「余は彼奴と同じ組織に所属しておるからな。手を打ったと言うのも方便であろうよ」
「……………………えっ?」
ホシノは絶句した。
(あのいけ好かなく、不気味で、あらゆることを使ってこちらを騙し子供を食い物にする大人と、目の前の偉そうだけどこちらを慮ってくれる尊敬する先輩が、同じ組織の人間?
ナツミ先輩の性格や実力的に騙されているとは思えない。ならば、本当に……?)
"ナツミ、どういうこと?どうしてナツミの所属している組織がアビドス高校を陥れようとしてるの?"
「ふむ、先生よ。誤解があるようだな?」
いまだにフリーズして立ち直れないホシノの代わりに先生が聞き、それにナツミは答え始める。
「余の所属しておる組織、名をゲマトリアという。ホシノのいう黒服も所属しておるが、何も悪の組織というわけではない。黒服によると、遥か昔、キヴォトスには神を再現するためにAI開発を行う研究機関が存在しており、その研究に対して援助活動を行っていた組織が『ゲマトリア』を名乗っていたそうだ」
「なによそれ、いきなりオカルト?」
「神様を再現するAIですか〜……果たしてそんなものが実際にできるのでしょうか?」
セリカとノノミが反応する。
「さてな。そもそもその計画が頓挫し組織は解散しておる。その後、黒服達がその『ゲマトリア』という名前だけを拝借して使っているという」
「故に、過去にキヴォトスで活動していたゲマトリアと、主人公である先生と対峙している現ゲマトリアは別物であるのだ」
"……前置き必要あった?"
「ホシノが固まっておるからな。順序立てて説明でもせん限り暴走でもするであろうが」
"……そっか"
「メンバーは余を含めた5人。黒服、マエストロ、ゴルコンダ、デカルコマニー、マダム、そして余ことアモンだ」
"アモンっていうのがナツミの活動名なの?あと、6人いるけど"
「然り。6人の名を上げたのは、ゴルコンダとデカルコマニーが一心同体だからだ。奴らは2人で1人。まぁいずれ会えばわかろうよ」
「研究・芸術・文学・など各々のスタンスは異なるが、キヴォトスの『神秘の探求・研究』を行い、その果ての『崇高』を目指す組織である。そのためならば多くの生徒を利用し追い詰める事も、素材としてみることも厭わない奴らが多いな」
"それはっ!"
「話を最後まで聞け。黒服とマダムは生徒に積極的に手を出しておるようだが、他はそうでもない。あくまで生徒を実験に使うことにどうも思わんだけで、使わぬ奴もいるのだ」
「例えばマエストロは、自身の芸術作品を作りたいだけ。作品が牙を向くことはあろうが、本人は他者を積極的に害する気質な者ではない。ゴルコンダ、デカルコマニーは生徒よりも怪現象の方が好みだ。故に生徒には手を出してはおらぬな」
"なるほど……でも必要ならやるんでしょ?それにマダムって……"
「語るも不快な外道よ。協定がなければ即座に誅しておるほどのな」
"協定?ナツミは黒服やマダム、他のゲマトリアに協力しているの?"
途端に空気がピリつく。対策委員会の面々も、先生も、ナツミの返答を待つ。
「答えるのならば否だ。ゲマトリアのメンバーは互いの研究に対して、不干渉を貫くという規則や協定のようなものがある。関わるとしても会議を行うか研究材料や完成品を見せ合う程度だ。つまり、余と黒服の間には協力関係も敵対関係も存在しない」
「ん……信じられない。ルールを潜り抜けてアビドスを追い詰めた組織なんだから」
「だからこそよ。大人というのはルールに縛られる。故に、絶対に手を出してはいけないラインを明文化して定めているのだ」
"それで、ナツミは?アビドスをどうするつもり?"
