫です、にしても申し訳ない……」
「ジム戦終わったら急に倒れちゃうんだもん、ビックリしちゃった」
聞けば鼻血も出ていたようだが出血量も大したことないとのことだ、だが一応安静にとのことで1日病院に入院となってしまった。少ししてナタネも帰宅し、久々に1人となった。思えばこの地方に来てからまだ数日しか経ってないのである、そう思えばジムバッジ2つ《※もうフォレストバッジは貰ってる》は早いのかもしれない。そして遂に出来るようになったエモリュージョン、カケルの場合は自分の気持ちをもう1度再確認することがトリガーだったようである。
「そうだ、出てこいリオル」
「ルォウ?」
リオルを出せばルカリオから元に戻っているようだ、今からでも使おうと思えばアレは使えるだろうがここは病院。下手に問題を起こして追い出されても困るので試してみるのは明日にしようと決めて床につくことにした。
「ふぁ……よく寝た。久々にこんな寝た気がするな……」
ベッドから起き上がり支度をして会計を済ませる。ナタネにもお礼を言わなければならないためジムに向かおうとするとそこには他のトレーナーと戦っているナタネの姿が見えた、どうやら最終盤の様でナタネはナエトル、チャレンジャーはズバットを繰り出していた。
【ナエトル】
《わかばポケモン》
『特性:しんりょく』
タイプ:くさ
【ズバット】
《こうもりポケモン》
『特性:せいしんりょく』
タイプ:どく・ひこう
「【どくどくのキバ】だ!」
「【はっぱカッター】で迎撃して!」
近づいてくるズバットに【はっぱカッター】を当てて動きをキャンセルさせる。続けて【はっぱカッター】を使いズバットに的確に命中させていく、いくら4分の1とはいえ既に何度もくらっていたのかそのままズバットは倒れこんでしまう。
「ッ……負けました」
「お疲れ様、対戦ありがとうね!また挑みに来て!」
負けたチャレンジャーはとぼとぼと歩いてジムを出ていく。その様子を観客席から見ていたカケルにナタネは気づいて近づいてくる、手を振りながら駆け寄ってきて疲れを見せない様子だ。
「カケルくん起きたんだね!体は大丈夫なの?」
「バッチリ治りました!病院にも連れてってもらっちゃって本当にすいません……」
「いいよいいよ気にしないで!」
ナタネはそういって笑い飛ばす、そして話もそこそこに次の話題を切り出す。
「カケル君の相棒のリオル……でいいのかな?進化したのにリオルに戻っている、何か理由を知ってる?」
(やっべぇ~……!言われてみればそうじゃん!なんか適当ないい理由ないか…?!)
「はは、冗談だよw いない訳じゃないんだ、進化してから元に戻れるポケモン。前例が少ないだけでね」
なんて都合のいい理由なのだろうか。おかげで助かったカケルとリオル、ボールから出てないだけでリオルも内心冷や汗ものである。そして更に会話は続き今後のカケルの話になった。
「カケル君はこれからどうするの?」
「俺はまたジムバッジをゲットするために冒険に戻ります、取り敢えず冒険を進めないと」
「思うんだけど、カケル君生き急いでる感あるよね。そんなに急がなくても人生は長いよ?」
そんなナタネに対して乾いた笑いで誤魔化す。そんなこんなでハクタイシティを後にし、更に旅を続け次にたどり着くのはヨスガシティだったはずと思い歩き始める。道中でギンガハクタイビルのことを思い出したがおそらくあそこは異変と関係ないだろう、それになんでもかんでも成り行きで解決してしまうとこの時空の主人公であるコウキが成長しなくなってしまう。
