「取り敢えずどこの地方かの確認からしないとな……」
当たりを見渡すがパッと見で分かるのはどこかのタウンというだけ。そして掲示板を見つけて中身を見てみるとタウンの名前が書かれてる。
「マサゴタウン……ってことはここはシンオウ地方か、ナナカマド博士の研究所があるとこだな」
ふと気付いて後ろのドアを見てみる。しかしそこにあるのは一軒家、いきなり変わった見た目にギョッとするがそこにすかさず聞こえてくる女の子の声。
「おはようカケル!今日も起きるの早いのね!」
「え…?あ、あぁ。おはようヒカリ」
ここでなるほどな、と理解をする。どうやら異変解決に来た地方の歴史に組み込まれているらしいのだ、これはやりやすいなと思いながら話を続ける。
「そうか?いつも通りだろ。それをいうならヒカリだって起きるの早いじゃないか」
「私は博士の手伝いがあるからね!それに今日は新しく冒険に出る後輩に色々教えてあげる日なの!」
「後輩?」
「先輩!お待たせしました!」
声が聞こえた方を見ると確かにいた。何度も見たダイヤモンドパールの男主人公―――
「コウキくん!今日はよろしくね!」
「はい!ヒカリ先輩!」
コウキがそこにいた。ここはゲーム世界を基準にできているらしい、カケルはお邪魔かと思い家に入ろうとしたがヒカリに止められてしまう。
「ちょっと!なんでカケル家に戻ろうとしてるの!」
「え、いやほら。彼ヒカリの後輩でしょ?俺邪魔じゃない?」
「そんなことないですよ!先輩からよく聞いてます!バトルが物凄く強い人なんだって!」
「おいヒカリ」
「えへ///」
(何がそんなことないやねん。教えるだけなら俺いらんくね?????)
「今日は捕まえ方の他にポケモンバトルのやり方も教えてもらえるって聞いてます!」
「ヒカリさん???」
「あはは……」
(この地方にきていきなりこれ?キツくない?)
カケルはちらりとコウキの方を見る。
確かに見れば冒険を始めたばかりなのが分かる。靴は新品だし傷も見たところない、ボールも1つだけでまだもらったポケモンだけなのも分かった。
「コウキ・・・くんだっけ?ポケモンは何を貰ったのかな?」
「ヒコザルです!ムックルに襲われたときこいつが出てきて助けてくれたんです!」
「そうなのよ!とっても勇敢なポケモンでコウキくんを守ってくれたの!」
「いいね、大事にするんだよ?じゃあ早速新しいポケモンを捕まえに行こうか」
「はい!そのあとはバトルの指導をお願いします!」
バトルは確定かよと思いながらマサゴタウンの北に行く。ここにはムックル、ビッパ、コリンク、コロボーシが出てきたはずだが・・・
「まぁ出てくるよな、それ以外のポケモン」
見ればジグザグマとオタチが見える。この2匹は全国図鑑入手後に出てくるポケモンだが姿がちょこちょこ見えた、つまりゲーム通りではなく出てきにくいだけでいないわけではないというのが見て取れる。
「うわぁ…!道路1つ違うだけでこんなにも出てくるポケモンが違うんですんね!」
「でしょ?だから自分の好きなポケモンを見つけて捕まえるといいわよ!」
コウキはあたりを見渡して見定める。カケルはそれを後ろから見ていたのだが正直暇である、自分もいずれ捕まえるための勉強にはなるのだが……今やっているのは自分ではないため暇である。
(このままこっそり戻ろうかな、あの家の探索もしないといけないし…)
「カケル今帰ろうとしてた?だめだよ??」
「カケル先輩帰らないでくださいよ!この後俺とのバトルが残ってるんですから!」
「なんで考えてること分かるんだよ。分かった分かった、バトルするよ。けど新しいポケモンを捕まえたらな、ほら、あそこにいるジグザグマとかどうだ?」
木の陰に隠れているジグザグマを指す。俺に指を指されたからか分からないが、ジグザグマはコウキに向かってくる。どうやら標的を見定めたようだ。
「ぐぐーっ!!」
「よぉし!頑張って捕まえるぞ!いくぞヒコザル!」
「ウキィ!」
「ほう、あれがヒコザルか」
「え?カケルいつも見てるじゃない」
「あ、あぁそうだっけ。悪い、まだ寝ぼけてるみたいだ」
(あぶねぇ、マジ何処でボロが出るか分からないぞこれ)
そんなことを思いながらコウキとヒコザルを見据える。ここに来るまでに何回かバトルをしているようだがまだまだおぼつかないようだ、ジグザグマ相手に四苦八苦しているのが見て分かる。
「ヒコザル!ひのこだ!続けてひっかく!」
「ウキィ!!!」
「ぐぅ?!」
ジグザグマに【ひのこ】が直撃し、続けざまに【ひっかく】が当たる。運よく火傷状態にできたようでジグザグマは少し苦しそうだ。
しかしここで喰らってばかりなのがポケモンではない。ヒコザルに【たいあたり】をしてコウキ側に吹き飛ばす、だがヒコザルにはあまり効いてないように見える。
「ヒコザル!」
「慌てるなコウキくん、まだ当てられたのはたいあたりだけだぞ。それにジグザグマはやけどにもなっている、物理ダメージはほとんどないはずだ」
「は、はい!
