通りすがりのポケモントレーナーだ、覚えておけ   作:厄丸

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お久しぶりです(n回目)


禍襲ノ疾装と本気のウィアド

「いいぜピジョット!回転からの突撃!”つばさでうつ”!」

「ピリュラァ!!!」

 

 打って変わってこちらはイジクサイド。

 エルレイドの攻撃を躱し、攻撃を続けているが決定的なダメージを与えるには至っていない。

 

「クッソがぁ!硬すぎんだろオメー!!!」

「ギャオォオオオオオオオオオッ!!!」

 

 変異したエルレイドの攻撃は止まらず、爪や尻尾を使って攻撃を続けてくる。それを紙一重で避け続けているがピジョットの体力も無限ではない、多少なりとも傷がつくようになってきた。

 このまま続けていても負けるのはこちらなのは明白、エルレイドのこの状態もいつまで続くものか分からない故にいつまでも時間をかけていられない。ならばやることは1つ──

 

「ピジョットォ!覚悟決めろよ!」

「ピュリィオオ!!!」

 

 イジクの目に輝く《E》の文字、そしてピジョットの目に浮かび上がる《S》の文字。凄まじいエネルギーがピジョットを中心に吹き溢れ、想いの力が増幅してゆく……!

 

「ピジョット!エモリュージョン!メガシンカ!!!」

 

『イジクの想いに ピジョットが応える──!』

 

「攻撃が当たってきたならこうするしかねぇよなぁ!」

 

【ピジョット《ES・メガピジョット》タイプ:ノーマル・ひこう】

 

【メガピジョット】

《とりポケモン》

『特性:ノーガード』

タイプ:ノーマル・ひこう

 

 メガシンカを果たしたピジョットは更に速度を上げてエルレイドへと攻撃をしかけてゆく。しかし特性:ノーガードによってお互いの攻撃は必ず当たるようになってしまった、だからこそイジクはその穴をつく。

 

「どんなにカスダメでも当たりは当たりだ!こっちは最小限に、てめぇには100%をぶち当ててやるよ!”ぼうふう”!」

「ピッッッルリャアアアア!!!」

 

 すかさずに大きな技を使うイジク、しかしそれを黙って受けるエルレイドではない。飛んでくる風に向かって爪からエネルギーの刃を飛ばし抵抗をする。

 お互いの威力はほぼ互角、だがここにきてエルレイドの弱点が露呈してくる。

 

「ただ全部を放つと思うかよ!使ったエネルギーは半分だけだ!」

 

 理性も飛び獣同然、そして戦闘経験すら未熟なエルレイドにこれを防ぐすべはない、そう考えた故のフェイント。飛んできた嵐を切り裂けばそこに現れたのはメガピジョット、そしてその身体には使わなかったであろう風のエネルギーを纏って突っ込んでくるのが分かる。

 光り輝くその身体からは更に吹き溢れる風が力となってエルレイドを襲う──

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()ォ!くらいやがれぇええええ!!!」

「ギュララァアアアアア???」

 

 飛行タイプ最強の技の1つ”ゴッドバード“、それをモロにくらい大きな煙と共に起きる大爆発。

 流石にエルレイドとはいえタダじゃ済まないだろうと思うが……

 

「ッギュルラァアアアアアア!!!!!」

「マジかぁ……」

 

 煙の中から飛び出してきたエルレイドの腕の下には押しつぶされ、倒れ伏すピジョット……この変異したエルレイドはイジクが思っているよりもずっと耐久値が高いものだったようで万策はほぼ尽きた……

 しかしここで諦めてはどんな被害があるかわからない。だからこその判断を決断する。

 

「ふー……どうやら覚悟が足りなかったのは俺の方らしい……!」

 

 イジクを中心に吹き溢れるエネルギーの嵐、それは今できる最善の判断だった。

 その想いはピジョットに収束してゆく、そして爆発するように展開するエネルギーはエルレイドの腕を弾くだけの威力を持つ──

 

「宣言……ッ!フィールド展開!!!」

 

 胸に手を当て絞り出すようにエネルギーを操作するイジク。しかしその代償は余りにも大きい……

 

『周囲に 荒々しいエネルギーが吹き溢れる!』

 

エリア・ド・イジク……!ッはー……はぁ……!クッソ、キッチィなぁ……!だから相性悪いやつとは戦いたくねーんだよ……!」

 

 目の前がチカチカと弾け、呼吸が乱れ始めるイジク。

 ここまでなったのはまだ昔、トラウムにいた頃だろうかと思いながらイジクはエルレイドを見据える。

 

「つーかアイツ(カケル)才能ありすぎだろ……!」

 

 ここでイジクの脳裏に浮かぶのは未だ己に勝ててない後輩、しかしこの状態になったからこそカケルの才能に改めて気付く。

 

(あいつは俺よりも……いや俺らよりも必ず強くなる!)

