通りすがりのポケモントレーナーだ、覚えておけ   作:厄丸

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気がついたら1ヶ月経っちゃった。
いつも誤字報告ありがとうございます。


代償とセンス

 エリア・ド・イジク──それはイジクとジャラランガが最大限に力を発揮するために展開するフィールドである。

 そのフィールド自体には相手に直接効果を与えることはない、だが発動者には条件付きで多大な恩恵を与える──

 

「モード発現、赫乱星棍(かくらんせいこん)──今から5分の間、私達は止まらねぇぞ?行くぜおいッ!!!」

「ジャラララララララッ!!!!!」

 

 赫い星の様に輝くジャラランガが吠える。

 それは今から始まる鏖殺の合図だった──ジャラランガの姿がブレる。そう感じた瞬間にメガルカリオは頭を全力で下げた。

 その直後下がる前の頭の位置にはまるで如意棒のような赫い岩の棍が突き刺さっていた。

 

「どっから出したその武器!!!」

「どっからだぁ?んなもんジャラランガからだぜ?【ステルスロック】の岩をエネルギーでコーティングしてるだけだ、カケル君もやっていたんだろう?」

 

 だろう?と言われれば簡単だがイジクのそれはあの時《※メガバンギラス戦》に使った時とは比べ物にならないぐらいの完成度であった。

 そして既に出来上がっているものを使ったリオルとは違いジャラランガはノータイムで作り繰り出してきた、そもそもの練度も桁違いである。

 

「呑まれんな!【インファイト】!」

「おいおい、今のジャラランガにそれは悪手だぜ?!やってみせろジャラランガ!なんとでもなるはずだ!!!」

 

 メガルカリオはジャラランガに【インファイト】を仕掛ける、コウキの時にも使ったボクシングや蹴り技などを含めた特殊なものを繰り出すが……

 

「ルォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッオオオ!!!」

「ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラァジャラ!!!」

 

 激しい技の応酬、メガルカリオは【インファイト】を使ってのラッシュに対してジャラランガはその肉体で全て撃ち落とし叩き落としている。

 

「おぉいちょっと遅いんじゃないのかぁ??!!!もっとスピード上げてけ!!!」

 

 その言葉と共にジャラランガは更にラッシュの速度を上げる、それは本来ならばあり得ない光景だ。通常の攻撃で技を上回るなどあり得ないことだ──否、あり得てしまっている。

 他ならぬイジクとジャラランガの手によって引き起こされている──!

 

「ふざけんなよ……!ポケモンの技もなしにこんなことが……!」

「ありえているんだな~これが!!!想いの力は無限大だろ!ほらほら勝負はここからだろうが!!!」

「そうだっ勝負はまだまだだ!!!【みきり】を空間把握verに変化!予測しながら対処だ!」

「ルォウッ!!!」

 

 ジャラランガのラッシュを【みきり】を使い紙一重で避けていく、そして──

 

「ルォウ!!!」

「ジャラッ?!」

 

 遂に合間を縫って顔面に一撃喰らわせることに成功した、しかしそれで怯むジャラランガではない。

 

「ジャアッラァ!!!」

「ルォ?!」

 

 仰け反った体勢から勢いをつけて思い切りの頭突き、思わぬ方法で攻撃を喰らったメガルカリオは痛みで頭突かれた場所を手で覆ってしまう。

 その隙を見逃さないジャラランガは胸ぐらを掴み思い切り地面に叩きつける、あまりの勢いにバウンドしたメガルカリオの腹に振動する鱗を挟んだ蹴りをお見舞いする。

 この十数秒の攻防の中で既にメガルカリオは満身創痍と呼べるほどの状態になってしまった。

 

「カフッ……クッソ、マジで痛え……!」

 

 そして初めてのエモリュージョンを用いてのメガシンカ、その代償は確実にカケルを蝕んでいるのがイジクにも目に見えて分かるほどだ。

 エモリュージョンは強化の段階が進めば進むほどトレーナーに負荷がかかる、ここ数日に使えるようになったものを慣れもせずにその先の強化を使っているのだ。だからこそ余計に体に負荷がかかっている。

