通りすがりのポケモントレーナーだ、覚えておけ   作:厄丸

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現れた悪意

「いやぁ…!まさかメガシンカしたバンギラスを倒しきるなんて思わなかったな!」

「俺達もぶっつけ本番でしたよ…成功してよかった……」

 

メガシンカをしたポケモンを進化もしていないポケモンで倒すのは異常である。しかしそれを成し遂げたのも事実、だがそれに見合う代償を支払わないといけないのもまた事実である……

 

「ルォ……」

「リオル?!」

「呼吸が浅い…!速くポケモンセンターに!!!」

 

バタンっと倒れるリオル、無理に無理が重なり倒れてしまった。急いでポケモンセンターに連れて行き何とか回復をしてもらうリオル、しかしジョーイさんの顔は余りよろしくはない。リオルは軽く鳴いてこちらに近づいてくるが足取りは軽くはなさそうだ。

 

「トレーナーさんのリオルちゃんは回復しました、ですが……」

「うちのリオルがどうかしたんですか…?」

「話すと少し長くなるのですが、かなり特殊な状態なんです」

「特殊な状態?」

 

話を聞けば自分の相棒は進化後のポケモンと同量ほどのエネルギーを持っているらしい、今まで進化後のポケモンに渡り合えたのはこのおかげとのことだ。話だけ聞けばメリットしかないがもちろんデメリットもある―――

 

「こういう状態の子は稀に現れるんです、そしてどの子も例外はなく進化をすることが出来ません」

 

更に聞けばこの状態のポケモンは進化後に更に増えるエネルギーに体が耐えられないようだ。つまり進化すればそのポケモンは死んでしまう……

 

「今回倒れたのは自分の持っているエネルギー以上の力を引き出したから倒れたのでしょう。しばらくすればリオルちゃんも回復してまた戦えるようになります」

「そうか…じゃあ戦えなくなるってことはないんですね?」

「えぇ、ですが体の負担が大きいのは間違いないので無理は禁物ですよ!」

 

ジョーイさんに注意されポケモンセンターの外に出る。外にはヒョウタがおり、こちらの様子を見て少し安堵したようだ。

 

「その顔を見るにもう大丈夫そうだね、倒れた時はひやひやしたよ」

「取り敢えずはですけどね…ご心配かけました」

 

だが悠長なことも言ってられない、いつ次元の異変が起きるか分からない以上ゆっくりもしてられないのだ。しかしリオルだけに戦わせるのも負担が大きすぎる、だからこそ今のカケルに必要なのは新しい仲間である。

 

「そうだ、バタバタしてて渡せなかったからね。ジムリーダーに勝った証、ジムバッジさ!」

 

『カケルは コールバッジを手に入れた!』

 

「そしてこれは餞別さ、受け取ってくれよ」

 

差し出されたものを見てカケルは目を見開く。それは決して簡単に手に入るものではないからだ、だがそれだけ信頼と期待をされているのだと知ることが出来た。なら断る理由もない。

 

「メガストーンさ、君もいずれ必要になるだろう?」

「くれるのはありがたいんですが……本当にいいんですか?」

「あぁ、あれだけ熱いバトルをしてくれた僕からのお礼も兼ねてるんだ。君はまだまだ強くなる、そんな予感がするんだ」

 

リオルのこの状態は黙っておくことにした。変に心配させる意味もないので貰えるものはありがたく貰っておくことにする。

 

『カケルは メガストーンを手に入れた!』

 

「それと、今のところ手持ちはリオル1匹だよね?特別だ、ちょっと付いておいで」

「?」

 

そのままヒョウタに連れられてクロガネシティの北東、クロガネ炭鉱博物館へと案内される。そこにいるスタッフといくつか言葉を交わしたと思ったら更に付いてくるように催促される。

 

「さて、君にこの子を渡そうと思う」

「こいつは…?!」

「チゴォ…?」

 

本日何度目か分からない驚愕、渡されたモンスターボールを投げれば可愛いらしい小型のドラゴンポケモンが姿を見せる。

 

「チゴラス…?!」

 

【チゴラス】

《ようくんポケモン》

『特性:がんじょうあご』

タイプ:いわ・ドラゴン

 