「忘れてた……自転車を使ってクロガネシティの方からじゃないとヨスガシティに行けないじゃん……」
哀れ、クロガネシティの方に行く近道はサイクリングロードを使わなければならないのである。自転車を持っていないカケルはまたハクタイの森を通ってテンガンざんを越えなければならない、どうしたものかと考えていると後ろから声をかけられた。
「あれ、先輩こんなところで何をやっているんですか?」
「おや、コウキ君じゃないか。実は自転車がなくてサイクリングロードを通れなくてね……どうしようと悩んでいたとこなんだ」
「丁度よかったです!俺自転車持ってるんで相乗りしましょうよ!」
「え?持ってるの???」
「はい!さっきまで事件に巻き込まれていて……それを解決したら自転車屋のおじさんに貰ったんです!」
なんとコウキは既にギンガハクタイビルのギンガ団を倒しきっていたあとだった、おそらく自分が倒れている間に解決したのだろう。カケルは少し悩んだが乗せてもらうことにした、ハクタイの森を戻るのも時間がかかってしまうこともあるがそれ以上にまた虫ポケモン達に襲われてはたまったものではない。
「だったら乗せてもらおうかな」
「了解です!せっかくなんで話しながら行きましょうよ!」
そしてカケル達はサイクリングロードを駆け抜ける、道中で他のポケモントレーナーが勝負を仕掛けてきたがコウキとカケルの相手ではない。だが頑なにポケモンを見せたくないのかコウキが使っているポケモンは見ることが出来なかった、しかし気にしていても仕方がないのでそのまま懐を潤しながらクロガネシティの方へと向かっていった。
「ここらへんで大丈夫そうですか?」
「ありがとう、マジ助かったよ!乗せてくれたしなんかお礼をしたいとこだけど……」
「だったらまた俺とバトルしてください!強くなった今の俺達を見てほしいんです!」
バトルに続くバトル、先日ぶっ倒れて病院に運ばれたばかりだが……そんなことはお構いなしというふうにカケルはそのバトルを了承する。だがこの前会ったばかりで出てきたのはモウカザル、流石に再戦は早いのではないかと考えていたが―――
「いくぞ“
「ウッキャアッ!!!」
「は?ゴウカザル?!」
【ゴウカザル】
《かえんポケモン》
『特性:もうか……?』
タイプ:ほのお・かくとう
「先輩に勝ちたくてずっとトレーニングしてたんです!ジュンとも戦ってたんですけど物足りなくなっちゃって……」
とんでもないことを言っている主人公である。見ればゴウカザル以外のポケモンは持っていない、だがその分ゴウカザルから感じられる雰囲気が圧倒的な強者のものだ。ナタネと戦ったドダイドスやロズレイドほどではないがそれに近しいレベルに仕上がっている、この短時間でだ。
「あの時のジグザグマはどうしたんだい?」
「ジグザグマですか?あの子はボックスの中ですよ。先輩を倒す為に1匹を集中して鍛えてきたんです」
「1匹でジム戦をし続けるのも限界があるぞ?」
「何か勘違いをしていますね先輩。今の僕の目的はポケモンリーグで優勝することでも図鑑を完成させることでもないです、あなたに完全勝利するのが今の俺の目標ですよ」
雲行きが怪しくなってきた。いくらゲームが基準だからと言っても流石に度が過ぎている
、そしてこの違和感にカケルは気付き始めていた。
(異変これじゃね?????)