 

「このまま続けても緩やかに死ぬだけ……何故そこまで勝ちにこだわるんだ?これはトレーニングみたいなもんだからそこまでしなくてもいいはずだぞ?」

 

 息も絶え絶えの中問われる質問、普通の人間ならば確かに『やめよう』と答えていただろう。

 

「うるせぇよ……余計なお世話だ……!」

 

 しかし、返ってくる答えは一蹴──これは試合であって死合いでない、それが分かっているが故の拒否拒絶。

 負けても命は取られないだろうがその保険こそカケルが嫌悪してならないものだ、自分が負けたという結果は覆ることはない。

 しかしいくら我慢しようが耐えられないものもある、イジクはそれを見抜いていた。

 

「いや余計に心配するだろ……エモリュージョンの反動で今にも吐きそうなはずだ、頭痛もするんだろう?慣れてない証拠だ。そしてそれはメガルカリオにも伝わっているのが分からないのか?」

「うるせぇって言ってんだろ……!」

 

 ダメージのフィードバック──それが今カケルに起きている問題だった。

 メガルカリオの痛みもカケルは共有している、気を抜いてしまえば今にもエモリュージョンが解けてしまいそうなほどの消耗具合と激しい吐き気……正直言ってこの勝負は判断を見誤ったカケルの負けである。

 だがただでは終わらない……カケルのその瞳に金色(こんじき)の稲妻が走る、その稲妻はかつてウィアドとケーシィに起きていた現象にあまりにも似ていた。

 

「俺は不調だからと諦める奴ではないんでな……!」

 

 イジクの勝利は揺るがない、しかしたった1つの誤算があった……それをイジクは今から知ることとなるだろう。

 

「ありがとうよ先輩……ルカリオを通してよ〜く見てたぜ、俺の目にもどうやってエネルギーを使えばいいのか見えるんだからなぁ……!」

「何言ってんだお前……え、マジ?マジで言ってる?!」

 

 想いの力は無限大、そしてその想いは良くも悪くも新たな力を引き出す鍵となる──!

 

「さっきも言ったよなぁ!今勝てないなら勝てるようにするだけだぜ!!限界を更に超えた先に行くぞメガルカリオォ!!!」

「ルォウ!!!!!」

 

 イジクの誤算……それはカケルのセンスは歴代最高、他人の力量では推し量ることが出来ないほどの物を持ち合わせていることだった──

 ()()()()()()()()()()()()()()()、そしてその圧倒的センスは更に上のステージへと行くのに条件を満たす程のものだ。

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 カケルとルカリオを中心に夥しいエネルギーが吹き溢れる。その光景は先程のイジクと全く一緒と言っていいほど酷似している……!

 

『周囲に 荒々しいエネルギーが漂い始める!』

 

「うっそだろお前?!とんでもない奴が後輩に来たもんだ……ッ!」

 

 イジクに、久方ぶりの緊張が走る──

 条件だけなら五分、むしろエモリュージョンを使いメガシンカをしているルカリオの方が上だ。しかし身体にかかる負担はメガシンカの比ではない。

 ここ数日の間で1回、今日だけで既に2回の限界をぶち破っているカケルの身体には弾け飛びそうなほどの負荷がかかっている。

 先ほども言ったが本来ならもっと慣らしてから使うべき代物だ、それを意地だけで意識を保ってるのはカケルの想いの力によるものである。

 

「いや、やめた。これ以上長引かせるとトレーナー共々死んでしまう」

 

 その一言でジャラランガの纏うエネルギーが更に練り上がり、身体の赫い輝きは更に煌々とする。

 必殺を超えた必殺、否──奥義すら凌駕するほどの技の気配。

 メガルカリオと繋がっていることもあり何をしてくるかはなんとなく分かっている、しかし……

 

「ガフッ……カヒューッ……!」

 