「この子の化石はカロスにいる友人から貰ってね、けど僕にはズガイドスやラムパルドがいる、だから少し困っていたんだ。それに化石から復元されるポケモンはみんな貴重だからね、変な輩に渡すより僕は君に渡したい」

「……そこまでジムリーダーに言わせて受け取らないって選択はないですね、ありがたく受け取らせてもらいます!よろしくな、チゴラス!」

「ギャウ~♪」

 

『カケルは チゴラスを受け取った!」

 

新たな仲間を携えてクロガネシティを後にする、次に向かうのはフォレストバッジがあるハクタイシティ、その前にチゴラスを鍛えつつコトブキシティに戻ることにした。

やれることは多い方がいい、そう思いながら他のトレーナーと戦いつつチゴラスの能力を確認してみれば……リオルほどではないがいいセンスを持った個体であることが分かった。

 

「そうか、お前も戦うのが好きなんだな!」

「ギャ~♪」

 

既に再戦したトレーナーのポケモンはボコボコ、クロガネシティに向かう途中でも戦ったがまたしても同じトレーナーに倒されるのは哀れである。そして生まれたばかりとは思えないほどの身のこなし、紛れもなく天性の物である。

 

「けど流石に【かみくだく】で相手に嚙みついてから【ハイパーボイス】はやり過ぎたか?」

 

やり過ぎである、そもそもゲームでも登場するトレーナーのレベル的にいいとこ

【かみつく】であろう。その上位技である【かみくだく】で相手を挟み込み逃げることのできない状況での【ハイパーボイス】、中々の鬼畜である。

 

「まぁ、チゴラスにも強くなってもらわないといけないし。今はリオルも本調子じゃ無いからな、少しの間はチゴラスに戦ってもらうことにしよう」

「ギャギャ~♪」

 

そんなこんなでたどり着いたコトブキシティ、しかし物事は簡単には進まない。北の入り口の方で何やら言い合っている声がする。何事かと近づいてみれば変な格好の輩とナナカマド博士、ヒカリとコウキが何やら揉めているようだ。

 

「だから!あんたナナカマド博士だろ?だったら今までのデータの成果を持っているんだろう?それを我々ギンガ団に渡せと言っているのだ!」

「それこそ何度も言っているだろう?お前たちのような怪しいやつらに渡すデータなどない!」

「そうよ!私たちだけじゃなくてみんなも迷惑してるんだから!」

「早くどいてくれよ!」

 

どうやらギンガ団が北の道を塞いでいるみたいだ。カケルもその先の目的地に行かなければならないので邪魔だと感じる、痺れを切らしたギンガ団の下っ端の1人が暴力行使に走ろうとしているのが目に見えた。

 

「聞き分けのねぇガキどもとジジイだなぁ…!いいから渡せって言ってるだろ!!!」

「え―――」

「「ヒカリ!!!」(先輩!!!)」

 

女子であるヒカリに手をあげようとする下っ端、だがそれを黙って見過ごすカケルではない―――

 

「おい、何女子に手を出そうとしてんだよカスどもが…!」

「カケル……くん…?」

「なんだこのガキってかいてぇえええええ??!!!」

 

ヒカリを抱き寄せると同時に手持ちから出てくるチゴラス、ヒカリと入れ替わるように出てきたチゴラスの頭を思いっきりぶん殴り痛みに悶えるギンガ団の下っ端。すかさずヒカリをコウキに預け、怒りの形相で下っ端たちを睨みつける。

 

「おい、出せよ」

「はぁ?!お前何をいって―――」

「いいから出せっつってんだよポケモンを、トレーナーなんだろう…?」

 

カケルの声に呼応するように出てくるリオルと前に出るチゴラス、リオルは万全ではないはずだがその身に波動を滾らせ臨戦態勢へと移り、チゴラスは前に出てヒカリ、コウキ、ナナカマド博士を守るように立ちふさがった。

 

「ここで俺がお前らを殴っても同類になるだけだ、だからバトルで叩きのめす」

「こんのガキが……!」

「大人を舐めてると痛い目見るってとこ教えてやるよ!」

 

『ギンガ団のしたっぱが 勝負を仕掛けてきた!』

 

「ニャア!」

「プー!」』

 

【ニャルマー】

《ねこかぶりポケモン》

『特性:じゅうなん』

タイプ:ノーマル

 