 

 荒ぶる呼吸と痛みが走る目を無理やり抑え、更に出力を上げる。

 その右目からはあまりの出力に()()()()としてエネルギーが迸り、その勢いはピジョットに伝わる──!

 

「後輩に任せろって啖呵切ったんだ!まだまだ粘らせてもらうぜ!!!」

「ピリュウゥウウウウウ!!!!!」

 

 タイムリミットは5分間、その間にカケルが戻ってこられなければ……考えるまでもないだろう……

 

 そしてその頃カケルサイド、ケンタロスの力も借りかなりの速度で研究所にエディを届けることが出来た。

 その道中でしっかりと飛ばされたウィアド、リオル、ジャラランガを回収しておりイジクの元へと急いでいるところだった。

 

「マジ助かったぜカケルくん!早く戻らないとイジクくんが不味い!」 

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ博士!何がそんなに不味いのか分からないんですって!……ん?なんだあれ……」

 

 走るケンタロスに跨がりながら見えてきた景色は白い霧の壁。その直前でケンタロスは止まり、入ろうと試みるが……

 

「うわ!いってー……!マジでなんだよこれ!これじゃ入れないじゃないか!」

「やっぱそうなるか……本格的に不味いことになったぞ……!」

「だから何が不味いんだって!説明してくれよ!」

 

 騒ぐカケルを横目にウィアドは語り始める。その横顔はいつものふざけたような表情ではなく真剣そのもの、そんな顔も出来たのかと思いながらカケルは聞き流すことのないように聞くことにした。

 

「まずあのエルレイド、アレは通常ならありえない特殊個体なんだ」

「それはなんとなく思ってました、パイセンもなにそれしらん、こわ……って言ってましたし」

「真面目に聞こうね???それであの特殊個体の総称を禍襲ノ疾装(マガツノシソウ)と呼ぶんだ」

「総称……?その言い方だとまるで他にもいるような……」

 

 まるでそうだと言わんばかりに首を縦に振るウィアド、更に話を聞けば確認されてる限りでも3体の禍襲ノ疾装は存在しているようだ。

 

「あの特殊個体の厄介なところは強制的に1vs1を強いられること、そしてその解除方法は……

どちらかが死ぬしかない……!

「冗談……って訳じゃなさそうだな……」

 

 このまま何も出来なければイジクは死んでしまう……それでは余りにも……

 

「そんなのってあんまりじゃねぇかよ……ッ!せっかくトラウムに戻ってこれたってのに!!!」

「けどコレばっかりは情報が少なすぎる、結晶も今手持ちない!万事休すか……?!」

 

 そして着実に近づくタイムリミット──エリア・ド・イジクが発動してから既に3分以上が経過している。フィールド展開をしていることにカケル達は気付いていないが余りに嫌な予感が身体に纏わりついており、それが予感だけで終わらないと確信を持ってしまっている。

 

「ふざけんなよ……!諦めてたまるか、諦めてたまるか!!!」

「ルォウ!」

「リオル?」

「ジャラ!」

「ジャラランガ?何かいい案があるのかい?!」

 

 リオルとジャラランガの案、それは出来るかも分からない賭けであった……しかしここで諦める理由にはならない。

 故にカケルとウィアドは準備をする、帰ってきた1人のトレーナーを死なせないために全力で動くのだ……

 

 そして状況は戻りイジクサイド、相性も悪くピジョットしか居ないこの状況で導き出される結果は──

 

「は……は……やっぱ……むり、か……も……」

「ピュウ……」

「グルァアアアアアアッアアアアアア!!!!!」

 

 惨敗──既にエモリュージョンは解け、フィールド展開も時間切れで全ての力を使い果たしてしまった……しかし口で無理と言っても身体はそれを認めない、倒れ伏す身体に鞭を打ち立ち上がろうとするが……

