新説論文「ナロード国発祥の魔法使いと魔術師と魔導士の違いと成り立ち」について 作:天井 静兼
オリジナル:ファンタジー/日常
タグ:残酷な描写 論文もどき 魔法 魔法 架空 ファンタジー 未来 ダンジョン
それによってファンタジーと化した地球があったら?
じゃあ、その歴史を1000年後に専門とする教授が居て論文として発表していたら?
そんな架空の世界観による
架空の大学の
架空の教授からの架空の論文。
新説論文「ナロード国発祥の魔法使いと魔術師と魔導士の違いと成り立ち」について
N/A R3014年6月13日
著者 祇蔵丘獅水降井戸大学
ナロード国史専攻副教授 矢野 一聖
現代の人類種には1000年前ほどにやってきたナロード国の使者達の遺伝子が少しず つ交配されており、所謂ところの魔力を感知できない現代人はあまり存在しないだろう。当 時やってきた彼ら、ナロード国の使者、ここではナロード人と呼ぶ、は、その時の日本、西 暦が2025年頃で年号が令和と呼ばれた頃に突如として世界各地で中世時代のような恰 好をした集団が現れたのだ。彼らの戦闘力や技術力は当時の世界とは比べ物にならないほ ど高く、ロシア付近に偶然現れた彼らによりユーラシア大陸は真っ二つに割かれてしまっ ている。結果戦争を続けるのはまずいと感じた世界政府は一旦和平交渉に移行し、全面的に 反撃はするがこちら側から攻撃はしないと双方で約束を結ぶことに成功した。彼らには魔 力というものが備わっており、遥か遠くの銀河に存在するという惑星から遥々と魔法と呼 ばれる技術を用いてこの地球に現れたのだ。(正確には名称が異なるが当時の地球人には理 解できなかった)
理由を尋ねると、どうやら地球にはダンジョンとよばれる、魔力を生み出しながら、星に寄 生する無機物と有機物が混ざった超巨大生命体の種が既に襲来しており、10年後には大 気中に魔力が混ざり環境が変わってしまい、さらに10年経過したあたりでそのダンジョンは地上に建築的構造体として顔を見せることだろうとナロード国の研究で発覚したためである。(直接の原因はナロード国にいたといわれる魔王と呼ばれる独裁者が住まうダンジ ョンを勇者と呼ばれる軍人が破壊したことである。その際に独自の特殊機構をさらに改造 した種子バージ砲によりダンジョン種が宇宙に飛来し、銀河間を高速で飛ぶ様子が確認で きた。その責任という罪滅ぼしのために各国有数の魔力使用者が地球を慣らしに到来した) 現在では地球上に住まう人類の99.98%にはナロード人の遺伝情報が刻まれており、そ の大半は魔力を行使することができ、何らかの戦闘・生活職についているのである。
本題に進もう。その職はもともとナロード人が持っていた特性(以下「ジョブ」と言う) から大幅に種類を増やしており、ナロード人は「剣士」「神官」「魔法使い」「商人」「射手」 の5つのジョブしかなかったが、この1000年の間に30職ほどに派生・複合・進化して いる。その中でも私が取り分け気になったのが「魔法使い」からの派生職である。「魔法使 い」系統(以下「魔法職」と言う)は、それらの派生だけで、過半数である15職ほど存在 する。純粋な魔法職だけでも6職もいるのだ。
そこで我々はどのように旧人類から進化を遂げ、ごく自然に魔力を行使できるようになっ たのか。また、同じ魔力を行使する職でありながら、ここまでバリエーションを増やすこと ができたのか。その謎について順序を得て、解き明かす様子を述べたい。
最初に現人類が旧人類とどのように異なっているかを比較したい。現人類はただ単に人 間とは呼ばれておらず、旧人類と姿かたちが似通っている者たちを一般的に「純人」と呼ぶ。 理由は、やってきたナロード人には旧人類と比べて特異な見た目をした人類種が複数人お り、その遺伝子と魔力のある環境に適応をした結果、旧人類の中で大まかに分類されていた
