「カケルさん今度はこっちに行きましょう!」
「あいよ~っと、こんなのもあるのか……凄いな古代博物館って」
現在カケルとエディがいるのはクロガネシティの博物館、エディの要望で博物館デートをしている最中なのだ。
「見れば見るほど知見が広がりますね!凄いなぁ……」
「確かに昔のこともバカに出来ないな、これをストライクにくっつけたらバサギリになるなんて普通分からんよ」
「ハリーセンもリージョンフォームがあっただなんてゲームだった頃の記憶がなければ知りえませんもの、ハリーマンもぷっくりしてかわいらしいですのに」
(あれ可愛いのか……?)
他愛もない話をしながらデートは続いていく。昼食も取り続きを見ようかとするが……そこで事件は起きる。
『事件発生!事件発生!』
辺りに警報が鳴り響く、急な異常事態に周りの人々は戸惑いを隠せない。
そして博物館の奥から叫びながら逃げてくる人々を見てカケルとエディは警戒度を高める、その逃げる人を見て更に逃げようとする人々で出口はおしくらまんじゅう状態になってしまった。
そして奥の方から感じる気配にカケルの背中に悪寒が走る――
「グルルォウッ!!!」
「リオル?!」
「下がれエディ!」
こちらに飛んできた氷の塊、それを飛び出してきたリオルが咄嗟に発動した【まもる】でカケルとエディを覆って自分は波動ブレードで切り裂く。
飛んできた方向を見るとそこにいたのは氷に覆われた巨大な顔面のポケモン、そしてそのポケモンのトレーナーであろう青い髪のトレーナーがそこにいた。
「やはり防ぐか、だがこれぐらいはやってもらわねば張り合いがいがないというものだ。そうであろう?オニゴーリ」
「ゴォリ」
【オニゴーリ】
《がんめんポケモン》
『特性:せいしんりょく』
タイプ:こおり
「急に攻撃してきてなんなんだあんた、見たところギンガ団でもないな?」
「ワタクシをギンガ団みたいな俗と一緒にするでない。私の名はケセド、貴様に恨みはないがここで消えてもらうぞ時空の渡り人よ」
「なるほどな、俺達が時空を渡ってきたのを知ってるってことはお前もあっち側のトレーナーだな?」
「何故ですか!なんで私たちを攻撃するのですか!」
ケセドと名乗ったトレーナー、その発言から察するにトラウム地方から来たトレーナーだと察することが出来る。
しかし解せないことがある。本来ならカケルとエディのように協力関係を結ぶべきだ、なら何故それをしないのか、そしてカケルがたどり着いた答えは――
「見えたぜ、お前がこの地方の異変を起こした奴だな?」
「ふむ、頭も悪くないようだな。だが近からず遠からずと言っておこうか、まだそこまで話す内容ではないからな」
「もしかしてこの方がウィアド博士の言っていた……!」
そこまで聞いてケセドの口角が上がるのを見たカケル。
背中に走っていた悪寒が更に強くなった気がしてリオルに【まもる】を張らせる、その瞬間【まもる】の後ろを除きあたりに氷がまき散らされ周囲の温度が急激に下がるのを感じる。
「予測も勘もいいと、ますますやりがいがありそうな小僧だ」
「そりゃどうも、明確な敵であるお前に褒められても嬉しくねぇけどな!」
既にオニゴーリの懐にリオルは入り込んでいる。
見て分からない相手には1撃目から本気を叩き込む、それを教え込まれているリオルはカケルとケセドが話している間に技の準備をしていた。
「ルォウッ!」
『リオルのひっさつ! しゅらばっとう・おにつばめ!』
これにはカケルも取った!と思う、しかし――
「ルォッ……?!」
「ほう、中々いい攻撃をするじゃないか。もっともオニゴーリには効いていないようだが」
(硬すぎんだろ……!)
