「じゃーん!ホシノちゃん見てみてー!アビドス砂祭りの昔のポスター!やっと手に入れたよー!」
部屋に明るい声が響く。
「この時はまだ、オアシスが湖みたいに広がってたんだよねー。あ、このポスターは記念にあげる!遠征が長引いてるナツミちゃん達にも見せてあげたかったなー!」
緑に近い水色の髪をした生徒が、目の前で明るげに話し、自分に手に持っていたポスターを押し付けてくる。
「えへへ、すっごく綺麗でしょー?もし何か奇跡が起きたら、またこの頃みたいに人がたっくさん集まって……」
その声を遮って、喋り出す自分の喉。
「奇跡なって起きっこないですよ、先輩」
「そんなもの、ある訳ないじゃないですか。それよりも、現実を見てください!」
厳しい言葉を投げかける
「は、はう……」
「こんな砂漠のど真ん中に、もう大勢の人なんて来るはずがないでしょう!?
いつものことながら嫌になる。
「うえぇ、だってホシノちゃーん……ご、ごめんね?」
その言葉に、
「……っ。そうやってふわふわと、奇跡だの幸せだのお宝だの何だの……」
「もっとしっかりしてください!あなたはアビドスの生徒会長なんですよ!?今も宝探しに行っているあの偉そうな人とは違って!!もう少し、その肩に乗った責任を自覚したらどうなんですか!!」
この先はダメだ。早く終わって欲しい。だが、体は自分の意思に反して動く。
「こんなもの━━!!」
ビリビリッーー!!
「……」
目が覚める。いつもの夢。私の罪の証。
先生とナツミ先輩が来てから、より鮮明に見るようになった。今思えば、ナツミ先輩に対しての罪の意識が刺激されてたんだと思う。
あの日、ユメ先輩を拒絶して。つぎの日から、ユメ先輩が行方不明になって。その1週間後に、宝探しで2週間音信不通だったナツミ先輩たちが帰ってきた。
宝探しを成功させたと嬉しそうにして、ユメに伝えたいと楽しみにして。
手にした黄金でできた宝物の数々を見せて。
ユメ先輩が行方不明なのを伝えると、血相を変えて探しに行ってしまったけど。
ナツミ先輩が新しく手に入れたらしい空飛ぶ船のようなものに乗って空から探し。
生きている都市部はシスちゃんが色々な機械を使って探して。
旧市街地はエイサちゃんが探してくれて。
砂漠は私とメトちゃんの2人で探した。
でも、結果的には、私たちは間に合わなかった。
見つかったのは、行方不明から
私が、砂漠の中で、見つけてしまった。
ユメ先輩を連れ帰ってきて。胸が張り裂けそうで。
心の中に閉じこもって動かなくなった私を、ナツミ先輩はなんとか発破をかけてくれたけど。
そのナツミ先輩に当たってしまった。喪ったのは、彼女も同じだったのに。
彼女からの援助も拒絶して。
お宝も突き返して。
そのあと彼女はみんなを連れてアビドスを去っていった。使命があると言って。いくつかの金を置いて。
そこからは、酷いものだった。
ナツミ先輩たちが去って、初めて自分のしでかしたことに気がついて。
なんとか一言謝りたくて、許してもらいたくて、頑張ってみんなを探そうとしたけど、音信不通で。
ユメ先輩の手帳も見つからなくて。先輩二人をこの高校から遠ざけたのは自分だと嫌でもわかってしまって。
それでもなんとか学校を残そうと、ボロボロになりながら最低限の生徒会の仕事をして。
借金も、なんとか指名手配犯なんかを捕まえて、毎月分を返して。
ナツミ先輩の置いていってくれた金は、申し訳なくて、自分の罪の証のような気がして、使うことができなかった。
そうして、二年生になってしまった。
二年生になった後、ノノミちゃんが入学してきて。
その後、なんとかそれぞれ転校していた同級生と連絡がついて、再会もできて。
でも、一番会いたかったナツミ先輩だけは、最後まで一緒にいた同級生の彼女たちでも居場所がわからなく、行方不明になっていた。
心が折れるかとおもった。ユメ先輩を行方不明で失って。ナツミ先輩もあの時のことを謝れないまま行方不明で。
シスちゃんとエイサちゃんに、行方不明になった1週間後に口座の動きがあったから生きてはいると聞かされるまで、呆然としていたと思う。
……そういえば、メトちゃんもシスちゃんもエイサちゃんも、宝探しに行く前に転校届をユメ先輩に通してもらったって言ってた。
私には何も言わずにあの人は……でも、ナツミ先輩の退学届は受理されてなくてよかった。
おかげで、留年扱いにすることができて、まだ帰ってきてくれると信じることができた。
その後、シロコちゃんと出会って。
元同級生たちも、他の学校から支援してくれて。
廃校対策委員会を立ち上げた。
三年生になって。セリカちゃんとアヤネちゃんが入学してくれて。借金を返しながら絆を深めて。
そして、先生が来た。
先入観で嫌っていたけど、すぐに悪い大人じゃないことぐらいはわかった。
セリカちゃんを助けるのに協力してくれたっけ。
そして、先生の後に続いて、ナツミ先輩が帰ってきた。
安心すると同時に、最初に謝りたかったのに、口から出たのは恨み言。
なのに、なんだかわからないけどナツミ先輩は私たちを手伝ってくれることになって。
すごく嬉しかった。
その優しさに甘えて、自分勝手に過ごして、酷いことをしたのに謝ることもできない自分自身を嫌悪して。
それでも、ナツミ先輩が帰ってきてくれたのが嬉しくて喜んでいたら、過去の自分の不始末が這い出てきた。
……最低限しかしていなかった生徒会の仕事や借金の返済なんかは、自分に跳ね返ってきて、不備不足が目立って。それでまた自己嫌悪になって。
そんな時、いつも勧誘してきていた黒服にあの提案をされて。乗る一歩手前まで行ってしまった。
そして、ナツミ先輩に説教されて、過去に囚われて対策委員会のことは二の次だったって思い知らされた。過去のことだって、やれる事を満足に精算できていないのに。
自分の独りよがりだったんだって、気付かされた。
でも、同時に後輩たちや元同級生たち、先生やナツミ先輩が、一方的な関係ではなく、手を取り合って力を貸し合う関係だったって理解できた。
……ずっとあの時のこと、謝りたかったのに……ナツミ先輩に先に謝られちゃうなんて……ナツミ先輩は悪くないのに……悪いのは全部……
きっと、ナツミ先輩がいなかったら私はあのまま黒服の契約に乗って、取り返しのつかないことをしていたんだ。
でも、今は違う。私が知る中で最も強い先輩が、一番頼れる大人が、一番大切な後輩たちが、私を支えてくれるから。
「よし、行こうかな〜」
学校へ行く準備をして、そう独りごちる。
借金の期限まではあと5日。
先輩たちが準備を整えたら、次は私の番。
でも、私は1人じゃない。1人で戦うんじゃない。みんなで戦うから。
だから……頑張れる。
待ってなよ、黒服、カイザー。お前らの計画は、必ず阻止されるから。
壁には、修復したあの時の砂祭りのポスターが。
ベッドの脇に置かれた3つの写真立てには、『ユメ先輩と私』『一年生当時のアビドス生6人での写真』そして、『対策委員会の4人と私』が入っていた。
アビドス編後は
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