 酷使による酷使、限界を超えすぎた反動が遂に呼吸にさえも影響を及ぼし始めた。

 同時に頭への酸素供給が間に合っていないことにカケルは気付く。だがここでエモリュージョン及び展開したエリアを閉じれば勝ちは無くなってしまう──その事だけが今のカケルの意識を繋ぎ止めていた。

 

「その段階まで来ちまったか…ッ!だからやめろって言ったのに!!!」

 

 そんなカケルを見てイジクは更に急ぐ。ふざけまくってはいるがちゃんと根は優しい故にここで可愛い後輩を死なせるわけにはいかなかった。

 

「言うことを聞かない困った後輩にはお仕置きをしないとなぁ……!」

 

 ジャラランガは練り上がるエネルギーを全て拳に収束させる。

 ここでメガルカリオ共々意識を失わせなければ止まらないと直感したからこその判断、しかしただ止まるカケルではない。

 

「もぉ…どっケフッ……はつ……げん……ッ!」

 

 酸素を取り込むことすら出来ないその身体で突き進む姿はまさに修羅──元の世界にペットは飼い主に似るという言葉があるが……リオルの異常性はカケルから来たのかもしれない。

 

「止まれって!マジで死ぬから!!!」

「う……る……ぃ……ッ!」

「あぁくっそ!後で文句言うなよ!!!」

 

 それでも止まることはない。メガルカリオの身体が淡い金色(こんじき)に光を纏い始める。そしてジャラランガのエネルギーも最高潮となり拳を振り上げた時──

 

「カケルさん!止まってくださいませ!!!」

「あぶね!ストップ!ジャラランガストーップ!!!」

 

 その拳がメガルカリオに当たることはなかった。

 ウィアドとの訓練を中断し駆け寄ってきたエディがカケルを抱きしめる、あまりにも予想だにしない出来事にカケルの脳はフリーズ。そして導き出される答えは……

 

「……キュウ」

「ルォウ……」

「え、リオル?カケルさん?!!」

 

 気絶──哀れ、女性耐性がない故にカケルの脳は逃げることを選んだ。試合にも負けて勝負にも負けた、グズグズである。

 そしてトレーナーポケモン共にかかっていた負荷が解除される、襲ってきた反動に耐えきれないこともあり見立てでは数日寝込むことになるだろう。

 

「あぶねー……助かったわエディちゃん、マジで死ぬとこだった」

「一体どんなトレーニングしたらこうなるのですか……?」

「いや勝手に限界突破してったというか……煽りすぎたというか……」

「煽っただけでこうなります?!けどカケルさんですし……

 

 それでいいのかエディ、曲がりなりにもそいつは主人公だぞ。

 とはいえ煽る方も悪いし乗る方も悪い。結局トレーニングは中止、そして身体に無理をさせすぎたこともあり……

 

「そんな状態でトレーニングだぁ?休むことを知れぇ!!!」

「そ、そんな……!」

「「まぁ、妥当だな(ですわね)」」

 

 カケルは数日間のドクターストップを食らうこととなってしまった。

 

「それとエモリュージョンを用いたメガシンカはしばらく禁止だよ!ここぞという時にだけじゃないと君本当に死ぬからね?!」

「んな大袈裟な……」

「前も言ったと思うけどねぇ!ポケモンよりトレーナーに負担がかかるんだからねぇこれ!トレーニングの時みたいに2回も3回も使ったらまた呼吸出来なくなるよ!!!てか君みたくポンポン使える方がおかしいんだからな!!!」

 

 ウィアドの余りのブチギレ具合に流石に頷くしかないカケル、そんな姿を今まで見たことないのかイジクも少し顔を引き攣らせていた。

 そんなこともあり2日ぐらいは安静にしていた。だが戦い大好き戦闘狂はそれでもなお動こうとする、しかしそれをウィアドに見つかってしまい……

 

「動くなっていってんだろ!そんなに!!僕を!!!怒らせたいかァ!!!」

「ヒェッ……」

「言うことを聞かない野郎にはお仕置きが必要だなぁ!イジクくんッ!!!」

「よっしゃあいくぜェ!!!イシツブテリロード!アローリ!!!」

 

 何処からともなくスーパーヒーロー着地をして現れたイジクの手に収まるはお手軽なイシツブテ。今から始まるのは勝負ではない、言うことを聞かないトレーナーへのお仕置きである。

 

「え、何をするつもり──」

「ほらパァス!!!」

 

 豪速球で投げられるイシツブテ、いや本当に何してるの???