【スカンプー】

《スカンクポケモン》

『特性:あくしゅう』

タイプ:どく・あく

 

「先輩、俺も行きます」

「了解、叩き潰すぞコウキくん」

 

初めてのダブルバトル、取り敢えず不調のリオルを戻しチゴラスで勝負を仕掛ける。相方のコウキは新しく成長した相棒を繰り出すようだ。

 

「行くぞモウカザル!」

「ウキャア…!」

 

【モウカザル】

《やんちゃポケモン》

『特性:もうか』

タイプ:ほのお・かくとう

 

コウキの怒りに反応するように体の炎を滾らせえるモウカザル。一度リオルを見ているせいかどことなく炎のオーラが波動のようにうねっており、怒りもテンション最高潮のようだ。

 

「女子に手を出すような奴らに負けねぇよ」

「ヒカリ先輩を殴ろうとしたこと後悔させてやる…!」

「調子に乗ってんじゃねぇ!」

「俺らギンガ団を舐めるな!!!」

 

「先手必勝!ニャルマー【ひっかく】だ!」

「負けてらんねぇなァ【アシッドボム】!」

 

ニャルマーは【ひっかく】、スカンプーは【アシッドボム】でカケル達に攻撃してくる。しかしモウカザルは技が放たれてから避け、チゴラスは大きく横に移動して避ける。

そのままモウカザルは拳に炎を纏わせて技を繰り出し、チゴラスは口元にエネルギーを溜めて撃つ。

 

「【マッハパンチ】!」

「【ハイパーボイス】!」

 

炎を纏った【マッハパンチ】はニャルマーに、【ハイパーボイス】はスカンプーに直撃する。見たところいいダメージを与えたようだが倒れるまでには至らない。

自分たちの攻撃は当たらず腹が立つ子供たちの攻撃は当たったようでかなり腹を立てているしたっぱ2人、たった1回の攻防でここまで腹を立てることが出来るのもかなり

沸点が低い証拠である。

 

「なんだよなんだよ!俺らの攻撃あたんねーじゃん!!!」

「なんだ、1回攻撃当てられただけで駄々をこねてるのか?あーやだやだ、お前らみたいな大人になりたくないもんだな!!!」

「同感です」

「ガキ共がぁ……!」

「こうなったら()()()()()()()()()を使ってやる!副作用なんか知らねえよ!!!」

 

ここぞとばかりに更に煽るカケル達。更に頭に血が上る下っ端たちが取り出したのは怪しげな薬、ケミカルな見た目をしたピンク色の液体がチャポチャポと注射器の中で揺れているのが分かる。

それを見たカケルは嫌な予感が走る、あれを打たせてはダメだ―――!

 

「今更焦っても遅いんだよ!我らギンガ団を馬鹿にしたことを後悔しやがれ!!!」

「なんなの…?あいつら何をしようとしているの?!」

「分からぬ…!だがいいものではないのは確かだ!」

 

“それ”をニャルマーとスカンプーにブスリと刺し入れる。瞬間、体に異変が起きる2匹、一回りも二回りも大きくなりながら顔つきもドンドン厳つく、険しくなっていく。

10秒程だろうか、2匹は既にニャルマーとスカンプーではない。

 

「ニャウ……!」

「スカァ……!」

 

【ブニャット】

《とらねこポケモン》

『特性:あついしぼう』

タイプ:ノーマル

 

【スカタンク】

《スカンクポケモン》

『特性:ゆうばく』

タイプ:どく・あく

 

「ポケモンを強制的に進化させる薬…?!」

「お前ら何をしておるのだ!自身に見合ってないレベルで進化などどれほど危険なことか!」

「関係ないね!あんたがさっさと研究の成果を渡さないのがいけないんだ!」

 

ギンガ団はお構いなしといった風に喋り続ける。カケルはブニャットとスカタンクを見るが明らかに雰囲気が普通ではない、息を荒くして2匹とも今にもこちらにとびかかりそうになっていた。

 

「さぁやれブニャット!馬鹿にされた仕返しをするのだ!」

「そしてお前らのポケモンも博士の成果も我らが頂く!」

「なんなのギンガ団って…!こんなこと普通じゃないわ!」

 

