「ごめんなさい……」
「気にすんなよ、たくさん泣いてスッキリしただろ?」
「カケルさんそういうとこだぜ」
あたりはすっかり夜になりそのまま晩御飯の準備をする。ヒカリをキャンプの中に寝かせてカケルは手際よく、ジュンはカケルの指示を聞きながら準備を進めていた。
オレンの実の甘味が効いた美味しいタレを作り終わり材料も切り終え、あとはヒカリが起きれば食べるだけというところでヒカリが起きてきた。
晩御飯はBBQだ!!!
「泣くだけ泣いて自分は寝てて2人に晩御飯を作ってもらったのが申し訳ないです……」
「作れる奴が作ればいいし、そんな気にしなくてもいいんじゃないか?」
「そうだぜヒカリさん、結構作るの楽しかったしな!」
「さ、みんな出てこい!」
手持ちのポケモンを出し早速晩御飯を食べ始める―――というところで誰か人が来たようだ。
「あら、美味しそうな匂いはここからしていたのね」
「ん?こっちから声が、はいはーい……?!」
「どうしたのカケルくん……?!ごふっ!ごほっ!」
ヒカリは口に肉を詰めながらカケルの方を見る、その時に見えた人物が余りに驚きすぎて食べていたものが気管に入りむせてしまう。それも無理はないだろう、何故ならその見えた人物が―――
「チャンピオンシロナ……?!何故ここに?!」
「ヒョウタくんから面白い子がいるって聞いてね、丁度近くにいるって聞いたから一目見ていこうと思ってたのよ。そしたら美味しそうな匂いがしてきてお腹へっちゃって……」
「確かにこの時間だと晩飯ぐらいですし、よかったら一緒に食べませんか?材料はいっぱいありますから」
「あら、いいの?ならお言葉に甘えようかしら!」
シロナもBBQに加わり色々な話をしながら夜の時間は過ぎていく。少し経った後だろうか、シロナが思い出したかのように話をし始めた。
「そういえば彼女はどこにいるのかしら。一緒に来ていたからいるはずなんだけれど……」
「彼女ってあの人ですか?」
「そうそう、あ、私が走り出したから置いてけぼりになったのかもしれないわね」
(シロナの付き人……?そんなのアニメにもゲームにもいたか……?)
カケルは疑問に思う、それはもっともであり読者も思っていることである。そしてその瞬間はすぐ来ることとなるだろう、ガサゴソと音が聞こえみながそこに目を向けるとその方向から人影が出てきた。
「居た!急に走り出さないでくださいよシロナ様……」
「悪いわね
「まったくもう……エディはシロナ様が心配です……」
「そんなに心配しなくてもいいのよ、大丈夫だから。ね?」
白髪ロングに少しのつり目、安産型というべきその腰つきは見るものを魅了する。胸は平均的にあるようでヒールを履けば身長は175cmほどだろう、女性にしてはかなり身長が高いようでシロナとほぼ目線が同じくらいの高さだった。
(可愛い……じゃない!誰??!!!)
珍しくかなり同様しているカケル、それもそうだろう。何故なら彼女はゲームにもアニメにも存在していない、この時空における完全なイレギュラーというべき存在だ。
「この方々は……?」
「この子たちのご飯にお邪魔させてもらっていたの。最近の子って料理が上手いのね~、特にこのタレが美味しくて!」
「初めましてエディさん!私はヒカリです!」
「俺はジュン!よろしく!」
「あー、初めまして、カケルです」
カケル達が名前を名乗ればエディという女性はこちらに振り返り礼儀正しく頭を下げ自己紹介をしてくる。
「初めまして、シロナ様と同じく考古学を嗜ませてもらっておりますエディです。以後お見知りおきを」
「エディ固くないかしら?もう少し柔らかくてもいいんじゃない?」
「そうはいきませんシロナ様、初めてお会いした方々なんですよ?どちらかと言えばシロナ様が軽いのです」
「い、痛いとこ突いてくるわね……」
シロナとかなり親しげに話しているようだ。その間にもカケルは思考を巡らせる、いくら記憶を遡ってもエディという女性は見たことがないし聞いたことがない。
(マジで見たことないんだよな……)
エディの方を見ていると目が合った。こっちを見るそのエメラルドのような眼は全てを吸い込むような綺麗な瞳をしている、シロナと少し話したと思うとこちらに向かってくるのが見えた。