コウキはモンスターボールを構える。体力的には捕まえられてもおかしくはないがそこは運次第、そしてジグザグマに思いっきりボールを振りかぶる。
「いけ!モンスターボール!」
「ぐっ?!」
ポン!と気持ちのいい音が鳴り、ボールの中に収容されるジグザグマ。3回ほど音が鳴り、モンスターボールから更に音が鳴る。どうやらちゃんと捕まえられたようだ。
「やった!!!ポケモンを捕まえたぞ!」
「おめでとうコウキくん!初めて自分で捕まえたポケモンね!大事にするのよ?」
「はい///」
(あ、ふーん。さてはヒカリにホの字だな?尚更俺いらんくね?)
ひとしきりに喜んだあと、ヒカリに渡された傷薬を使ってヒコザルとジグザグマを回復するコウキ。カケルに顔を見せながらウキウキして近寄ってくる、余程バトルをしたようだ。
「さあカケル先輩!僕とバトルです!!!」
「このバトルジャンキーめ、そこまでいうならバトルしよう」
「いいじゃない!私も見学させてもらうわね、なんだかんだカケルがちゃんとバトルしてるところ見たことないのよね」
そりゃそうだろうとカケルは思う。何故ならこの地方に来てからまだ1時間ほどしか経ってない。見たことなくて当然なのだ。だからこそカケルも密かに楽しみにしていた、主人公と言われるトレーナーの実力を。しかしジグザグマ相手に慌てるあの様子、正直あまり期待は出来なさそうだと思った。
(まぁ俺もトレーナーになりたてだから人のこと言えないんだがな)
「よし、んじゃやるか。行くぞリオル!ここでの初バトルだ!」
「!!」ぶんぶんっ
「リオル!珍しいポケモンね!カケル持ってたんだ・・・!」
「また初めて見るポケモンだ…けど相手にとって不足はないです!いけ!ヒコザル!」
「ウッキャアァ!!!」
【ヒコザル】
《こざるポケモン》
『特性:もうか』
タイプ:ほのお
コウキが出してきたポケモンはヒコザル。先ほども使っていたし当然と言っちゃ当然だが技も先ほどみたものに加えて【にらみつける】、使われたら厄介だが何とかなるだろうとカケルは考える。
「お手並み拝見だ、先行譲るぜ」
「随分と余裕そうですね…!行くぞヒコザル!【ひっかく】だ!」
「ウキャ!」
「リオル、【メタルクロー】で【ひっかく】を受け止めろ」
「ッ!」
ヒコザルの【ひっかく】を【メタルクロー】でさばくリオル。まるでみだれひっかきのように何度もひっかいてくるがこちらは格上と戦い続けたリオル、みきりを使わなくてもある程度は対処できるまでに成長していた。
「【ひっかく】から先はないのか?」
「何を~・・・!まだまだ!近くで【ひのこ】だ!!」
「続けて【みきり】と【メタルクロー】だ」
近距離で【ひのこ】を放つヒコザル。しかし【みきり】と【メタルクロー】の合わせ技で【ひのこ】を切り裂いてしまう、本来ならはがねはほのおに今ひとつだが…それを【みきり】で弱点を即座に見つけ、素早く【メタルクロー】を放ち無力化する。
「【みきり】を守ること以外で使うなんて・・・!」
「今度はこっちから行くぜ?リオル!【でんこうせっか】だ!」
「ッ!!」
目の前から即座に消えるリオル。急に標的が消えたことでヒコザルは狼狽えてしまう、そして背中に強い衝撃が走り前に吹き飛ばされてしまった。コウキがヒコザルのいた位置を見ると拳を前に突き出してヒコザルから視線を逸らしていないリオルがいた。
「【でんこうせっか】でこの速さ?!どんな鍛え方したらこうなるの…?!」
「おいおい、俺らはまだ1回しか攻撃してないぞ?もっと楽しませてくれよ後輩」
「くっそ~!頑張って起きろヒコザル!俺らはまだまだやれるぞ!」
「ウキィ・・・!」
闘志はまだまだ消えないらしい。速さ特化の【でんこうせっか】だからこそ威力はそこまでないはずなのだが…精神的なものがあるらしい、かなり消耗しているように見える。
「コウキくん、1つアドバイスだ。常識に囚われるな」
「常識に・・・?」
「そうだ、【ひっかく】も【ひのこ】も使い方によっては勝てる可能性が大いにある。例えば…
「!!!!!」
どうやら天啓が走ったらしい。ヒコザルも意図を理解できたようで自分の爪に【ひのこ】を吹きかけている。
「で、出来た・・・!出来ましたカケル先輩!!!」