 

「グラァ……」

「ガフッ!ガァ……ッ?!」

 

 背中に足を置かれ踏み潰されてしまう、そしてギリギリと音を立てて今にも背骨を砕かれそうになるがもがく力すらないことに今更気付く。

 

(流石にもうここまでか……長いようで短い人生だった。どうせならもう一回、あと一回だけ……みんなに会いたかったなぁ……)

 

 目を瞑り死ぬ覚悟を決めるイジク。そんな彼を見て満足したのかエルレイドは足をあげ、トドメ刺そうと一気に振り下ろされる──

 

「ルカリオ!”はどうだん”!!!」

「ガァ?!」

 

 事はなかった。霞む視界の先にはメガシンカを果たしたルカリオ、頼りになる後輩に相棒のジャラランガ。そして──

 

「ごめんな、イジクくん……後は僕に任せてくれ」

 

 般若の形相になり、ブチキレにブチキレているウィアドと姿()()()()()()フーディンの姿がそこにあった。

 

「はー……!はー……ッ!間に合った!!!」

「まさか本当に出来るとは……フィールド展開を利用してのエリア相殺、イジクくんが本気を見せてなきゃ得る事がなかった未来だ」

「ただ俺はもう動けないっすよ博士!流石に2回目じゃ完全とはいかない……!」

「いいや充分さ、ジャラランガもケンタロスもイジクくん達を連れて離れるんだ」

 

 カツ……カツ……と音を立て、青筋を額に浮かべながらフーディンと共にエルレイドに近づくウィアド。その今まで見たこともないような威圧感と怒気にカケルまでも思わず後ずさるほどだ。

 

「さて、ちゃーんと離れてるんだよ2人とも。今の僕は……内心穏やかじゃないんだ、もしかしたら巻き込んじゃうかも」

「フゥ……ッ!」

「ガァ……?!」

 

 いつもの冗談めいた言葉遣いではないウィアドにエルレイドですら無意識に後ずさる、そしてエルレイドはフーディンの方に目を向ける。

 

 大きなスプーンを携えて、身体から漏れているエネルギーがまるでコートのように纏わりついている。

 普通に立っているように見えるがそのエスパーエネルギーを巧みに操作して自分の周りに3つの淡紅色の剣が浮遊しており、いつでも射抜けるように切先がエルレイドに向けられていた。

 

【フーディン(トラウムの姿)】

《ねんりきポケモン》

『特性:シンクロ』

タイプ:エスパー

 

「もう許さないからな……いくらエディちゃんの相棒とはいえ許容はできない、お前は僕の逆鱗に触れたんだ」

 

 ウィアドの怒りが、想いが、その全てがフーディンに収束していく。

何年、何十年待ったことか……送り出したことに後悔をした日さえあった、だがトラウムを救うためには仕方ないと割り切った、割り切ってしまった。

 

「もう2度と……2度と孤独なんてゴメンだ……!」

 

 だが1人帰ってきた、新たなる渡り人の手によって無事に生還する事が出来たのだ。それがどれほど心を打たれたのか……イジクもカケルも知る由もないだろう、だからこそ許せないのだ。

 

「僕が不甲斐ないばっかりにイジクくんが死ぬかもしれなかった、カケルくんにだってかなり無理をさせてしまった。エディちゃんだってずっと悩んでいたに違いない……

だからこそ僕は自分自身が許せない……ッ!」

 

 瞬間──ウィアドの()()()()淡紅色の雷が走る、そして仇を打つためにあえて宣言をする。

 

「宣言・フィールド展開」

 

『周囲に 荒々しいエネルギーが満ち溢れる!』

 

「グギャア……?」

エリア・ド・ウィアド……お前を倒すのに5分もいらない、必要ない。エディちゃんのこともあるし速攻で終わらせてもらうよ」

 

To Be Continued……




前回書いてなかったのでここに書いておきます。

【ケンタロス(トラウムの姿)】
《あばれうしポケモン》
『特性:てきおうりょく』
タイプ:ノーマル・エスパー

 トラウム地方に生息しているケンタロスのリージョンフォーム。
 トラウムの特殊なエネルギーに当てられ続けた結果、物を浮かせたり自分の勢いに乗せたりすることが出来るようになった。

”てきおうりょく”は元ネタになったやつが似たような物を持っているからです。
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