「あなた様がこの料理をこしらえたのですか?」
「え?あ、あぁ、俺ですけど……」
その問いに応えるとカケルの手を掴みブンブンと振り回し始めた。美人の奇怪な行動に少し目を見開くがエディはその口を開き言葉を発する。
「素晴らしいです!オレンの実ってここまでさわやかな風味を出すのですね!エディが料理をしてもこうなりません!どういう方法を使ったんですか?!肉も臭みがないですし野菜もシャキシャキなのが見て分かります!」
「おぉう?!」
急なマシンガントークに押されるカケル、息がかかるぐらい近い距離で胸も当たりそうになりかなりたじろぐ。流石に見かねたシロナが助け舟を出してくれた。
「ちょっとエディ!カケル君が困ってるわよ!ごめんね~カケル君」
「あぁんも~シロナ様離してください!是非エディにもその美味しい料理の作り方をご教授してください!!!」
かなり暴走気味の美少女エディ、その姿にカケルは終始押されてポカンとするだけだった。そして一部始終をヒカリに見られており顔をぷく~っと膨らませてカケルに話しかけに行くのであった……
そしてみんなで晩御飯を食べ終えシロナとエディと別れる、どうやらクロガネシティの博物館に泊まるらしい、流石チャンピオンはスケールが違う。
少し名残惜しいと思うがそのままテントに入り寝ることにした。そして訪れる次の日、流石にあの人数の料理を作って疲れたのか目を擦りながらカケルは目を覚ます。
「ふぁあ……よく寝た」
「おはようございますカケル様」
「うぉあ??!!!」
そして何故か隣にいるエディ、余りにもビックリしすぎて変な声が出てしまった。
「えぇっと……エディさん?何故ここにいるんです?」
「気付いているのでしょう?エディはカケル様と同じ
「は?!え……いや……まぁそうなるよな……」
この地方に来てから最大の驚きである、なんとエディはカケルと同じトラウム地方から来たトレーナーとのことだ。しかし疑問点もある。
「待ってくれ考えが追い付かない。俺以外の先輩達はみんな行方不明だって聞いたんですけど?」
「それは先輩達だからですね、エディはカケル様よりも後に来たのです」
(そりゃ会ったことねぇわな……思ったより転移してくる奴って多いのか…?)
「そしてエディもこの時空に来ました、ですが時間の座標がズレたみたいでカケル様がこの時空に入るときより前に飛ばされたみたいなのです」
「なるほど……だから俺はあったことがないけどシロナと友人っていう変な状況になったんだな」
「はい、それに私はエモリュージョンが使えなくて……」
「習得には結構差があるんだな……」
聞けば聞くほど出てくる新しい情報、それはこの時空にきて10日ほどが経ったカケルにはありがたいものの数々だった。しかし疑問が出てくる、聞けば飛ばされたのは1か月ほど前で1度もエモリュージョンの兆候すらなかったというのだ。
「シロナ様と共にヒカリ様と戦っていたところを見ていました。あのガチゴラスはエモリュージョンを使った個体ですわね?」
「のほほんとしているようでかなり周りを見ているんですねエディさん」
「気軽にエディと呼んでくださいカケル様、敬語もいりません!」
「んじゃエディさんが俺のことを呼び捨てにしてくれたらエディって呼びますよ」
「え……そんな……えっと……カケル……さん///」
(っあ~可愛いな~……」
「ふぇ?!///」
「やべ、声に出てた」
惚気てる場合か。
エモリュージョンとは人によってある一定の感情を爆発させると発現できる現象である、それが一度も出来ていないということは……
(多分怒りの感情くらいだよな……見てる感じエディは怒りとは無縁な性格っぽいし)
「カケルさん……?」
「いや、なんでもないよ。取り敢えずみんなが起きる前に朝飯の準備だけしちゃおうかな」
「私も手伝います!」
エディに手伝ってもらいながら朝食を作り進めていく、今回はエディが中心になって作るのはハムエッグだ。
「ふぁ〜……よく寝たわね〜……」
「zzz……zzz……」
ヒカリも目を擦りながらテントの中から出てくる、髪の毛がボサボサで女子力のかけらもないがそれを注意する人は今ここにはいない。
『いい匂いがするな〜』と思いながらそちらに向かって見るとカケルとエディが楽しそうに談笑しながら朝食を作っているのが見えた。