「そうだ、技の解釈を広げろ!出来ないことなんてない!」
「この調子で…!素早くひっかけ!」
「ウキャキャキャ!!!」
炎を纏って素早くこちらに切り込んでくるヒコザル。新しいことが出来たからかテンションのボルテージはかなり上がっているのが分かる、しかしこのまま負けてあげるつもりはカケルにはない。
「凄い…!考え方1つでこんなに変わるものなの?!」
「【カウンター】だリオル!こっからが本当の勝負だぞ!」
何度も【ひっかく】を使いダメージを与えようとする。合間を縫って【カウンター】を繰り出す、顔面を捉えてクリティカルヒットしたのだが…それが悪手だったと知ったのはもう遅い。
「ウキャキャキャ……!ウキャアァアアアアアアアッ!!!!!」
「ヒコザル?!」
「これはもうか状態…!カケルの攻撃で体力が減ったから発動できたんだわ!」
「いいねぇ……!楽しませてくれるじゃねぇかコウキくん!ヒコザル!」
先ほどよりも火力をあげてリオルに突っ込んでくるヒコザル。即座に【カウンター】を叩き込もうとするが―――
「ッ?!」
「もっともっと解釈を広げろヒコザル!
もうかでほのおの威力が上がったからこそできる飛ばせる炎。ひっかいた速さと飛ばした炎で【カウンター】を不発に終わらせ、怯ませたところでリオルの顎にほのおのひっかくが直撃する。
見た目よりもかなり威力があるひっかくで後ろに吹き飛ばされるリオル、だが上手く着地は出来たようでまだヒコザルを見据えている。
「やるじゃないか!1つ考え方を教えただけでここまで出来るようになるなんて思わなかったぞ!!!」
(流石主人公っていったところだな…!油断してたらやられるのはこっちだ!)
「ありがとうございます、おかげで僕たちはまた強くなれました!」
「なんてバトルセンスなの2人とも!私も頑張らないと…!」
1を聞けば5にも10にもできるセンス、これがポケモンシリーズにおける主人公というものなのだろう。だがこの主人公どもに対抗しているのもまた主人公、そしてコウキと同じくポケモントレーナーではまだ新米もいいところである。だからこそだろうか、相手が成長している、不甲斐ないところを見せられないと更に闘志に薪をくべる。
「やるじゃねぇか…最高じゃねぇか!もっともっと熱く!速く!」
「ッ!!!」
ウィアドとの度重なる戦闘で会得した技術、それが【みきり】による弱点の見極めとタイミングである。それを他の技に重ねることで更に解釈を広げることに成功した、だからこそ出来る連続の攻撃―――
「でんこうせっか―――4連ッ!!!」
「ッ!!!!!」
【みきり】による空間把握能力の向上、周りには足場にするための木々が生い茂っている。だからこそ使える連続攻撃、そしてテンションが上がり、内側から波動が迸るリオルを止められるものはここにはいない。4回殴る瞬間にヒコザルの内部へと波動を通す、内側と外側から当てられた衝撃に少なくとも今のヒコザルには―――耐えられるものではなかった。
「悪いな、この勝負は俺達の勝ちだ」
両手に滾る波動を収めて、カケルの元へと戻るリオル。この戦いで更なる戦い方を身に着けたようだ、小さな修羅の成長はまだまだ止まらない。
「ウ……キャァ……」
「ヒコザル……!」
「ちょっとカケル!やりすぎよ!」
「あ……悪い、テンション上がりすぎちまった!」
普通にやりすぎである。いくらお互い新米トレーナーとはいえカケルはウィアドに鍛えられている、出来上がっている土台があまりにも違いすぎるのだ。コウキは若干涙ぐみながらヒコザルを戻し、マサゴタウンへと戻っていく。ヒカリも一緒に付いて行って看病をするようだ。
そんな中一人残されたカケル、やりすぎとはいえしょうがない部分があるのだが……それを把握して慰めてくれる大人は今ここには居ない、現実は非情である。
「あぁ……やっちまった。いくらテンション上がったからってやりすぎたな…」
「っ」ポンポン
「慰めてくれるのか?リオル……ありがとうな、ひとまずは俺らも戻ろう。俺らが出てきた後に出来た家を探索しておかないといけないからな」
この戦闘が1つの分岐点へとなる、本来ならここでの戦闘は本歴においてあり得ない戦闘だったからだ。そのことを知るのはまだまだ先の話……
To Be Continued……