警戒心をむき出しにしてナツミに問いを投げかける先生。生徒を利用し、追い詰める組織の仲間だと聞いて、たとえ自分の生徒であるナツミに対しても警戒をしている。
「手は出さぬ。ゲマトリアというのは、要は大人版の学校よ。全員が同じ学校で『神秘の探究』を行い、『崇高』を目指しておるが、全員が別の部活に入っておるようなものだ。部活が違えば活動方針も方法も違う。故に、余と黒服は同じ『崇高』を目指しても、『アビドスを手に入れる』のは黒服だけの目的なのだ」
"……なるほど、段々とわかってきた"
「そしてだ。余はゲマトリアの他のメンバーとは違い、
「……本当に?」
フリーズしていたホシノが帰ってくる。
「でも、互いに不干渉なんでしょ?どうやって私たちを助けるのよ!」
「余は規則によって黒服の邪魔はできぬ。しかし、
セリカの問いに答えるナツミ。
「……どうするの?ナツミ先輩」
「ホシノ先輩!?」
「ん、ホシノ先輩……今はナツミ先輩は信用が━━」
「信用はできるよ、ナツミ先輩なら。ナツミ先輩は、自分が言ったことを曲げない。ですよね?」
ナツミの目を見て問いかけるホシノ。それに釣られるように先生もナツミの真紅の目を見る。
「うむ。余は裁定者であり絶対者。故に、余の言葉は絶対。曲げることなど赦されぬ」
「なら、信用しますよ、すくなくとも私は」
「ホシノ先輩……」
一応ホシノに認められたことを認識したナツミは、口を開く。
「先にどうする、と問うたな?貴様に示された契約に、わざと乗ってやるのだ」
「……どういうこと?」
「貴様が余にやったではないか。
「あっ!」
"……なるほど、それに乗ってカイザーが攻めてきたら、それを証拠に訴えに出る!"
「然り。奴らは足元を見ておるからな。簡単に引っかかるであろう」
「……やるよ、私は。それでみんなの力になれるなら」
「……賛成できない」
「シロコちゃん?」
「それじゃ結局ホシノ先輩が危険。人質に取られたらどうにもできない」
「何を言っておる?取り返せばよかろう。貴様らはそこのセリカで一度やっておろう」
「!」
「それとも貴様らの結束はそんなものか?たかが一企業に仲間を奪われて取り返さないと?」
「……そんなわけないじゃない!やってやるわよ!」
「ちょ、セリカちゃん!?」
やる気になったセリカと、覚悟の決まったホシノを対策委員会が必死に宥める。
「少し話し合いでもするが良いわ」
そう言って、王は離れ、対策委員会の面々はこれについてどうするかの話し合いを始めたのだった。
"……悪い生徒だね、ナツミ"
「ふん、口八丁は王としての心得であろうよ。それとも、
"……これは悪役になるのとは違う。騙すのは悪いことだよ"
「これは焚き付ける、というのだ先生よ」
"それも、悪いことだ"
「そうさな。だが、余はそれを呑み込む。王とはあるものにとっては正義であり、あるものにとっては悪である。上に立つとはそういうことよ。先生は、自身を悪者にして物事を解決するという覚悟はないのか?」
"私は、『先生』だから。常に正しくなくちゃいけない"
「そのくせあらゆる生徒の味方と述べるか。つくづく愉快なやつよ。正義とは多角的なものだ。一つの正義を取れば、対極の正義は手放さねばならぬ。
"言われなくてもね"
2人はそう言って微笑む。
「茶番よな。信念を曲げぬ者同士の話は平行線だ。せいぜい先生と衝突せん様、祈るぞ」
"そうだね。私も、ナツミが敵にならないことを祈るよ"
そう話していると、なんとか対策委員会内で話し合い、まとまったのかこちらにくる。
「私は、ナツミ先輩の案に乗る。これ以上は、私たち5人では解決できないだろうから」
「ホシノ先輩を囮にするのはちょっと嫌ですけど、ホシノ先輩の覚悟です。先生、頼みますよ〜?」
「ん……やってみせる」
「やってやるわよ!!大人の組織が生徒を利用するってんなら、私たちもナツミ先輩を利用するわ!!」
「そういうわけです。先生、ナツミ先輩。アビドスに、手を貸していただけますか?」
「よい。存分に余を利用せよ」
"うん。いいよ"
こうして、アビドスはナツミと先生の手を貸り、本格的にカイザーと黒服に抗うことを決めたのだった。
ホシノはまだ完全に騙されてないからゲマトリアにに対しての憎しみゲージもそこまで高くなくて警戒と嫌な感じに留まってますし、先生もナツミに説明されて原作ほどゲマ・即・斬ではありません。
先入観と感情にしたがってナツミを否定するとナツミに処されるから……そうならない調整が必要だったんや……
前回ナツミが謝罪してましたが、あれは本当に例外中の例外です。ナツミが本気で謝るのは彼女の在り方を曲げる行為だからです。
言葉も行動も正しいと仮定して生きているのが王としてのナツミなので。
アビドス編後は
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