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時間は風紀委員会と対策委員会が衝突する少し前。
ある建物の一室。そこの窓際に、黒服は立って待っていた。窓の外を眺める黒服は、何かに気が付いたかのように振り返る。
「これはこれは……お待ちしておりましたよ、暁のホルス。いや、小鳥遊ホシノさんでしたよね?」
その言葉と共に、ホシノが部屋に入ってくる。
「今度は何の用なの?」
「クックック……状況が変わりましてね。この度はアビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんに、ご提案をしようと思いまして」
「ふざけるな!!」
「まぁまぁ、落ち着いてください。貴女がきっと拒まない提案を一つ」
問いかけに答える黒服。怒るホシノ。そんなやりとりの中、黒服は一枚の書類をホシノに渡す。
「興味深い提案だと思いますよ?クックック……」
「私がこれを拒まない理由は?」
「実を言うと、貴女が拒んでも別に問題はないのです。別の方にこの契約を持ちかけるだけですので」
「なっ……!!」
「例えば……砂狼シロコさん。彼女はかなりの神秘をお持ちですね?」
「……一つ疑問がある。なんで、お前は昔からナツミ先輩を避ける?確実に私やシロコちゃんなんかよりも力のある神秘。あれをお前が逃すなんて思えない」
そう問いかけるホシノ。それと同時に、弱点を探るべく思考する。
(何でナツミ先輩に手を出さないのか……それがわかれば、何かしらこいつをどうにかする一手が見つかるかもしれない……)
「クックック……あの方は確かに素晴らしい。ですが、手を出せない理由がありましてね」
(神殿ナツミ……いえ、【
「あの方はプライドが高い。下手に刺激すれば、私など簡単に始末されるでしょう。あの神殿ナツミの伝説の一つに加えられたくはありません」
「伝説?」
「おや、知らないのですか?」
そういうと、黒服はうっとりとした様子で語り始める。
「神殿ナツミ。アビドス高校三年生にして、独立武装組織『王国』のリーダー。2年前、ゲヘナ学園を独裁していた『雷帝』に宣戦布告し、黄金の浮遊要塞をはじめとした数々の兵器を用いて、あの『雷帝』の使っていた兵器群、それの約4割を単騎で、『王国』としてなら仲間と合わせて約6割を破壊したとされます」
「『雷帝』……聞いたことだけはある」
「本当に何もご存知ないのですね?まぁいいでしょう。神殿ナツミの伝説はまだまだありますからね」
「『デカグラマトン』の3番目の預言者を旧市街地から撃退。砂漠奥地に発生した『十戒』と呼ばれる大災害級存在の抹消。独立武装組織『王国』の設立、裏社会の大企業や傭兵団の解体、現在の七囚人の内、4人の捕縛」
スラスラとナツミが起こした事を挙げていく黒服。大半はホシノが聞いたことのない情報でもあり、ホシノはそれだけナツミが規格外であった事を実感する。
「そんなに……」
「しかし学校退学後2年間、『王国』としての活動を見られなくなると、各地で『王国』の本拠地である黄金の浮遊要塞は確認されましたが、彼女自身は表舞台に出なくなりました」
(この頃に我々ゲマトリアと接触し、仲間へと加わったのですが……言わない方がよろしいでしょうね)
「消えたかと私は思っていたのですが……クックック、また表舞台に出てくるとは……」
「で、お前はそれを恐れているんだ」
「ええ、暁のホルス。かの太陽の王と事を構えれば誰もが滅ぼされてしまう。怯えるのは当然のことです」
「なら何で手を引かないの?私はあの人の近くにいる人間でもある。アビドスも今はあの人がいる土地だ」
「クックック……手は打ってありますからね……それで、どうしますか?この提案を受けるか否か」
(っ!!手は打ってある……私が頼ればナツミ先輩に何かするつもりか……?それともさっきも言ってたシロコちゃんか……?)
