あ、死んだ──目を閉じる前に広がる氷を見て思ったのはそれだった。
「あれ……?」
エディが瞑っていた目を開く。
周りを見ればカケルも倒れておりイジクの姿はそこにはなかった、そして目に飛び込んでくる光景に目を見開く。
「ここって……ウィアド博士の研究所……?!」
「お、目が覚めたみたいだね。久しぶりかな?エディちゃん」
声がする方を見れば相も変わらず胡散臭そうな恰好をしたウィアドが居た。だが分からない、なぜ自分達がトラウム地方に戻ってくることが出来たのか……それは今しがたドアから入ってきたイジクが説明をしてくれるようだった。
「いや~、そういえば私手持ちに
「ビックリしたよね、数十年返ってくることがなかったうちの1人が後輩連れて戻ってくるんだから。本当に何事かと思ったよ」
「もう使えないけどね、トラウムに戻ってくるのに結晶割れたし。しかも私のときと違ってシンオウ地方の時間も止まってないみたいだし」
「私には何が何だか……」
トラウムに戻ってこれたのはトラウム結晶のおかげの様だった。そして起きている時間を考えればイジクはかなり早くから起きている……もしくは転送の衝撃でも気絶することがなかったかのどちらかだ。
エディはカケルの方を見る、未だに寝ており起きるにはもう少しかかるという印象だった。
「けど流石カケルくんだね。まさかイジクくんを連れ帰ることが出来るとは……」
「どっちかっていうと私巻き込まれた側だけどね、時間が止まってるなんて思ってなかったし。それはそれとしてケセドの野郎許さねえ」
「私怨たっぷりだね、君負けず嫌いだもんな……」
「負けず嫌いで言ったらあの人もどっこいどっこいじゃない?あの人は確か……カントーだっけ。けど時間止まってんのか……」
「イジクくんの時間が止まっていたことを考えるのなら他のみんなも止まっているだろうね」
ウィアドとイジクの会話に付いてくることが出来ないエディ。
それもそのはずだ、何故ならその会話はカケルとエディが来るよりもずっと前に起きていた出来事なのだから。
「えぇっと……話を聞いていると転移してきたのは1人ずつじゃなかったんですか?」
「そうだねぇ……私達はここに来るとき1人ずつじゃなくて10人で来たんだ、んで1人ずつ異変を解決しに行って皆戻らなかった。私の場合は解決しようとしたらいきなりケセドのやつが襲ってきたんだよね、だからなんだあの親父!どっから現れた?!ってなってたとこ」
「いやあの人親父じゃなかったですよ?完全に私達とほぼ同じくらいだと思いますよ???」
「その話を聞くにみんなも同じ状況になったんだろうね、転移してきた子の中にケセドって名前はなかったし」
その話を聞いてエディはため息をつくしかなかった。
そして何より重大な事実に気付いてしまう──
「貴方みたいな人があと9人も……?」
「え?そっち?邪魔してきたケセドに驚くんじゃなくてそっちなの?」
「流石にイジクくんみたいに破天荒なのは少ないよ。1人確定でやばい子はいたけどね」
『1人は居るのか……』と、エディは思う。
正直出会い頭のインパクトの高さに全てを持っていかれたためのことなのだが……それをエディは知る由もない。
「けどなぁ、マジでケセドが予想外だった。あのヤロー私の技ばかり真似してきやがって……丁寧に名前すら変えてやがる」
「私の技……ってことはアレはイジクさんの技なんですか?!」
「そうだよ〜、あれが1番じゃないけどね」
「……えげつないな」
「カケルさん?!起きたんですね!よかった……」
途中から起きていたが身体がだるかったため起き上がることが出来てなかったカケル、今し方ようやく起き上がるぐらいには回復したようだ。
「やぁカケルくん。久しぶりだね」
「言うほど久しぶりです?10日ぐらいでは?」
「あぁ、これも弊害なのか。こっちだと1ヶ月ぐらい経ってるよ」
「そんなに経ってるの……?!」
どうやらトラウムと他の時空では時間の進み方が違うらしい、裏を返せばシンオウにまた突入するまでにいくらかの時間があるということだ。
それを聞いてカケルはイジクを見る、その視線に気付いたようで不敵な笑みを浮かべてボールを前に突き出してきた。
「いいねぇその強さに貪欲な姿勢。彼を思い出すよ」
「その口ぶりだととんでもない人みたいですけど……どんな人だったのですか?」
「自己肯定感の低さからくる努力キチ」
「えっと……つまりどういうことですか?」
「自分は周りより劣ってると勝手に決めつけて無限に努力していくキチガイ」
「思ったよりもやべぇやつだ……」
「何で私達の先輩はこんなのばかりなのでしょうか……」
エディとカケルは呆れながらボールを取り出す。
カケルはイジクと、エディはウィアドと戦うことに決めたようだ。ウィアドは『え?僕もやるの?』という顔をしていたが当然である、働け。
「さてと……全身全霊をかけて私を倒しにこい、限界値を知るにはそれが早いからな。そのかわり1匹で戦ってあげよう」
「舐めんなよ……!勝つぞお前ら!!!」
カケルの一声でリオル、チゴラスが出てくる。ボールの中でイジクの声を聞いていたのか2匹ともイジクを睨みつけ既に臨戦態勢に入っている、まずはチゴラスから行くようだ。
「チゴォ!!!」
「チゴラスか。よくシンオウで捕まえたもんだ、感動的だな?だが私には無意味だ、勝つぞジャラランガ」
「ジャラァ」
ジャラランガが気怠そうに出てくる、チゴラスの姿を見て欠伸をしてるあたり完全に舐め腐ってるようだ。
「おぉいやる気出してくれよ、いくら楽勝だからって流石にそれはないわぁ……ふぁ〜……」
ジャラランガを咎めながらもイジクは欠伸をしてしまう。
余りにもふざけすぎている行動や言動にこちらを舐め腐っている態度に遂にカケルはキレてしまう──
ブチッッッ!!!!!