「あの時ヒコザルを倒されてからずっと思ってたんですよ、なんで勝てないんだろうって。考えなきゃ勝てないし考えても勝てるビジョンが見えない、進化すれば勝てるかなと思ってモウカザルにしても先輩は新しいポケモンで俺の相棒と同じ動きをしてきた……てことはリオルはもっと卓越した動きをしてくるのは明白じゃないですか」
「あの時のリオルは本調子じゃなかったからね、チゴラスしか戦えなかったんだよ」
「だとしてもですよ、今ならリオルは本調子ですよね?ここで俺とバトルしてください、今の俺と先輩の差を改めて知っておきたいんです」
ここで完全に理解する、これが異変だと。自分がこの次元に関わったことで歪めてしまった1人の主人公が今カケルに牙を剥こうとしている、違和感が残るが今しなければならないことはコウキを鎮めることだ。
「分かった、勝負をしよう」
「よかった、断られたらどうしようかと思っちゃいましたよ」
『ポケモントレーナーの コウキが勝負を仕掛けてきた!』
「いくよゴウカザル……!」
「いくぜリオル、油断するなよ」
「ウッキャア!!!」
「ルォウ!」
同時に出てくる2匹の相棒。1匹は最終進化まで至っているが片や進化が出来ない小さな修羅、リオルは不敵に笑っているが……ゴウカザルはヒコザルのときの経験が生きているのかリオルから目を離さない。
「先手必勝!【マッハパンチ】!」
「こちらも【マッハパンチ】」
お互いの【マッハパンチ】がぶつかり合う。種族値の差でゴウカザルに軍配は上がるが……リオルは力を抜きゴウカザルが前のめりにグラついてしまい後隙を狩るように顎に【はっけい】を繰り出す。しかし―――
「なるほどな、自前でその技術を身に付けてきたのか…!」
「いいお手本が居ましたからね!いいとこはドンドン真似しないと!」
当たった瞬間に頭を振り上げ勢いを殺し威力を最低限に抑えるゴウカザル、それはリオルがいつも使っている格上の攻撃のダメージを最大限減らす技術だった。
だがここで止まるようなリオルではない、波動ブレードで追撃をしようとするがむしろブレードを掴まれ砕かれる。その破片を遠隔で爆破し目をくらませて【つばめがえし】で腹を殴り抜こうとするが拳を掴まれ逆に【ほのおのパンチ】でカウンターを喰らってしまい後ろに吹き飛んでしまう。
「マジかよ……あれすらも防ぐのか」
「先輩とリオルならあの程度で止まるなんてないと思いましたから、予想してましたけど当たりでしたね」
カケルのことを研究してきたというのは本当らしい、やること考えることが先に読まれている。
「初見のはずのブレードが見切られてるのは驚いたな、よくここまで調べ上げたもんだ」
「……対処されたはずなのに随分と余裕そうですね?さっき見てもらった行動でだいぶ分かってもらったつもりなんですが」
「さっきのを防いだだけでもう勝ったつもりかい?だとしたら俺らを甘く見すぎだな」
既にリオルは反撃に移っている。【こうそくいどう】を使いゴウカザルの目の前に現れ拳に波動を纏いながら殴りかかる、それすらも止められるが当たった瞬間に拳を爆破し、弾かれたゴウカザルの腕を掴み背負い投げの要領で地面へと叩きつける。追撃を入れようとするがリーチの差で寝ながら蹴られてしまいバランスを崩してしまうリオル、しかし即座に【みきり】を使い無理矢理攻撃を避けてお互いに距離を取る。
「くそ、攻撃に移り切れない……!」
「俺らの行動を研究していたんだろ?まだ既存の技術しか見せてないぞ」
不敵に笑っているリオルとカケル。その様子は攻撃を喰らったのにも関わらず余裕そうだ、そんなカケル達を見てコウキとゴウカザルは目に見えて焦りが見える。
「まだだ!俺達は今度こそ先輩たちに勝つんだ!!!」
「ウキィ!!!」
「……悪いんだが俺達はもう負けるわけにはいかないんだよ、だから速攻決着をつけさせてもらう」
目を瞑り少し集中する。意図的に使うのは初めてだ、だが使えるという確信が自分の中に渦巻いている……それはリオルも同じことだ。
「なんだ……?何故だか知らないけど凄く嫌な予感がする…!」
