激震! 中世ヨーロッパ警察24時!!!【完結】   作:PureFighter00

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なんか予想外に多数の方が読みに来てるみたいだが、暇潰しで書き始めたので「皆んなが何読みたいか」さっぱり分からないのでゴザル。

(正直拙作の穴部瑠璃ぐらいウケないと思ってた)


豆、豆、豆

階級社会がすンごかった中世ヨーロッパでは、なんと恐ろしい事に食い物にも階級があった。大体において高いところにあるものは階級が高く、地面に近かったり地面の下にあるものの階級は低い。

 

異世界スローライフを堪能していた転生者は困惑していた。転移とか色々苦労して救荒作物であるジャガイモを当地における南アメリカまで行って回収し、生産チートや転生前知識でフライドポテトやポテトサラダ、ポテトチップを作り、更にカブの味噌汁やら浅漬け作って領主に振る舞ったのにウケが悪い。渾身のきんぴらごぼうすらっ……!

 

「塩、炭水化物、油の約束された勝利のトライアングルが効かない……だとっ! こいつら全員ブリカスか……」

「人種ヘイトはダメだってはっきりわかんだね。中世ヨーロッパ違反ではないが、人としてどうよ?」

「フィッシュ&チップス好きな連中がジャガイモ嫌いとか考えられない」

「産業革命後だぞ、フィッシュ&チップス。そもそもだよ、なんで根菜ばっか使ってるんだ? わざと?」

「葉物野菜は輸送中に萎れたり痛んだりするじゃん。食いでもない。塊がっつり美味いねやった! 輸送と保存能力が低いこの世界では根菜最強では?」

「発想がそもそもバグっとる。この世界では地面に近い場所で取れる作物や地下茎とか地下にあるもん下等な食い物扱いだから」

「なんでよ?」

「うーん、そうなっている……としか。まず宗教側面から行こっか。キリスト教があるだろ? で、旧約聖書もあるわな?」

「え? そっから?」

「あの辺の一神教で楽園(パラダイス)と言ったらエデンの園。あらゆる果物が実り、それを自由に食える」

「ふむ」

「よって、高い所に実る果物は大正義」

「……ワイン作る時使う葡萄も林檎もそうか」

「まぁ、旧約聖書では知恵の実が林檎とは明記されていないんだが」

 

 

【りんご】

ユダヤ教やキリスト教が生まれたの今で言うパレスチナとかイスラエルでして。林檎は寒冷地や冷涼な高地で栽培しますわな。リンゴが明示的に素晴らしいって書かれてるのは北欧神話の黄金のリンゴではあるまいか。また古くはappleって果物とか木の実を意味する言葉で、そのままイコール林檎という意味では無い。パイナップル(pine-apple)にその頃の用法が残ってますな。

 

 

「でも、そうしたら小麦って低いところで採れない?」

「キリストさんの肉だからセーフ理論」

「じゃあ大地より低い川や海で取れる魚は?」

「キリストさんが配ったり使徒が漁師さんだったりするからセーフ」

 

 

【キリスト教と魚】

新興宗教としてギリシャローマで闇に隠れてキリスト教が生きてた時代は、教団マークとしてお魚マーク使ったりしてました。

 

 

「ジーザスがきんぴらごぼうを信者に振る舞ってたらワンチャンあったんだがな……」

「え? だとするとアレじゃない? 中東で食ってたもんが素晴らしいって概念が北部ヨーロッパの民持ってたら……」

「次第に品種改良していけば良かったんだがね、植生が合わずに収穫量が減りますわな」

 

連作障害が起きない・起きにくい「水稲(すいとう)」で、そもそもの反収が高い米を主穀にした日本や東南アジアとは異なり、当時の小麦は反収(単位面積あたりの収穫)がめちゃくちゃ低かった。それ故に呆れる程の耕地が必要であちこちにあった森林を伐採して、その結果森林をテリトリーとしていたオオカミなどが人里に降りてきて……

何とびっくり、本稿執筆時点で大絶賛オリンピック開催中のパリはオオカミの群れに襲われて、警備隊長がオオカミのボスと差し違えて死んだ(ほんとう)

 

【反収】

一反(いったん)(約1000平米)での収穫量。秀吉の太閤検地時代だとこの面積の水田で人ひとりが1年間に食うだけの米(一石)を収穫できた。この単位面積毎に年貢が決まっていたので、反収を増やすとそれだけ収入が増えた。大体年貢割合が5公5民〜6公4民ぐらいだから、6人家族なら12反〜15反ぐらい耕作できると米の飯が食える。しかし50mプール12〜15個分の面積面倒見るのは大変であり、麦混ぜたり反収増やす為に頑張る訳だ。