「白色人種、黒色人種、黄色人種」などの括りは機能をしなくなったのだ。生体機能にも差 が生じほとんど別種と化してしまった。例を出すとすれば「森人」と呼ばれる耳の長い人種 が存在する。彼らは旧人類より遥かに長寿で300年程度生きることができる。また、旧人 類と比べれば純人は寿命が長く、120~140年は余裕で生きるのだ。姿が似通っている 純人でさえも、体内の構造は旧人類種とは異なっている。そこで最も大きい差異として捉え られたのが、生まれつき体内に魔石という魔力(以下「エーテル」と言う)を発生させる器 官を有しているかそうでないかだ。純人を含め現在の人類には肺と心臓の間を繋ぐように して「魔石」と呼ばれる器官が備わっている。呼気により空気中に含まれるエーテル、体外 のものを指す「マナ」を体内に取り込み、すぐ近くにある魔石で体内エーテルである「オド」 へと変換しエーテルの属性・濃度を整えたのちに、心臓へと送り、体中を駆け巡る血流と同 じように流れ、全身の細胞へと蓄えられる。このとき、体内で生成するオドの属性・質・量 などは生まれつき持っている体内魔石の性能で決まってしまう。そのため、優秀な魔法使い となれるのは魔石の才能に恵まれた者だったのだ。ちなみにオドには属性というものがあり、有名な「炎属性・水属性・雷属性・風属性」、大地の力を持つが地味な「地属性」、当時 の人類には難解すぎた「影属性・波属性」があり、マナは基本的に「無属性」である。同じ魔法使い でも使える魔法の効果は生まれ持った属性しか使えず、属性に恵まれたものにしか富や権力を得ることはできなかったとされている。
魔法使いは魔法を行使するためには、必ず3つのステップを踏む。呼気を用いて体内にオドを生成する。
生成したオドを手などの作用点に集中させる。そして、その状態を維持したまま、決められ た文言(通称呪文と呼ばれるもの)を一言一句間違えずに唱える。そうすることで初めて魔 法を行使することができるのだ。正直なところ、当時の各国政府は思ったに違いない。これ では軍隊としての運用はあまりにも難しいのではないか、と。実際その通りで、限られた人 しか使えず、一つの魔法的行動をするたびにその場で動けなくなるようなものは兵士とし ては使えないため、すぐに代替案の研究が行われた。行われた当時はもう既にダンジョンは 起動しており、ダンジョン内で発生する魔力生物(通称「魔物」)を定期的に討伐しなけれ ば、いずれ地上に面しているダンジョンの穴から魔物があふれる様に出てきてしまう。そう ならないためにも、新しい職業(ここでの意味は旧人類での労働する方の職業を指す)とし て「魔窟討伐兵」という金銭を稼ぎつつ社会に貢献できる仕組みを立案したのだ。ただ名称 についてはあまり定着しなかったが、民間では単純に冒険者というように呼ばれていた。呪 文を詠唱中の動けない魔法使いを剣士が守りつつ、魔物の視線を射手が動かし、何とかして 魔法を命中させて倒すというように、1グループにつき3~5人程度のまとまりで動くかたちが自然と身についていった。民間での魔物討伐が安定してから20年ほどたった時、ついに新しい魔法職が完成したのだ。魔導士である。
魔導士とはダンジョン内で魔物を倒し、その体内から発見される魔石やダンジョン内で たまに鉱物として生成されている魔石などを杖や剣などに装着できるように加工した道具、 魔具を用いた新しい技術を行使する魔法職である。仕組みとしては、既存の魔法使い同様に まずは体内に呼気でマナエーテルを取り入れる。それを自身の体内魔石ではなく、体外の外 付け魔石に送り込み、オドエーテルを生成。