「そう思って動かないのが今回の敗因だ、自分の勘はもっと信じた方がいいぜ?」
『カケルの想いに リオルが応える―――!』
そして光り輝くカケルの左目、続けて光るリオルの右目。今回も負けないために、そして本気で勝負をしているコウキの為にも出し惜しみはしない。
『リオルの 可能性が引き出される―――!』
「リオルがルカリオに……?!」
「ちょっと負担がデカいが問題ないな、行けるな?ルカリオ」
「ルォウ!」
【リオル《ES・ルカリオ》タイプ:かくとう_はがね】
2度目のエモリュ―ジョン、それは確かな力としてカケルとリオルの中に根付いていた。そしてルカリオへと変貌を遂げたことによりゴウカザルとの体格差が埋まる、技術では補えなかったことが出来るようになり更にエネルギー操作技術が向上する。
「まだまだ勝負はこれからだ、俺達を研究していたんだろう?ならその力を見せてもらわないとな」
「そっちも随分俺達を下に見ているようですね……!そっちがその気なら俺達だって!!!」
「ウッキャアァアアアアアア!!!!!」
更に炎圧を高めるゴウカザル、しかしそれを見てもカケルとルカリオは不敵に笑う。全身に炎を纏って殴りかかってくるがルカリオは【みきり】を使わずに全て対処していく。
「そんなに殴り合いがご所望か?受けて立つぜ!!!」
「もっとだゴウカザル!俺達はこんなもんじゃない!!!」
【【インファイト!!!】】
2人から同時に指示される【インファイト】、普通に打ち合えば弱点で確実にルカリオが負けるのだが…
「なんですかそれは……!そんなことしてくるポケモンなんて見たことない!聞いたことない!!!」
右拳で殴ってくる攻撃を砕く勢いで肘を入れ、左拳で殴ってくる攻撃を少し後ろに顔を下げ腕が伸び切ったタイミングで相手に近づき腹に一撃を入れる。そのままくの字に折れ曲がった体に追撃でアッパーを入れ浮かび上がったところにルカリオもジャンプして思いっきり顔を蹴り下ろす、手痛い一撃を喰らいゴウカザルも意識を失いかけるがその場で【インファイト】を解除し【かえんぐるま】で炎の壁を張ることで追撃を解除する。かに思われたが波動感知で見えているゴウカザルに【はどうだん】を打ち込み結局追撃されてコウキの元まで吹っ飛ばされ倒れてしまうのだった。
「【インファイト】は拳で使われる技のはず!なんで人間の格闘技を組み込めるんだ!!!」
「前も言っただろ?頭が固いんだよ、もっと解釈を広げるんだ」
ゴウカザルはひんし、それに比べてルカリオはまだまだ余裕。ここだけ見れば勝負はあったようなものだろう、しかしこれも因果か……異変はここで牙を剥き始める―――
「なんで……なんでだ!俺達は勝つために研究もして!お互いに呼吸を合わせて!!今ここで勝つためにトレーニングしたのに……!!!」
「お……と、コウキくん?少し落ち着いた方が……」
「なんで!なんで!!なんでなんデなンでナんでナンデッ!!!!!」
どくんっ……と、ゴウカザルが脈打った気がした―――
嫌な予感が駆け巡る。即座に対応しようと動こうとするが時すでに遅し。どこからか現れた黒い瘴気のようなものに包まれた瞬間、ゴウカザルが動き出す……
「ウキャ……ウキャア……ウキャキャキャキャキャアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「なんだ……?!」
「俺達は負けない!負けたくない!!!今度こそ俺達は先輩達に勝つんだよォオオオオオオオオ!!!!!」
2人の想いが1つに重なる、その瞬間コウキとゴウカザルが重なる―――
「くっ……うぅ……」
「ウキャ……」
「コウキくん!ゴウカザル!」
「ルォウ?!」
と思いき2人揃って倒れてしまう。このように倒れた瞬間をカケルは見たことがある、これは新しい力にトレーナーとポケモンが耐えきれなかったときのものだ。幸いクロガネシティの近くだったためすぐにポケモンセンターと病院に運び込むことが出来た、すぐに目を覚ますとのことでカケル達はコウキが起きるのを待つことにしたのだった。
To Be Continued……