思案するホシノ。
「……考えさせて」
「クックック……よろしいですよ。色良い返答をお待ちしております……」
そうしてホシノは去って行った。
黒服はそれを見届けてから思案する。
(……先ほどはあのように言いましたが、彼女に手を出さない理由はもう一つありますからね……
そうして黒服は闇に消えていった。
〜ナツミside〜
アビドス砂漠で野暮用を済ませて戻ってきたナツミに待っていたのは、
「ラーメン屋爆破?便利屋を追っているゲヘナの風紀委員とアビドスの衝突?何故こんなにも問題ばかり起きる……?」
そんな報告だった。
そして、この事をシャーレ部長としてのナツミに謝罪しに電話をかけたゲヘナ学園風紀委員長空崎ヒナ。
『ごめんなさい神殿ナツミ…うちの行政官たちが勝手なことをして…』
「いや、よい。貴様は悪くないであろう、空崎ヒナ。貴様は愚かな者たちに罰を与えておるのだからな」
『それでもよ……ただでさえ貴女には大きな恩があるから……』
「ならば、貴様のところにいる身隠を余の元に戻すが良い」
『……心配しないでも彼女はよく仕事をやってくれているけど。先日も争いを収めたばかりだわ』
「なに、叱責するわけではない。先生の護衛を命じようと考えたのだ。もとより雇われ、問題ないであろう?」
『まあそうね……私の強権と万魔殿が楔をつけたいって理由で序列2位の権限を持っているけど、解雇するのは可能よ』
「ならばそうせよ。風紀委員でなければただのゲヘナ生。自由にあやつも動けよう」
『わかったわ。メトのおかげで書類仕事も一年生の頃と比べて大分分担が進んだように思えるし、風紀委員を鍛えてくれた事で平均的な強さも上がった。私も彼女に恩返しもしたいもの』
「うむ、良きにはからえ」
そう言って、ナツミは電話を切り、仕事をしつつその日を終えたのであった。
〜風紀委員side〜
「アコ、お前には2週間の謹慎、及びヒナ禁止令を命じる。自室にて仕事のみを行うように。ヒナに回さなければならない仕事は私が仲介する」
「!!!!????」
「独断専行、シャーレとの関係悪化の可能性、他校との政治的紛争の可能性、エデン条約への影響。それらを混みにした罰だ」
「そ、そんな……1週間だって耐えられないのに、2週間なんて……メト軍事顧問の鬼!悪魔!!目からビーム女!!!」
「なぜそのような幼稚な罵倒を行うのか私には理解できないが、最後以外の事実でない事を罵倒に使うのは間違っていると思うが。私に角は生えていないからな」
「そういう事じゃありませんよ!!」
現在、風紀委員会の部屋で行われているのは、今回の処遇を決める会議。
「イオリは反省文と訓練を3倍だ」
「えっ……自主ですか」
「無論私とだが。未熟なお前ではヒナの足元にも及ばないが、鍛えれば何も考えないその愚鈍な頭は状況判断程度はできるだろう」
「うぇ……辛辣……というかメト軍事顧問との訓練を3倍とか死ぬ……」
「問題ない。脆弱なお前でも死なない程度のメニューだ」
「……」
「チナツ、お前は救護班のシフトの増加だ」
「はい」
「残りはヒナが裁くだろう。私が処罰した分はこの書類に書いておいた。余分な罰を受けないよう、ヒナに渡しておけ」
そう言って出ていくメト。
(メト軍事顧問……優しいんだか厳しいんだか……それはそれとしてヒナ委員長と2週間も会えないなんて私に死ねと?)
(メト軍事顧問、ちゃんとみんなのことを把握して理解してくれてるし、優しいんだよな……あれで口悪くなければ……あと訓練がもう少し優しければ……)
(ちゃんと私の事情も把握してくれて良かったです……)
三者三様のメトへの評価。そんな事を思っていると、再びドアが開き、今度はメトと共にヒナも現れる。
「謝罪しよう。先ほどの罰は撤回だ。私は風紀委員会を抜けることになった」
「「「はぁ!!??」」」
「急にごめんなさいみんな。でも、あの神殿ナツミの要請よ」
「な、なんでですか!罰なら私が!!メト軍事顧問が受けなくても!!」
「これは罰ではない。褒美だ。我が王はやはり全てを理解している」
「えっと……どういうこと?」
「神殿ナツミの要請によって、メトを先生の護衛につけることになった。メトはそれを喜んで承認したわ。でも、風紀委員会軍事顧問のままだとトリニティとの関係や、政治問題を起こすかもしれない。だから、解雇よ」
「なるほど……」
「よって、今日の事件の罰は私が決めることにするわ」
「うええー!?」
こうしてメト軍事顧問はただの身隠メトとなり、シャーレに所属することになる。
先生に一目惚れしたメトにとっては天啓と言ってもいい出来事であり、自身の望むように物事を動かしてくれるナツミに尊敬の念を強めるのだが、それは別の話。
おまけ
各ゲマトリアとナツミの印象
黒服→ナツミ 「見ていて飽きませんね……神秘が完全でしたら文句無しの逸材でした」
ナツミ→黒服 「愉快な道化よな。余を楽しませるが良い。大抵のことならば赦してやろうぞ」
マエストロ→ナツミ 「なんでも金色にするのはいただけないが、発想や考えは合うな」
ナツミ→マエストロ 「芸術家としては上々よな。精進せよ」
ゴルコンダ→ナツミ 「素晴らしい記号!古のテキスト!素晴らしい!!」
ナツミ→ゴルコンダ 「意味を好み、物語を見出すか。余の物語を読むと良いぞ?」
デカルコマニー→ナツミ 「そういうこった!」
ナツミ→デカルコマニー 「ええい!黙らんか!鬱陶しいわ!」
ベアトリーチェ→ナツミ 「明確な障害ですね……排除しなければ」
ナツミ→ベアトリーチェ 「痴れ者が。疾く失せよ」
さらにおまけのフランシスと地下生活者
フランシス→ナツミ 「素晴らしき物語……完全なエンディング……しかし、それに水を差す続編とは、歓迎はしたくありませんね」
ナツミ→フランシス 「たわけ。物語の愚優は後世の批評家共の言い分だ。未来の物語は過ぎた者共には星の如き輝きよ」
地下生活者→ナツミ 「チートだ!チート!ノーカン!ノーカン!!」
ナツミ→地下生活者 「……もはや何も言うまい。滅びよ」
アビドス編後は
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