 

尚、中世ヨーロッパにおける小麦の反収は水稲とは比べものにならない程低い。いやマジで。

 

 

「いや待ってくれお巡りさん、人間が黙って飢えていくとは考えにくい。何かジャガイモ以外の作物作って飢えを凌いだのでは?」

「いい発想だ。日持ちして備蓄可能なエネルギー源、何があるかな?」

「大豆……やろか?」

「惜しいな、大豆は土が合わなかったので栽培は随分後になってからだ」

「トウモロコシは?」

「ジャガイモと同じ新大陸から持ち込まなきゃならん」

「すると、豆類か」

「インゲンとかそら豆とか、ヒヨコ豆、レッドキドニー……様々な豆類を乾燥備蓄して水で戻して使ってるね」

 

最近の若い子は西部劇を余り見ないと思うが、西部劇でよく出てくるチリコンカーンの様に、豆料理が結構食されていた模様である。

特にヨーロッパ北部はくっそ寒く、冬場は作物も栽培不能になる為備蓄の効く乾燥豆類はかなり重要なカロリー源だった模様。

 

「でもフランス料理ではそういうのあまり見ないっスね?」

「皆がフランス料理だと思っているものの大半はイタリア料理というか、イタリアから料理人連れて輿入れした王妃が流行らせた宮廷料理だ。庶民の食卓では無い」

「はえー。なんでそういうものが日本では軽視されるんやろ?」

「君はフランス行ってわざわざど田舎見て回るんか? 普通は観光資源のある大都市行くだろ? 私だって機会があればパリやランス行って教会とか見に行くわ。ベルサイユ宮殿無視してアルザス・ロレーヌとかドンレミ行く奴少ないだろ? 庶民の暮らしとか興味あるんか?」

「……無いっスね」

「更に申せばヨーロッパは土着の【元々の生活】がキリスト教により【書き換えられた】世界なんだ。キリスト教は王侯貴族から布教が進み、庶民が信じてた土着宗教や生活様式は異端として排斥されて残り難い。更に識字率や文献そのものが少なくて、記録が残る様になるのはグーテンベルクが活版印刷やり始めてプロテスタントによる啓蒙教育が推進されて以降だ」

「……すると、異端として排斥されたものたちの中に【元々の生活】があると?」

「魔女のバァさんが大釜でなんかグツグツ煮てるだろ?」

「定番すな」

「ありゃヨーロッパ郊外の農村部で、農作業が無理なぐらい老いた老婆が、家族の為に飯のシチューを焦げつかせない様に混ぜてる姿だ」

「え? 家族は?」

「反収が少ない広大な小麦畑で腰折って雑草とか抜いとる。キリスト教がある程度広まってる貴族連中は1日2食だが、農民は3食食ってる。

燃料も薪拾って来なきゃいかんから森林の近くで、やはり農作業にまだ向かない小さな子供たちに薪拾いをやらせる。森林近くの家の中は昼間でも薄暗く、大鍋温める火の光が唯一の光源で……」

「ヘンゼルとグレーテルかな?」

「農作業に出てる家族は各人キリの良いところで家に帰り、温め済みのシチュー掻き込んでまた畑に戻る。また、家は燃料確保の関係上森林の辺縁部にあり、そこはオオカミのテリトリー。そして農家は豚などを飼育している」

「3匹の子豚や赤ずきんちゃんだ!」

「ジャックと豆の木」

「豆栽培キタコレ!」

 

しかし、ファンタジー作品では干し豆水で戻してベーコンと煮込んだりした料理が出るのは稀である。まぁ記録も殆ど無いからしゃーない。




修道士だったメンデルがメンデルの法則発見したのは「えんどう豆」の栽培研究に寄る。修道士会というものは古くから質素倹約を旨としており、貧乏が粗末な服着て学術探究する訳でして。
えんどう豆が自分たちで食う食料であり、粗食であるのは言を俟たないのである。

書き忘れたが、カブはノーフォーク農業やってた頃は家畜の飼料として珍重されており、時と場合によっては「牛馬が食うもん食わされた!」って怒られる奴です。WW2で日本軍が捕虜にゴボウ食わせてキレられたのも、「食い物のランク理論」がほんのり彼らのベースにあるからだと思うます。

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