 

「あっぶな?!」

「動けなく無くなるまで体動かせぇ!!!死ぬ気で避けろ!!!」

「博士はしゃぎすぎだって、まだイシツブテ20匹しかいねぇよ」

「充分いますわ?!貴方たち怪我人に何してるんですか!!!」

 

 そして飛んでくるエディ。流石に助かったとカケルは思うが──

 

「止めるな!止めるなら君も巻き添えだァ!!!」

「ごめんなさいカケルさん、おとなしく休んでくださいまし」

「早い!手のひら返すのが早いって!!!」

「ンッン〜!テンション上がってキタァ!!!

宣言!フィールド展開!!!

「ちょ、それは冗談になってないから?!」

 

 すかさず展開される領域、流石にこれは洒落になってないのでウィアドも止めようとするがもう遅い。

 

『周囲に 荒々しいエネルギーが満ち溢れる!!!』

 

「いくぜイシツブテェ!必殺──!」

 

 瞬間投げられたイシツブテたちに光が灯る。凄まじいエネルギーの流れにカケル、ウィアド、エディに数日ぶりの緊張が走る──!

 

「ファイナル・チェインズ・エクスプロージョン!!!」

 

『イジクの必殺!ファイナル・チェインズ・エクスプロージョン!!!』

 

 凄まじいエネルギーの濁流、まるでぷよ◯よのように連鎖的に引き起こる大爆発は本来の威力とは比較にならないほどの閃光をあたりに撒き散らし──

 

「オワー??!!!」

「ぐへぇ??!!!」

「キャア??!!!」

 

 巻き込まれた3人は黒焦げになり地面に倒れ伏してしまった。

 

「ッシャア!1v3クラッチだぜ!!!」

「テッメェ!!!リオル!エモリュージョ──」

カケルくん???

「ヒェ……」

 

 すかさず反撃しようとしたがウィアドの圧に負けて縮こまってしまう、しかしもう1人……イジクの暴挙にキレていたトレーナーがここにいた。

 

「あったまきましたわ……!!!」

 

 こめかみに青筋を浮かべておおよそヒロインがしないようなキレ顔をしているエディ、ここからもう一波乱起きそうな気配がしていた……

 

To Be Continued……




『フィールド展開』

 己のエネルギーを使い外殻を形成して自分と相手を閉じ込める短期決戦の究極奥義。

 フィールドの内側は展開したポケモンのエネルギーで満たされているためどんな技でも必中となる、何故ならそのフィールド全てが自分自身なのだから、何処からでも技を繰り出せるのは必然である。

 技の回数が撤廃され何度でも使えるようになる、更に使用したポケモン自身の身体能力も著しく上昇するため鍛えたポケモンによってはメガシンカしたポケモンのインファイトを技を使わずに全て叩き落とすことも可能となる
 
 その代わりデメリットも凄まじく使用制限時間は5分、フィールドの展開はいわば自分のエネルギーを垂れ流しているのと一緒なので使用後は全ての技のPPが0となる。そしてそのバトルでは疲労困憊状態となり、バトルに参加できなくなってしまう。どうやら抜け道があるらしいが……?

 ※条件※

1.使用するためには宣言をする必要がある、黙って使うことはできない。
2.エモリュージョンを使えることが条件である、トレーナーが手持ちポケモンのエネルギーを使って使うため特殊なエネルギー操作が必要になる。※例外あり
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