「なんだか、凄く楽しそうだな……私といる時はあんな風に笑ってくれなかったのに……」
ヒカリの心にもやっとしたものが募る。何故そんな思いが湧くのか自分でも分からない、そんな気持ちに今までなったことがないため余計に分からなくなってくる。
(カケルは私の幼馴染なのに…… いえ、私ったら嫌なやつね……)
ヒカリに渦巻く小さな闇、それは歯車が狂い始める前兆でもあった。それを知らずにカケルとエディはハムエッグに付くサラダを作り始めるのであった。
「ほぇ〜……オレンの実をこう使うとは……」
「皮と身の間の白いやつは苦いからね、だから皮を薄く剥いて白いのは取るんだ。んで皮を細切りにしてサラダの上からかけよう」
「なるほど!こうすれば爽やかな風味がサラダに付くのですね!勉強になります!」
エディの素晴らしいサポートによりいつもよりだいぶ早く朝食の準備ができた、しれっと合流したシロナも加えてみんなでご飯を食べ始める。
そしてほぼ食べ終わりというタイミングでシロナから歴史や考古学の話を聞くこととなった。
「ということで、昔じゃ普通だったことが今じゃ普通じゃない。逆に今普通じゃないことも昔じゃ普通だったってことがありえるのよ」
「へぇ〜、そうなのか……」
「ナナカマド博士のところで見ました!今じゃ失われた進化もあるんですよね?」
「その通りよ、その例だとストライクがそうね。昔はハッサムの他にもう1つ進化先があったと言われているわ」
(これエモリュージョンでバサギリにしたら腰抜かしそうだな)
(カケルさん、気持ちは分かりますけどやめておきましょう?)
(こいつ直接脳内に……?!)
トラウム組が漫才をしている横でシロナの話は更に続く、そしてとても無視出来ないような事も語られるのであった。
「そしてどの地方もそうなんだけれど、相棒の姿を自由自在に変えることが出来たトレーナーが居たそうなの」
「自由自在って……進化も退化も出来たってことですか?!」
「それだけじゃない、失われたはずの進化も自由自在だったそうよ」
「そんなこと出来たら負けなしだろうな……なんでカケルさんとエディさんはそんなに汗かいてるんだ?」
「ナンデモナイヨ」
「エェ、ナンデモアリマセンワ」
完全にエモリュージョンの事である、冷や汗ダラダラだがここでシロナの追撃が入る。
「そういえば、カケルくんガチゴラスを手持ちに入れてるわね?」
「ッスー……あれ~?俺入れてたかナ~……?」
「ハヤシガメを守る時に出てきてくれたじゃない」
(そういうとこばかり見やがって!!!)
シロナの質問に対しなんとか誤魔化すことが出来た。キャンプ用品を片付け各々冒険の準備を始める、ジュンとヒカリはやることがあるらしくささっと行ってしまった。
何故かヒカリから『なんかあったら連絡してね!飛んでいくからね!』と念押しに言われてしまった、そんなに頼り無いだろうかとカケルは少し落ち込んだ。たらしめ。
そしてシロナももう行くらしい、やはりチャンピオンは忙しいんだと再確認する。1回ぐらいはバトル挑んでもよかったかな?と改めて思ったカケルであった。しかしカケルはコウキの退院を待たなければならないためにもう1日時間を潰す必要があり、どうしたものかと考えていたのだが……
「さて、どうすっかな~……」
「そうですね、何をして時間を潰しましょうか」
「へぇあ??!!!」
真後ろからの声にびっくりしながら振り返る。そこにいたのは先ほどの服装ではなく冒険用に、そして髪の毛もポニーテールにしていかにも付いていきますと言わんばかりの格好だ。
「シロナさんと一緒に出発したはずでは…?」
「それなのですが……私がワガママを言ってカケルさんの冒険に付いていくことにしました!」
「何故??!!!」
「何故も何も私たちはトラウム地方から来た仲間じゃないですか!せっかく同郷に会えたのに離れるなんてい~や~で~す~!!!」
「えぇい落ち着きなさい!!!シロナさん助けて!!!」
駄々をこねるエディを収めてなんとか落ち着くカケル、コウキが退院するまであと1日。時間を潰すためにカケルとエディは改めてタウンマップを開きあれこれと話し始めるのであった。
To Be Continued.......