思い切り拳をふるってもその分厚い氷に封じ込まれる。少しのヒビも入らないことにリオルは見開く、そしてその後隙を狩るようにオニゴーリはリオルの腕に噛みつきカケルの方に投げ飛ばしてくる。
「どうした?他の攻撃はないのか?あと1発だけならどんな攻撃でも受けてやろう」
「てめぇ……!後悔しやがれ!!!」
「ルォウッ!!!」
属性エネルギーをフルに稼働し球体を形成、メタルクローで切り裂き後ろに飛びのいて【でんこうせっか】を使い勢いの乗った雷キックをお見舞いする。その名も―――
『リオルのおうぎ! えんらいそう・しゅらおとし!!!』
一瞬の沈黙の後、起きる大爆発。
流石にカケルもエディもやったかと思うが……
「それが貴様の限界のようだな。だとしたらワタクシとオニゴーリに勝つことは出来まい」
「ゴォリ」
「はは……冗談きついぜ……!」
そこにいたのは無傷のオニゴーリであった。
流石に心が折れそうになるが動かなければ死ぬだけ、それが分かっているがゆえにエモリュージョンを切ろうとするが……
「おぉい楽しそうなことしてんじゃあん!私も混ぜろよ~!!!」
「また増えた……!」
またしても知らない男が1人。
エディも絶望したような顔をするがケセドは憤怒の顔へと変わっていった。
「貴様ァ……!またしてもワタクシの邪魔をするのかァ!!!」
「私人が嫌がることだーい好き!もちろんお前が嫌がることも大好きなんだよなぁ!!!」
オニゴーリが謎の男に技を放とうとする。しかし何かにかち上げられて上に技を撃ってしまう、あまりの速さにカケルは目で追う事が出来なかった。エディもあまりの迫力にカケルの後ろに隠れてケセドと謎の男の様子を伺っている。
「私の邪魔をするなぁ!名誉棄損で訴えるぞ!いけジャラランガ!」
「ジャラァ!」
【ジャラランガ】
《うろこポケモン》
『特性:ぼうだん』
タイプ:ドラゴン・かくとう
「あんたが先に乱入したんだろ?!」
「うるせえ!お前もジャラランガするぞ!!!」
「とんでもない人が来ましたわね?!」
突如現れた破天荒すぎる人物にカケルもエディも思わずたじろいでしまう。
そして謎の人物がカケルとエディの方を向いている最中にもケセドの攻撃は止まらない。
「よそ見とはいい度胸だな!」
「邪魔するなって言ってんだろ!!!!!」
かち上げられたオニゴーリが【ふぶき】を撃ってくる。だがジャラランガは自分の鱗を前に投げ思いっきりぶん殴ったかと思うとその鱗が破裂、それによって出来た音の壁で【ふぶき】を防ぎきってしまった。
「……逃がしたか」
氷が溶けて蒸発した際に発生した水蒸気に紛れて3人はケセドの前から姿を消す。しかし逃げられたというのにケセドの表情はニヤニヤと気味の悪い口角を上げたままだった……
* * *
「あぶね~、危うく殺されるとこだった」
「も、物凄く濃い時間を過ごした気がしますわ…」
「あいつは何なんだ……あなたも誰だ……そしてここはどこだ……!」
「おぉい質問は1つずつって教わらなかったか?私は教わってないぞ」
「教わってないじゃありませんか!」
「質問は1つずつって言ったろ!!!」
「質問じゃなかっただろ!!!」
漫才をしている場合ではない。
取り敢えずこの場所について、そして自分たちを助けてくれたこの男が誰なのかをカケル達は知る必要があった。
「取り合えず、あなたの名前は?」
「私?私の名前は『イジク』、シンオウ地方に飛んできたトラウム地方のトレーナーだよ」
「やっぱりそうだったんですね……あのケセドと名乗っていた人とはお知り合いなんですか?」
「知り合いも何もあいつがこの時空の異変の元凶だからね、私はそれに気付いたんだけどあいつを倒せなくて困っていたんだ」
なんと話を聞けば歴代トラウムトレーナーの1人という事が発覚した、しかしこの時点で矛盾が生じているのである。