「てめぇさっきからふざけてばかりいやがって!!!チゴラス!エモリュージョンだ!!!」
「チゴッ!!!」
『カケルの怒りに チゴラスが応える───!』
「初めから全力か、それでいい。使える手段を全て使って勝ちに来い!!!」
「言われなくてもやってやらぁ!!!覚悟しろよ!!!」
「グルラァアアアアアッ!!!」
『チゴラスの 可能性が引き出される!』
[チゴラス〈EJ:ガチゴラス〉タイプ・いわ・ドラゴン]
「【ドラゴンテール】だ!」
ガチゴラスは怒りに身を任せ思い切り【ドラゴンテール】を放つ、しかし───
「ジャアラァッ!!!」
「な……?!片手で受け止めただと?!」
「動き出しが遅いね、ぶん殴れ」
【ドラゴンテール】を受け止めそのままガチゴラスの脇に鋭い一撃を喰らわせるジャラランガ、そして──
「ガ……チ……ゴ……」
パァン!!!っと破裂したような音があたりに響く、数秒の沈黙の後ガチゴラスは倒れそのままエモリュージョンも解けてしまった……
「まずは1体、もっと本気でやってほしいな?」
「嘘だろ……ッ?!ただ殴られただけ……いや、【ふぶき】を止めた時のアレか!」
「ご名答、よく見てるじゃないか」
殴る際に自身の鱗を挟み外側と内側から強烈な攻撃を受けて一撃でガチゴラスを倒し切ってしまう。
歯を食いしばりながらチゴラスを戻す、そして次に前に出てくるのはリオルだ。
レアコイルは先日の疲れが取れてない、このまま戦ってもただバラされるのがオチだとカケルは気付いている。
「行くぞリオルゥ!チゴラスの仇を討つんだ!!!」
「ルォウ!!!」
『カケルの想いに リオルが応える───!』
「そいつがカケル君の相棒か、よく鍛えられてるじゃないか」
「本気も本気……超本気だ!!!」
『リオルの 更なる可能性が引き出される!』
「おぉ!意地でそこまで持ってくか!!!やっぱ君はあの人と相性が良さそうだ!!!」
「身体が張り裂けそうなぐらい痛えけどなぁ……!今で勝てないなら俺達は更に限界を超えていくだけだァ!!!」
『グルルォ……!オォオオオオオオオッ!!!!!』
[リオル〈EJ:メガルカリオ〉タイプ・かくとう_はがね]
【メガルカリオ】
《はどうポケモン》
『特性:てきおうりょく』
タイプ:かくとう・はがね
「この時点でメガシンカか!やるねぇやるねぇ!!!ワクワクしてくるなぁ!!!!!」
「ジャッラララララララァアアアア!!!」
リオルがメガシンカしたことでテンションがぶち上がるイジクとジャラランガ。しかしそのテンションが上がりきった顔を真剣な表情に変え、メガルカリオを見据える。
「そこまで見せてくれたんだ……なら私たちも魅せねば無作法というものだろう?久々に行くぜジャラランガァ!!!」
「油断するなよメガルカリオ!常に【みきり】を使えるようにしておけ!」
周囲に気が満ち溢れる──
この夥しいエネルギーの出所は……イジクだ。
「宣言!フィールド展開!!!」
『周囲に 荒々しいエネルギーが満ち溢れる!』
「集中しろ……何が来ても対応できるように……!」
辺りに漂っていたエネルギーがジャラランガを中心に壁を形成する。そしてその中心にいるジャラランガに変化が起こるのが見えた瞬間、カケルとメガルカリオはえも言われない恐怖感に包まれる。
「エリア・ド・イジク──正真正銘、私の最強の技だぜ?」
歴史の闇に埋もれた英雄の技が今、発動する──
To Be Continued……