そこから魔導士版の魔法、「魔導」を行使できる。体内の魔石性能に左右されず、決まった 属性・質・量を生成できるため、各地で軍隊が量産されたのだ。加えて魔導士は詠唱を必要としない。魔具に1~5種類ほどの魔法陣と呼ばれる詠唱のかわりになる媒体が仕込まれている。つまり魔法使いとは違い、単独で動きながら魔法的行動による攻撃・防御を取れてしまうのだ。魔導士必須品の魔具は旧人類でいうところの銃に相当し、誰でも戦士に、兵士 にさせてしまう悪魔の道具だったのかもしれない。急激に戦力や資源が整いだした各国は 愚かにも第四次世界大戦を勃発させてしまう。戦争の終結にはおよそ100年もの時間を要した。
ここまで長引いた原因は4つ存在し、まず一つは、神官の派生職である僧侶による治療性能が優秀すぎたため、大けがをしても死なないかぎり翌日には戦場に復帰できてしまうのだ。さらに、戦争の後半に進むほど派生職の開拓が進み、ある3つの戦犯ともいえる派生職が、戦争による狂気の産物がうみだされてしまった。それは、剣士派生の「狂戦士」、神官派生の「死霊術師」、魔法使い派生の「禁術使い」である。戦場には戦い続けて、敵と味方の判別が付かなくなり、自国を忘れてしまった狂人である狂戦士が多くいた。狂戦士の最初 の能力は脳内成分の過剰分泌を誘発させ、恐怖や痛みを軽減できるというものだったが、その結果、繰り返す戦闘による成分誘発が脳にダメージを発生させ、戦う廃人ができあがってしまった。死者が絶えず作られていく戦場に対し、悪魔的発想により生まれた死霊術師は更なる猛威を振るった。もともと派生元の神官には人々を癒す祈りと1日に1回のみ奇跡による蘇生が使えた。それの祈りの要素と奇跡の要素を変換、肉体の修復無し、記憶の修復無し、意識の修復なし、魂と呼ばれる情報要素のみを蘇生させるという倫理感のない条件を設定し使えるようにした蘇生もどき。死霊術を使えるようにしたのだ。もちろん、祈りという にはあまりに邪悪で、奇跡というには起こしてはならない地獄の光景であったと後世まで 語り繋がれている。
魔導士の次に現れた第3の派生職は第四次世界大戦終結の英雄職にして、数多の国を滅ぼした重罪職といわれる「禁術使い」 禁術使いは魔法を行使する際にエーテルを基本消費しない。正確にはエーテルを使うのではなく、エーテルの入った器、つまり人体や魔石そのものを消費するのだ。その魔法の名前は「代償魔法」。
実例として、この戦争を終結させるためには、戦い続ける生ける屍の狂戦士と死んでなお戦わされる死霊達を一息に葬り去り、加速する地獄に終止符を打つ役が必要だった。そのため世界初にして世界最後の禁術使いは人体の魔石と魔物に対する研 究と実験を重ね、ついに「自分の国と自分の知らない国にある全ての魔石を消費して戦場に 誰も近づけない大穴を開ける代償魔法」を唱えた。だが条件の魔石だけではエーテルが足りず、その場にあったオドを全身に蓄えた器、すなわち人体を全消費。一夜にして、主要国家以外の国は土地を残して、その地域にあったダンジョンと空気と生物を消費し、戦場に純粋なエーテル爆風を起こし、戦争に出れる戦力を全て粉砕した。
また当時はその禁術使い以外は知らなかったが、体内の魔石を切除されても魔力を生成できなくなり、寿命が縮むくらいで生存には問題がないとされている。現在この禁術使いという職に就くことは禁じられている。代償魔法の指定範囲は無限大、必ず自身を代償にする必要もあるため、使用自体も禁止されている。また、禁術使いに就くにはそもそも何らかの悪魔や邪神などと契約を結んでいる必要がある。