それはウィアドが言っていた歴代トレーナー達は皆行方不明となっており生死不明になっているからだ、それに気付かないほど2人の頭は悪くない。
「歴代トレーナー達はみんな行方不明って聞いたんですが?」
「え゛、そうなの……?」
「カケルさん、この反応はおかしくないですか?」
「そうだな……まるでトラウムのことが全く分かっていないかのような……」
イジクの話を聞いていて第一に思ったのはその発言からなる違和感の数々、まるで今まで止まっていた時間が再び動き出したかのような奇妙なものだった。
更に聞いていくと元々イジクもケセドもトラウムに転移してきた人間だというのだ、どんどん出てくる厄ネタに頭を抱えそうになる。
「なるほどな~、私達が気付かないうちに時間が止まってたのか。おかしいと思ったんだよな」
「おかしいとはどういうことですか?」
「胡散臭い博士から聞いてない?こういうことがあるから地方に入れるトレーナーって基本みんな強いんだよ」
「つまり……俺は弱いって?」
「まぁ……弱いね。勘や考えはいいみたいだけど基礎能力が足りてない」
カケルとイジクの間にピリっとした空気が流れる、しかしその空気はすぐに霧散することとなる。
「ここにいたのか、といってもあまり探してはないがな」
「おーっと、思ったよりも早くバレたな」
「貴様は何故2階から1階に降りただけで見つからないと思ったのだ???」
「ここ1階なのかよ!よくバレねぇと思ったな?!」
2階から降りてきたケセドにすらツッコまれるイジク、相変わらずニヤニヤしながらこちらに向かってくる。
「今度は逃げられんぞ?既に出入口はオニゴーリによって塞いである」
「マジの万事休すだなぁ……どうしよ」
「戦うしかないのでしょうか……?!」
「ルォウッ!!!」
ボールから出てきたリオルはケセドとオニゴーリを睨みつけ吠える、だがそれ以上にオニゴーリは威圧感を放っている。
そしてケセドは更なる絶望を見せつけてくるように口角を釣り上げて声を上げる。
「メイドの土産だ、いいものを見せてやろう……エモリュージョン――
オニゴーリを中心に吹きあふれるエネルギーの嵐、それはリオルが初めてエモリュージョンを使った時とは比べ物にならないぐらいの威圧感を持って襲ってくる。
「行くぞメガオニゴーリ。そして貴様らはここでおしまいだ」
「ゴォオッ……!
【メガオニゴーリ】
《がんめんポケモン》
『特性:フリーズスキン』
タイプ:こおり
「それは洒落にならないだろ!!!」
「こっちもエモリュージョンを―――」
「もう遅い、貴様らの負けだ」
エネルギーは更に収束していく、周囲の熱が奪われ辺りは北極になったのかと思うほどの雪景色となっていた。そしてその雪景色はどんどん氷へと変化していきまるで返しが付いたかのようなスパイクの氷の刺へと変化していった。
「エリア制圧、氷界壊戦・鬼氷」
『メガオニゴーリの ひょうかいけっせん・おにごおり!!!』
カケル達のいた場所に大量の氷の刺が突き刺さる。
上、下、左右、見る限りの至る場所からその場に刺さる氷の刺、それはまるで氷の世界で繰り広げられた戦争後の光景の様だった。
「ふむ、流石に死んだであろう。ワタクシにはこの地方を貶めなければならない使命があるのでな」
そういってケセドはその場から立ち去る。
その景色には跡形もなく消え去ったカケル達を表すかのようにシーンと無音が流れるだけであった……
To Be Continued.......
『氷界壊戦・鬼氷』
ケセドのオニゴーリが使うエネルギー操作の極致の1つ。
雪景色を作り空気中に漂っている水分を氷に変換しながら周囲の熱を奪い、刺として育つ。育った氷はその場にいる犠牲者に突き刺さり抜けないように返しが付く。
刺が喰らった者は内側と外側から冷やされ緩やかに死へと向かう。