ヒカリも顔をしかめて後ずさる。だがここで引き下がるカケルではない、そしてコウキもだ。

チゴラスは歯をむき出しにして、モウカザルは拳に燃え盛る火炎を宿してギンガ団のポケモンを見据える。

 

「上等だ。チゴラス、絶対勝つぞ」

「いけるなモウカザル!ポケモンを大事にできないやつらになんか負けないぞ!!!」

「進化もしてないポケモンが進化後に勝てるかよ!」

「そんなことも分からないなんてな!」

 

チゴラスは【ロックブラスト】を放ち、スカタンクを狙う。コウキとモウカザルもその意図を汲んだようでブニャットと対峙する、そしてモウカザルは【かわらわり】を使いブニャットを狙う。

 

「へっへっへ…!そんな攻撃効かねえよ!」

「反撃させてもらうぜ、【ベノムショック】だスカタンク!」

「こっちも行くぞブニャット!【きりさく】だ!」

 

やはり余り効いていないようだ。そしてお返しとばかりに飛んでくる【ベノムショック】と【きりさく】、スカタンクの攻撃は【ロックブラスト】で生み出した岩を【アイアンテール】で弾き飛ばし、ブニャットの攻撃は【つばめがえし】で受け止める。

スカタンクの目の前には岩が飛んできており数秒ではあるが視界が遮られる。その間に【ロックカット】を発動してすばやさをあげるチゴラス、即座に横に移動して横っ腹にスピードを生かした飛び蹴りをぶちかましてブニャットに叩きつける。

意識外から飛んできたスカタンクに対応できずにぶつかり合うブニャット、ぶつかる寸前に離れて距離を取ったモウカザルは炎を纏った【みだれひっかき】でスカタンクを攻撃する。するとどうだろうか―――

 

 

ドゴーンッ!!!

 

 

っとブニャットを巻き添えにして特性:ゆうばくが発動して起爆されてしまう。爆発が収まった後を見れば目を回しているブニャットとスカタンクが居た。

 

「どうやら進化後の変化に適応出来てなかったみたいだな、動き出しがあめぇよ」

「早くボールに戻してあげなよ、可哀そうだし」

 

進化後のポケモンをものともしない度胸とその行動力、そして実行が出来る実力は類を見ない程のものだ。そしてダブル主人公は軽く顔を見合わせて拳を合わせ合う、これぐらいは出来て当然とばかりにお互いニヤリと笑ってポケモンをボールにしまう。

 

「凄い…!なんてコンビネーションなの!」

「トレーナーになって数日しか経ってないのにこの実力、将来が楽しみじゃな…!」

「お、俺たちのポケモンが…?!」

「進化前にこうもあっさりやられるなんて?!」

 

そして対するギンガ団は顔面蒼白、薬を使ってドーピングした挙句に碌な指示も出来ずにあっさりやられてしまった。それも進化後に変化した特性を利用されての同時撃破、プライドはズタズタである。

 

「くそ…!覚えてろよガキ共!」

「次はこうはいかないからな!」

「二度と来るな」

 

通せんぼうをしていた方にダッシュで逃げるしたっぱ。カケルはその姿が見えなくなるまでその場所を見つめ、居なくなったのを確認したのちにヒカリたちの方を向き話しかける。

 

「よかった、大丈夫そうだな」

「うん!ありがとうカケル!コウキくん!」

「助かったぞカケル、コウキよ。おかげで研究の成果も奪われずに済んだ」

 

しかしコウキは余りいい顔をしていなかった、少し険しそうにして先ほどのバトルを反省しているようだ。

 

「さっきのバトルは先輩にほとんど合わせて貰っちゃったので、もっと頑張らないと…!」

「そんな気を落とす必要もないぞコウキ、そもそもトレーナーになったのもここ数日の話なのだからな。あそこまで出来れば上出来だと儂は思うがね」

 

「そうよ!コウキくんもかっこよかったわ!」

「そ、そうですか?///」

 

そんな話をしながら更に冒険を続けるカケル、ヒカリたちは一度研究所に戻るようだ。コトブキシティを後にして次に目指すのはハクタイシティ、新たな仲間を携えて次の街へと旅立った。

 

そしてそのバトルを見ていた金髪の少年の視線に気づくことなく次の街へと向かっていった。

 

To Be Continued

 

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