ここまででいえるのは、魔法使いでは自身の体内魔石性能と詠唱、魔導士には体外魔石性能と魔法陣、禁術使いはエーテルを含んでいる生物なら何でも(代償と効果だけ決まっていれば発動)となっている。どの職は自他問わずに魔石を行使してオドエーテルを使用し魔法的行動を起こしているが、進化の流れでおかしな魔法職が誕生する。魔石を使用しない魔法職だ。
第4の魔法使い派生職は「脳筋術師」だ。もともとは体内に魔石を有しない少数派の人類が生み出した。構成としては魔法使いの詠唱、魔導士の魔法陣、禁術使いが持っていた契約 によるエーテルの変換の3つの要素を組み合わせたものとなっている。残された旧人類の 子孫が最後に縫ったものは魔石でも魔具でも悪魔でもなく、己の鍛え上げた筋肉だったのだ。自身でエーテルを生み出せない体には空気中に存在するマナエーテルでさえ、猛毒になり得たが、逆に鍛錬による筋力増加には作用していた。迫害されていた旧人類の子孫にいた とあるボディービルダーはある日夢の中で出会ったという筋肉の神を信仰し始めた。その ため、己の筋肉の隆起による溝を魔法陣、掛け声を詠唱、信仰を契約と、偶然の重なりにより体内魔石が無くても魔法を行使できる脳筋術師が誕生したのだ。正直なところ、これがここまでの流れで最もファンタジーに近いと言われている。他は、科学的かつ論理的な研究を行って作られたものに対してだが。
最後につい100年ほど前に確立したばかりの、最新の魔法職である「魔術師」について 紹介しよう。魔術師は詠唱も魔法陣も何らかの生物や信仰による契約も、もちろん筋肉も必 要としない。さらに自身の魔石も体外の魔石も必要としない。魔術といわれる新しい体系の 魔法的行動には大気に含まれるマナエーテルしか使用しない。そのかわりに頭を鍛える必 要と何らかの自分で決めた出力のための動作が必要となる。手順としては、マナエーテルの 満たされている空間にて脳内で検証された魔術現象に対応する術式を入力演算、演算が終 了次第あらかじめ指定した動作を行う、出力完了である。本人の頭の性能が良いほど同時に 行使できる魔術の数も増えていく。欠点としてマナエーテルが充分に満ちていない空間で は行使することができないという点が挙げられる。また、他の魔法職は詠唱や発動に失敗しても不発で終わるだけだが、魔術は本人の身体に少なくないダメージを与えることで知られている。
結論としては、魔法使いを始める魔法職は魔力を行使できるようになった人類が目先の 欲望に駆られてしまったために起きた戦争や行使できない人に対する迫害の結果によって 人類史が発展するための礎となっていることがわかる。魔法使いがいなければ初期の人類は魔物に対して有効打を当てられなかっただろうし、魔導士がいなければダンジョン産の 素材を利用した新しい文明は築かれなかっただろうし、禁術使いがいなければ今頃まで戦争は続いていたかもしれなかった。脳筋術師がいなければ、魔術師の触媒としてのヒントは 得られなかったのかもしれにない。また、新しい魔法職が誕生するとき、我々人類は新たな 発展を遂げるであろう。
個人的には禁術使いの構成を変え、範囲を自身だけに留めれば通常職として運用できると考えている。しかし、実験と研究を行うためにはその職につかないことには不可能だ。だが、禁術使いは職に就いただけで死刑という重すぎる刑罰がある。
そこで一つ思いついたものがある。それは剣士派生職では最も新しい「自由人」だ。
自由人はあらゆる職業の能力を廉価版として使用することができる。自由人自体ここ数十年で発生した職であるためまだまだ検証が足りないが試してみる価値があると考えている。魔術師としての能力を捨てることは、もったいないが死ぬまでに一度試すつもりだ。