最新バージョンなくせして10年ぐらいネタが古いマインクラフト 作:Renard
リトルメイドMOD、というのがこの世界には適用されている。
言葉通りプレイヤーよりも小さい見た目のメイドさんがワールドにスポーンするようになる、というMODだ。
愛らしい見た目のメイドさんたちと一緒に冒険することができる、ソロプレイヤーに安らぎと潤いを与えてくれるのだ。
このメイドさんたちはケーキが好きで、ケーキを与えてくれたプレイヤーに仕えるようになるのだが、どうやら『CAKE』はそんなメイドさんたちの体質などをモンスターに移すヒロブライン製の特殊なポーション『ケーキのポーション』によって擬人化したモンスターたちが集う特別学科、なのらしい。
いろいろと突っ込みたいところはあるが……そういうものなのだと受け入れておいた方がいいのだろう。
そんな学科『CAKE』の使命は最新バージョン・MOD等のクラフターたちの新技術の情報を諜報したり、モンスターにとって有害かつ通常の手段では対処不可能なレベルの武装をしたクラフターの暗殺などなど……
通常科目のモンスターたちでは対処のできないクラフターへの対応を行う、エリート集団であると同時に、ハニートラップを行うこちらの世界におけるくノ一的な存在になることを目標として設立されたのだとか。
「そんなプロ専用の科目を、俺に?」
「うん。君なら適役だと思ってね」
「いやいや、無理ですって」
「そんなことはないと思っているよ。転生者としての君の持つ知識は有用だと確信しているんだ」
明らかな高望みだろう。
自分は教職員になれるような器ではないし、ましてやプロ集団の先生になんてなれるはずもない。
そんな才能があったなら、前世の世界でもうちょっと良い生き方ができていたはずだ。
「別にそんな大それた技術は必要ないんだよ。必要なのは……『常識』」
「常識?」
「彼女たちが『CAKE』として成長できているかどうかをその身を以て確かめる。彼女たちの魅力を高めるための砥石になってほしいんだ」
「それって体のいい実験体じゃあ?」
「私は他のクラフターのような常識はなくってね。君のような『非常識』に足を踏入れた経験のある常識を持ち合わせたクラフターなら、任せられると思っているよ」
「……」
「実験体、というよりも……彼氏役、かな。彼女たちがきちんと君の心を動かせるほどに成長できるように、傍に置いておきたいんだよ。成長するのは彼女たち自身。君は傍で見ているだけでいいんだ」
ヒロブラインは微笑みながらそう言い、分身の一人に淹れさせたホットミルクを飲む。
俺もホットミルクを飲みながら、契約書を何度も何度も読み直す。
あんなことを言っているが、それが本音なのかどうかは疑わしいところだからだ。
相手は公式が認める都市伝説。その本心は俺が想像できるよりももっと高度な次元に存在しているかもしれないと考えるべきだろう。
俺の考えの一歩先は確実に読まれていると考えて行動するべきだろう。
だからこそ、実質的にこれにサインすること自体は確定しているのだが。
だって逃げられると思えないからな!!!
「──ついに、来てしまった」
俺の先生としての初業務。
生徒たちとの授業だ。
ヒロブラインから授業用の教材などは貰ってきたとはいえ、それでも不安なことは不安なのだ。
いくら覚悟を決めても、この扉の先にいるのはモンスター。クラフターの敵だ。
ヒロブラインだからこそ、襲われなかったような存在を俺みたいな元クラフターが引き追っていいのかどうか……
「いや、覚悟を決めろ……!」
授業開始の鐘の音が鳴り、その音で気合を入れなおした俺は教室の扉に手を──。
「おはようございま『ドカーン!!』……ゑ??」
「うおおおおいいッ!!? クリーパーお前、なんだ今の爆発は!!?」
「ふへへえ、ちょっと興味で先輩から10倍TNTを貰って、ね☆」
「そんなのをここでぶっ放すな!! アホか!!」
「でもさ、風通しがよくなったでしょ? ふへへ、春風が気持ちいいよお~?」
「同時に日当たりも良好になったわよ!! 夜が明けたら大惨事待ったなしだからねこれ!!?」
「…………」
いきなり壁の発破解体が執り行われた教室の中で、悪びれない様子を隠さない緑色のフードを被った少女は気味の悪めな笑い声をこぼしながら、廊下と窓側の壁が爆ぜ消えた教室に流れる爽やかな春風を浴びながら、恍惚とした表情をしながら横に倒れていた。
ああ、お前はそういうモンスターだよな。
絶対アレがクリーパーなんだろうなという言葉のいらない信頼感がある。
10倍TNTとかいう聞き捨てならないやばい言葉は聞こえたものの、あの我が道を往くスタイルのモンスターはクリーパーぐらいなものだ。
というかこの世界、TNTの種類がかなり豊富な可能性がないか?
下手をしたら溶岩TNTとか核TNTがあるなこの世界。
クラフターの方は技術の公開を決してしないでほしい。こんなのに技術が行き渡ったら世界の崩壊待ったなしだぞ。
「あの……」
「うわっ!?」
「あ、驚かせたなら、すみません。あなたが、ヒロブライン校長が言っていた、私たちの新たな担任の先生、ですよね? 私はエンダーマン、です」
「エンダーマン……、……!?」
そう自らを名乗った長身黒髪紫目でシャイめな女は確かに属性だけを見ればエンダーマンと認識できそうだが、その腰につけていた武器に非常に目がいった。
作りは木製、それはよいにしても全体的に大きめで、剣にしては反りがある。
脳裏によぎったのは、とある実況者の動画シリーズで用いられたMOD。
「その、武器は……」
「あ、これですか……? 無銘刀『木偶』、です。護身用に身に着けて、います」
抜刀剣MOD! 抜刀剣MODじゃないか!!
目頭が熱くなるのを感じる。
マイクラ世界で刀をブンブン振り回せるだけでも、当時のマイクラMODの中では格別に面白かったのだ。
「君はそれを、使えるのかな?」
「……使えるかどうか、と言われると……まだ、です。もっと上達、しないと」
「そっか。応援してるよ」
「……あ、ああっ」
「?」
しっかり顔を見て応援の言葉を告げると、エンダーマンちゃんは恥ずかしいのか顔を赤く染めてプルプル震え始めた──って待て、エンダーマンは。
「そんな、顔っ、しっかり見られるなんてっ、私っ、私っ──ひゃああああ──っ!!!」
「ん、なに──てうおおお!!!?」
「エンダーマンちゃん!? テレポ連打からの刀振り回しは止めて―!」
「ああ……そっか。エンダーマンって、こういうキャラだよね」
顔を見られると、そりゃあこうなるよね。
ごめんね、クラスメイトのみんな。医療費は俺が負担するからね。
そんなことを思いながら、俺は諦観の眼差しで崩壊していく教室を眺めるのだった。
10年ぐらい前のネタで使ってほしいものがあればいくらでもどうぞ。