最新バージョンなくせして10年ぐらいネタが古いマインクラフト   作:Renard

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懐かしき世界とは裏腹にエグさを増していくクラフターを許すな

「やあ、みんなの自己紹介は終わったかな?」

「ヒロブラインさん」

「校長」

 

 出入り口のない黒板側の壁から、ヌッとヒロブラインが表れた。

 まるで影が伸びてくるような不気味な現れ方をカバーするかのような気さくな言葉使いだ。

 

 ヒロブラインは窓と廊下側の壁が粉々になった教室を見る。

 

「これはこれは……また派手にやったねえ、クリーパーでしょ、これ」

「えへへ、どうですか、この解放感は!」

「なんで褒めてくれると思ってるんだ」

「うーん……初心者クラフター相手だと威力過多だし、上級クラフター相手だとこれでも対処できない場合があるから……31点ぐらいかな?」

「ひどい!?」

 

 むしろなんでそこまで点数が入ってるんだコイツに……?

 

 ゾンビも同じことを思ったのか、俺と視線が合った時に理解したような頷きをしてくれた。

 

「さて、いきなりで悪いけどー―君たちCAKEには最初の実習に取り掛かってもらいたいんだ」

「「「「「「!」」」」」」

「最初の、実習……って、それってつまり」

「ああ。――クラフターの殺害、君たちの最初の授業は、実践しながらのレクチャーになるよ」

 

 ヒロブラインはそういいながら、木の棒をブラックストーン製の黒板に充てると、スッとイラストが黒板に浮かび上がった。

 

 イラストには1人のクラフターと、背後に村の畑並みのサイズをした建造物があった。

 

「今回の標的はこの男、名前はバイモ。背後にあるのは経験値トラップだ」

「経験値トラップ……これが?」

「ああ。この男が開発した、新型の経験値トラップになる」

 

 その言葉を聞いて、教室内の雰囲気が一気に重たい感じになった気がした。

 モンスターたちにとって、経験値トラップ……つまり、モンスタートラップは『破壊すべき対象』だ。

 

 あそこにスポーンしたら最後、クラフターによって生きることも死ぬことも管理されるというモンスターにとって存在意義を否定されかねない悪魔の装置なのだとヒロブラインからあらかじめ聞いていた。

 

 しかし、経験値トラップにしては……ずいぶんと小型だ。

 俺のよく知る経験値トラップとはつまり、トラップタワーのことを指し、高いところからモンスターを落とすというレッドストーンを用いないシンプルなシステムで構成されたもので、落下死を狙う以上施設に高さをとらないといけないという点があった。

 

 圧殺式のトラップなども知っているが、それを効率的に回すにはスポーンブロックが必要になる。

 このイラストの背景に映る施設にはそんなブロックは存在しない。

 

 見たことのない形の経験値トラップだった。

 一階部分が存在しない、吹き抜けの構造で二階部分でモンスターを処理するのだろうがそれにしても小さすぎる。

 

「新型なんて……どんなトラップなんですか?」

「ああ。アレイ苗床式経験値トラップだそうだ」

「待ってください」

 

 いろいろとマイクラで聞かない単語が出てきたんだが……!?

 

「動揺するのも無理はない。これは新たにクラフターの中で流通され始めた『虫食いのポーション』と呼ばれる薬品を用いて行われるきわめて最新的なトラップなんだ」

「虫食いのポーション、ですか……!?」

 

「知っている、の? シルバーフィッシュ、ちゃん?」

「……はい、私たちシルバーフィッシュを寄生することができるポーション、と聞いています。一族の中でも知っているものが限られる秘伝のポーションです。なんでそんなものがクラフターに……!」

 

 恐らくは俺も知らないバージョン、最新バージョンで誕生したポーションなのだろう。

 どうやら最新バージョンにアップデートされると、そのアップデートによって追加されたアイテムなどの知識は然るべきところは保有している()()()()()、というのが俺の見解だ。

 

 村こそ見つけられなくて完全な立証こそできていないが、過去に村に赴き製図家から地図を買ったクラフターの手記を見つけると「つい最近までこんなことはなかったのに」というバージョンの境目らしき情報が見て取れたことがある。

 

 どうやらクラフター以外の存在が、アップデートによる記憶の改竄を受けるようだが……この話は今はしないでおこう。

 

 

 

 話は戻り、ヒロブラインは新型経験値トラップ……『アレイ苗床式経験値トラップ』の仕組みの説明を始めた。

 

「このトラップはその虫食いのポーションを用いてアレイにシルバーフィッシュを孕ませ、出産させ、生まれたシルバーフィッシュを圧殺させることで経験値を得る仕組みになっているそうだ」

「ひどいわね……」

「モンスターの命もそうだけど、アレイの命も大切にしてないじゃん! どうなってるのこれ!?」

「うん。アレイってクラフターに友好的な妖精さんでしょ? なんでそんなことになってるの?」

 

 モンスターたちの言う通りだ。

 アレイはクラフターに追従する可愛らしい青い妖精のような姿をしていて、落ちているアイテムを代わりに拾ってくれる特性がある。

 

 しかし、このトラップではモンスターのドロップアイテムの回収役になっているわけではなく、アレイはただシルバーフィッシュを産み落とすだけの倫理観ゼロの苗床になってしまっている。

 

 アレイが本来受け持っている役割を果たすことはされず、可愛がられることもないまま、ポーションによってシルバーフィッシュを産み落とし続けるだけの遺志鳴き苗床に成り変えられているのだ。

 

「許せねえな……クラフターってのは、そういう倫理観はないのか? 先生」

「……効率のためなら、倫理観なんて簡単に捨ててしまえる。それが、クラフターだよ。ゾンビちゃん」

「……そうかい」

 

 ゾンビちゃんはぶっきらぼうに言葉を返したが、その拳はぎゅっと握られていて、隠しきれない怒りがあった。

 

「この施設を報告してくれたのは、邪悪な村人についているヴェックスからだった。本来、村人側のアレイのことを慮ることはない彼らが報告してくれたという観点からも、これが『科学伯爵』他の高名なクラフターに知られるよりも前に、このトラップは早期的に破壊しておいた方がいい」

 

 ヒロブラインはそう言って、移動用のポータルをどこからともなく出現させた。

 このポータルの先に、その非道なクラフターがいるという。

 

「君たちCAKEに与える初の授業にしてミッションになる。心してかかってほしい」

「「「「「「はい!」」」」」」

「君には彼女たちの指揮をお願いするよ、頼んだよ。先生?」

 

 モンスター側にいる以上、俺もモンスターの視点でクラフターと戦わなくてはならない。

 その事実を改めて知った俺は、その覚悟を受け止めて、ヒロブラインに告げる。

 

「はい。…頑張ってみます!」

「うん、頑張ってくれたまえ!」

 

 そして、俺はモンスターたちがやる気満々でポータルに入っていく姿を見届け終わった後、持ち物を確認して……ポータルに入るのだった。

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